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【社労士監修】雇用調整助成金は外国人も対象?条件や注意点、その他の便利な助成金も解説

【社労士監修】雇用調整助成金は外国人も対象?条件や注意点、その他の便利な助成金も解説

2025.12.24

雇用調整助成金の外国人人材への活用では、在留資格の種類によって注意すべきポイントがあります。本記事では、外国人人材が雇用調整助成金を利用する際の具体的な条件や、技能実習生特有の手続き、併用できるその他の助成金について解説。さらに、助成金だけでは不十分な定着支援の実務的な方法など、外国人雇用のコスト削減と定着率向上を実現したい企業が知っておきたい情報を網羅しています。

【結論】外国人も雇用調整助成金の対象になる

外国人人材も雇用調整助成金の対象です。国籍は問わず、雇用保険に加入していれば日本人と同じ条件で助成を受けられます。ただし、雇用保険の被保険者期間が6カ月以上であることが必須条件となります。技能実習生の場合は、休業により実習計画に基づく活動が継続できなくなるため、事前に監理団体への相談が必要です。また、留学生アルバイトは雇用保険への加入ができないため、雇用調整助成金の対象外です。

助成金と補助金の違い

外国人雇用を支援する制度には「助成金」と「補助金」があります。どちらも返済不要の給付金ですが、管轄省庁や受給の確実性が異なります。自社に適した制度を選ぶため、両者の違いを理解しておきましょう。

項目 助成金 補助金
主な管轄 厚生労働省 経済産業省・地方自治体
財源 雇用保険料
(厚労省雇用関係助成金の場合)
一般会計・地方交付税等
受給の確実性 要件を満たせば原則受給可能 審査があり、採択されないと受給できない
申請方法 申請
(要件確認が中心)
応募
(事業計画の審査あり)
募集期間 通年募集が多い 期間限定(数週間程度)が多い
主な目的 雇用維持・人材育成・労働環境改善 事業拡大・設備投資・新規事業

助成金は、所定の要件を満たし必要書類を揃えて申請すれば、原則として受給できます。ただし、要件が厳格で証明書類も多いため、社会保険労務士などの専門家への相談がおすすめです。一方、補助金は支給枠が決まっており、応募の中から支給先が選ばれるため、事業計画書の質が重要になります。

本記事で紹介する外国人雇用関連の制度は、主に厚生労働省管轄の「助成金」です。要件を正しく理解し、適切に申請することで受給の可能性が高まります。

参考:厚生労働省|雇用調整助成金

関連記事:【社労士監修】【2025年度版】外国人雇用に関する助成金・補助金一覧!自治体の支援も

雇用調整助成金の基本

雇用調整助成金は、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が従業員の雇用維持のために休業や教育訓練を実施した場合に助成する制度です。まずは、その詳細から解説します。

参考:厚生労働省|雇用調整助成金ガイドブック 

制度の概要

「雇用調整助成金」は、景気の変動や産業構造の変化など、経済的理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主を支援する制度です。

事業主が労働者の雇用を維持するために休業・教育訓練・出向を実施した場合、休業手当や賃金の一部が助成されます。労働者1人1日当たり8,870円が上限です。

※令和7年8月1日時点

対象になる外国人の条件

雇用調整助成金の支給対象となるには、雇用保険の被保険者であることが必須条件です。

被保険者期間が6カ月以上ある外国人人材は、国籍を問わず助成対象となります。在留資格については、就労可能な資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能、技能実習など)であることが前提です。

なお、留学生アルバイトは雇用保険への加入ができないため対象外。

卒業後に就労可能な在留資格へ変更し、雇用保険に加入している場合は対象となりますが、在学中のアルバイトとしての雇用では助成を受けられません。

技能実習生の場合の特別な注意点

技能実習生も、雇用保険加入があれば雇用調整助成金の対象となりますが、特別な配慮が必要です。技能実習制度は「技能移転を通じた国際協力」を目的としており、休業により実習計画に基づく実習が継続できない状態は、制度の趣旨に反する可能性があるためです。

雇用調整助成金の支給対象となる雇用調整(休業・教育訓練・出向)のうち、教育訓練については、外国人技能実習生に対して実施するものは助成の対象外となります。また、出向についても、実習生制度の性格上現実的ではありません。

なお、技能実習生を休業させる場合には、事前に監理団体へ相談が必要です。長期休業が続くと、実習計画に基づく実習を実施しないことになり、出入国管理及び難民認定法で定める不正行為とみなされる恐れがあります。慎重に対応しましょう。

参考:厚生労働省|外国人技能実習生を雇用している事業主の皆さまへ

外国人雇用で利用できる主な助成金

雇用調整助成金以外にも、外国人人材の採用・育成・定着を支援する助成金があります。目的や対象が異なるため、自社の状況に合わせて活用しましょう。以下、代表的な助成金を目的別に整理しました。

助成金名 目的 対象 助成額(中小企業) 外国人雇用でのポイント
雇用調整助成金 雇用維持(休業・教育訓練) 雇用保険加入者 1人1日当たり上限8,870円 技能実習生は監理団体への事前相談必須
トライアル雇用助成金 試行雇用による採用支援 就職困難者 月額最大4万円(最長3カ月) 定住者・永住者などの外国人も対象
キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援) 非正規から正社員化、処遇改善 有期雇用労働者等

【正社員化支援】有期→正規:15万円〜80万円

【処遇改善支援】コースによって異なる

外国人の正社員化にも活用可能
人材開発支援助成金(人材育成支援コース) 職業訓練・スキルアップ 在職者 経費助成率45%、賃金助成800円/時間 日本語研修なども対象になる場合あり
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) 外国人の就労環境整備 外国人雇用事業主 1制度20万円(最大4制度で80万円) 外国人に特化した助成金
業務改善助成金 生産性向上と賃金引上げ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以内の事業場 30万円〜600万円 外国人人材の処遇改善にも活用可

各助成金は併用可能なものもありますが、同じ経費に対して複数の助成金を受給することは禁止されています。申請には雇用保険適用事業所であることが基本条件となるため、社会保険労務士への相談も検討しましょう。

参考:厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金
参考:厚生労働省|人材開発支援助成金
参考:厚生労働省|人材確保等支援助成金
参考:厚生労働省|業務改善助成金

関連記事:【社労士監修】人材開発支援助成金を活用した外国人従業員の育成

外国人人材に長く働いてもらうには?

助成金は、採用・育成段階の経済的負担を軽減しますが、外国人人材の定着には日々の生活面や職場環境の改善が不可欠です。ここでは、外国人人材の定着に向けて企業ができる具体的な取り組みをまとめています。

生活面の不安を解消する

外国人人材は、来日時の初期費用や日々の生活コストが大きな負担となります。住居探しでは保証人問題や初期費用の高さに直面し、銀行口座開設や携帯電話契約など、基本的な手続きでも言語の壁に阻まれるケースが少なくありません。

企業ができる具体的な支援としては、多言語での生活情報提供(ゴミ出しルール・公共交通機関の使い方など)、住居探しのサポート、母国語対応の相談窓口設置が挙げられます。また、地域コミュニティとの接点づくりや、生活に必要な各種手続きの支援も効果的です。

毎日の「困りごと」が積み重なると離職につながるため、生活面での不安を早期に解消することが定着の第一歩となります。

職場環境とコミュニケーションを改善する

文化や宗教への理解不足は、職場での孤立感や誤解を生む原因となります。これを踏まえ、企業は社内研修を通じて日本人従業員の異文化理解を促進するほか、業務マニュアルの多言語化や図解化により言語の壁を下げる工夫が必要です。

また、評価基準の明確化と透明性の確保も重要なポイントです。昇給・昇格の道筋を示すキャリアパスを提示することで、外国人人材のモチベーション維持につながります。

さらに、メンター制度の導入により日本人従業員とのペアリングを行い、定期的な面談で悩みを早期に発見する仕組みづくりも効果的です。処遇改善やキャリアパス整備は、外国人人材の定着に直結する施策です。

福利厚生で定着率を高める

外国人人材の定着には、福利厚生を通じたサポートも効果的です。

中でも、生活コストの削減に直結するものや、毎日利用できる実用性の高いもの、言語の壁がなく公平に利用できるもの、そして孤立感を解消しコミュニティ形成につながるものは、外国人人材の暮らしやすさを直接的にサポートします。

例えば、食事補助の福利厚生は、毎日の食事負担を軽減できるのはもちろんのこと、外国人・日本人を問わず公平に提供できるサービスです。従業員同士で食事をする機会も増えやすく、コミュニケーション促進の効果も期待できます。

3,000社以上が導入する「チケットレストラン」

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できる、食事補助の福利厚生サービスです。

加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど幅広く、利用する人の年代や嗜好を問いません。 Uber Eats を通じ、モスバーガーやスターバックスなどの人気ファストフードも利用可能です。

【チケットレストランの導入事例】

北海道で自動車の販売・修理・整備を手掛ける日免オートシステム株式会社では、持続可能な整備サービスを推進するため、毎年定期的に外国人採用を行っています。2018年からは、外国人技能実習生や特定技能外国人を受け入れていますが、外国人従業員からも「チケットレストラン」は評判が良いとのことでした。

▼日免オートシステム株式会社の詳細な導入事例は「こちら

 

雇用調整助成金にまつわるよくある質問

ここでは、外国人人材に対する雇用調整助成金の適用について、多く寄せられる質問をQ&A形式でまとめています。

留学生アルバイトは対象になりますか?

A. 原則として対象外です。

雇用調整助成金は、雇用保険の被保険者であることが必須条件となる制度ですが、留学生は雇用保険への加入ができません。つまり、在学中のアルバイトとしての雇用では、助成を受けることはできません。

関連記事:人手不足対策に外国人労働者を!受け入れメリット・デメリット 成功事例も紹介

技能実習生にも使えますか?

A. 対象ですが、監理団体への事前相談が必須です。

技能実習生も雇用保険に加入していれば雇用調整助成金の対象となります(※教育訓練を除く)。ただし、技能実習制度は「技能移転」を目的としているため、休業により実習計画に基づく実習が継続できない場合、制度の趣旨に反する可能性があります。必ず事前に監理団体へ相談し、地方入国管理局への報告など適切な手続きを取ることが必須です。

休業が長期化すると在留資格に影響しますか?

A. 在留期間更新時に影響する可能性があります。

長期休業により、在留資格で認められた活動を行っていないと判断される可能性があります。在留期間更新時に、就労実績や活動内容の説明を求められるケースも少なくありません。特に、就労を目的とした在留資格(技術・人文知識・国際業務、特定技能など)では、実際に就労していることが在留資格維持の前提となるため、休業が長期化する見込みの場合には、地方出入国在留管理局や専門家(行政書士など)への相談をおすすめします。

他の助成金と併用できますか?

A. 併用可能なものもありますが、同一費用の二重取りは禁止です

他の助成金との併用は原則として可能です。例えば、人材開発支援助成金で職業訓練を実施しつつ、別の時期に雇用調整助成金を活用することができます。ただし、同じ経費に対して複数の助成金を受給することは禁止されています。例えば、休業手当に対して雇用調整助成金を受けながら、同じ休業手当に対して別の助成金を申請することはできません。

助成金を活用した外国人雇用の成功に向けて

外国人人材も雇用調整助成金の対象です。雇用保険加入が必須条件で、技能実習生の場合は監理団体への事前相談が必要となります。雇用調整助成金のほかにも外国人雇用で使える助成金が複数あり、目的がそれぞれ異なるため自社の状況に応じて使い分けましょう。

助成金は経済的負担の軽減には有効ですが、定着には生活面のサポート・職場環境の改善・福利厚生の充実が不可欠です。「チケットレストラン」のような福利厚生も活用しつつ、外国人人材の雇用を成功させましょう。

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社会保険労務士 吉川明日香

社労士と民間企業の人事部で働くハイブリッド型社労士。労働者、経営者、人事担当者それぞれの視点から、バランスのとれたサポートを心がけています。子育て世代の生活環境や就業環境の課題を探るために保育士の資格を取得し、特定の専門分野を作らず、給与計算、手続き業務、労務相談、助成金等、幅広く実践的なアドバイスを行っています。
吉川社会保険労務士事務所
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