監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
外国人労働者数が204万人を超え、雇用する事業所も約31万事業所を突破しました。この状況を踏まえ、国や自治体はさまざまな助成金・補助金制度を整備し、企業の外国人雇用を後押ししています。本記事では、2024年度の実績を踏まえ、2025年度も同様の制度継続が見込まれる主な助成金・補助金・自治体の支援制度を紹介します。
広がる外国人労働者の活躍
厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)によると、日本における外国人労働者数が過去最高を更新し、204万人を突破しました。具体的には2,048,675人となり、前年と比較して約22.6万人(225,950人)の大幅な増加を記録しています。
また、外国人を雇用する事業所数も着実に増加しており、318,775事業所に達しました。前年から約2万事業所(19,985事業所)の増加となり、より多くの企業が外国人労働者の採用に積極的に取り組んでいることがわかります。
出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
関連記事:人手不足対策に外国人労働者を!受け入れメリット・デメリット 成功事例も紹介
外国人雇用に関する助成金とは
労働力不足を課題とする日本では、外国人労働者の受け入れを進めています。外国人雇用に関する助成金は、採用から定着までを支援するための制度です。キャリア支援に関するものから、トライアル雇用を補助するものまで、さまざまな種類があります。企業はこれらの助成金を活用することで、適切な雇用環境を整え、優秀な外国人労働者の採用・定着につなげられます。
外国人雇用に関する助成金が必要な理由
言語や文化が異なる外国人労働者を雇い入れた企業では、以下のような課題が生じます。
- 言語の壁によるコミュニケーションの難しさ
- 雇用契約の認識のズレによる離職
- 日本のマナーや慣習への理解の難しさ
- 外国人労働者へ配慮した職場環境が未整備
日本で外国人労働者が働き続けるためには、このような課題を解決するための環境整備が必要であり、各種助成金はその解決策として活用されています。
助成金と補助金の違い
外国人の雇用では、助成金だけでなく補助金も有用です。助成金や補助金は、どちらも返済不要の公的支援制度ですが、その性質が大きく異なります。違いをみていきましょう。
基本的な違い
最も大きな違いは運営する省庁です。助成金は主に厚生労働省が、補助金は経済産業省などが管轄しています。運営主体の違いは支援の性質にも表れており、助成金は定められた要件を満たせば審査がスムーズに進みます。一方、補助金は選考で、優れた事業のみが採択される仕組みです。
申請方法にも違いがあります。助成金は通年での募集が多く、要件を満たしているかどうかの確認が中心です。補助金は募集期間が数週間と短く、事業計画の内容を厳密に審査します。
外国人雇用での助成金・補助金の活用
外国人雇用では、助成金と補助金の両方の制度が活用できます。助成金では外国人従業員の雇用や研修に関する支援などが受けられます。補助金は外国人労働者を活用した事業展開への支援が対象です。また、東京や大阪など外国人労働者が多い地方自治体を中心として、自治体独自の支援制度も設けられています。
外国人雇用で活用できる助成金一覧
外国人労働者の採用や雇用継続をサポートする助成金を一覧で紹介します。ただし助成金は変更される可能性があるため、活用する際は随時確認が必要です。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
職業経験が少ない外国人労働者を採用する際に活用できる制度です。正社員採用を前提とした試用期間(トライアル期間)を設ける場合、1人当たり月額4万円が支給されます。3か月を限度に受給でき、外国人労働者の採用をじっくり見極められる制度として人気があります。
出典:厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者が働きやすい職場づくりを支援する制度です。賃金要件を満たす場合は、就労環境の整備に関する費用の最大3分の2(上限72万円)、賃金要件を満たしていない場合でも最大2分の1(上限57万円)が支給されます。
外国人労働者は、日本の雇用慣行や労働法の知識が不足しがちです。さらに言葉の違いもあり、労働条件でトラブルになることがあります。助成金により、マニュアルの多言語化や相談窓口の設置など、外国人労働者の職場定着に必要な環境整備をサポートできます。
出典:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
キャリアアップ助成金(正社員化支援・処遇改善支援)
非正規雇用として働く外国人労働者を正社員に登用する際に活用できます。正社員化の支援だけでなく、賃金アップや福利厚生の充実などの、処遇改善にも使える幅広い支援制度です。支援内容によって支給額は異なりますが、中小企業向けに手厚い支援が用意されています。
出典:厚生労働省|キャリアアップ助成金
雇用調整助成金
事業活動の縮小を余儀なくされた際に、外国人労働者を含む従業員の雇用を守るための制度です。休業手当に助成率を乗じた金額が支給され、1人1日あたり最大8,635円が支給されます。一時的な業績悪化時に雇用を維持するための支援制度です。
出典:厚生労働省|雇用調整助成金
若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)
お金の支援ではなく"人"による支援をする事業として、ものづくりマイスター制度があります。日本の高度な技能を持つベテラン技能者が、直接企業に赴いて実技指導を行うもので、外国人従業員の技能向上にも活用できる制度です。
指導料はかからず、指導に必要な材料費も規定の範囲内で運営側の地域技能振興コーナー(厚生労働省)が負担してくれます。金銭的な助成金ではありませんが、熟練の技を直接学べることから、むしろそれ以上の価値があるかもしれません。
出典:厚生労働省|若年技能者人材育成支援等事業(ものづくりマイスター制度)
外国人雇用における補助金・支援制度一覧
企業における外国人労働者の採用・定着を支援するため、国や地方自治体でもさまざまな制度を用意しています。ここでは、活用できる主な支援制度を紹介します。
地方自治体主催の外国人雇用支援補助金・支援制度
各自治体では、地域の産業振興や人材確保を目的とした外国人雇用の支援制度を実施しています。採用活動費用の補助、研修費用助成、住宅支援、日本語教育支援など、特に定着支援に関する補助金が人気です。
東京都や大阪府を筆頭に、多くの自治体で独自の補助金制度を設けています。これらの補助金は募集期間が限定されており、年度ごとに内容が変更される場合はあるものの、過去に実施実績のある補助金は次年度以降も継続となる可能性が高いです。紹介する制度を参考に、定期的な情報収集をおすすめします。
【東京都】中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金(受付終了)
東京都では都内中小企業を対象に、外国人従業員の定着を促進およびウクライナ避難民の就労を後押しするため、ビジネスに必要な日本語教育への助成を行っています。助成内容は、日本語学校への通学や日本語教員による企業内研修などの経費における半分、最大25万円です。
最新の受付期間は令和6年度は令和6年4月4日〜令和7年1月15日(水曜日)と受付終了済みですが、令和4年より継続しており今後の募集が期待されます。
出典:東京都TOKYOはたらくネット|人材確保の支援
出典:東京都|令和6年度中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金募集の受付を開始します!
【大阪府】外国人留学生等マッチング支援事業
「外国人留学生等マッチング支援事業」は、府内企業の人材確保ニーズと外国人留学生、就労希望者をマッチングさせることで、地域における外国人の就労促進と定着支援を実現する取り組みです。外国人を活躍・定着させたい企業へ自社PRの機会を提供します。支援の中心となるのは「MEET IN OSAKA」と呼ばれる就活支援サイトです。次のような支援で府内企業との出会いをサポートします。
- 外国人留学生・就活希望者・外国人労働者を採用したい企業の無料登録
- 最短翌日からの面接実施が可能
- オンライン・対面での合同企業説明会の開催
- 就活支援セミナーの実施
- 企業向け外国人採用セミナーの提供
2024年度の登録受付期間は、令和6年(2024年)5月24日から令和7年(2025年)3月17日までです。
出典:大阪府|大阪府外国人留学生等マッチング支援事業
出典:大阪府|令和6年度外国人留学生等マッチング支援事業
【沖縄県】外国人介護人材受入施設等環境整備事業
沖縄県では、外国人介護人材(特定技能1号または技能実習「介護」)の受入費用の支援として、スムーズな就労のための事業所整備、定着のための生活支援に取り組む事業所を補助します。1事業所あたり、以下3つの合計のうち3分の2、最大20万円の補助を行います。
- コミュニケーション支援(マニュアル翻訳・作成や日本語学習支援)
- 介護福祉士の資格取得支援(研修の受講や教材購入)
- 生活支援に関する支援(ホームシック対策、地域住民との交流会、自転車購入)
受付期間は令和6年10月8日〜令和7年1月31日です。
出典:沖縄県|令和6年度外国人介護人材受入施設等環境整備事業
関連記事:介護施設の人材定着を促す方法は?現状の離職率と今後の見通しも解説
外国人雇用管理アドバイザー制度
厚生労働省が運営する外国人雇用管理アドバイザー制度は、外国人雇用に関する無料の相談窓口です。外国人雇用にあたって悩みがちな労働契約、職場教育、現状からの改善策を相談すると、外国人雇用アドバイザーから的確で効果的な助言を提示してもらえます。全国のハローワークに申し込むとアドバイザーが派遣され、気軽に専門家の支援を受けることが可能です。
出典:厚生労働省|外国人雇用管理アドバイザー
製造業外国人従業員受入事業
製造業は外国人労働者の約3割(27.0%)が活躍している分野です(厚生労働省「外国人雇用状況」)。この状況を踏まえ、経済産業省は「製造業外国人従業員受入事業」を通じて、製造業における国内外の生産拠点の連携強化と技術移転を促進しています。
本制度では、海外拠点の従業員を最長1年間、国内事業所で受け入れ、生産技術の移転を行います。企業にとってのメリットは以下です。
- 国内外で作業工程の標準化が進められる
- 海外拠点の中核となる人材を育成できる
- 海外拠点とのつながりが強化できる
利用には経済産業大臣の認定が必要で、技術移転に関する計画書を作成・申請し、認定を受けることを前提に従業員が在留資格「特定活動」を取得して来日する流れとなります。
出典:経済産業省|製造業外国従業員受入事業
出典:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年10月末時点)
国際化促進インターンシップ事業
国際化促進インターンシップ事業は、外国人インターンの受入れを通じて企業の国際化を支援する事業です。中堅・中小企業向けの制度として活用されており、外国人労働者の受入れ経験が少ない企業が、段階的に受入体制を整備していくためのきっかけづくりとして機能しています。
2024年度の場合、受入れ1日につき人材育成支援費が一人あたり2,000円支給されました。来日対面コース(原則30営業日)、オンラインコース(原則80時間)という2つの参加形態から選択できるため、企業の状況に応じた活用が可能です。
出典:経済産業省|国際促進インターンシップ事業
監理団体
監理団体は「技能実習生」の受け入れ企業を支援する非営利団体です。個々の技能実習生の受け入れと監理を行い、企業と技能実習生双方をサポートします。定期監査や訪問指導で企業を支援し、採用面談への同行や入国後講習により技能実習生への支援を行います。
また、外国の送り出し機関との連携も担当業務です。入会費、年会費のほか、個別支援費用は必要ですが、適切な労務管理や技能実習生の定着を促せます。
参考:厚生労働省|外国人技能実習制度について
登録支援機関
「特定技能」で外国人を雇用する際に活用できる支援機関です。主に、支援体制の整備、並びに支援計画書の作成を行っています。
初めて「特定技能」の外国人を雇用する企業では、外国人労働者の生活面のサポートに難しさを感じます。登録支援機関への委託により、企業の負担を軽減しつつ、外国人労働者の安定的な就労を実現するためのきめ細かなサポートが実現します。ただし、支援を受ける際は費用がかかるため、企業のリソースに応じての利用が現実的です。
以下の出入国在留管理庁「支援計画の概要②」では、具体的に支援を委託できる内容がわかります。
出典:出入国在留管理庁|「特定技能外国人受け入れる際のポイント」
参考:外国人を採用する日本企業をサポート特定技能Online|「登録支援機関」とは?特定技能制度における登録支援機関の役割・選び方、取得条件や注意
国際研修協力機構(JITCO/ジツコ)
国際研修協力機構(JITCO)は、内閣府所管の公益財団法人として、主に外国人技能実習制度全般のサポートを行う組織です。技能実習制度に関する申請書類の作成支援や、制度に関する情報提供、セミナーの開催を通じて、外国人労働者を受け入れる企業をサポートします。
JITCOは技能実習(監理団体が支援)と特定技能(登録支援機関が支援)の両制度において、これらの両制度をサポートしています。
出典:JITCO|国際人材協力機構(JITCO)とは JITCOの支援サービス
国籍を問わず喜ばれる福利厚生で従業員をサポート
助成金や補助金、支援制度の多さは、外国人労働者が日本で就労するにあたって、生活支援から労働環境の整備まで多様な支援が必要であることの表れです。このような支援体制の充実は、グローバル人材の獲得においても重要な要素となっています。
そのため、企業は全ての従業員に公平で、かつ外国人労働者の就労支援としても効果的な独自の取り組みに注力しています。働きたい企業として選ばれるためには、国籍を問わず全ての従業員の生活基盤を整える福利厚生を取り入れることが価値ある選択です。
参考記事:人手不足対策に外国人労働者を!受け入れメリット・デメリット 成功事例も紹介
食事補助の福利厚生チケットレストラン
食事は活力の源です。衣食住を満たす福利厚生の一つとして、エデンレッドジャパンが提供する食の福利厚生サービス「チケットレストラン」が、日本人従業員はもちろん、外国人従業員からも高い支持を得ています。専用のICカードで、全国25万店舗の加盟店で食事補助が利用できます。ファミレスやファーストフードチェーンはもちろん、コンビニでも使える点が従業員から好評です。
北海道で自動車の販売・修理・整備を手掛ける日免オートシステム株式会社では、「チケットレストラン」を導入することで、技能実習生や特定技能の外国人従業員から高齢従業員まで、幅広い層からの支持を得ています。導入後は従業員の定着率が向上し、人材確保にも効果を上げています。同社の事例は、年齢、性別、国籍を問わず全従業員が平等に恩恵を受けられる福利厚生の好例と言えるでしょう。
チケットレストランを外国人従業員に支給している導入事例:日免オートシステム株式会社
チケットレストランの仕組みを紹介
「チケットレストラン」は、日本一の実績を持つ食事補助の福利厚生サービスです。専用ICカードへのチャージ額を上限として、勤務中の食事、飲み物、お菓子の購入を企業が補助します。
- 多様な勤務時間でも利用可能
- 食事補助の非課税枠を活用
- 非課税枠のメリットで実質手取りが増加
- 専用ICカードで簡単支払い可能
- 月1回のチャージで運用が容易
このような特長を活かし、企業の人事戦略の一環として活用できます。
- 採用での差別化
- 定着率向上
- 従業員満足度向上
- 賃上げ代替
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
外国人雇用の助成金を有効活用
外国人雇用に関する支援制度は、助成金から補助金まで多岐にわたります。企業の状況に応じて制度を組み合わせ、採用から定着までの一連の流れをスムーズに進めましょう。
また、福利厚生の充実も重要な施策の一つです。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のような食事補助は、国籍を問わず全従業員が平等に利用でき、かつ企業の運用負担も少ない福利厚生であると注目されています。ぜひ「チケットレストラン」の導入を検討してみませんか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
新キャンペーンのお知らせ:従業員の生活支援に!「第3の賃上げ」導入応援キャンペーン開始 ~食事補助サービス「チケットレストラン」で“手取りアップ”を実現~
当サイトにおけるニュース、データ及びその他の情報などのコンテンツは一般的な情報提供を目的にしており、特定のお客様のニーズへの対応もしくは特定のサービスの優遇的な措置を保証するものではありません。当コンテンツは信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性、適時性、適切性または完全性を表明または保証するものではなく、お客様による当サイトのコンテンツの利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。