人材の流動化が進む現在、採用してもすぐに辞められてしまう「転職ミスマッチ」が企業にとって大きな課題となっています。特に中小企業では、一人の離職が組織全体に与える影響も大きいため、定着率向上が急務です。本記事では、転職ミスマッチを未然に防ぐための要因分析から具体的対策、そして福利厚生による離職防止の実践例まで、人事が今できる施策を網羅的に解説します。
なぜ「転職ミスマッチの防止」がいま企業に求められているのか
採用難が続くいま、多くの企業にとって「採った人材がすぐに辞めてしまう」ことが深刻な課題となっています。
特に中小企業では、ひとりの離職が現場の負担増や採用コストのロスにつながり、事業全体に影響を及ぼしかねません。中でも「転職ミスマッチ」による早期退職は、人材の質・量ともに痛手となるリスクです。
転職ミスマッチとは、入社後に「思っていた業務内容や環境と違った」と感じることで生じるギャップで、採用段階はもちろんのこと、入社後のフォロー次第でも生まれる可能性があるものです。
働き方の多様化が進むいま、企業側は定着まで含めて戦略的に採用を考える必要があります。「辞められること」へ場当たり的に対処するのではなく、「辞めたくなる要因を排除する」視点が重要です。
転職ミスマッチはなぜ起きる?5つの要素
転職ミスマッチは、さまざまな要素で引き起こされるものです。ここでは、株式会社ジェイ エイ シー リクルートメントが運営する「JACリサーチ」の調査結果を参考に、企業が押さえるべきミスマッチの5大要因を解説します。
業務内容・スキル
転職後の早期離職の理由として、よく挙がるのが「実際の業務が想定と違った」という不一致です。
求人票や面接時の説明では裁量のある仕事や幅広い経験ができると期待していたのに、実際にはルーチンワークや補助業務が中心だった、というケースは少なくありません。また、スキル要件の曖昧さや、過度な期待もギャップの原因になります。
特に中途採用では、前職との比較から不満を持ちやすく、スキルと業務のバランスに対する認識のズレが生じがちです。こうしたギャップが本人のモチベーションを削ぎ、早期離職につながります。
業務内容と求められるスキルレベルは、そもそも労使間でズレが生まれやすいという認識が必要です。
待遇
給与体系、昇給制度、福利厚生などの待遇面における期待と現実のズレも、転職ミスマッチの重要な要因です。
基本給の内訳や賞与の算定方法、昇給のタイミングや基準などが曖昧なまま入社すると、後々の不満につながりやすくなります。特に福利厚生については、近年の転職理由において重視度が高まっており、JACリサーチの調査でも、「転職の際に重視すること」の5位に「福利厚生の充実」がランクインしました。
特に女性従業員は、男性より10ポイント以上高い重視度を示しており、多様な働き方やライフステージに対応した制度設計が求められていることがわかります。
待遇に対する期待値と実態のズレは、認知されたとしてもすぐに改善できるものではありません。誤解を招かないための事前の対策が求められます。
人間関係
職場の人間関係は、転職後の満足度を大きく左右する要素でありながら、事前の把握が困難な要素のひとつです。
JACリサーチの調査では「転職の情報を集める際に困ったこと」として、80.6%の人が「職場の人間関係がブラックかどうかが見えづらい」と回答しました。この結果からも、圧倒的に多くの転職者が情報不足を感じていることがわかります。
上司との相性、同僚との協働関係、チーム内のコミュニケーションスタイルなどは、実際に働き始めてからでないとわからない部分が多く、ミスマッチが発生しやすい要因のひとつです。
また、同調査では、転職後に「聞いていた条件より悪い」と感じる項目として「上司・同僚の関係性」が10.7%の人に挙げられており、人間関係の問題が早期退職につながるリスクの高さを示しています。
キャリアパス
将来的な成長機会や昇進の見通しや、スキルアップ支援体制など、キャリアパスに関する情報不足も転職ミスマッチの重要な要因です。
特に若手従業員はキャリア形成への関心が高く、中長期的な成長イメージが描けない場合の離職リスクが高まります。昇進・昇格の基準が不明確であったり、社内での異動可能性や新たな職務へのチャレンジ機会が見えず、将来への不安を払拭できなかったりといった理由で、転職を検討するケースも珍しくありません。
なお、キャリアに対する価値観は多様化しており、画一的な昇進ルートではモチベーションにつながらない場合もあります。キャリアパスの「見える化」と、個々の従業員の希望に応じた成長支援の仕組みづくりが、長期的な人材定着において不可欠です。
社風
企業文化や価値観、働き方に関する認識のズレは、日々の業務遂行における満足度に大きく影響します。
JACリサーチの調査では「転職の情報を集める際に困ったこと」として、78.5%もの人が「社風やカルチャーが自分に合うか判断しにくい」と回答し、多くの転職者が企業文化の事前把握に困難を感じている実態が明らかになりました。
意思決定プロセス・会議の進め方・業務の優先順位の付け方・チームワークの重視度など、組織運営の根幹に関わる部分での認識ギャップは、入社後の適応度を大きく左右します。
また、転職後のミスマッチ要因として「会社の雰囲気・社風」がもっとも多い12.0%を占めていることからも、社風のミスマッチが内在するリスクの高さがわかります。
人事の認識と実際の転職防止効果のギャップ
人事担当者が考える効果的な転職防止策と、実際に離職を防げた施策には大きなギャップが存在します。詳しく見ていきましょう。
人事が重視する転職防止策の傾向

JACリサーチによると、人事担当者が従業員の転職防止に良いと考える施策の上位は、「昇給・ボーナスの制度を透明にする」(81.5%)、「業界水準に合った給与を支払えるように調整する」(80.5%)、「業務の見直し、効率化、自動化を推進し、労働時間を適正化する」「定期的に面談等を実施し、社員の悩みをキャッチアップする」(同率79.0%)となっています。
この結果から、人事担当者は給与制度の整備や業務効率化など、制度面での改善を重視する傾向が強いことがわかります。
特に昇給・ボーナス関連の施策が最上位に位置していることは、人事担当者が、金銭的な報酬による動機づけを転職防止の主要手段と捉えていることを意味するものです。
では、これらの施策は実際に効果があったのでしょうか。
実際に効果があった転職防止策

従業員の転職引き留めに成功した経験を持つ人事担当者に聞いた「引き留めに役立ったこと」では、「人間関係やキャリアプランに対応するための部署異動、配置転換を促す」(83.1%)、「定期的に面談等を実施し、社員の悩みをキャッチアップする」(80.8%)、「マネージャー層の教育を強化し、部下との関係構築を促す」(80.0%)が上位を占めました。
ここで注目したいのが、人事が重視していた「昇給・ボーナスの制度透明化」や「給与調整」といった金銭面の施策ではなく、人間関係の改善やキャリア支援に関する施策が実際の成功要因となっていることです。
この結果は、従業員の転職動機が単純な待遇面の不満だけではなく、職場での人間関係や将来への不安に深く根ざしていることを示しています。
「転職しなくてよかった」と思わせる企業の特徴
優秀な人材が多く集まり、定着する企業には、転職を思いとどまるだけの魅力があります。ここでは「転職しなくてよかった」と思わせる企業に共通して見られる特徴を紹介します。
参考:JAC Research(ジェイ エイ シー リサーチ)|人事担当者が従業員の転職防止に役立ったこと「人間関係やキャリアプランへの対応」が約8割|調査レポート
「昇給」よりも「福利厚生」
JACリサーチの調査によれば「転職しなくて良かったと思うこと」の第1位は「給料など福利厚生が改善された」(15.2%)でした。
特に注目したいのが、福利厚生の重視傾向が性別によって差があること、また、女性の方が男性よりも10ポイント以上高い割合で「福利厚生の充実」を転職時に重視している点です。
これは、家庭や生活に直結する支援を重視する層にとって、制度の整備が転職防止に直結することを示しています。
例えば、食事補助や育児支援など、実生活に根ざした制度は「今の職場のほうが安心できる」と感じさせやすく、転職意欲を下げる効果があります。中小企業でも導入しやすい制度を活用することで、他社との差別化を図ることも可能です。
関連記事:食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ
柔軟な働き方
コロナ禍を経て、柔軟な働き方へのニーズは確実に高まりました。転職をしなくて良かったと思う理由として、「リモートワークが可能になった」「フレックスタイムが使えるようになった」など、柔軟性のある勤務体系を挙げる声も少なくありません。
特に育児や介護など、私生活との両立が求められる層にとっては、時間や場所に縛られない働き方こそが継続勤務の前提条件です。また、働き方に裁量があることは「信頼されている」「自己管理ができる」といった内的報酬にもつながり、エンゲージメントの向上にも寄与します。
今後は、制度の有無だけでなく、運用の柔軟性や上司の理解も含めた「職場文化としての柔軟性」が重要になることが予想されます。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上に役立つ施策や取り組むメリット
「他社より良い」制度
離職を思いとどまる社員の心理には、「転職先よりも現職の方が条件が良いかもしれない」という比較が大きく影響します。福利厚生や働き方、評価制度、職場環境などの面で「他社よりも魅力的」と感じられるポイントがあれば、転職意欲は自然と弱まるからです。
実際に、愛知県名古屋市に本社を構える住宅・不動産企業の「株式会社sumarch」では「チケットレストラン」をはじめとする充実した福利厚生サービスを整備した結果、転職を検討していた従業員が「自社以上に好待遇な会社がなかった」と考え直す結果につながった事例があります。
▼株式会社sumarchの詳細な導入事例は「こちら」
NHK東海エリアニュースにて#第3の賃上げ 愛知アクション発表会とエデンレッドジャパンが紹介されました
なお、制度が存在していても、内容が不明確だったり、使い勝手が悪かったりすれば、優位性を十分に生かすことはできません。
従業員が「意外とウチの会社の方が良かった」と実感できるようにするためにも、制度内容を見える化し、定期的に情報発信することが求められます。
転職ミスマッチを未然に防ぐ!人事ができる4つの対策
転職ミスマッチは、採用時の工夫だけでは防ぎきれません。入社後のサポート体制や制度設計、コミュニケーションの質によっても、離職のリスクは大きく変わります。ここでは、人事が主導して実践できる具体的な対策を4つ紹介します。
1on1面談で不安や不満を早期に拾う
定期的な1on1面談は、従業員の転職意向やミスマッチ感を早期に察知する効果的な手段です。
上司と部下、または人事担当者と従業員が定期的に個別の対話時間を設けることで、日常業務では表面化しにくい課題や不安を把握できます。
面談では、現在の業務内容への満足度・キャリア目標の達成状況・職場環境への要望などを体系的にヒアリングし、必要に応じて配置転換や業務調整などの具体的な改善策を講じます。
また、面談記録を蓄積することで、従業員の成長過程や関心の変化を追跡し、個別最適化されたキャリア支援を提供することも可能です。面談の頻度は月1回程度が理想的ですが、新しい従業員や中途採用者については、入社後3カ月間は週1回程度の高頻度で実施することで、離職リスクを軽減できます。
キャリアパス・成長機会の「見える化」
従業員のキャリアの不安を解消するためには、社内でのキャリア形成の道筋を明確に示すことが不可欠です。
職種別・等級別のキャリアロードマップを作成し、昇進・昇格の要件や期待される成果を具体的に示すことで、従業員は中長期的な目標設定が可能になります。また、先輩従業員のキャリア事例を社内で共有し、多様なキャリアパスの選択肢があることを明示するのもひとつの方法です。
従業員のキャリア志向は多様化しているため、一律のルートではなく、複線的な選択肢を提示することも求められます。曖昧なキャリア観が離職につながる前に、成長のための明確な「地図」を用意しましょう。
コミュニケーションのサポートで人間関係のストレスを減らす
人間関係のこじれや職場における孤立感は、ミスマッチを感じる最大の要因になり得ます。特に新しく入った従業員の場合、業務面よりも「居場所があるか」が重要になりがちなため、より丁寧なケアや施策が必要です。
人間関係のストレスを減らす環境整備の手段として、管理職を対象としたマネジメント研修も実施しましょう。部下との効果的なコミュニケーション方法や、多様な価値観を持つメンバーとの協働スキルの向上が期待できます。
さらに、メンター制度やバディ制度を活用したり、組織横断的なプロジェクトを割り当てたりなど、自然な形で職場に適応できる仕組みづくりを進めるのも効果的です。
関連記事:【社労士監修】離職防止につながるコミュニケーションのコツと心理的安全性
「働きやすさ」の見直しで日常の満足度を高める
日常業務における小さなストレスの蓄積は、長期的には離職要因となり得ます。離職を防ぐには、働きやすさの継続的な改善が必要です。
具体的な施策としては、次のようなものが挙げられます。
- リモートワークやフレックスタイム制など、柔軟な働き方の導入
- 過度な残業や休日出勤の削減
- 休憩スペースの設置など、オフィス環境の整備
- IT環境の最適化
また、福利厚生を活用し、健康診断やストレスチェックの実施、産業医との面談機会の提供といった健康面でのサポートも重要です。
転職防止の一手「チケットレストラン」
働きやすい職場環境整備の一環として、福利厚生に注目する企業が増えています。中でも効果的なのは、日常的に利用される実用性の高い福利厚生です。食事補助のように日常の支出を補う福利厚生は、従業員自身も福利厚生としてのメリットを実感しやすいため、特に高いアピール効果が期待できます。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食事補助の福利厚生として日本一の実績を持つサービスです。
「チケットレストラン」を導入した企業の従業員は、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できます。コンビニ・ファミレス・カフェなど幅広いジャンルの店舗が加盟しているため、利用者の年代や嗜好も問いません。
一定の条件を満たすことによって所得税の非課税枠の活用が可能で、従業員の実質的な手取りアップにも貢献するほか、企業側の法人税の削減にも寄与します。
このような多彩な魅力が評価され、すでに3,000社を超える企業に導入されています。
「チケットレストラン」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
従業員が「ここで働き続けたい」と思える職場づくりを
転職ミスマッチは、採用段階のすれ違いだけでなく、入社後のフォローや制度設計によっても生まれます。このミスマッチを防ぐには、「期待」と「現実」の差をなくす地道な努力が必要です。
具体的な施策には、キャリアパスの見える化や人間関係のストレスを軽減するコミュニケーションのサポート、働きやすさの整備などがあります。中でも「チケットレストラン」のような日々の生活に直結する制度は、小さな安心と満足を届ける施策として有効です。
転職ミスマッチを感じさせないための施策は、すべての従業員が「ここで働き続けたい」と感じる魅力的な職場づくりにつながります。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
:「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
参考|画像出典:JAC Research(ジェイ エイ シー リサーチ)|人事担当者が従業員の転職防止に役立ったこと「人間関係やキャリアプランへの対応」が約8割|調査レポート
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