人材確保が難しい現代において、若手社員の早期離職は企業に多大なコストと悪影響をもたらします。一方で、若手社員の3人に1人が3年以内に離職するいま、効果的な離職防止策を打ち出せずに頭を悩ませる企業は少なくありません。そこで本記事では「なぜ若手社員は辞めるのか?」を最新の調査データから分析し、Z世代ならではの価値観も踏まえた効果的な離職防止策を紹介します。待遇・人間関係・成長機会の提供など、すぐに実践できる5つの即効施策で、若手社員の定着率を高めましょう。
あなたの会社は大丈夫?若手社員の離職リスクをチェック!
若手社員の離職防止へ取り組むに当たっては、まず自社の離職リスクを知っておくことが大切です。
まずは、以下のチェックリストで、あなたの会社の若手社員離職リスクを診断してみましょう。
【自社の若手社員離職リスク|チェックリスト】 【診断結果】 |
このチェックリストはあくまでも参考ですが、若手社員の離職リスクを知るのに役立ちます。該当項目が多い場合は、本記事で紹介する対策を参考に、具体的な改善策を検討しましょう。
なぜ若手社員は辞めるのか?データから読み解く本当の離職理由
厚生労働省の調査によると、大学卒の新卒者のうち、3年以内に離職する割合は34.9%にのぼります。実に3人に1人以上が早期に職場を去る計算です。この事実は、採用コストや教育投資の損失だけでなく、企業の持続的成長にも影響を与えています。では、なぜ若手社員は離職を選ぶのでしょうか?複数の調査をベースに、Z世代の特徴や価値観も踏まえ、その本当の理由を探ります。
待遇や労働時間に不満があるから
給与水準や休暇制度の未整備、働き方の柔軟性の欠如は、若手社員が離職を決断する大きな要因と考えられています。
厚労省の調査データから見える若手の不満
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果」によると、20〜24歳が離職した個人的理由として、もっとも割合が高いのは、男女ともに「労働時間・休日等の労働条件が悪かった」でした(その他の個人的理由を除く)。女性の20代で15.6〜18.4%にのぼります。男性でも10.6〜11.4%と高い数値を示しています。
また「給料等収入が少なかった」も、男性20代で10.5〜11.7%・女性20代で7.2〜9.1%と無視できない割合です。これらのデータは、若手社員がプライベートとの両立や経済的安定を重視して職場選びをしていることを示しています。
特に注目すべきは、これらの理由がいずれも勤務条件という「制度や環境」に関するものであり、企業の取り組み次第で改善可能な点だという点です。
関連記事:若手社員の離職率は約3割。離職理由から見る離職防止策を解説
HR総研の調査にみる「待遇」離職の企業規模差
HR総研の「若手社員の離職防止とオンボーディングに関するアンケート」では、企業規模によって若手社員の離職理由に興味深い差が見られます。
特に中堅企業(従業員数301〜1,000人)では、離職理由として「待遇」を挙げる企業が49%と約半数に達しています。これは大企業や中小企業と比較しても高い割合です。さらに中堅企業では「業務量の多さ」(29%)、「転職市場の情報の多さ」(22%)も他の企業規模より高くなっています。
このデータからは、転職サイトやSNSなどを通じて他社の待遇情報を容易に入手できる現代において、若手社員が「より良い条件で働ける可能性」を求めて離職を選ぶケースが増えていることがわかります。
特に中堅企業では、大企業の福利厚生や中小企業の機動力といった強みを十分に生かしきれておらず、若手社員の離職願望を高めている可能性について考える必要がありそうです。
上司との関係や人間関係が悪いから
職場での人間関係、特に上司との関係性は、若手社員の離職決断に大きな影響を与えます。
若手が感じる「心理的安全性」の欠如
パーソル総合研究所の「若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」によると、20代の正規雇用者の5人に1人が過去3年以内にメンタルヘルスの不調を経験しています。
同調査からは、メンタルヘルス不調を「職場内で相談・報告」したのは2人に1人程度であること、また、相談しなかった20代の退職率は35.2%にのぼり、ほかの年代に比べて高いことも明らかになりました。
メンタル不調を抱えていても職場内で相談や報告ができなかった背景には、上司や先輩との信頼関係が十分に築かれていない職場環境があることがうかがえます。
この結果からは、困難に直面した際に上司や先輩へ気軽に相談できる「心理的安全性」の確保が、若手社員の離職防止において重要であることがわかります。
参考:パーソル総合研究所|若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査
アデコの調査でわかった「辞めなかった理由」としての人間関係
職場の人間関係は「辞める理由」にも「辞めない理由」にもなり得るという点も重要です。アデコの「新卒入社後3年以内に離職しなかった若手社員を対象にした調査」では、離職を考えつつも残ることを選んだ理由として「同期や同僚との関係が良いから」(23.8%)、「上司との関係が良いから」(21.6%)が上位に挙がっています。
この結果は、良好な人間関係が若手社員の継続的な勤務を後押しする大きな力となることを示しています。信頼関係や安心感のある環境づくりが、離職防止に直結するといえるでしょう。
また、同調査では「人間関係の悪化」を将来的な離職検討理由に挙げた割合も36.3%と高く、人間関係が離職を防止する鍵となることがデータからも裏付けられています。
人間関係に対する不安や不満が離職のトリガーとなるケースが多い一方で、良好な関係性は若手社員の定着を促進する強力な要素になることがわかります。
参考:アデコ株式会社|新卒入社後3年以内に離職しなかった若手社員を対象にした調査
仕事に「納得感」や「やりがい」を持てないから
Z世代を中心とする若手社員にとって、仕事における「納得感」や「やりがい」は、就業継続の重要な判断基準となっています。詳しく見ていきましょう。
アデコ調査に見る「仕事を任された」「希望の仕事ができる」効果
アデコの調査によれば、離職を考えながらも現在の勤務先で働き続けている理由として、「仕事を任されたから」(13.0%)・「希望する仕事ができるから」(12.6%)という回答が一定数を占めています。
この結果から明らかになったのは、若手社員が仕事に対して「働きがい」や「自己実現」を求めている事実です。Z世代は「目的志向」が強く、単なる給与や地位よりも「意味のある仕事」を重視する傾向があります。抽象的な企業ビジョンよりも、自分自身の成長や社会貢献実感など、具体的な自己実現の感覚が重要です。
また、担当業務への納得感や適性は、若手社員のモチベーションを左右する重要な要素です。「自分の意思が反映された仕事」「裁量権のある業務」を任せられることで、職場への愛着や帰属意識が高まり、結果として離職防止につながります。
関連記事:若手社員の離職防止に必要な取り組みは?新卒の離職率もチェック
若手社員の定着に効く5つの即効施策
若手社員の離職理由を理解したところで、具体的にどのような対策が有効なのでしょうか。ここでは、データに基づいた「今すぐ実行できる効果的な施策」を5つ紹介します。離職防止と定着率向上に向けて、自社の状況に合わせて取り入れてみてください。
1. オンボーディング施策で職場への適応をサポートする
入社直後の「職場への適応」をスムーズにするオンボーディング施策は、若手社員の早期離職防止に大きな効果があります。
HR総研の「若手社員の離職防止とオンボーディングに関するアンケート」によると、離職率低下につながるオンボーディング施策には、「採用段階における入社後ミスマッチ防止」「メンター・バディ制度の導入」「段階的な業務タスクの割り当て」「上司との定期的なフィードバック面談」などが挙げられています。
効果的なオンボーディングでは、明確な育成フローやフィードバック制度を整備し、安心して相談できる環境をつくることが重要です。入社初期のサポートを、単なる業務研修ではなく「職場に慣れ、自分の居場所を築くプロセス」として設計することで、若手社員の定着率が向上します。
2. メンタルヘルスと心理的安全性を支える仕組みづくり
若手社員の早期離職防止には、心理的安全性の確保や、気軽に相談できる雰囲気づくりが欠かせません。具体的には、以下のような施策が効果的です。
- 相談窓口の設置と周知:社内外に相談窓口を設け、利用方法や匿名性の確保について丁寧に説明する
- 管理職の意識改革:上司のコミュニケーションスタイルが若手の相談しやすさに直結することを踏まえ、管理職向けの研修を実施する
- ストレスチェックの活用:定期的なストレスチェックを実施し、組織分析と個人支援の両面から対策を講じる
- メンター制度の導入:直属の上司以外に相談できる先輩従業員をメンターとして配置する
また「職場に相談しても解決につながらないと思った」という理由で相談を躊躇する若手社員の心理に配慮し、相談後の具体的な対応プロセスを明確にしておくことも重要です。早期発見・早期対応の仕組みづくりが、メンタル不調による離職を防ぐ鍵となります。
3. 柔軟な働き方と休暇制度で「私生活との両立」を支援
プライベートと仕事のバランスがとれる職場環境は、若手定着の重要な要素です。具体的な取り組みとしては以下が挙げられます。
- 有給休暇取得促進:取得率の数値目標設定や、休暇取得計画の作成を支援する
- 柔軟な働き方の導入:フレックスタイム制・時短勤務・リモートワークなど多様な働き方の選択肢を提供する
- 育児・介護との両立支援:法定を上回る育児・介護休暇制度や、時短勤務など、両立支援策を充実させる
- 業務効率化への取り組み:長時間労働の是正に向けた業務効率化や、デジタルツールの活用を進める
若手社員であっても、その多くは将来のライフイベントを見据えた職場選びをしています。育児や介護との両立がしやすい企業文化や制度があることは、未来への安心感につながり、離職を防ぐ効果があります。
なお、有給休暇や各種制度は、ただ「ある」だけでなく「実際に利用できる雰囲気があるか」も重要です。制度の整備と同時に、上司や先輩が率先して休暇を取得するなど、制度を活用しやすい職場風土づくりが欠かせません。
4. スキルアップ支援とキャリア面談で未来を見せる
「成長できる見通しが持てない」「キャリアが描けない」ことも、若手社員の離職理由として多く挙げられている項目です。
アデコの調査では、将来的な離職検討理由として「社内でのキャリアアップの限界」(22.2%)・「昇進・昇格の硬直化」(21.3%)が一定の割合を占めています。
若手社員の定着を図るためには、以下のようなキャリア支援策が効果的です。
- 定期的なキャリア面談:年に1〜2回、今後のキャリアプランについて上司や人事と話し合う機会を設ける
- 計画的なジョブローテーション:さまざまな業務を経験できる人材育成プログラムを整備する
- 社内公募制度の導入:自分の希望や適性に合った部署にチャレンジできる仕組みを用意する
- 外部研修・資格取得支援:業務に役立つ資格取得や外部セミナー参加への補助制度を導入する
若手社員にとって「見えないキャリアパス」は大きな不安要素です。入社数年目の若手社員に対しては「〇年後にはこのようなポジションを目指せる」「このようなスキルを身につけられる」といった、具体的な将来像を示すことが大切です。
5. 実感できる福利厚生で「待遇への納得感」をつくる
若手社員の離職防止には「実感できる福利厚生」の整備も効果的です。アデコの調査では「福利厚生・手当が充実しているから」(20.0%)が、退職を思い留まる理由として上位に挙がっています。
特に若手社員の場合、給与水準が比較的低い傾向にあるために、実質的な手取り額の増加に直結する福利厚生の価値が大きくなりがちです。効果的な福利厚生の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 住宅補助・家賃補助:住居費負担を軽減する制度
- 通勤手当:通勤費負担を軽減する制度
- 家事代行支援:家事代行サービスの利用費を補助する制度
- 食事補助:昼食費など、勤務中の食費を補助する制度
「チケットレストラン」で叶える「第3の賃上げ」
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、一定の条件下において、所得税の非課税枠を活用しながら全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できる、食の福利厚生サービスです。加盟店の種類は、有名ファミレスやカフェ・コンビニなど多種多様で、勤務時間内にとる飲食物の購入であれば、時間や場所の制限もありません。
愛知県で地域密着型の住まいに関するサービスを展開する「株式会社sumarch(以下:sumarch)」では「チケットレストラン」の導入後「自社より好待遇の企業がなかった」と転職を考え直した従業員も出たそうです。
また、同社の鳥居社長は「福利厚生欄の厚みは、企業が従業員のことを見ているというメッセージになっている」と採用面でのメリットも強調しています。
給与が比較的低い若手社員にとって、毎日の食費は大きな生活コストです。食事補助は、実質的な手取り増加につながる、アピール度の強い福利厚生といえます。
詳細な導入事例はこちら:株式会社sumarch
関連記事:名古屋テレビ「ドデスカ+」で「チケットレストラン」が紹介されました!
離職のサインを見逃さず、定着率の高い職場へ
若手社員の離職防止は、長期的な人材戦略において極めて重要なテーマです。「3人に1人が3年以内に離職する」という現実を改善するためにも、まずは離職理由を正確に把握し、それを踏まえた効果的な対策を検討・実施しましょう。
本記事では、具体的な施策として以下の5つを紹介しました。
- オンボーディング施策で職場への適応をサポートする
- メンタルヘルスと心理的安全性を支える仕組みをつくる
- 柔軟な働き方と休暇制度で「私生活との両立」を支援する
- スキルアップ支援とキャリア面談で未来を見せる
- 実感できる福利厚生で「待遇への納得感」をつくる
重要なのは、これらの施策を単発的なものではなく、総合的に実施することです。
本記事で紹介した施策を参考に、若手社員が生き生きと働ける職場環境の整備に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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