離職率が低い企業にはどのような特徴があるのでしょうか?離職率のランキングを確認した上で、上位にランクインしている企業の取り組みを見ていきましょう。「採用してもすぐに辞めてしまう」といった課題解決に役立つよう、対策の仕方も紹介します。
離職率の低い企業ランキング
厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によると、全ての業界の平均離職率は15.0%です。
ここでは「CSR企業総覧(雇用・人材活用編)2023年版」をもとに東洋経済ONLINEが作成した「「離職する人が少ない大企業」100社ランキング」から、離職率の低い上位11社を紹介します。11社はいずれも平均離職率15.0%を大きく下回っており、離職率1%前後です。
順位 |
企業 |
離職率 |
1 |
ゴールドウイン |
0.5% |
2 |
三井不動産 |
0.7% |
2 |
東ソー |
0.7% |
4 |
大阪ガス |
0.9% |
5 |
ブラザー工業 |
1.0% |
5 |
SUMCO |
1.0% |
7 |
日清オイリオグループ |
1.1% |
7 |
関西ペイント |
1.1% |
7 |
FDK |
1.1% |
7 |
日本新薬 |
1.1% |
7 |
アドバンテスト |
1.1% |
「「離職する人が少ない大企業」100社ランキング」にランクインしている企業の離職率は最も高くて3.7%と、非常に低い水準といえます。
参考:東洋経済ONLINE|「離職する人が少ない大企業」100社ランキング
ゴールドウインの取り組みから学ぶ離職率を下げるコツ
「「離職する人が少ない大企業」100社ランキング」で離職率の最も低いゴールドウインは、なぜ低い離職率を実現できているのでしょうか?ゴールドウインの取り組みをもとに、離職率を下げるコツを紹介します。
多様な人材が働きやすい環境づくり
ゴールドウインでは性別や障がいの有無などを超えて、全ての人材が活躍できるよう、ダイバーシティを推進しています。
具体的には、女性活躍推進の達成に向けた行動計画の策定や、障がい特性に合わせた活躍を可能にするための環境整備、性的マイノリティが働きやすい環境や制度の整備に向けた取り組みなどを実施中です。
全ての従業員が働きやすい環境作りが、低い離職率につながっていると考えられます。
客観的な評価制度
2022年度にゴールドウインが導入した新人事制度は、従業員にとって納得感のある客観性の高い仕組みで、以下の3つの制度からなります。
新人事制度 |
内容 |
等級制度 |
職務内容・能力・経験などの明確化 |
評価制度 |
何を達成すると評価されるのか基準を明確化 |
報酬制度 |
等級別の職務評価結果で報酬を決定 |
何を頑張れば評価されるのかを従業員が理解しやすくなることで、適切な努力が可能です。努力が給与に反映されることでモチベーションアップにつながることも、低い離職率のポイントといえます。
職場環境の整備
全ての従業員が働きやすいよう、以下のサポートを行っているのもゴールドウインの特徴です。従業員は快適に働きやすい職場で高いモチベーションを維持できますし、企業は従業員の高いパフォーマンスによって業績アップが期待できます。
制度 |
内容 |
ワーク・ライフ・バランスの促進 |
・テレワークによる過重労働の防止 |
育児・介護との両立支援 |
・制度の整備 |
働きがいの向上を目指す制度 |
・永年勤続制度 |
多様な働き方の推進 |
・副業許可制度 |
充実した人材育成制度
従業員のモチベーションを高め離職率低下につなげるには、学習の機会を提供して成長を促すのが効果的です。ゴールドウインでは以下のように充実した研修を実施して、人材育成に取り組んでいます。
研修 |
内容 |
階層別研修 |
・新入社員研修:自分の職種以外の業務を経験し仕事に生かすための研修 |
管理職研修 |
・新任リーダー研修:初めて管理職になる人材が対象の研修 |
選抜研修 |
・若手選抜研修:論理思考力を育むことを目的とした研修 |
全体研修 |
・社長講和研修:社長から従業員へ理念やビジョンを直接伝える研修 |
離職率が低い業界とその特徴もチェック
厚生労働省の「令和4年 雇用動向調査結果の概要」によると、各業界を離職率の低い順に並べると以下の通りです。
順位 |
業界 |
離職率 |
1 |
鉱業、採石業、砂利採取業 |
6.30% |
2 |
金融業、保険業 |
8.30% |
3 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
10.00% |
4 |
製造業 |
10.20% |
5 |
建設業 |
10.50% |
6 |
電気・ガス・熱供給・水道業 |
10.70% |
7 |
複合サービス事業 |
11.00% |
8 |
情報通信業 |
11.90% |
9 |
運輸業、郵便業 |
12.30% |
10 |
不動産業、物品賃貸業 |
13.80% |
11 |
卸売業、小売業 |
14.60% |
12 |
教育、学習支援業 |
15.20% |
13 |
医療、福祉 |
15.30% |
14 |
生活関連サービス業、娯楽業 |
18.70% |
15 |
サービス業(他に分類されないもの) |
19.40% |
16 |
宿泊業、飲食サービス業 |
26.80% |
上位にランクインしている離職率の低い業界には、どのような特徴があるのでしょうか?離職率低下につながるポイントを見ていきましょう。
休暇を取りやすい体制が整っている
離職率が低い業界は取引先が企業であることが多く、多くの企業が休んでいる土日や祝日は休日になるケースが多いでしょう。夜間や休日の急なトラブル対応による出勤も発生しにくい傾向があります。
十分に休暇が取れるため、従業員はゆっくり休んだり、趣味を楽しんだり、家族や友人と過ごしたりして、仕事の疲れを癒やしリフレッシュできます。
給与が高くモチベーションアップにつながっている
厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査の概況」によると、全体の平均賃金は31万1,800円です。「令和4年 雇用動向調査結果の概要」で離職率の低い上位5位にランクインしている業界の平均賃金を見ると、どの業界も全体の平均賃金より高いことが分かります。
順位 |
業界 |
離職率 |
賃金 |
1 |
鉱業、採石業、砂利採取業 |
6.30% |
35万100円 |
2 |
金融業、保険業 |
8.30% |
38万3,700円 |
3 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
10.00% |
39万4,200円 |
4 |
製造業 |
10.20% |
31万4,500円 |
5 |
建設業 |
10.50% |
34万2,100円 |
業務量が多く忙しい、高度な専門知識が必要で常に学び続けなければいけないといった仕事でも、頑張りが給与に反映されていると考えれば、仕事に対するモチベーションは高まりやすくなると考えられます。
働きやすいよう福利厚生が充実している
福利厚生の充実度が高い傾向があるのも、離職率の低い業界の特徴です。各種手当による従業員の暮らしのサポート、休暇制度によるリフレッシュや子育て・治療・介護などとの両立、レジャーの割引利用制度による休暇の充実度アップなどがあげられます。
従業員が利用しやすい福利厚生制度を導入するとともに、制度を利用しやすい環境づくりをしていることもポイントです。福利厚生を利用しやすいよう整備すると、従業員の自発的な貢献意欲であるエンゲージメントを高められます。
「企業のためにどうすればいいだろうか?」と考え行動する従業員が増えることは、離職率の低下につながります。
離職率を下げるための取り組み
離職率の低い企業であるゴールドウインの取り組みや、離職率の低い業界の特徴から考えられる離職率を抑えるポイントは以下の通りです。
- ダイバーシティの推進
- 公平公正な評価制度
- 働きやすい職場環境の整備
- 人材育成制度の充実
- 取得しやすい休暇制度
- 高い給与
- 充実度の高い福利厚生
これらのポイントを自社で実現するには、どのような取り組みが必要なのでしょうか?
退職理由の調査
まず必要なのは退職理由のヒアリングです。「入社前に思っていた印象と違った」「やりたい仕事ができていない」「子育てとの両立が難しい」など退職理由にはさまざまなものがあります。
退職理由によって、離職率を下げるために取るべき対策は異なります。例えば入社前と入社後のギャップから退職する従業員が多いなら、求人広告へ記載する内容や、説明会で伝えるメッセージを変えた方が良いのかもしれません。
やりたい仕事ができていないと感じて退職を選ぶ従業員が多いなら人員配置の見直しが必要ですし、子育てとの両立が難しく退職する従業員が多いなら制度づくりが必要です。
ヒアリングは退職手続きの完了後に行うと「引き止められるのではないか?」との疑いから、従業員の態度が硬化するのを避けられ、本音に近い意見を聞き取れます。
教育制度の見直し
従業員が業務に関する知識やスキルを十分学べる環境を整えることは、従業員のエンゲージメント向上につながり、離職率を下げるために役立つ取り組みです。研修で学んだ知識やスキルを業務に生かすことで、さらなるモチベーションアップにつなげられます。
具体的には、外部講師によるセミナーの実施や、オンライン研修、業務に関する書籍の購入補助などを実施するのがおすすめです。
学んだ知識やスキルを実際の業務に生かせる体制の整備も同時に行うと、従業員のモチベーションアップに役立ちます。
社内コミュニケーションの活発化
社内で十分なコミュニケーションを取れる環境があることも、離職率を下げることにつながります。従業員の間で気軽にコミュニケーションを取れる良好な関係性が構築できていれば、悩みが小さいときに相談でき、退職を未然に防げる可能性があるためです。
日ごろの関係性があれば、部下が悩んでいる様子に上司が気付き、さりげなく話を聞くといったこともできるかもしれません。
社内のコミュニケーションを活発化させるには、社内イベントや交流会の実施が効果的です。社内SNSの導入で気軽にやり取りできる環境を整えてもよいでしょう。他部署の従業員とのつながりを持てるよう、メンター制度を取り入れるのもおすすめです。
上司のマネジメントスキルの向上
離職率を下げるには、上司のマネジメントスキルを高める取り組みも欠かせません。上司の言動がきっかけとなり、退職に至るケースもあるためです。
適切なマネジメントが可能となるよう、定期的にマネジメント研修を実施すると良いでしょう。上司が部下を適切に管理・育成できるようになれば、組織の強化にもつながります。
また無自覚なハラスメントによる従業員の退職を防ぐには、ハラスメント研修の実施が有効です。ハラスメントの定義・行われやすい組織の特徴・未然に防ぐ対策などについて学ぶ研修を行うことで、上司のハラスメントへの意識を高められます。
関連記事:離職率が高い原因は?離職率低下に効果的な施策を解説
福利厚生で離職率が下がった中小企業の事例
離職率を下げるポイントのひとつに、充実した福利厚生があります。ここで紹介するのは、福利厚生として食事補助サービス「チケットレストラン」を導入することで、離職率を下げた中小企業の事例です。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国にある25万店舗以上の加盟店で利用できます。勤務場所の立地によらず、全従業員が公平公正に利用できる福利厚生サービスです。導入や運用の手間を最小限に抑えられるのもポイントといえます。
またかかった費用は一定の要件を満たすと福利厚生費として計上可能です。法人税額を算出するときに用いる課税所得を計算するときには損金として扱えるため、益金が同額であれば導入によって法人税額が下がるかもしれません。
従業員にはもちろん企業にもプラスに働く福利厚生の導入事例を見ていきましょう。
日本ナレッジスペース株式会社
<会社概要>
事業内容:WEBシステム開発・組み込み系システム開発・ネットワーク設計構築・保守運営など
従業員数:112名(2023年9月時点)
URL:https://www.jpn-ks.co.jp/
IT業界は全体的に人材不足の状況が続いています。企業向けのシステム開発を行っている日本ナレッジスペース株式会社も例外ではありません。このような中、今いる従業員が退職すれば、企業にとって大きな損失です。
「チケットレストラン」で福利厚生を充実させることは、従業員を大切にする働きやすい企業という印象付けにつながりました。今いる従業員の離職率低下はもちろん、スムーズな採用活動にもつながっています。
詳細な導入事例はこちら:日本ナレッジスペース株式会社
MIRAI station株式会社
<会社概要>
事業内容:精神科領域の訪問看護ステーションの運営
従業員数:27名(2023年5月時点)
URL:https://mirai-st.jp/
精神科領域の訪問看護ステーションを東京都内で展開しているMIRAI station株式会社は、もともと物価上昇の影響で家計管理が厳しい従業員をサポートするために「チケットレストラン」を導入しました。
全員が平等に利用できる食事補助サービスがあることで、従業員同士が誘い合って食事に行くことが増え、コミュニケーションが改善されたそうです。職場の人間関係が良好になったことで、今後は離職の防止にも役立つことが期待されています。
詳細な導入事例はこちら:MIRAI station株式会社
M's ファーマ株式会社
<会社概要>
事業内容:調剤薬局(くれよん薬局)の運営
従業員数:49名(2023年9月時点)
URL:https://crayon-p.com/company/
M's ファーマ株式会社は大阪南部でくれよん薬局を展開しています。かねてより課題となっていた薬剤師の離職率を下げる目的で「チケットレストラン」を導入しました。その結果、従業員同士が食事を一緒にすることが増え、良好な人間関係を構築し円滑なコミュニケーションが取れるようになったそうです。
約50%あった離職率も約10%にまで下がり、離職防止に役立っています。
離職率の低い企業や業界を参考に対策を
16~64歳の生産年齢人口が減少している中、人材確保は企業の存続に大きく関わります。十分な人材を確保するには、新たな人材の採用に加え、今いる従業員の離職を防止することも重要です。
自社の離職率を下げるには、離職率の低い企業や業界の特徴が参考になります。併せて退職する従業員に理由をヒアリングすると、教育制度や社内コミュニケーションの改善に役立ちます。
離職の防止には福利厚生の充実度アップもポイントです。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」なら、導入や運営の手間を抑えつつ、全従業員に公平に提供できます。離職率を下げるための施策として検討してみてはいかがでしょうか。