医療従事者の賃上げは診療報酬の改定と関係しています。2024年度の診療報酬改定の概要をチェックして、賃上げのためにどのような取り組みが行われているのかを見ていきましょう。賃上げを促す制度や、医療従事者の待遇改善におすすめの福利厚生も紹介します。
2025年度は2%のベースアップを目指す
2024年度の「診療報酬改定の概要」によると、厚生労働省は2024年度に2.5%、2025年度に2.0%のベースアップにより、賃上げの実現を目指す方針です。
医療従事者が勤務する病院をはじめとする医療機関は、診療報酬から医療従事者の給与を支給しています。ベースアップのためには診療報酬の改定が必要です。
参考:令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】
2024年度の診療報酬改定内容
2024年度の「診療報酬改定の概要」を見ると、医療従事者のベースアップを行うための特例的な対応として、ベースアップ評価料を創設し、初診料や入院基本料などの引き上げを盛り込んでいます。それぞれの内容をチェックしましょう。
参考:令和6年度診療報酬改定の概要【賃上げ・基本料等の引き上げ】
ベースアップ評価料を創設
ベースアップ評価料とは、外来医療や在宅医療を行っている医療機関で、勤務している看護師や薬剤師などの職種の賃上げを行っている場合に対象となる、診療報酬の加点のことです。
社会全体で賃上げの気運が高まっています。このような中、十分な賃上げができなければ、医療を提供するために必要な人材の確保が難しくなるかもしれません。
経済や社会の情勢に対応するために設けられた制度です。
初診料や入院基本料などの賃上げを見込んだ引き上げ
初診料や入院基本料などの引き上げも行われています。具体的には初診料3点、再診料・外来診療料2点の引き上げです。
また入院基本料などの引き上げ後の点数は、以下のように定められています。
入院基本料など |
点数 |
【一般病棟入院基本料】急性期一般入院料1 |
1,688点 |
【療養病棟入院基本料】療養病棟入院料1 入院料25 |
983点 |
【精神病棟入院基本料】15対1入院基本料 |
844点 |
【特定機能病院入院基本料】7対1入院基本料(一般病棟の場合) |
1,822点 |
【回復期リハビリテーション病棟入院料】回復期リハビリテーション病棟入院料4 |
1,859点 |
【地域包括ケア病棟入院料】地域包括ケア病棟入院料1 ※40日以内 |
2,838点 |
賃上げの対象となる職種
ベースアップ評価料は、定められた職種の賃上げを実施した医療機関が対象となります。ここでは「令和6年度診療報酬改定と賃上げについて」を参考に、ベースアップ評価料の加点を受けるために、賃上げを実施すべき職種について見ていきましょう。
参考:厚生労働省|令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~ 今考えていただきたいこと(病院・医科診療所の場合) ~
0.61%の改定は看護師や歯科衛生士などが対象
0.61%の改定が行われる職種は以下の通りです。
薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・看護補助者・理学療法士・作業療法士・視能訓練士・言語聴覚士・義肢装具士・歯科衛生士・歯科技工士・歯科業務補助者・診療放射線技師・診療エックス線技師・臨床検査技師・衛生検査技師・臨床工学技士・管理栄養士・栄養士・精神保健福祉士・社会福祉士・介護福祉士・保育士・救急救命士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゆう師・柔道整復師・公認心理師・診療情報管理士・医師事務作業補助者・その他医療に従事する職員(医師及び歯科医師を除く)
0.28%の改定は40歳未満の勤務医師や事務職員などが対象
0.28%の改定の対象となっているのは、40歳未満で以下の職種で働く医療従事者が想定されています。
勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師・事務職員・歯科技工所等で従事する者 など
対象職種以外の賃上げはどうする?
対象となっている職種以外の職種で働く人に対する賃上げは、ベースアップ評価料による賃上げの対象にはなりません。ただし「令和6年度診療報酬改定と賃上げについて」には以下のように記載されています。
ベースアップ評価料による賃上げの対象とならない職種についても、引き上げられた初再診料等や入院基本料等を活用して、同様の考え方で政府目標の達成を目指して頂きますようお願いいたします。
対象外の職種であっても、経済状況・社会状況に合わせた賃上げは必要な状況といえるでしょう。
賃上げは賃上げ促進税制の税額控除対象
2024年度以降、賃上げにかかる診療報酬項目は、賃上げ促進税制の対象となります。賃上げ促進税制とは、事業者が前年度と比べて賃上げを行った場合に、増加額の一部を法人税や個人所得税から差し引く制度のことです。
事業者の規模や賃上げ率によって定められている、税額控除率を見ていきましょう。
給与等支給額の前年度比 |
税額控除率 |
|
大企業向け |
+3% |
10% |
+4% |
15% |
|
+5% |
20% |
|
+7% |
25% |
|
中堅企業向け |
+3% |
10% |
+4% |
25% |
|
中小企業向け |
+1.5% |
15% |
+2.5% |
30% |
さらに教育訓練費を増加させると、以下の通り税額控除率の上乗せが可能です。
教育訓練費の前年度比 |
税額控除率の上乗せ |
|
大企業向け |
10% |
+5% |
中堅企業向け |
10% |
+5% |
中小企業向け |
5% |
+10% |
加えて、くるみん認定やえるぼし認定により、以下の上乗せも行われます。
子育てとの両立・女性活躍支援 |
税額控除率の上乗せ |
|
大企業向け |
プラチナくるみん、もしくはプラチナえるぼしの認定 |
+5% |
中堅企業向け |
プラチナくるみん、もしくはえるぼし3段階目以上の認定 |
+5% |
中小企業向け |
くるみん以上、もしくはえるぼし2段階目以上の認定 |
+5% |
大企業・中堅企業は最大35%、中小企業は最大45%の税額控除を受けられる仕組みです。
参考:経済産業省|賃上げに取り組む経営者の皆様へ~政府は、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援します~
関連記事:賃上げ促進税制の基本を分かりやすく解説!別表記載時の注意点も
医療従事者の賃上げはいつから?
2024年度の診療報酬改定が施行されたのは2024年6月です。ただし実際に賃上げを実施するタイミングは、医療機関によって異なります。2024年4・5月から行った賃上げへの充当も可能であることから、2024年4月から賃上げを行っている医療機関もあるでしょう。
日本医療労働組合連合会中央執行委員会が指摘する課題
医療従事者の賃上げを行う目的で、2024年度の診療報酬改定では、ベースアップ評価料の創設や、初診料・入院基本料などの引き上げが行われました。ただしこの改定には課題があるとする意見もあります。
日本医療労働連合会が示した「24年診療報酬・介護報酬改定に対する中執見解」から、2024年度の診療報酬改定の課題を見ていきましょう。
参考:日本医療労働組合連合会|24年診療報酬・介護報酬改定に対する中執見解
現場が求める賃上げの水準に達していない
2024年度の診療報酬改定では、2024年度に2.5%、2025年度に2.0%の賃上げを目指す内容でした。
ただし日本労働組合連合会が発表した2024年春闘の賃上げ率5.10%には届いていません。加えて日本労働組合連合会は2025年春闘でも、引き続き賃上げを要求していく方針です。
一般企業の賃上げと比べて賃上げ率が低いことや、日本医療労働組合連合会が求めている「月額平均4万円以上の大幅賃上げ」に満たないことから、現場が求める賃上げの水準に達していないことが課題の1つとしてあげられます。
参考:日本労働組合総連合会|33年ぶりの5%超え!~2024春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~
関連記事:賃上げ率の見通しは?2025年春闘の予想や第3の賃上げについて解説
ベースアップ評価料の継続が不明瞭
賃上げは継続的な取り組みです。1度給与を上げると下げるのは難しいでしょう。それにもかかわらず、2024年度の診療報酬改定で創設されたベースアップ評価料は、特例的な対応とされています。
制度が継続されるか分からない状況では、賃上げに踏み切れない医療機関もあるでしょう。
利用者負担増の懸念
診療報酬の改定のみで医療従事者の賃上げを行う方向性自体にも課題があります。医療費全体のうち、国が負担しているのは約25%で、その他は保険料負担・利用者負担・地方負担によるものです。
2024年度の診療報酬改定で示された方向でのみ賃上げを行うと、利用者負担が増えてしまいます。
賃上げに加えて福利厚生も検討を
医療従事者の待遇改善を実施するには、賃上げによる給与アップとともに福利厚生の充実度アップも検討するとよいでしょう。中でも実質的な手取りアップに役立つ、食事補助や社宅がおすすめです。
例えばエデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入すれば、院内に食堂がない医療機関や、訪問看護を行っている事業所でも、対象となる全ての職員に公平に食事補助を提供できます。
利用できる加盟店には大手コンビニチェーンも含まれているため、院内のコンビニで食事を購入している職員が多い場合にも利用しやすいでしょう。食事代のサポートを受けられるため、バランスのよい食事をとりやすくなるのもメリットです。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
医療従事者へ賃上げとともに福利厚生も活用しよう
物価高が続く中、企業規模を問わず賃上げの動きが広がっています。2025年には企業規模や雇用形態による格差是正を目指す要求も行われる見込みとなっている状況です。
医療機関で働く医療従事者にも同様に賃上げを行うために、2024年度の診療報酬改定では、ベースアップ評価料が創設され、初診料や入金基本料などの引き上げについて定められました。
ただし2024年度の診療報酬改定のみでは、十分な賃上げは難しいという意見もあります。このような中で医療従事者の待遇改善に取り組むには、実質的な手取りアップにつながる福利厚生の拡充を行うとよいでしょう。
中でも、エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。医療従事者の待遇改善に、バランスのよい食事につながる「チケットレストラン」を活用しませんか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
新キャンペーンのお知らせ:従業員の生活支援に!「第3の賃上げ」導入応援キャンペーン開始 ~食事補助サービス「チケットレストラン」で“手取りアップ”を実現~
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