エッセンシャルワーカーは人手不足感が強い傾向があります。大学生が「志望していない」と回答する割合も高く、人材確保には対策が必要です。具体的にどのような対策が必要なのでしょうか?これからエッセンシャルワーカーの人材確保が課題となっている企業に役立つよう解説します。
エッセンシャルワーカーとは
エッセンシャルワーカーとは人々の暮らしを維持するために必要不可欠な仕事を担う人材です。エッセンシャルワーカーの具体的な例として、以下の職種があげられます。
- 医師・看護師
- 介護職員
- 保育士
- 教師
- 警察官
- 消防士
- トラックドライバー
- 電気・水道・ガス・通信などの技術者
- 公共交通機関の運転士
- 農業・林業・漁業など第一次産業の従事者
- 小売店の従業員
- 金融機関の従業員
- 市区町村役場の公務員
どの仕事も人材不足が深刻化すれば、日常生活に必要なサービスを今までのように受けられなくなるでしょう。健康で安全に暮らすことが難しくなることも考えられます。
エッセンシャルワーカーの人手不足の現状
エッセンシャルワーカーに分類される仕事の人手不足感は、厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年5月)」で確認できます。2024年5月1日時点の正社員等労働者過不足判断DIを見てみましょう。
産業 |
正社員等労働者過不足判断DI |
調査産業計 |
45 |
建設業 |
60 |
製造業 |
43 |
情報通信業 |
53 |
運輸業・郵便業 |
55 |
卸売業・小売業 |
26 |
金融業・保険業 |
36 |
不動産業・物品賃貸業 |
37 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
57 |
宿泊業・飲食サービス業 |
49 |
生活関連サービス業・娯楽業 |
34 |
医療・福祉 |
52 |
サービス業(他に分類されていないもの) |
46 |
正社員等労働者過不足判断DIとは、正社員の過不足感に対して「不足」の回答から「過剰」の回答を差し引いた数値です。数値が大きいほど、正社員の不足感が強い業界と判断できます。
エッセンシャルワーカーの属する業界では、正社員の不足感が強い傾向があるといえるでしょう。
またパートタイム労働者過不足判断DIでも同様の傾向が見られます。「卸売業・小売業」や「生活関連サービス業・娯楽業」といった、正社員の不足感は平均以下であっても、パートタイムの不足感が強い業界もあると分かります。
産業 |
パートタイム等労働者過不足判断DI |
調査産業計 |
29 |
建設業 |
12 |
製造業 |
16 |
情報通信業 |
5 |
運輸業・郵便業 |
30 |
卸売業・小売業 |
40 |
金融業・保険業 |
11 |
不動産業・物品賃貸業 |
24 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
16 |
宿泊業・飲食サービス業 |
67 |
生活関連サービス業・娯楽業 |
49 |
医療・福祉 |
29 |
サービス業(他に分類されていないもの) |
47 |
関連記事:業界別の人手不足ランキングをチェック!人手不足への対策方法も確認
エッセンシャルワーカーの人手不足の原因
マイナビキャリアリサーチLabの調査結果によると、80.7%が「社会を支えるためになくてはならない仕事に従事し、社会貢献性が高い」というイメージを持っています。
ただしエッセンシャルワーカーに対してプラスのイメージを持っている人が大多数であるにもかかわらず、実際にエッセンシャルワーカーへの就職を志望する大学生は多くありません。「志望している」は8.8%、「志望を検討している」は24.5%で、合わせても33.3%です。
66.6%と半数以上の大学生がエッセンシャルワーカーを「志望していない」と回答したことは、エッセンシャルワーカーの人手不足につながる点といえます。
ここではエッセンシャルワーカーが人手不足になる原因として、大学生の調査結果にも表れている「業務の負担が大きい」「賃金や待遇が悪い」ことについて見ていきましょう。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|エッセンシャルワーカーに対し、大学生はどのようなイメージを持っているのか
業務の負担が大きい
エッセンシャルワーカーの担う業務は、身体的な負荷が高いものや、感情を使って対応しなければいけないものが多く、負担が大きいでしょう。心身に疲れを感じて離職を選ぶ人もいます。
また大学生を対象に行ったマイナビキャリアリサーチLabの調査では、エッセンシャルワーカーへのイメージとして、53.4%が「身体的に負担が多い」、45.3%が「心理的に負担が多い」と回答しました。
このようなイメージにより人材が集まりにくいことも、エッセンシャルワーカーの人手不足につながっています。
賃金や待遇が悪い
他の職種と比べて賃金が低く待遇が悪い傾向にあることも、エッセンシャルワーカーの人手不足の原因です。より高い賃金や充実した待遇で働ける仕事が他にあれば、よりよい条件で働きたいと考えている人材はそちらを選ぶでしょう。
エッセンシャルワーカーの賃金や待遇に対して、大学生の55.8%は「よくないと思う」と回答しています。このようなイメージにより、就職先を探すときにエッセンシャルワーカーを最初から除外している人材もいるでしょう。
エッセンシャルワーカーの人材確保に向けた対策
エッセンシャルワーカーの人手不足を解消するには、人材確保のための対策が必要です。負担の大きい業務や、賃金や待遇の悪さを解消するには、どのような対策があるのかを解説します。
業務効率化を進める
業務の負担を解消するには、今ある業務を見直して、業務効率化を進めることが重要です。改めて見直すと、不要な業務に時間を取られている・同じ業務を二重で行っている、といったケースが見つかることがあります。これらの無駄を省くことで、業務効率化を推進可能です。
これまで人が担っていた業務をシステムの導入で自動化する、身体的な負荷の大きな作業をサポートする機器を導入する、といったことも、業務効率化につながります。
業務の心身への負担を減らすことで、今働いているエッセンシャルワーカーが無理なく仕事を続けられるようになりますし、新たにエッセンシャルワーカーを希望する人材の増加につながるかもしれません。
賃金を上げる
エッセンシャルワーカーの人手不足を解消するには、待遇の改善に取り組むことも重要です。待遇改善策として、まずは賃金アップを検討するとよいでしょう。
他の職種よりエッセンシャルワーカーの方が賃金が高ければ「エッセンシャルワーカーになりたい」と希望する人材の増加が期待できます。
既にエッセンシャルワーカーとして働いている人材も、他の職種より賃金が高ければ「これからも働き続けたい」と希望するケースが増えるでしょう。
福利厚生を充実させる
待遇改善には福利厚生の充実度アップも有効です。福利厚生を充実させることで、エッセンシャルワーカーの働きやすい環境を整えられます。
大学生を対象に行ったマイナビキャリアリサーチLabの調査では、41.3%が「労働時間やワークライフバランスが改善されれば志望度が上がる」、38.8%が「給与条件や雇用形態が改善されれば志望度が上がる」と回答しています。
福利厚生として特別休暇を導入したり、短時間勤務でも正規雇用の従業員として働ける制度を整備したりすれば、エッセンシャルワーカーとして働くことを希望する人材の増加につながるでしょう。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|エッセンシャルワーカーに対し、大学生はどのようなイメージを持っているのか
エッセンシャルワーカーにおすすめの福利厚生
エッセンシャルワーカーの福利厚生を充実させるときには、どのような福利厚生を導入するのがよいのでしょうか?おすすめの福利厚生を紹介します。
特別休暇
プライベートの用事や体調に合わせて、希望通りに休めるよう、特別休暇を設けることはエッセンシャルワーカーの働きやすい環境整備につながります。
リフレッシュ休暇・アニバーサリー休暇・看護休暇・療養休暇・育児休暇など、従業員のニーズに合う休暇制度を導入するとよいでしょう。
単に制度を導入するだけでなく、実際に休暇を取得しやすいよう、職場の体制を整えることも重要です。十分な人材を配置して希望通りに休暇を取っても業務に支障が出ないようにしたり、上司やリーダーから休暇を取るよう呼びかけたりします。
時短勤務制度
正規雇用の従業員のまま勤務時間を短縮して勤務できる制度があれば、エッセンシャルワーカーはライフステージや体調などの変化に合わせて、適切な働き方を選べるようになります。
希望に応じて時短勤務制度を利用できる仕組みになっていれば、子どもが中学生になるまでの期間は時短勤務制度で働き、その後はフルタイムで働く、といった調整が可能です。
育児や介護などを理由とする離職を防ぎやすくなる制度といえます。
資格取得支援
エッセンシャルワーカーとしてステップアップしていくには、資格取得が必要なケースもあります。
例えば介護士であれば、介護職員初任者研修・介護福祉士実務者研修・介護福祉士の順に資格取得をしていくことでステップアップが可能です。さらに認定介護福祉士やケアマネージャーの取得を目指す人もいます。
このような資格取得を企業がサポートすることで、エッセンシャルワーカーはスキルアップを目指しやすくなるでしょう。
高いスキルを持つエッセンシャルワーカーが増えることで、企業にとっては、任せられる業務が増える、事業規模を広げられるといったメリットがあります。
社宅
待遇を改善する方法として、実質的な手取り額アップにつながる福利厚生を導入するのもおすすめです。例えば社宅を導入すれば、住まいにかかる費用の一部を企業が負担することで、従業員が自由に使える賃金を増やせます。
社宅は定められた要件を満たすことで、従業員の税負担を増やさずに提供できるのもメリットです。
自社で社宅として提供できる建物を保有していない場合には、賃貸住宅を企業が契約して従業員へ貸し出す借り上げ社宅の提供もできます。
関連記事:【税理士監修】住宅手当は課税・非課税どちら?それぞれのケースや課税額を解説
食事補助
実質的な手取り額アップにつながる福利厚生には食事補助もあります。従業員のランチ代を企業がサポートすることで、従業員が自由に使える賃金を増やせる方法です。要件を満たせば支給しても従業員の税負担を増やすことはありません。
手間を増やすことなく食事補助を実施するには、エデンレッドジャパンの提供する食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入がおすすめです。契約後に届くICカードを従業員に配布すれば、すぐに使い始められます。
全国にある25万店舗以上の加盟店でいつでも利用できるため、シフト制で休憩時間が異なる・毎日異なる現場で仕事をしている、といったエッセンシャルワーカーにとって利用しやすい仕組みです。
関連記事:食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ
エッセンシャルワーカーの人手不足は福利厚生で対策を
人々の暮らしに必要不可欠なエッセンシャルワーカーは、人手不足が課題となっています。これから人材確保を進めていくには、業務効率化や待遇改善が必要です。
待遇改善に取り組むときには、福利厚生の充実度アップを実施するとよいでしょう。例えば従業員の実質的な手取り額を上げられる食事補助の提供がおすすめです。手間を増やさずに制度を充実させるなら、食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか。