中堅企業者とは中小企業者を除く、常時使用する従業員数が2,000人以下の企業や個人のことです。改正産業競争力強化法で定義は法的に定められました。法律で定められた定義を確認した上で、中堅企業者が利用できる支援策について見ていきましょう。
改正された産業競争力強化法とは
産業競争力強化法は、国内の産業競争力を強化するために、2013年に成立した法律です。社会情勢や産業活動の変化に合わせて、3回の改正を行っています。
具体的には、2018年にはIoTやビッグデータ・AIなどの変化への対応を、2021年にはグリーン社会やデジタル化・コロナ禍後の新しい日常への対応を目的とした改正が行われました。
また2024年に行われた改正が、2025年4月から施行されています。具体的には、国内の経済で大きな役割を果たしている中堅企業者への支援策を充実させる内容です。
中堅企業者の法的な定義
中堅企業者はこれまで法的に定義されていませんでした。2024年に改正された産業競争力強化法において以下のように定められています。
この法律において「中堅企業者」とは、常時使用する従業員の数が二千人以下の会社及び個人(中小企業者を除く。)をいう。
併せて改正された産業競争力強化法では、国内経済への高い貢献が期待される中堅企業者を、特に特定中堅企業者と定めています。特定中堅企業者の要件と、一見中堅企業者に見えるみなし大企業についての定義も見ていきましょう。
関連記事:【2025年最新】中堅企業と中小企業の違いとは?定義や政府支援策を解説
特定中堅企業者とは
特定中堅企業者とは、常時使用する従業員数が2,000人以下の中堅企業者の中でも、雇用・成長投資・経営力の面で以下の用件を満たしている企業のことです。
指標 |
用件 |
良質な雇用の創出 |
直近の事業年度で、賃金が業種別平均以上かつ、常時使用する従業員数の年平均成長率が3事業年度前と比べて業種別平均以上であること |
将来の成長性 |
直近3事業年度のうち、いずれかの年が中堅企業者の業種別平均以上の売上高成長投資比率であること |
十分な経営能力 |
さらなる成長に向けた経営ビジョンを策定・提出しており、外部有識者の評価委員会が十分な経営能力を持っているか確認していること |
中堅企業者の中でも、地域の雇用創出を担っており、成長に向けた十分な投資を行い、経営能力もある企業や個人を、特定中堅企業者といいます。
みなし大企業とは
常時使用する従業員数が2,000人以下で、地域の雇用を生み出して、成長投資に取り組んでいる、経営能力のある企業であっても、以下の場合には特定中堅企業者にはあたりません。
- 同一の大企業グループの出資割合が2分の1を超えている企業
- 同一の大企業グループの出資割合は2分の1以下であるが、複数の大企業グループの出資割合が3分の2以上の企業
これらに該当する企業は、みなし大企業として扱われるため、特定中堅企業者が対象となる支援策は受けられません。
大企業や中小企業の定義
2024年に改正された産業競争力強化法では、中小企業者の定義も定めています。法律で紹介されている内容を元に、大企業と中小企業者の定義についても見ていきましょう。
大企業の定義
中堅企業者でも中小企業者でもない企業が大企業です。具体的には、常時雇用する従業員数が2,000人を超えている、中小企業者以外の企業や個人をさします。
参考:経済産業政策局産業創造課|特定中堅企業者の要件及び確認フロー
中小企業者の定義
中小企業者の定義は、業種ごとに以下のように定められています。「資本金の額か出資の総額」もしくは「常時使用する従業員数」のいずれかを満たしていると、中小企業者です。
業種 |
資本金の額か出資の総額 |
常時使用する従業員数 |
|
製造業・建設業・運輸業・その他の業種 |
3億円以下 |
300人以下 |
|
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
|
サービス業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
|
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
|
政令業種 |
ゴム製品製造業 |
3億円以下 |
900人以下 |
ソフトウェア業または情報処理サービス業 |
3億円以下 |
300人以下 |
|
旅館業 |
5,000万円以下 |
200人以下 |
「中堅企業成長ビジョン」で見る中堅企業者への期待
2024年に改正された産業競争力強化法では、中堅企業者の定義を明確にして、中小企業の段階を脱してグローバル企業へと成長していく段階の企業と分類しました。この分類には、成長可能性の高い企業を積極的に支援して、日本経済を成長軌道に乗せる目的があります。
この目的に向けて、中堅企業者には何が求められているのでしょうか。首相官邸が発表した「中堅企業成長ビジョン」を元に紹介します。
国内での投資拡大
過去10年間において、中堅企業者は国内での事業を広げて設備投資を拡大してきました。その規模は大企業よりも大きく、国内経済にプラスに働いています。
中堅企業者には、今後も成長を目指す過程で、設備・研究開発・人材への投資拡大が期待されています。
雇用の拡大
中堅企業者で働く労働者は全体の約11%です。成長を目指して規模を拡大していく中で、新たな雇用の創出が期待されています。
また中堅企業者は平均賃金が上昇しています。物価上昇を上回る賃上げで経済の好循環を実現するには、中堅企業者のさらなる賃上げがポイントとなるでしょう。
中小企業や取引先への波及効果
地域に根ざした経済活動を行う中堅企業者の活動範囲が広がれば、その影響は同じ地域の中小企業や取引先などにも及びます。
自社の成長を目指すことと同時に、スタートアップや大学との連携などへの取り組みも重要です。社内外の人材育成や業界活動のルール策定などを担う存在となることが期待されています。
中堅企業者を対象とした成長支援
国内に約9,000あるといわれている中堅企業者が、日本経済をリードする企業に成長していくよう、政府では支援策を実施しています。ここでは中堅企業者を対象とした代表的な支援策を6つ見ていきましょう。
中堅・中小成長投資補助金
中堅・中小成長投資補助金では、投資額が10億円以上の対象となる取り組みにおいて、補助率3分の1を上限に最大50億円の補助金を受け取れます。
例えば工場や販売拠点の新設、業務効率化につながる最先端の機械の導入、ソフトウェアの購入などができる補助金です。また以下の経費が対象となります。
- 建物費 ※単価100万円以上
- 機械装置費 ※単価100万円以上
- ソフトウェア費 ※単価100万円以上
- 外注費
- 専門家経費 ※上限は1日5万円
また補助金を受け取るには、補助事業が完了した日を含む基準年度の、補助事業に関わる従業員や役員の給与支給総額と比較した、基準年度の3事業年度後の給与支給総額の年平均上昇率が、全国の直近3年間の最低賃金の年平均上昇率4.5%以上でなければいけません。
この賃上げ要件を満たすために、4.5%以上の賃上げ目標を策定して、補助金の交付決定前に賃上げの表明と目標の対外公表を行い、計画に合わせた賃上げを実施します。
参考:
経済産業省|中堅・中小成長投資補助金
中堅・中小成長投資補助金事務局|中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金説明会
関連記事:【社労士監修】2025年版|スタートアップが活用したい助成金・補助金完全ガイド
※補助金の支給対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください。
地域未来投資促進税制
地域未来投資促進税制とは、建物や機械などの設備投資を行うと取得価額の合計額のうち80億円を上限に支援を受けられる制度です。最大50%の法人税等の特別償却か、当該事業年度の法人税額等の20%相当を上限に最大6%の税額控除を受けられます。
制度の対象となるには、地域経済牽引事業計画を策定した上で、都道府県知事に提出して承認を受けなければいけません。さらに国から課税特例の確認を受ける必要もあります。
関連記事:【税理士監修】地域未来投資促進税制とは?制度の概要やメリットを分かりやすく解説
※税制対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください。
賃上げ促進税制 中堅企業向け
賃上げ促進税制はこれまで、大企業向け・中小企業向けの2種類のみでしたが、2024年の税制改正で中堅企業向けが新設されました。青色申告を行っている中堅企業者が対象です。前年度と比べて以下のように賃上げを行うと、税額控除を受けられます。
継続雇用者の給与等支給額の前年度比 |
税額控除率 |
+3% |
10% |
+4% |
25% |
前年度比10%の賃上げであれば税額控除率が5%上乗せされます。さらにプラチナくるみんかえるぼし三段階目以上であれば、税額控除率が5%上乗せされる仕組みです。最大で35%の税額控除を受けられます。
関連記事:【税理士監修】大企業向け賃上げ促進税制が強化!新しい賃上げ促進税制を経済産業省の資料で確認
※税制の対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください。
中堅・中核企業支援プラットフォーム
中堅・中核企業支援プラットフォーム事業では、中堅企業者の成長支援を目的として、地域・テーマごとのプラットフォームを立ち上げています。
例えば「医療・福祉・健康 新事業支援プラットフォーム」では、新たな事業展開に関するセミナーを実施したり、新事業計画の策定を専門家がサポートしたり、協業先や販路開拓のマッチングを行ったりしています。
※事業の対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください。
中堅・中小グループ化税制
中堅・中小グループ化税制は、今後の成長が期待できる中堅企業者を対象に、グループ化をサポートする制度です。中堅企業者は過去5年間にM&Aを実施しており、産業競争力強化法において新設された特別事業再編計画の認定を受けている場合に対象となります。
対象の中堅企業者が、株式取得によってM&Aを実施するときに、認定後1回目は株式取得価額の90%、2回目以降は100%の金額を準備金として積み立てると、その事業年度に準備金の金額を課税所得から損金算入可能です。
参考:中小企業庁|中小企業事業再編投資損失準備金(中堅・中小グループ化税制)
※税制の対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください。
地域企業経営人材マッチング促進事業
地域企業経営人材マッチング促進事業は、大企業から中堅企業者への人材の流れを作り出し、中堅企業者の成長に必要な人材確保を目的としています。レビキャリを運営するREVICが実施している、金融庁・経済産業省の補助事業です。
中堅企業者が必要とする人材を紹介するだけでなく、その後のフォローアップまで受けられます。レビキャリを通して人材を獲得すると、最大450万円の給付金を受給可能です。この給付金は、賃上げ・福利厚生の拡充・採用にかかる諸費用に利用できます。
参考:レビキャリ|地域企業経営人材マッチング促進事業について
関連記事:【社労士監修】地域企業経営人材確保支援事業給付金とは?活用事例も
※制度の対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください。
中堅企業者の人材確保に役立つ福利厚生
中堅企業者が成長を目指すときには人材確保が欠かせません。政府による支援が拡充されていますが、業種を問わず人手不足が進行している中、人材確保が計画通りに進むとは限りません。
人材確保に課題を感じている企業に役立つのが福利厚生です。福利厚生が人材確保につながった事例とともに、おすすめの福利厚生として食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を紹介します。
福利厚生を重視する求職者は多い
マイナビキャリアリサーチLabの「2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就職活動・進路決定>」によると、就活生が企業を選ぶときに重視するポイントは、2026年卒では「福利厚生が充実している」が37.5%でした。これは「給与や賞与が高い」の39.2%に次ぐ割合です。
このことから、福利厚生の充実度を重視する求職者は多いと分かります。
参考:マイナビキャリアサーチLab|2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就職活動・進路決定>
福利厚生で人材確保に成功した企業の事例
福利厚生の充実度を高めることで、実際に人材確保につながった事例を見ていきましょう。紹介するのは、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入した企業の事例です。
鍼灸接骨院やトレーニングジムなどを展開している「株式会社ほねごり」では、人材確保施策として「チケットレストラン」を導入しました。採用活動で食事補助についてアピールしたり、そのほか積極的な採用強化施策を講じた結果、2024年と比べて2025年の新卒採用者数が2倍になったそうです。
不動産流通やリノベーションなどを手掛ける「株式会社sumarch」は、従業員が日常的に使える福利厚生を探していたことから「チケットレストラン」を導入しました。
待遇を充実させた結果、転職活動で他社の待遇を知り「今以上に好待遇な会社がなかったから」と、退職を考え直したケースがあったそうです。
詳細な導入事例はこちら:
株式会社ほねごり
株式会社sumarch
「チケットレストラン」は従業員の手取りアップにも有効
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、一定の利用条件下であれば所得税の非課税枠運用が可能になるため、従業員の実質的な手取りアップにつながります。
家計の負担軽減や、実質手取りを増やすことができる福利厚生を活用した実質的な”賃上げ”のことを、エデンレッドジャパンでは「第3の賃上げ」と定義しました。実質的な手取りアップの仕組みや、「第3の賃上げ」については、こちらの「資料請求」からお問い合わせください。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
中堅企業者の定義を知り支援策を活用しよう
国内経済の成長につなげる目的で、政府は中堅企業者の支援策を拡充しています。今後の拡大を目指す中堅企業者は、補助金や減税制度を活用しながら事業に取り組むとよいでしょう。
ただし国内は業種を問わず人手不足が進行しているため、支援策を活用しても人材確保の課題を解決できないかもしれません。このようなときには、求職者の多くが重視している、福利厚生の拡充に取り組むとよいでしょう。
従業員の実質的な手取りアップにつながる食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、導入により人材確保に成功した企業の事例もあります。中堅企業者のさらなる成長に向けて、まずは「チケットレストラン」を活用した人材確保に取り組んでみませんか。
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