通勤手当とは?非課税になる理由と基本ルール
通勤手当とは、従業員が通勤に要する交通費を企業が補助するために支給する手当のことです。企業が独自に支給する法定外福利厚生の一種のため、必ず支給しなければいけないわけではありませんが、多くの企業で福利厚生の一環として導入されています。
電車やバスなどの公共交通機関の運賃を支給するケースはもちろん、自動車や自転車で通勤する従業員に対して一定額を支給するケースもあります。
加えて、一定の要件を満たすと、所得税非課税で支給できるのも特徴です。ここでは、通勤手当の所得税が非課税になる理由と、非課税のルールを解説します。
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通勤手当が非課税となる理由
通勤手当を所得税非課税で支給できるのは、従業員が勤務するために必要な費用を企業が補填しているという考え方に基づいているためです。
本来、所得税は労働の対価として得た利益に対して課税されます。通勤手当は従業員の暮らしを豊かにするための所得ではなく、通勤にかかる実費を補う目的で支給されるものです。
そのため、合理的な範囲内の通勤手当については、所得税がかかりません。一方、実際に必要な金額を大きく上回る支給や、非課税限度額を超える支給については給与とみなされ、課税対象となります。
関連記事:【税理士監修】通勤手当の課税・非課税はどう決まる?旅費交通費との違いもチェック
通勤手当の非課税ルール【要点まとめ】
通勤手当に関する税務では、以下を抑えておきましょう。
- 一定額までは所得税が非課税
- 超過分は課税対象
- 社会保険料は対象
【2025年改正対応】通勤手当が非課税になる条件と非課税限度額
公共交通機関と自動車・自転車では、非課税限度額の算出方法が異なります。2025年11月19日に所得税法施行令が改正され、2025年4月1日以後に支払われる通勤手当に新しい限度額が適用されました。ここでは改正後の最新ルールを解説します。
「公共交通機関」の通勤手当
電車やバスなどの公共交通機関を利用する従業員への通勤手当は、もっとも経済的かつ合理的な経路・方法で算出した運賃等のうち、月15万円までが非課税となります。
自宅と職場間の往復費用を補填する通勤手当は、実費弁償的な性質を持つため、一定額まで所得税が非課税となります。
「合理的な経路」とは、一般的に最短距離、または最安値となる経路のことで、著しく遠回りする経路や高額な経路は認められません。例えば、IC乗車券の割引運賃がある場合はその運賃が基準となり、複数の経路がある場合にはもっとも安価な経路での計算が求められます。
15万円を超える部分は給与として課税対象となるため、源泉徴収が必要です。また、通勤定期券を現物支給する場合も、非課税限度額内であれば非課税扱いとなります。
参考:国税庁|No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
「自動車・自転車」の通勤手当
自動車や自転車で通勤する従業員への通勤手当は、片道の通勤距離に応じた非課税限度額が設定されています。
2025年11月19日に所得税法施行令が改正され、2025年4月1日以後に支払われる通勤手当に新しい限度額が適用されました。2025年4月~11月にすでに支払った分については、年末調整で改正後の限度額を適用して精算することで、従業員の過納付分を還付できます。
改正後の主な限度額は以下の通りです。

出典:国税庁|No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
通勤手当を支給する際の実務ポイント
通勤手当を適切に運用するためには、非課税限度額だけでなく、給与計算や年末調整などの実務上のポイントも押さえておくことが重要です。ここでは、実務で押さえておくべきポイントを解説します。
給与計算では課税分と非課税分を分けて処理する
通勤手当を支給する際は、非課税部分と課税対象となる部分を区分して給与計算を行う必要があります。
例えば、公共交通機関を利用する従業員に月18万円の通勤手当を支給する場合、非課税限度額15万円を超える3万円は給与として課税対象です。
源泉所得税の計算や年末調整に影響する可能性があるため、給与計算システム上で、課税・非課税を適切に設定しておかなければいけません。
通勤経路や支給額は定期的に見直す
通勤手当の支給額は、従業員の転居や異動・運賃改定・出社頻度の変化などによって、変わる可能性があります。特に近年はテレワークやハイブリッド勤務の普及により、従来の定期券支給が実態に合わなくなっている企業も少なくありません。
定期的に通勤経路や支給額を確認することで、過大支給や課税リスクを防ぐとともに、企業のコスト最適化にもつながります。
通勤手当の非課税適用で注意すべき3つのポイント
通勤手当を支給していても、非課税要件を満たさない場合は給与として課税されます。実務で誤りが多い典型的なケースは以下の3つです。
1. 非課税限度額を超えた支給・実費を上回る支給
非課税限度額を超える部分や、実費を上回る一律定額支給の超過分は課税対象となります。例えば、片道5kmの自転車通勤者に月6,000円を支給した場合、非課税限度額4,200円を超える1,800円が給与として課税されます。
2. 合理的でない経路・グリーン車等の利用
著しく遠回りする経路や、グリーン車など経済的とは言えない方法での通勤は非課税対象外です。新幹線の指定席料金も、自由席がある場合は自由席との差額は原則認められません。
3. 在宅勤務時の通勤手当支給
完全在宅勤務の従業員への定額支給は、実際に通勤していないため全額課税されます。ハイブリッド勤務の場合は、実際の出社日数に応じた実費精算が合理的です。
参考:国税庁|通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A
非課税なのに社会保険料は上がる?所得税との扱いの違いを徹底解説
非課税限度額内の通勤手当は所得税が課税されませんが、社会保険料では全額が報酬に含まれます。ここでは、両者の考え方の違いと、企業の人件費や従業員の手取りへの影響について解説します。
所得税は"実費性"を重視、社会保険は"賃金性"を重視
所得税における通勤手当の非課税措置は、通勤費用が「実費弁償的な性質」を持つことを根拠としています。従業員が実際に負担する費用を企業が補填するものであり、労働の対価ではないため、合理的な範囲内で非課税とされます。
一方、健康保険法や厚生年金保険法では、通勤手当を「労働の対償として受けるもの」と定義しているため、非課税・課税にかかわらず全額が社会保険料の算定対象です。これは、通勤手当も従業員が労働することで得られる経済的利益であり、報酬の一部と考えられるためです。
両制度の立法趣旨が異なることから、このような扱いの違いが生じています。
関連記事:【税理士監修】福利厚生費とは?経費計上できる19選!給与扱いリスクを回避
通勤手当の支給で社会保険料はいくら増える?具体例で解説
通勤手当は全額が標準報酬月額に算入されるため、企業と従業員の社会保険料負担に直接影響します。
例えば、基本給25万円の従業員に月3万円の通勤手当を支給する場合、所得税では通勤手当が非課税限度額内なら課税対象は25万円ですが、社会保険料の計算では通勤手当を含んだ28万円が報酬額です。これにより標準報酬月額の等級が上がり、企業負担・従業員負担ともに社会保険料が増加します。
特に、基本給と通勤手当の合計が等級の境界付近にある場合、通勤手当の支給により等級がひとつ上がることで、月数千円単位で保険料負担が増えるケースもあります。昇給や通勤手当の改定時には、社会保険料への影響も考慮した制度設計が重要です。
参考:日本年金機構|保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)
通勤手当・交通費の非課税についてよくある質問
通勤手当の非課税に関して、実務でよく寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。
通勤定期券(公共交通機関)は月15万円まで非課税ですか?
A. はい、合理的な経路・方法による運賃等であれば月15万円まで非課税です。
公共交通機関を利用する通勤手当は、もっとも経済的かつ合理的な経路で算出した運賃等のうち、月15万円までが非課税です。定期券代も対象となり、1カ月・3カ月・6カ月定期いずれも非課税扱いできます。15万円を超える部分は課税されます。
自動車・自転車通勤の非課税限度額は?
A. 片道通勤距離に応じて月4,200円~38,700円です。
自動車・自転車通勤の非課税限度額は片道距離で決まります。2km以上10km未満は4,200円、55km以上は38,700円で、距離に応じた段階的な設定です。2025年4月支給分からは改正された金額が適用されます。
改正後の非課税限度額は、いつ支払われる通勤手当から適用されますか?
A. 2025年4月1日以後に支払われる通勤手当から適用されます
判定基準は「支払日」です。4月分を3月末に前払いした場合は改正前の限度額、3月分を4月に後払いした場合は改正後の限度額が適用されます。政令公布は11月19日でしたが、制度上は遡って4月1日以後の支払いに適用されます。4月~11月にすでに支払った分は、年末調整で改正後の限度額により精算することで、従業員の源泉所得税過納付税額を還付可能です。
関連記事:【税理士監修】社会保険と非課税の「扱い」の違い総まとめ。企業が押さえるべき最新ポイント
新幹線通勤の特急料金は非課税になりますか?
A. 合理的な経路として認められれば、月15万円の範囲内で非課税です。
新幹線がもっとも経済的かつ合理的な通勤手段と認められる場合、特急料金を含めて月15万円まで非課税です。ただしグリーン車料金は経済的とは認められず対象外となります。新幹線定期券も合理的な手段として扱われます。
役員の通勤手当も非課税ですか?
A. はい、一定の条件を満たせば役員の通勤手当も非課税です。
通勤手当の非課税ルールは、従業員だけでなく役員にも適用されます。役員であっても、合理的な通勤経路に基づき支給される通勤手当であれば、一般の従業員と同様に非課税限度額まで所得税は課税されません。
ただし、実際の通勤費を大きく上回る支給や、非課税限度額を超える支給については課税対象となります。
通勤定期券を現物支給した場合も非課税ですか?
A. はい、非課税限度額の範囲内であれば非課税です。
企業が従業員に通勤定期券を現物支給する場合も、税務上は通勤手当として取り扱われます。合理的な経路による通勤定期券であり、非課税限度額の範囲内であれば所得税は課税されません。
なお、定期券を現物支給した場合でも、社会保険料の算定では報酬として扱われます。
テレワーク手当は非課税ですか?
A. 原則として非課税ではありません。
テレワーク手当は通勤手当とは異なり、通常は給与として課税対象となります。
ただし、通信費や備品購入費などを実費精算する場合には、一定の条件を満たすことで非課税で支給できるケースがあります。
一方、毎月一定額を支給するテレワーク手当については、実費相当額であっても原則として給与課税の対象となるため、通勤手当と同じ感覚で非課税扱いしないよう注意が必要です。
関連記事:【税理士監修】テレワーク向き福利厚生の費用は福利厚生費にできる?制度ごとに確認
通勤手当とあわせて検討したい福利厚生の選択肢
通勤手当は、従業員の満足度や、企業への愛着を高める効果的な施策です。一方で、制度に該当しない従業員や、ほぼ影響がない従業員へのメリットは限定的で、従業員全体へのアピールとはなりにくい実情があります。
そこで近年注目を集めているのが、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」を導入した企業の従業員は、企業と従業員との折半により、全国にある加盟店25万店舗以上での食事を実質半額で利用できます。
通勤手当・交通費の最適設計で従業員満足とコスト削減の両立を
通勤手当は「合理的経路×非課税限度額」の範囲内で適正に運用し、業務上の交通費は実費精算で全額非課税処理することが基本です。
ただし、通勤手当は所得税では非課税でも、社会保険料の算定では全額が報酬となります。企業の人件費コストと従業員の手取りに影響するため注意が必要です。
福利厚生としての効果を高めるには、「チケットレストラン」など公平かつ自由度の高い福利厚生との併用も効果的です。自社の通勤手当制度を定期的に見直し、従業員満足度とコスト最適化の両立を図ってはいかがでしょうか。
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