採用競争の激化、物価上昇による従業員の生活費負担増、限られた企業予算など人事担当者を取り巻く環境は日々厳しくなっています。自社の福利厚生のあり方について、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、WTWが実施した「2025年ベネフィット・トレンド・サーベイ」と従業員アンケート調査をもとに、2025年の福利厚生トレンドを解説します。世界と日本の企業が直面する課題、注目されている施策を整理しました。自社に合った福利厚生選びの判断材料として役立ててください。
2025年福利厚生:世界共通のトレンドは「予算の再配分」
2025年の福利厚生施策は、予算をどうやって再配分・再調整するか、が焦点となっています。
福利厚生費は「増やす」から「組み替える」時代へ
2025年の福利厚生を一言で表すなら、「予算制約の中での価値追求」です。新型コロナウイルス感染症の影響で企業業績が悪化し、回復してきた今も、福利厚生費を大幅に増やせる企業は限られています。
WTWが全世界105市場の5,538社(日本は97社)を対象に実施した調査では、今後3年間でグローバルの57%、日本の45%の企業が福利厚生費を「再調整・再配分する予定」と回答しています。
予算総額を増やすのではなく、既存の制度を見直し、従業員が本当に求めている内容に組み替えていくこと、これが世界共通のトレンドです。
日本企業の変化は急速
日本に目を向けると、変化のスピードは顕著です。過去1年間に福利厚生費を「再調整した」企業はわずか13%でしたが、今後3年間では45%が再調整を予定しています。「変更なし」と回答した企業は、過去1年間の58%から29%へと半減しました。日本企業も、福利厚生の抜本的な見直しに動き始めています。
出典:WTW|2025年ベネフィット・トレンド・サーベイ(福利厚生動向調査)結果概要
なぜ「再配分」が必要なのか
では、なぜ多くの企業が福利厚生の見直しに動いているのでしょうか。それは、企業が抱える課題が複雑化しているからです。次の章で、その背景となる3つの課題を詳しく見ていきましょう。
グローバル課題と日本企業が直面する課題
福利厚生の見直しが進む背景には、企業が抱える切実な課題があります。WTWの調査結果から見えてきた3つの課題と、企業が優先している取り組みを見ていきましょう。
グローバルでの課題は「福利厚生コストの上昇」
グローバルで最も多く挙げられた課題が「福利厚生コストの上昇」です。この項目は、2021年には6位、2023年に4位、そして2025年にはトップの課題となりました。わずか4年で順位が急上昇しており、企業の危機感の高まりがうかがえます。
特に深刻なのが医療費の高騰です。WTWが実施した世界の医療保険会社を対象にした調査では、世界全体で3年連続10%のインフレが確認されているとのこと。保険会社からの報告では、今後数年間は10%を超える上昇傾向が続くと見られています。
一方、日本は皆保険制度があるため、医療費負担は他国ほど深刻ではありません。
出典:WTW|2025年ベネフィット・トレンド・サーベイ(福利厚生動向調査)結果概要
日本の最優先課題は「人材獲得競争の激化」
日本で2年連続トップの課題となっているのが「人材獲得競争」です。少子化により労働力人口が減少しており、優秀な人材を獲得・定着させることが喫緊の経営課題となっています。
求人の段階で、給与水準のほか福利厚生の充実度をアピールすることが、採用力を高める武器になります。入社後も、福利厚生に満足している従業員は離職しにくく、定着率の向上にも寄与するでしょう。
出典:WTW|2025年ベネフィット・トレンド・サーベイ(福利厚生動向調査)結果概要
日本特有の上位課題にも注目
日本の調査で特徴的なのが、「従業員のパフォーマンスに関する課題」「給与や福利厚生の透明性」「メンタルヘルス問題」が上位に入っている点です。
コスト圧力が強まる中、従業員にはパフォーマンス向上が求められています。そのため、形だけの福利厚生ではなく、従業員のモチベーション維持につながる実質的な価値が問われているのです。
メンタルヘルスへの関心も高まっています。リモートワークの普及により従業員間のコミュニケーションが希薄になりがちな今、心のケアを支える仕組みが求められています。
企業が優先する福利厚生戦略 2つのキーワード
今後3年間の福利厚生戦略において、企業は何を優先しているのでしょうか。調査結果から、2つのキーワードが浮かび上がります。
キーワード1:ファイナンス
グローバルでも日本でも、「ファイナンス」が2023年調査に続き、2025年も最優先事項となりました。ここで言うファイナンスには、2つの側面があります。
ひとつは、企業視点でのコスト管理です。課題1で述べたように、福利厚生コストの上昇に対応するため、限られた予算を効率的に配分することが求められています。
もうひとつは、従業員視点での経済的な安定、つまり「ファイナンシャルウェルビーイング」です。ファイナンシャルウェルビーイングとは、経済的に安全で良好な状態にあることを指します。具体的には、「毎月の生活費負担が軽い」「将来の見通しが立っている」「緊急時に備えがある」といった状態です。
WTWが行なった「グローバルベネフィット意識調査(従業員向けのアンケート調査)」では、日本の従業員のうち64%がファイナンシャルウェルビーイング(家計管理や将来の資産形成など)について支援を求めています。しかし、企業側で優先している割合は14%にとどまっています。この50ポイントのギャップを埋めることが、これからの福利厚生戦略に求められることです。

出典:WTW|今、なぜファイナンシャルウェルビーイング(FWB)が重要なのか
キーワード2:従業員体験
もうひとつの優先事項が「従業員体験」です。2023年の調査では4位でしたが、2025年には上位に浮上しました。コスト制約がある中でも、従業員にとって価値のある体験を提供し、満足度を高めることが求められています。
WTWの調査では、企業が取っている戦術として「より多くの選択肢とサポートを通じて従業員が福利厚生を最大限に活用できるよう支援する」ことや、「テクノロジー、ナッジ(行動促進)、ナビゲーション(制度の案内・誘導)といった手法を活用し、従業員の行動変容を促すソリューションを導入する」ことが挙げられました。
福利厚生の「利用率」だけでなく、「誰が、どのように活用しているのか」「従業員のニーズに合っているのか」といった観点から制度を評価し直す動きが広がっています。
出典:WTW|2025年ベネフィット・トレンド・サーベイ(福利厚生動向調査)結果概要
課題解決につながる6つの福利厚生施策
前述した3つの課題と優先順位を踏まえると、どのような施策が注目されているのでしょうか。WTWの調査結果と労務SEARCHの従業員アンケートをもとに、6つの施策を紹介します。
施策1:日々の生活費負担を軽減する食事補助
食事補助は、従業員の経済的負担を軽減しつつ、健康面でも効果が期待できる制度です。
さらに、経済産業省は「令和8年度税制改正要望」(2025年8月29日公表)において、食事補助制度における非課税限度額の引き上げを正式に明記しました。
(※)非課税限度額とは
企業が従業員に提供する食事補助は、一定の要件を満たす場合に従業員の給与所得として課税されない(所得税がかからない)制度のことです。
1984年以来据え置かれている現在の月額3,500円(税別)が見直されれば、従業員のさらなる手取りアップに貢献します。このように、食事補助は非課税枠活用による投資効果があり、トレンド感もある注目の福利厚生です。
出典:エデンレッド|「食事補助」非課税上限の引き上げに向け、 政府へ要望書を提出
食事補助の非課税枠活用「チケットレストラン」
食事補助は外部サービスを活用すると、企業サイズを問わず導入しやすくなります。
例えば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店で利用でき、内勤・外勤・テレワークなど働き方に関わらず公平に使える食の福利厚生サービスです。
最大の特徴は、食事補助の非課税枠活用に対応していることです。食事補助が非課税となる一定の利用条件を満たした運用により、かかった費用を福利厚生費として経費計上できます。従業員側は所得税の課税対象外となり、同額を給与で支給するよりも手取りが増える実質的な賃上げ効果があるのです。
予算制約がある中でも従業員の経済的負担を軽減し、ファイナンシャルウェルビーイングの実現を目指す企業にとって価値ある選択肢となるでしょう。
▼福利厚生コストの最適化を「チケットレストラン」で実現した株式会社ニチレイビジネスパートナーズの事例はこちら
関連記事:【税理士監修】チケットレストランで食事補助を非課税に!控除方法とメリット完全ガイド
施策2:生活の基盤を支える住宅関連の制度
住宅補助や家賃補助は、根強い人気がある福利厚生です。従業員向けの調査(2024年労務SEARCH編集部実施)では、勤務先にあると最も嬉しい生活支援の福利厚生として、「住宅手当・家賃補助(48.7%)」がトップとなっています。
生活支出の中でも住宅費は大きな割合を占めるため、この負担を軽減することは従業員の経済的な安定、ファイナンシャルウェルビーイングに直結します。
提供形態は企業によってさまざまです。社宅や借り上げ住宅の提供、家賃補助の支給、住宅ローンの利子補給など、自社の状況に合わせた制度設計が可能です。
施策3:仕事と家庭の両立を支える制度
WTWの調査では、日本企業の注力分野として「家族向け福利厚生など、ウェルビーイングの精神的および経済的側面における、従業員の課題への対応」が挙げられています。グローバルと比較して日本では「従業員の家族のサポート」の優先度が高いことが指摘されました。
その背景には、2つの社会的要因があります。
2025年には団塊の世代が全員75歳以上となり、介護に直面する従業員の増加が見込まれています。また、女性活躍推進の観点から、出産・育児と仕事の両立を支援するニーズが高まっています。
両立支援の制度例として挙げられるのは、育児・介護休暇の拡充、短時間勤務やリモートワークの導入、ベビーシッターや介護サービスの費用補助などです。こうした制度は、ライフイベントを理由とした離職を防ぎ、長期的には採用や育成にかかるコストの削減にもつながります。人材定着という観点から、投資効果の高い施策と言えるでしょう。
施策4:心身の健康を支える制度
今、従業員の健康維持を後押しする制度の整備が進んでいます。身体面では、人間ドックや健康診断の費用補助、フィットネスクラブの利用補助、社内でのヨガやストレッチプログラムなど、健康増進のための取り組みが一般化しました。
WTWの調査では、日本企業の課題として「メンタルヘルス」が上位に入っており、企業の関心の高さがうかがえます。具体的な取り組みとしては、ストレスチェックの実施、カウンセリング制度の導入、産業医との定期面談、メンタルヘルス研修などがあります。
施策5:柔軟な働き方を実現する制度
働き方改革と労働力人口の減少に対応するため、時間や場所の制約を減らす制度の整備が進んでいます。リモートワークや時短勤務などの制度は、勤務先にあると嬉しい福利厚生にも上位ランクイン(2024年労務SEARCH編集部実施)しており、応募者が企業へ関心を高めるために、欠かせない要素です。
また、年次有給休暇の取得促進に加え、目的別の休暇制度を設ける企業も増えています。誕生日や記念日に取得できるアニバーサリー休暇、ボランティア活動のための休暇など、従業員が自分のペースで働ける環境を整えることが、人材獲得と定着に寄与します。
参考として、従業員向けの調査(2024年労務SEARCH編集部実施)では、あると嬉しい休暇関係の福利厚生として、「リフレッシュ休暇(34.3%)」、「夏季・冬季休暇(27.3%)」、「病気休暇(13.0%)」が上位に挙がりました。
施策6:成長を支えるスキルアップ支援
WTWの調査では、日本企業の課題として「従業員のパフォーマンス」が上位に挙げられています。コスト圧力が強まる中、従業員の生産性向上が求められており、そのためのスキルアップ支援への関心が高まっています。
従業員向けの調査(労務SEARCH)によると、最も嬉しいキャリアアップ関連の福利厚生として、「資格取得支援・スキルアップ(62.3%)」が圧倒的な支持を集めました。次いで「書籍購入補助(18.0%)」、「キャリアカウンセリング(8.7%)」が続きます。
出典:労務SEARCH|従業員が本当に求める福利厚生とは?福利厚生に関するアンケート調査結果
導入時に押さえるべき3つの判断基準
福利厚生制度を新たに導入したり見直したりする際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。WTWの調査結果と実務の観点から、人事担当者が押さえておきたい3つの判断基準を紹介します。
判断基準1:従業員のニーズを正確に把握する
導入する福利厚生は、自社の従業員のニーズに合っているかどうかが肝心です。ニーズに合わないものを導入しても利用率が上がらず、形骸化してしまう恐れがあります。
WTWの調査でも、単なる「制度の利用率」という尺度だけではなく、以下の観点から福利厚生を見直すことが推奨されています。
- 本来の導入目的を再認識する
- ターゲット層を明確にする
- 従業員ニーズを洗い出す
- 自社戦略に沿った内容か確認する
判断基準2:公平性を確保する
WTWの調査では、日本企業の課題として「給与や福利厚生の透明性」が上位に挙げられています。福利厚生では、従業員が制度の内容、利用条件、申請方法を理解し、公平に利用できる仕組みを整えることが求められます。
判断基準3:運用の実現可能性を検討する
どれだけ魅力的な制度でも、人事・総務担当者の負担が大きすぎれば継続は難しくなります。導入時の初期コスト、運用時の事務作業、ベンダー管理などを事前に検討し、実行可能な範囲で計画を立てましょう。
WTWの調査では、企業が取っている戦術として「ベンダーのコスト削減や追加サービスを通じた付加価値の追求」が挙げられています。複数のベンダーを比較検討し、コストとサービス内容のバランスを見極めることで、運用負担を軽減しつつ効果を最大化できます。
自社に合った福利厚生を選ぶために
2025年の福利厚生トレンドは「予算の再配分」です。具体的には「予算制約の中での価値最大化」し、「ファイナンシャルウェルビーイングへ注目」しながら「従業員体験の向上」を意識した取り組みが求められています。
まずは現在の福利厚生制度を見直し、本来の導入目的を再確認することから始めてみましょう。ターゲット層やニーズを洗い出し、自社戦略に沿った内容へとアップデートすることで、限られた予算でも従業員満足度を高めることが可能です。
福利厚生の見直しや新規導入をご検討中なら、その選択肢の一つにエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を加えてはいかがでしょうか。導入企業3,000社以上、利用率98%、継続率99%、従業員満足度93%の実績があります。食事補助の非課税枠活用により、従業員は給与で上乗せする形よりも手取りアップを実感でき、ファイナンシャルウェルビーイング実現の一助となります。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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