十分な仕事や資金があったとしても、従業員がいなければ商品やサービスを提供できません。例えば人材不足による「建設業での施工断念」や「物流業での配送停止」など、黒字であっても事業を継続できなくなり、倒産に至るケースもあります。
国内では少子高齢化が進行しており、15〜64歳の生産年齢人口は減少し続けています。また、新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着いた2022年後半ごろから経済活動が回復し、労働市場が求職者優位の売り手市場に転じた背景も無視できません。
これにより、好条件の職場を求めて転職する動きが活発になり、待遇面で大企業に劣る中小企業ほど人材が流出しやすくなりました。競争力の低い企業に人材が集まりにくくなる一方、人材定着のために資金力を超えた賃上げを行い、結果として経営が悪化するケースも増えています。
帝国データバンクの調査では、後継者難による人手不足倒産も集計対象に含まれており、中小企業における経営継承の難しさを示しています。後継者がおらず倒産を避けられない場合は、事業や企業の売却(M&A)を検討することも選択肢のひとつです。
現在の人材市場は求職者の売り手市場であり、給与や福利厚生の充実度が競合他社より低い企業は応募者を集めにくい状況が続いています。採用できなければ既存の従業員への負担が増し、さらなる退職を招くという悪循環に陥るリスクもあります。
特に、代わりの人材がいないポジションのキーマンが退職すると事業全体に影響が及びます。近年深刻化しているのが、1人の退職で残った従業員の負担が増大し、それがさらなる退職を呼ぶ「連鎖退職」のパターンです。帝国データバンクの調査では、2025年度の従業員退職型は118件と、初めて100件を超えました。
賃上げの動きが広がるなか、大企業の賃上げペースに追随できない中小企業を中心に、今後も高水準で発生し続けることが懸念されています。給与以外の福利厚生の充実など、コストを抑えながら従業員の実質賃金を増やす取り組みも進んでいます。
株式会社帝国データバンク(TDB)と、株式会社東京商工リサーチ(TSR)は、人手不足倒産の動向を毎年独自に調査・公表しています。両社の調査をもとに、推移・業種・要因・規模の4つの切り口から最新の実態を整理します。
人手不足倒産の件数推移
帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査(2025年度)」によると、2025年度の人手不足倒産は441件となり、前年度(350件)から約1.3倍に増加しました。年度ベースで初めて400件を超え、3年連続で過去最多の更新です。なお同調査は「後継者不足」「求人難」「従業員退職」「人件費高騰」の4要因を集計対象としています。
| 年度 |
人手不足倒産件数 |
| 2016年度 |
79件 |
| 2017年度 |
108件 |
| 2018年度 |
175件 |
| 2019年度 |
199件 |
| 2020年度 |
130件 |
| 2021年度 |
118件 |
| 2022年度 |
146件 |
| 2023年度 |
313件 |
| 2024年度 |
350件 |
| 2025年度 |
441件(過去最多) |
コロナ禍の2020〜2021年度にいったん落ち着いた件数は、2023年度から急増に転じています。
この背景には、少子高齢化による構造的な労働力不足に加え、賃上げ圧力で資金繰りが悪化する企業の増加があります。高水準の状態は、今後も続く見込みです。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|人手不足倒産の動向調査(2025年度)|(2026年4月9日)
業種別の傾向|建設・運送に加え、飲食・介護でも急増
同調査の業種別では、建設業が112件で全体の25.4%を占めトップとなりました。道路貨物運送業も55件と高水準が続きます。
2024年4月から時間外労働の上限規制が適用された両業種では、長時間労働で補ってきた人手不足がより深刻な形で表面化しています。
注目すべきは、労働集約型業種全体への広がりです。老人福祉事業(22件)・飲食店(21件)・労働者派遣業(12件)は、それぞれ業種別で過去最多を更新しました。こうした業種では価格転嫁が遅れやすく、賃上げの原資を確保しにくい構造的な問題を抱えています。
人手不足倒産はもはや建設・物流のような一部の業種だけの問題ではなくなっているのです。
要因別の内訳|「人件費高騰」が前年度比約1.7倍に
東京商工リサーチは、後継者不足を除く3要因(求人難・従業員退職・人件費高騰)を集計対象とし、2025年度の人手不足倒産を442件と発表しています。
もっとも急増しているのが「人件費高騰」で、195件(前年度比77.2%増)と前年度の約1.7倍に膨らみました。賃上げの流れが中小企業にも及ぶなか、コスト増に収益が追いつかず経営破綻するケースが増えています。
「従業員退職」による倒産も108件(同40.2%増)と大幅に増加しています。1人の退職が業務負担の増大を招き、さらなる退職を呼ぶ「連鎖退職」が中小企業で深刻化しているためです。
「求人難」を含む3要因すべてが前年度を上回っており、人手不足倒産の多様化・複合化が進んでいます。
参考:東京商工リサーチ|2025年度の「人手不足」倒産 過去最多の442件 人件費高騰が1.7倍増、労働集約型で深刻さを増す|TSRデータインサイト
中小・小規模企業が約8割を占める
帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査(2025年)」によると、従業員10人未満の小規模企業が329件と人手不足倒産件数全体の77.0%を占めています。これは、従業員が少ない企業ほど1人の退職が事業全体に及ぼす影響が大きく、人手不足倒産のリスクも高まることによるものです。
採用難・賃上げ難・退職リスクという3つの課題が重なりやすい中小・小規模企業こそ、人材確保と定着への取り組みを経営の最優先課題として位置づける必要があるのです。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|人手不足倒産の動向調査(2025年)|(2026年1月8日)
人手不足倒産を防ぐ6つの対策
人手不足倒産を回避するには、採用・定着・効率化・待遇改善を組み合わせた多角的なアプローチが必要です。ここでは、中小企業でも取り組みやすい具体的な施策を6つの切り口から解説します。
採用方法を見直して応募を増やす
人手不足倒産が懸念されるような状況では、求人を出しても応募が集まりにくくなっています。まずは掲載先を見直し、自社に興味を持ちそうな人材が利用している求人サイトやSNS、自社採用ページなど、複数の経路から接点を増やすことが有効です。
あわせて、求人内容そのものも見直しましょう。魅力だけを打ち出した求人は入社後のギャップを生み、早期離職につながりがちです。仕事のやりがいだけでなく、大変な点や職場の雰囲気についても正直に記載することで、自社に合った人材が集まりやすくなります。
先輩従業員へのインタビューや職場見学の実施も、応募者の不安を和らげる効果的な手段です。
関連記事:人材採用の戦略は3ステップで立案!役立つフレームワークもチェック
入社後のフォローで早期離職を防ぐ
どんなに人材を採用できたとしても、早期に離職されてしまえば人手不足の解消にはなりません。
入社後90日間は「オンボーディング」の重要な期間とされており、この時期のフォローが定着率を大きく左右します。入社時研修の実施や教育担当者(メンター)の配置など、現場任せにしない仕組みをつくることが重要です。
また定期的な1on1ミーティングを設けることで、新入社員が抱える不安や悩みを早期に把握できます。「相談できる人がいない」という状態が離職の引き金になりやすいため、気軽に話せる関係性を入社直後から意識的につくることが大切です。
関連記事:中小企業における人材育成・人材定着の重要性と課題解決策
連鎖退職を防ぐ職場環境を整える
1人の退職が残った従業員の負担を増大させ、さらなる退職を招く「連鎖退職」は、中小・小規模企業にとって特に致命的なリスクです。これを防ぐには、特定の従業員に業務が集中しない体制と、従業員が本音を言いやすい職場環境の両方が必要です。
風通しの良い職場づくりの一歩として、日頃からあいさつや会話が生まれやすい雰囲気をつくり、悩みや不満を早期に拾える仕組みを整えましょう。休憩スペースの整備や社内イベントなども、コミュニケーションの活性化に有効です。
業務の属人化を防ぐためのマニュアル整備やスキルの共有化も、連鎖退職のリスクを下げる重要な取り組みです。
関連記事:職場コミュニケーションの成功法則!活性化させる具体的な方法と事例
業務効率化・省力化で人手不足を補う
人材が増やせない状況でも、業務を見直し、効率化することによって必要な人手を減らせる場合があります。例えば、重複している作業や省いても問題のない業務を整理することで、残業時間の削減や少人数での業務遂行が可能になります。
ITツールやRPA(業務自動化)の導入も有効な選択肢です。こうした省人化投資には、中小企業を対象とした「中小企業省力化投資補助金」の活用も検討できます。IoTやロボット機器の導入費用の一部が補助対象となっており、人手不足を設備で補う取り組みを後押ししています。
採用・育成コストと比較しながら、自社に合った効率化の手段を選びましょう。
参考:中小企業省力化投資補助金
外国人材・特定技能の活用を検討する
国内の労働力不足が構造的に続くなか、外国人材の活用は中長期的な人手不足対策のひとつとして注目されています。在留資格「特定技能」は対象分野が拡大されており、建設・介護・飲食料品製造・運輸など、人手不足が深刻な業種の多くが対象に含まれています。
特定技能人材は一定の技能・日本語能力を持つ即戦力として受け入れられるため、採用後すぐに現場に入れるケースも少なくありません。ただし、受け入れにあたっては、採用後の生活サポートや社内コミュニケーションの整備が定着のカギとなります。
ハローワークや地域の外国人雇用サービスセンターなどの支援機関も活用しながら、計画的に取り組むことが大切です。
関連記事:外国人労働者を雇用する中小企業の割合は?現状と今後の動向を予測
待遇改善(賃上げ・福利厚生)で人材の流出を防ぐ
従業員の定着には、給与水準の維持・向上が欠かせません。ただし中小企業が大企業の賃上げペースに無理に追随することは、「人件費高騰型」の倒産リスクを高めます。賃上げの原資を確保するためにも、前提として取引先への適切な価格転嫁を進めることが重要です。
給与以外では、福利厚生の充実も実質的な手取り改善につながります。なかでも食事補助は、2026年4月から非課税上限が月額3,500円から7,500円に引き上げられました。
福利厚生の非課税枠活用は、従業員の実質手取りがアップするだけでなく、企業側の法人税削減にも寄与します。
企業・従業員双方の負担を抑えながら待遇を改善できる手段として注目されています。
参考:国税庁|食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」
2026年4月の非課税枠拡大を機に、注目が高まっているのがエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」を導入した企業の従業員は、一定の条件を満たすことにより全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルはコンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店など幅広く、勤務時間中にとる食事の購入であれば時間や場所の制限もありません。
AIによるレシート解析機能「証憑スキャン」や、お得な「食のクーポン」も加わって、すでに4000社を超える企業に導入されている人気サービスです。
関連記事:株式会社エデンレッドジャパン|チケットレストラン、AIによるレシート解析機能「証憑スキャン」を 4月1日(水)より提供開始 ~食事補助の適正運用を支援。公式アプリからレシート撮影で自動解析、管理工数を最小化~
関連記事:株式会社エデンレッドジャパン|チケットレストランで「食のクーポン」を公式アプリでスタート
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
【Q&A】人手不足倒産にまつわるよくある質問
ここでは、「人手不足倒産」について多く寄せられる質問をピックアップし、Q&A形式でお答えします。
Q. 人手不足倒産とは何ですか?
A. 人手不足倒産とは、必要な人材を確保できず事業継続が困難になり、倒産に至ることです。
十分な仕事や資金があっても、現場を支える従業員がいなければ商品やサービスを提供できません。黒字であっても倒産に至るケースがあるのが特徴です。要因は「後継者不足」「求人難」「従業員退職」「人件費高騰」の4種類に分類されます。
Q. 人手不足倒産はどのくらい発生していますか?
A. 2025年度は441件と過去最多を更新し、3年連続で最多を記録しています。
帝国データバンクの調査によると、人手不足を原因とする倒産は2023年度から急増が続いています。倒産した企業の約8割が従業員10人未満の小規模企業であり、規模の小さな企業ほどリスクが高い実態があります。
Q. 人手不足倒産が多い業種はどこですか?
A. 建設業・運送業が多いですが、近年は飲食・介護など幅広い業種に広がっています。
帝国データバンクの2025年度調査では、建設業が112件でトップ、道路貨物運送業が55件と続きます。老人福祉事業や飲食店もそれぞれ業種別で過去最多を更新しており、特定業種だけの問題ではなくなっています。
Q. 中小企業が今すぐできる人手不足対策は何ですか?
A. 採用方法の見直しや入社後のフォロー体制の整備など、費用をかけずに始められる対策があります。
業務効率化や外国人材の活用も有効です。また2026年4月から食事補助の非課税枠が月額7,500円に拡大されており、給与以外の福利厚生で実質的な待遇改善を図ることも、コストを抑えた対策のひとつです。
関連記事:【2026年版】食事補助の非課税枠上限が7,500円に引き上げへ!企業に求められる対応は?
人手不足倒産を他人事にしないために
2025年度の人手不足倒産は441件と過去最多を更新し、業種・規模を問わず広がっています。採用の見直し、入社後フォロー、連鎖退職対策、業務効率化、外国人材の活用、そして福利厚生の充実——これらを組み合わせた取り組みが、人手不足倒産の回避につながります。
なかでも、2026年4月に非課税枠が月額7,500円に拡大された食事補助は、企業・従業員双方の負担を抑えながら実質的な待遇改善を実現できる手段です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」の導入を、人材定着への第一歩として検討してみてはいかがでしょうか。
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