資料請求
English

Workers Bistro

-働く人と働きたい人のための福利厚生マガジン-

【社労士監修】厚生年金適用拡大で5人以上の個人事業所はどう変わる?最新情報と対策

【社労士監修】厚生年金適用拡大で5人以上の個人事業所はどう変わる?最新情報と対策

2024.08.23

New call-to-action

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

厚生年金の適用拡大が続く中、2024年7月、厚生労働省は、さらなる適用拡大を求める有識者の提言を報告書にまとめました。この提言では、短時間労働者への適用拡大のほか、常時5人以上が使用される個人事業所のうち、従来加入が非適用とされていた一部業種の要件を撤廃し、すべての個人事業所に厚生年金を適用するよう求めています。

この記事では、厚生労働省の提言の詳細から、適用拡大が個人事業所に与える影響、具体的な対応策まで分かりやすく解説します。厚生年金にまつわる今後の動向や、自社に必要な対応を検討するヒントにしてください。

2024年8月|厚生年金適用拡大の最新動向

従来の厚生年金保険制度では、厚生年金にまつわる個人事業所の適用範囲は限定的でした。しかし、最新の提言では、その範囲が大幅に拡大されています。この変更が実現した場合、多くの個人事業所が新たに厚生年金の適用対象となります。

参考:NHK|年金|短時間労働者の厚生年金 加入拡大へ“企業規模の要件 撤廃を” 

現行の適用業種17種と非適用業種

適用業種・非適用業種の分類

出典:厚生労働省|個人事業所に係る適用範囲の在り方について(5P)

2024年8月現在、厚生年金の強制適用対象となっている個人事業所は、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所のうち、建設業や金融業など17の業種に限られています。

厚生労働省による最新の提言は、この制限を撤廃し、業種にかかわらず、すべての5人以上の個人事業所を厚生年金保険の適用対象とするよう求めるものです。

この提言は、業種間の公平性の確保や、より多くの労働者に厚生年金保険の恩恵を広げることを目的に行われました。提言が実現すると、これまで厚生年金の適用外だった農業・漁業・飲食サービス業・理美容業・宿泊業なども新たに厚生年金の対象となります。

参考:厚生労働省|個人事業所に係る適用範囲の在り方について

今後の動向に注目

厚生労働省の報告書案を受けて、今後、厚生年金保険の適用拡大に関する具体的な議論が進められていくことが予想されます。各個人事業所は、政府や関係機関からの最新の発表に注意を払い、適宜必要な準備を進めることが求められます。

最新の正確な情報については、厚生労働省や日本年金機構の公式ウェブサイトを定期的に確認するようにしてください。

厚生年金の基礎知識

厚生年金保険は、民間企業で働く従業員の老後の生活を支える公的年金制度です。この制度は、従業員と事業主が保険料を負担し、将来の年金給付を保障するものです。以下、2024年8月現在における適用対象や被保険者の範囲について解説します。

対象となる事業所

2024年8月現在、厚生年金保険の強制適用対象となる事業所は、以下の通りです。

  • 法人事業所:従業員数にかかわらず、すべての法人事業所
  • 個人事業所:常時5人以上の従業員を使用する個人事業所のうち、所定の17業種

参考:日本年金機構|事業主の皆様へ 厚生年金保険・健康保険制度のご案内

被保険者

厚生年金保険の被保険者は、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の従業員(主に正社員)です。

ここでいう「常用的に使用される」とは、雇用契約書の有無にかかわらず、適用事業所で働き、労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係にあることを指します。試用期間中でも報酬が支払われる場合は、使用関係が認められます。

また、正社員だけでなく、就業規則や労働契約などに定められた一般社員の1週間の所定労働時間、および1カ月の所定労働日数の4分の3以上ある従業員も対象です。

事業所が「特定適用事業所」に該当する場合

被保険者の条件に該当しないパートやアルバイト等の従業員も、勤務先が「特定適用事業所」もしくは「任意特定適用事業所」であり、下記の要件を満たす場合には厚生年金の被保険者となります。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  • 月額賃金が8.8万円以上(年収106万円以上)であること
  • 2カ月以上の雇用期間が見込まれること
  • 学生でないこと

なお「特定適用事業所」とは、現在(2024年8月)従業員数101人以上の事業所をいいます。2024年10月からは、従業員数51人以上の事業所に拡大される予定です。

また「任意特定適用事業所」とは、特定適用事業所の基準に満たないながらも、被保険者の同意によって適用拡大の対象となる事業所です。

参考:日本年金機構|会社に勤めたときは、必ず厚生年金保険に加入するのですか。
参考:日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大

厚生年金の適用拡大が個人事業所に与える影響

厚生年金保険の適用拡大は、個人事業所の経営面や人材面に大きな影響を与えます。中でも重要な保険料の負担額や手続きについて詳しく見ていきましょう。

保険料負担の具体的な試算例

厚生年金保険料は、標準報酬月額に保険料率を乗じて算出されます。2024年8月現在、厚生年金保険料率は18.3%(労使折半)です。以下、具体的な試算例を見ていきましょう。

例:標準報酬月額が28万円の従業員の場合
   月額保険料:280,000円 × 18.3% = 51,240円
   負担額(事業主・従業員):51,240円 ÷ 2 = 25,620円

この試算例から分かるように、厚生年金に加入することにより、従業員1人あたり月額2万5千円程度の新たな負担が事業主に生じることになります。事業規模や従業員数によっては、経営に大きな影響を与えるかもしれません。

参考:日本年金機構|保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)

社会保険事務の増加と対応

厚生年金保険の適用拡大に伴い、個人事業所では以下のような社会保険事務が新たに発生します。

  • 被保険者資格取得届の提出
  • 標準報酬月額の決定・変更手続き
  • 保険料の計算と納付
  • 定時決定(算定基礎届の提出)
  • 被保険者資格喪失届の提出

これらの事務作業にスムーズに対応するためには、人的リソースを含む事前準備が必要です。社会保険労務士への相談や、電子申請システムの活用を検討することで、事務負担を軽減できる可能性があります。

個人事業所が取るべき具体的な対応策

厚生年金保険の適用拡大に向けて、個人事業所は具体的にどのような準備をすればよいのでしょうか。具体策を紹介します。

保険料負担への対応と経営計画の見直し

個人事業者が厚生年金の適用事業所となった場合、まず懸念されるのが保険料の負担です。負担増への効果的な対応としては、次のようなものが挙げられます。

  • 経費削減:不要な支出の見直しや業務効率化による経費削減
  • 価格戦略の見直し:必要に応じた価格改定
  • 生産性向上:業務プロセスの改善や、技術導入による生産性向上
  • 資金計画の見直し:増加する支出に備えた資金計画の再検討

また、中小企業庁や厚生労働省が提供する各種支援策も積極的に活用するのもひとつの方法です。「中小企業経営強化税制」のような、政府が提供している設備投資支援の利用も検討してみましょう。

参考:中小企業庁|中小企業経営強化税制

関連記事:【税理士監修】中小企業経営強化税制とは?制度の概要から手続きまで分かりやすく解説

従業員への説明と理解促進

従業員に対しては、厚生年金保険適用拡大について丁寧な説明を行い、理解を促進することが重要です。特に、以下のポイントに注意して説明を行いましょう。

  • 制度変更の背景と目的
  • 従業員にとってのメリット(将来の年金受給額の増加など)
  • 保険料負担の仕組みと具体的な金額
  • 手取り収入への影響と長期的なメリット

厚生年金の適用にあたっては、説明会の開催や個別面談の実施・資料の配布などを通じ、従業員の不安や疑問に丁寧に対応することが大切です。また、就業規則の変更が必要な場合には、労働基準法にもとづき従業員の意見を聴取するなど、適切な手続きを踏むことを忘れないようにしましょう。

従業員の負担軽減に効果的「福利厚生」

新たに厚生年金に加入することにより、従業員に生じる金銭的負担は決して小さいものではありません。加入に対する心理的抵抗を軽減し、スムーズに制度の導入を進めるには、従業員の負担を補填する何らかの施策が求められます。その手段として、注目を集めているのが福利厚生です。

従業員の金銭的負担を軽減する取り組み

福利厚生は、賃金とは異なる形で企業が従業員へ提供する報酬の一種です。充実した福利厚生の提供は、従業員の生活をさまざまな面でサポートし、豊かな暮らしの一助となります。

厚生年金へ新たに加入する場合、多くの従業員にとって手取り額の減少が懸念材料となります。実質的な収入源となることを嫌い、転職を考える従業員が出る可能性も否定できません。

福利厚生の提供は、厚生年金への加入で生じる手取り額の減少を実質的に一部補填するものです。これにより、従業員の心理的抵抗を軽減する効果が期待できます。

特に、食事補助や交通費補助・社宅の提供などの生活に直結する福利厚生は、直接的に従業員の生活をサポートできるため効果的です。

人気の食の福利厚生「チケットレストラン」

生活に直結する福利厚生の中でも、近年特に注目を集めているのが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。

チケットレストラン」は、加盟店での食事が実質半額になるICカード型の食の福利厚生サービスで、すでに3,000社を超える企業に導入されています。

加盟店はカフェやコンビニ・ファミレスなど全国に25万店舗を超え、勤務時間内であれば利用する場所やタイミングも選びません。正規雇用の従業員はもちろん、契約社員やアルバイトなど、雇用形態を問わず平等に提供できる点も高く評価されているポイントです。

事業所による食費のサポートは、実質的な賃上げの意味を持つもので、保険料負担額の一部補填の役割を果たします。従業員の企業に対する愛着や貢献意欲の向上・モチベーションの向上・離職防止など、さまざまな効果が期待できます。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

厚生年金適用拡大への備え|個人事業所の成長戦略

2024年7月、有識者懇談会の提言により、従業員5人以上の個人事業所は、すべての業種で厚生年金への加入が求められる可能性が示唆されました。

厚生年金への加入は、従業員へ将来の年金額増加というメリットをもたらす一方、手取り額の減少という大きなデメリットももたらすものでもあります。事業所側も保険料の半額を負担する義務があるため、予算を含めて早期に対策を練っておくことが大切です。

厚生年金保険の適用拡大は、個人事業所にとって大きな転換点となります。変化の時代を生き抜く個人事業所となるためには「チケットレストラン」をはじめとする福利厚生の導入など、変化を前向きに捉えた施策が求められます。

早めの準備と戦略的な対応でこの変化を乗り越え、自社のさらなる発展につなげていきましょう。

資料請求はこちら

 

New call-to-action