福利厚生と節税の関係
福利厚生は、一定の要件を満たすことで、かかった費用を損金算入できます。その結果、課税所得が減少し、法人税額を下げられるかもしれません。ただし、制度設計を誤ると否認されるリスクがある点には注意しましょう。
ここでは、福利厚生と節税の関係について、Q&A形式で解説します。
福利厚生は本当に節税になりますか?
福利厚生にかかった費用を福利厚生費として損金算入できれば、法人税額を計算するときに税率をかける課税所得を減らせます。その結果、法人税額が減る可能性もあるでしょう。
関連記事:福利厚生費とは?該当条件や要件、具体例を税理士が丁寧に解説
損金算入できる福利厚生費はどれ?
損金算入できる福利厚生費は、全従業員を対象に社会通念上妥当な金額を支給しており、実質的な給与や現物給与と判断されない費用です。
関連記事:【税理士監修】福利厚生費とは?経費計上できる19選!給与扱いリスクを回避
福利厚生費が否認されるケースは?
福利厚生費の損金算入が否認されるのは、福利厚生の対象が役員のみの場合や、社会通念上高額すぎる場合、かかった費用を現金で支給する場合などです。これらのケースでは、福利厚生費として損金算入できなくなります。
関連記事:【税理士監修】福利厚生費は全て非課税?導入時には課税・非課税の要件をチェック
節税目的で福利厚生を導入しても問題ありませんか?
福利厚生を節税目的で導入したとしても、損金算入できるよう必要な要件を満たしていれば問題ありません。ただし本来の目的は、従業員の待遇改善による人材確保・満足度向上・ブランディングであることも押さえておくとよいでしょう。
福利厚生費を損金算入できる条件
かかった費用を福利厚生費として損金算入するには、導入した福利厚生が以下の条件を満たしていなければいけません。
- 福利厚生の対象が全従業員であること
- 社会通念上妥当な金額であること
- 賃金でないこと
例えば、利用できるのが一部の従業員のみに限られている人間ドックを福利厚生として導入した場合、その費用は福利厚生費としては認められません。40歳になると全従業員が人間ドックを利用できる制度設計であれば、福利厚生費として損金算入可能です。
損金算入できる福利厚生の例
費用を福利厚生費として損金算入できる福利厚生には、どのような制度があるのでしょうか。福利厚生の具体例をチェックしましょう。
食事補助
食事補助とは、従業員のランチ代をサポートする福利厚生です。「従業員の福利厚生ニーズに関する実態調査」によると、日々の生活に必須である食事に関する福利厚生は、他の福利厚生と比べて認知度も人気も高いという結果でした。
食事に関する福利厚生には、他にも社員食堂や弁当などがありますが、中でも食事補助は「導入してほしい」という声が高いそうです。
関連記事:【2026年版】食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ
参考:労務研究会|旬刊福利厚生2025年6月下旬号 従業員の福利厚生ニーズに関する実態調査/ダイバーシティ&インクルージョンの取り組み(下)
社宅
社宅とは、企業が保有したり借りたりしている物件を、従業員に貸し出す制度です。社宅にかかる費用を損金算入するには、業務上の必要性が認められるケースでなければいけません。加えて、一般的な基準に照らし合わせて、豪華で高額ではないこともポイントです。
さらに、賃貸物件を借り上げて社宅として提供するときには、企業名義の賃貸契約を結び、企業が家賃を支払います。これに伴い、実費の記録も必要です。
関連記事:【社労士監修】社宅制度で人材確保と定着率向上を実現!福利厚生戦略の新トレンド
通勤手当
従業員が職場まで通勤するときにかかる交通費を支給するのが通勤手当です。企業が独自に定める福利厚生のため、全額支給することも、上限額を定めて支給することもできます。また「公共交通機関を利用する場合に支給」というように、通勤手当を支給するルールを定めることも可能です。
関連記事:【税理士監修】通勤手当・交通費の非課税ルール完全ガイド|2025年改正対応版
健康診断
1年に1回の健康診断の実施は、労働安全衛生法により義務付けられている法定福利厚生です。健康診断にかかる費用は、福利厚生費として損金算入できます。
ただし福利厚生費として扱えるのは、企業が健康診断の費用を支払った場合のみです。従業員が費用を支払い、企業が費用を後から支給する方法では、給与として扱われます。
また、人間ドックも高額すぎるプランでなければ、従業員全員が対象となる場合に費用を福利厚生費として損金算入可能です。
関連記事:【社労士監修】健康診断を福利厚生費として計上するには?条件と実務ポイントを解説
慶弔見舞金
慶弔見舞金とは、結婚や出産などの慶事のときに支給するお祝い金や、弔事の際に支給する香典、災害に遭ったときや病気・けがなどのときに支給する見舞金のことです。
金額は企業によって異なりますが、従業員本人の結婚祝いは10万円、出産祝いは5万円、家族が亡くなったときの香典は1万~10万円、見舞金は1万円まで、が相場と考えられます。
福利厚生で節税はできる?基本の考え方
税金は、正しく計算して、適正に納税するのが基本です。福利厚生の導入や運用にかかる費用は、要件を満たしていると福利厚生費として損金算入できます。この仕組みにより、福利厚生を導入すると、法人税額が減るかもしれません。
ここでは、福利厚生費で法人税額が減る可能性について、法人税額の計算式で解説します。
課税所得が減ると法人税額も減る可能性
法人税額を計算するときには、課税所得に法人税の税率をかけて算出します。このとき、まずは課税所得を「益金-損金」で計算しなければいけません。
益金は売上や受取利息などを、損金は売上原価や販売管理費などです。福利厚生費は損金に含められます。そのため、益金が同額であれば、福利厚生費が増えると課税所得が減り、法人税額も減る仕組みです。
税務調査で損金算入を否認される福利厚生費の例
福利厚生費として計上すれば、どのようなケースでも損金算入できるわけではありません。以下のように条件を満たしていない制度では、福利厚生費として計上できず、損金算入を否認されてしまいます。
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損金算入を否認される例
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解説
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役員のみが対象となる制度
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全ての従業員が対象でなければ、福利厚生費とならず損金算入できません。
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高額すぎる食事や旅行
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社会通念上妥当な金額でなければ、福利厚生費とならず損金算入できません。
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現金で支給する制度
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現金で支給すると給与とみなされるため、福利厚生費としては損金算入できません。 ※給与としては原則として損金算入可能です。
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福利厚生費を使った分だけ得をするわけではない
福利厚生費が増えると、法人税額が下がる可能性があります。ただし、福利厚生費を使えば使うほど得をするとは限りません。
従業員が「ほしい」と思う福利厚生を導入すれば、従業員の満足度アップや定着率向上などの福利厚生の本来の目的を達成しつつ、課税所得を減らせます。
一方、節税ばかりに目を向けてしまい、従業員にとって不要な福利厚生ばかり増やしてしまうと、福利厚生の本来の目的を達成できません。法人税額を減らせたとしても、効果の感じられない福利厚生では損失の方が大きくなることもあるでしょう。
効果的に福利厚生を導入するには、本来の目的を意識することが重要です。
福利厚生の本来の目的
企業が福利厚生を導入する目的は複数あります。福利厚生費の損金算入により法人税額を減らすことも目的の1つといえますが、本来の目的とはいえません。
ここでは、福利厚生を導入する本来の目的として、人材確保・従業員満足度の向上・企業のブランディングについて見ていきましょう。
人材確保
生産年齢人口の減少によって、業種や職種を問わず人手不足が進行しています。このような状況を受けて実施された「令和6年度中小企業実態調査事業 中小企業・小規模事業者の実態把握に関する調査研究」によると、中小企業や小規模事業者が最も重視する経営課題は「人材確保」だそうです。
人材確保には、福利厚生の充実度アップが役立つことが分かっています。ベター・プレイスの「福利厚生制度に関するアンケート調査」によると、福利厚生の充実度が高いと、企業へのエンゲージメントが向上すると回答した割合は77.9%です。エンゲージメントが高まれば、定着率アップが期待できるでしょう。
加えて同調査では、転職するとしたら企業選びでは福利厚生を重視する、と回答した人も79.4%と高い割合であることが分かります。今いる従業員のエンゲージメント向上にも、これからの採用活動をスムーズに進めるためにも、福利厚生の充実が重要だと分かる結果です。
関連記事:人材確保に効く!福利厚生ランキング|導入のメリットと注意点も
参考
:経済産業省|令和6年度中小企業実態調査事業 中小企業・小規模事業者の実態把握に関する調査研究 調査報告書
:ベター・プレイス|福利厚生制度に関するアンケート調査
従業員満足度の向上
従業員満足度の向上に向けて、従業員の暮らしや働きやすさをサポートする福利厚生の拡充に取り組む企業もあります。
例えば、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入した東海海運株式会社(導入事例)や関西エアポートオペレーションサービス株式会社(導入事例)では、従業員満足度の向上につながっているそうです。
関連記事:従業員満足度が向上する福利厚生は?高くなるメリットや取り組み事例も
企業のブランディング
福利厚生を充実させることで「従業員を大切にする企業」というブランディングも可能です。イメージアップができれば、スムーズな採用の実現につながることも期待できます。
福利厚生の導入時に経営者や人事担当者が押さえるべきポイント
人材確保や従業員満足度の向上・ブランディングなどを目的として福利厚生を導入するときには、福利厚生費として経費計上できる制度設計を行うよう注意しましょう。加えて拡充した福利厚生に関する社内規程の整備も必要です。
経費を福利厚生費として計上できる制度設計
福利厚生を導入するときには、経費を福利厚生費として計上できるよう制度設計しましょう。全ての従業員が利用できる制度で、社会通念上妥当な金額で設定されており、現金で支給しないことがポイントです。
社内規程の整備
新しい福利厚生を導入すると、社内規程の記載内容も制度に合わせて変更しなければいけません。このとき、従業員が制度を活用しやすいよう、変更内容の周知も実施するとよいでしょう。
制度の内容や使い方と同時に、窓口となる部署や担当者についても伝えておくと、より利用しやすくなります。
福利厚生はアウトソーシングで手間とコストを抑えられる
自社のみで、福利厚生費として経費を計上できる制度設計を意識しながら福利厚生を導入・運用するのは、手間とコストがかかります。担当部者や担当者の負担を大きく増やすことにつながることもあるでしょう。
社内の手間やコストを抑えつつ福利厚生を充実させるには、福利厚生をアウトソーシングできる福利厚生サービスを活用するとよいでしょう。
例えば食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」であれば、福利厚生費として経費計上できる制度設計での導入を「資料請求」から相談できます。
関連記事:福利厚生をアウトソーシングするメリットは?おすすめの福利厚生サービスも
福利厚生は要件を満たして導入すると節税につながる
福利厚生にかかる費用は「全従業員が対象」「金額が社会通念上妥当」「現金支給でない」場合に、福利厚生費として経費計上できます。福利厚生費は、課税所得の計算式「益金-損金」の損金への算入が可能です。
そのため、益金が同額であれば、福利厚生費が多い方が課税所得を減らせます。法人税額を計算するときには、課税所得に税率をかけるため、福利厚生費が増えると法人税額が下がる仕組みです。
人材確保や従業員満足度の向上などを目的として福利厚生を導入するときには、経費を福利厚生費と扱える要件を満たすよう注意しましょう。
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」のように、制度設計について相談できる福利厚生サービスを活用するのも1つの方法です。
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