ベンチャー企業では、企業らしさが光る独自の福利厚生制度が多く見られます。創業期や成長期のベンチャー企業は特に、限られた予算で優秀な人材を獲得し、定着させなければなりません。
そこで注目されているのが、企業の個性を反映した面白い福利厚生制度です。本記事では、実際にベンチャー企業で導入されている印象的な福利厚生の事例を紹介します。福利厚生を拡充する際の参考にしてください。
ベンチャー企業とは
「ベンチャー企業」には公的な定義はありませんが、日本では「独自の技術やビジネスモデルを活用し、新しいサービスや製品を通じて社会課題の解決を目指す企業」を指すのが一般的です。
英語の「Venture(ベンチャー)」は「冒険」「投機」という意味を持ち、既存の枠組みにとらわれない挑戦的な姿勢を表しています。
ベンチャー企業の特徴:
- 独自の技術やビジネスモデルを持つ
- 小規模から中規模の企業が多い
- 新しいサービスや製品を提供
- 社会課題の解決に取り組む
- 革新的なアイデアで市場を開拓
ベンチャー企業における福利厚生の特徴
ベンチャー企業の福利厚生は、企業の成長段階によって充実度が異なります。創業期は最低限の制度のみの場合が多い一方で、成長期から安定・拡大期に入ると、大企業に劣らない手厚い福利厚生を整える企業も少なくありません。
また、予算が限られる中で差別化を図るため、大企業にはない「面白さ」や「ユニークさ」を打ち出す福利厚生が生まれやすいのも特徴です。
ベンチャー企業が面白い福利厚生を導入する理由
ベンチャー企業が独自性のある福利厚生に力を入れる背景には、優秀な人材をめぐる競争の激化と、求職者の企業選びの基準の変化があります。
「給与水準+福利厚生」で優れた人材を獲得
給与面で大企業に劣りがちなベンチャー企業であっても、魅力的な福利厚生を充実させることで、優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
近年、求職者が企業選びの際に重視する項目の一つが福利厚生です。「働きやすさ」や「企業文化への共感」を福利厚生からチェックすることができます。
福利厚生で企業文化をアピール
福利厚生は給与とはまた違った価値があります。企業理念や企業価値を制度として具体化し、従業員との価値観を共有するための重要なメッセージツールとなっています。
福利厚生は従業員エンゲージメント向上への投資
従業員が働くことに価値を見出せる職場環境は、長く働きたいという気持ちを育てます。他社にはないユニークな福利厚生は、そうした環境づくりの有効な手段です。従業員のエンゲージメントを高め、企業に対するロイヤリティを生み出す投資となります。
急成長ベンチャー企業の面白い福利厚生
ベンチャー企業といっても従業員数、事業規模、創業からの年数は千差万別です。
まずは一つの視点として、2025年7月時点の日本のユニコーン企業(※)ランキング掲載企業の福利厚生を見ていきましょう。急成長をとげる企業では、どのような福利厚生で優秀な人材を惹きつけ、定着させているのでしょうか。
なお、ランキングはCB Insights「The Complete List Of Unicorn Companies」を参照しています。
※ユニコーン企業とは、創業間もないにもかかわらず、大きな成果をもたらしている企業のこと。起業して10年以内、評価額10億ドル以上、非上場(未上場)を満たし、ベンチャー企業には、ユニコーン企業が含まれます。
出典:CB Insights|The Complete List Of Unicorn Companies
Preferred Networks
AI関連の事業で急成長をとげているPreferred Networksでは、ベンチャー企業ながら大企業さながらの手厚い福利厚生が整っています。入社初年度から26日の有給休暇を付与し、確定拠出年金の上限額を全額企業が負担するなど、従業員への投資を惜しみません。
「優秀な人材を長期的に確保する」という戦略が福利厚生に表れています。
福利厚生をピックアップ:
- 有給休暇26日/年:入社年次にかかわらず一律支給
- 英会話学習100%負担:外部のマンツーマン英会話授業を費用負担なしで受講
- 確定拠出年金の全額負担:企業型確定拠出年金の上限(月5万5,000円)を全額企業が拠出
- フリーアドレス制:4Kディスプレイと電動式昇降デスクを自由に利用可能
- PFN Day:プロジェクト間の交流と学びを促進する日を設定
- フレックス制度:コアタイムなしで柔軟な働き方が可能
- オフィス・在宅ハイブリッド勤務:在宅勤務の日数制限なし
出典:株式会社Preferred Networks|企業文化と福利厚生 採用情報
SmartHR
95個の社内部活があり、GPTW Japan「働きがいのある会社」ランキングでも上位にランクインしているSmartHR。従業員アンケートのアイデアを採用しながら、福利厚生制度を常にアップデートしています。従業員が主体的に働ける環境を整えることで、エンゲージメントを高める戦略が特徴的です。
福利厚生をピックアップ:
- 部活制度:ひと月の部活参加で、部員一人あたり1,500円を補助(95個の部活から選択可能)
- 親睦深飯:従業員3人以上の食事で一人あたり1,000円を補助(月4回まで)
- フリーアルコール:18時以降、オフィスの冷蔵庫のドリンク(ソフトドリンク含む)を雇用形態を問わず利用可能
- ケア休暇:生理や更年期障害の不調時に利用できる休暇制度
- 通勤環境を整える手当:新卒採用者が通勤時間2時間超から1時間以内の場所に転居した場合、10万円支給
関連記事:2025年版 日本における「働きがいのある会社」若手ランキングから見る|若手が辞めない職場のつくりかた
GO株式会社
「移動で人を幸せに。」をミッションとするタクシー配車のGO社。従業員に自社サービスを実際に使ってもらうことで、サービス改善につなげるなど、実践的な福利厚生があります。リモートワークとオフィスワークを組み合わせた柔軟な働き方も推進しています。
福利厚生をピックアップ:
- トライアルタクシー制度:月額1万円(1回4,000円まで)を補助し、自社のタクシーサービスに対する親しみを醸成
- ニューノーマル手当:出社とリモートの組み合わせによる働き方に対して、月額1万円を支給
- オフィスフリー制度:開発系職種限定で、日本であればどこでも勤務可能
- 日帰りワーケーション:部署を超えて行われる日帰りワーケーションで、交通費及び施設代、飲食代を一部負担
- 書籍購入・技術カンファレンス参加費支援:技術力向上のために必要な学習を支援
メガベンチャー企業の面白い福利厚生
ユニコーン企業が「手厚さ」や「先進性」で人材を惹きつけるのに対し、大規模なベンチャー企業は規模を活かした「充実度」と「独自性」が特徴です。ここでは、従業員数1,000人以上の日本を代表するメガベンチャー企業がどのように従業員の働きやすさを実現しているのかを見ていきます。
サイバーエージェント
「挑戦と安心はセット」という考えから、従業員が安心して働き続けられる福利厚生を充実させています。住宅補助としての「2駅ルール」は、オフィスの最寄駅から2駅圏内に住む正規従業員に月3万円を支給する制度です。
福利厚生をピックアップ:
- 2駅ルール:オフィス最寄駅から2駅圏内に住む正規従業員に月3万円を支給
- マッサージ制度:月4回利用可能で心身の疲れをケア
- 妊活休暇:妊活治療のための休暇制度
- エフ休:女性特有の体調不良時に利用できる休暇
リクルート
リクルートは休暇制度が充実しており、従業員が十分にリフレッシュできる環境を整えています。長期休暇取得を促す仕組みや、ペットの介護も対象としたケア休暇など、従業員の多様なニーズに応える制度が特徴です。
福利厚生をピックアップ:
- STEP休暇:在籍3年ごとに特別休暇1日を付与
- アニバーサリー⼿当:年次有給休暇を連続4日以上取得すると5万円を支給
- ケア休暇:家族やペットの介護に利用可能(最大年5日)
楽天
楽天が目指す福利厚生は、金銭的サポートと従業員の暮らしや心身の健康を支える仕組みです。本社である楽天クリムゾンハウス内には、カフェテリアや健康管理施設など、企業のスケールメリットを生かした充実した福利厚生設備が整っています。
福利厚生をピックアップ:
- 3食無料:カフェテリアでバラエティ豊かなメニューを提供(インドベジ、ハラル対応)
- 鍼灸・マッサージ:本社ビル内の施設で優待価格で利用可能
- 楽天ゴールデンキッズ:幼児向けの英語教育や科学実験を行う社内の託児所
メルカリ
メルカリは個人と組織がパフォーマンス、バリューを最大限に発揮できるよう、独自の福利厚生の導入に注力しています。特に、妊娠や出産におけるサポートが充実しており、従業員のライフイベントや避けられない将来の不安を、企業がバックアップする姿勢が特徴的です。
福利厚生をピックアップ:
- Sick Leave(有給):年次有給休暇とは別に、病気や怪我による10日間の有給(家族にはペットも含まれる)
- リラックス休暇:年次有給休暇以外で、年3日間の休暇を付与
- 妊活費用の補助:一子あたり200万円を上限として支給、配偶者やパートナーも対象
- 卵子凍結費用の補助:卵巣刺激から凍結延長保存までの費用を補助、配偶者やパートナーも対象
- 0歳児保育の保育料補助:復職後、子が1歳になるまで月10万円を上限に補助
- 全従業員の死亡保険加入:数千万円からの保険を全従業員対象で加入。万が一の時に家族へ支援
出典:株式会社メルカリ|Benefits & Communication Support
小規模ベンチャー企業の面白い福利厚生
小規模ベンチャー企業では、特にユニークで印象に残る福利厚生制度が充実しています。一度聞いたら忘れられないような、企業風土が感じられる福利厚生を紹介します。
10月1日 都民の日 休日ルール
10月1日の都民の日がお休みになる制度です。都内の公立小学校〜高校がお休みとなり、動物園などの都営施設では入場料が無料となります。特に子がいる従業員は、家族との時間を大切にすることができます。
推し活制度
推し活での有給取得、ライブ・イベント参加時の交通費、チケット代の一部補助などで「推し活」をサポートする制度です。仕事にもプライベートにも全力で取り組む従業員の想いから生まれました。
出典:株式会社パットコーポレーション|採用情報サイト 推し活制度
失恋休暇
失恋した際に、心を立て直すための休暇を設ける企業もあります。TRYMODEでは、20代なら1日、20代後半なら2日、30代以上は3日取得できます。
出典:TRYMODE|TRYMODEの福利厚生や独自の待遇など
目指せ!A身体制度
サニーサイドアップの「目指せ!A身体制度」では、健康ボーナスが支給される福利厚生です。健康診断で総合「A」判定となった従業員は3万2,000円、肥満気味なら翌年基準値クリアで1万円がもらえます。
サニーサイドアップには、他にも多彩な福利厚生が充実しています。以下、抜粋です。
- 「幸せは歩いてこない」制度:月間平均1万歩で報奨金3,200円を支給
- 「寝る子は育つ」制度:毎月平均7時間以上の睡眠をとった従業員に3,200円支給。
- 「シエスタ」制度:仮眠室で寝ることを公式に許可
食事補助手当
配膳ロボットの導入や活躍をサポートするDFA Roboticsでは、全国で使えるチケット型の食の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入しています。
食事補助の非課税枠を活用できるため、所得税がかからず実質賃上げにもなる効率的な福利厚生です。従業員は全国25万店舗以上の加盟店で利用でき、経済的なサポートを実現しています。
導入事例:株式会社 DFA Robotics
関連記事:【2025年最新】チケットレストランとは?採用・定着・健康経営を支える「食の福利厚生」
オシャレ手当
株式会社グラニでは、従業員の個性を尊重することで活力を発揮できると考えます。そこで、オシャレ手当で月額5千円を上限に従業員のオシャレをサポートしています。
ネイル手当
プライベートの充実が仕事に生かされるという考えから、日常の身だしなみをサポートする制度です。月に1回、提携サロンでネイルを無料で施術できます。仕事以外にも全力で取り組み、その人らしい人生を歩んでほしいという想いから生まれました。
出典:フロンティア株式会社|CULTURE フロンティアの文化
給与自己決定制度
給与に対する不満をなくすため、自分で年収金額を決められるユニークな制度です。従業員が希望する年収を申告し、スキルシートやキャリアプラン、働き方のフィードバックなどをもとに審査されます。承認されれば、申告した金額への改定が行われます。
出典:SELECK|全員の給与額を「自己申告」で決定!マネジメントの自動化を目指す、ゆめみの組織づくり
サイコロ給
サイコロ給は、「月給×(サイコロの出目)%」が、賞与にプラスされる制度です。運の要素(天の采配)で決まるのは、「ある意味、完璧な評価は難しいのだから、そういった要素があってもよい」という考えで作られました。面白く話題性があり、企業文化を象徴します。
フリースナック制度
株式会社アポロには、フリースナック制度があります。チョコレート・ポテトチップス・どら焼き・駄菓子などが食べ放題です。お茶・お水・コーヒーなども無料で利用できます。
出典:アポロ株式会社|お菓子が食べ放題!?驚きの福利厚生制度
ゲームソフト関連の手当や補助
ゲーム業界の企業では、業界特有の福利厚生を設けているケースがあります。株式会社グラニでは、ゲーミング手当として、企業が推奨するゲームをプレイし、基準をクリアした場合に手当を支給します。流行のゲームから学びを得てほしいという考えから生まれました。
また、ゲームソフト購入補助として、企業で指定するゲームソフトの購入費用も支給しています。最新のゲームに触れる機会を提供するのが狙いです。
かき氷食べ放題制度
サイブリッジでは、業務用の本格かき氷器で作ったかき氷が食べ放題です。ふんわり初雪のようなかき氷で夏の暑さを乗り越えるサポートをしています。
関連記事:【令和の面白い福利厚生40選】ユニークな制度で採用力アップ◎
面白い福利厚生でベンチャー企業の魅力アップ
ベンチャー企業が福利厚生を導入する理由は、人材を獲得し定着を促すためです。面白い福利厚生は、企業文化を伝える手段の一つとなり、働きがいのある職場づくりにも寄与します。
ただし、限られたリソースの中で福利厚生を充実させるには、予算や運用負担を考慮しながら、自社に合った制度を選ぶことが求められます。特に食事補助のような日常的に利用できる制度は、生活の負担を軽減でき、企業のサポートを実感しやすいのが特徴です。従業員の満足度を高める効果が期待できます。
食事補助の福利厚生を検討しているなら、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」が選択肢の一つです。パッケージ化されたサービスのため、導入・運用の負担を抑えられます。従業員は全国25万店舗以上で利用でき、「ランチ代が実質半額になる」うえに、所得税の非課税枠を活用することで「実質的な賃上げ」効果も実現できます。
福利厚生を通じて、従業員がもっと笑顔で働ける環境を整えてみませんか。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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