中小企業では約70%以上が福利厚生を導入しています。ただし大企業と比べると中小企業は福利厚生費が低く、社会保険料の改定により法定福利費の負担が増え続けている、といった課題のある状況です。課題解決に役立つ福利厚生サービスについて、中小企業が福利厚生を導入すべき理由とともに見ていきましょう。
中小企業の福利厚生の現状と課題
従業員の暮らしをサポートする福利厚生は、働きやすい環境づくりや従業員の待遇改善に役立つ取り組みです。ただし中小企業では、大企業ほど充実した福利厚生を実施できていないこともあるでしょう。ここでは中小企業の福利厚生に関する現状と課題について解説します。
関連記事:【社労士監修】中小企業向けの福利厚生は?人気の福利厚生サービスも紹介
約70%以上の企業が法定外福利を実施
福利厚生は大きく分けて2種類あります。厚生年金や健康保険など法律で定められている法定福利と、企業が独自に実施する法定外福利です。
jinjerの行った「福利厚生を通した人的資本への投資に関する実態調査」によると、71.2%の企業が、人材確保や意欲向上などを目的に法定外福利を実施しています。
実施している企業が40%を超えている福利厚生は、「ライフサポート費用(食事補助や住宅購入補助など)」「慶弔関係費用(慶弔金・法定超付加給付)」「医療・健康費用」です。
参考:jinjer|福利厚生を通した人的資本への投資に関する実態調査
大企業と比べて低い福利厚生費
法定福利に加えて、71.2%と過半数の企業が法定外福利も実施していますが、福利厚生費は中小企業と大企業で差があります。
厚生労働省の「令和3年就労条件総合調査の概況」に記載されている企業規模別の1人あたり1カ月分の福利厚生費は以下の通りです。
要件を満たした従業員に適用するよう法律で定められている法定福利も、企業が自由に導入する法定外福利も、企業規模が大きいほど費用は大きくなっています。
企業規模 |
1,000人以上 |
300~999人 |
100~299人 |
30~99人 |
法定福利費 |
5万4,348円 |
5万804円 |
4万8,024円 |
4万5,819円 |
法定外福利費 |
5,639円 |
4,567円 |
4,546円 |
4,414円 |
1人あたりの1カ月の法定福利費の内訳も見ていきましょう。法定福利費は給与や賞与をもとに費用を計算するものが多いのが特徴です。企業規模が大きいほど法定福利費の金額が大きいのは、企業規模ごとの給与の差といえるでしょう。
企業規模 |
1,000人以上 |
300~999人 |
100~299人 |
30~99人 |
健康保険料・介護保険料 |
1万8,858円 |
1万7,540円 |
1万6,864円 |
1万6,012円 |
厚生年金保険料 |
3万197円 |
2万8,499円 |
2万6,443円 |
2万5,265円 |
労働保険料 |
3,942円 |
3,552円 |
3,534円 |
3,645円 |
子ども・子育て拠出金 |
1,105円 |
1,032円 |
906円 |
841円 |
障害者雇用給付金 |
87円 |
112円 |
181円 |
- |
法定補償費 |
4円 |
2円 |
11円 |
0円 |
その他の法定福利費 |
155円 |
67円 |
85円 |
56円 |
法定外福利費の内訳も紹介します。
企業規模 |
1,000人以上 |
300~999人 |
100~299人 |
30~99人 |
法定外福利費合計 |
5,639円 |
4,567円 |
4,546円 |
4,414円 |
住居に関する費用 |
3,974円 |
2,506円 |
1,832円 |
960円 |
医療保険に関する費用 |
768円 |
710円 |
756円 |
660円 |
食事に関する費用 |
174円 |
427円 |
690円 |
849円 |
文化・体育・娯楽に関する費用 |
141円 |
161円 |
176円 |
183円 |
私的保険制度への拠出金 |
111円 |
157円 |
367円 |
1,027円 |
労災付加給付の費用 |
35円 |
67円 |
123円 |
159円 |
慶弔見舞等の費用 |
168円 |
198円 |
204円 |
172円 |
財形貯蓄奨励金・給付金および基金への拠出金 |
64円 |
34円 |
45円 |
41円 |
その他の法定外福利費 |
204円 |
309円 |
353円 |
362円 |
法定外福利費全体では、企業規模が大きいほど1人あたりの1カ月の費用は大きくなっていますが、全ての福利厚生が企業規模が大きいほど充実しているわけではありません。
以上より、企業規模で福利厚生費に差が出ているのは、給与額と「住居に関する費用」の差によるものといえそうです。
年々増える法定福利費
法律で対象となる従業員や保険料の計算方法が定められている法定福利は、年々費用が増えています。2011・2016・2021年の「就労条件総合調査」をもとに、企業規模ごとの1人あたり1カ月分の法定福利費の推移を見ていきましょう。
企業規模 |
2011年 |
2016年 |
2021年 |
全体 |
4万4,770円 |
4万7,693円 |
5万283円 |
1,000人以上 |
4万9,130円 |
5万3,254円 |
5万4,348円 |
300~999人 |
4万4,000円 |
4万8,216円 |
5万804円 |
100~299人 |
4万3,315円 |
4万3,641円 |
4万8,024円 |
30~99人 |
3万9,939円 |
4万1,349円 |
4万5,819円 |
今後はパートやアルバイトなど非正規雇用で働く従業員のうち、社会保険の対象となる従業員が増える方向です。1人あたりの法定福利費の増加に加え、法定福利費がかかる従業員が増加することで、企業の負担する法定福利費はますます増えていくと考えられます。
参考:
厚生労働省|平成23年就労条件総合調査の概況
厚生労働省|平成28年就労条件総合調査の概況
厚生労働省|令和3年就労条件総合調査の概況
手厚い福利厚生を求める求職者
「2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)」によると、就活生が大手企業の選考に参加した決め手として51.5%が「福利厚生が手厚い」ことをあげています。
福利厚生を重視して企業選びをする傾向は、転職活動も同様です。Re就活が行った20代アンケートでは、就業経験3年以上の34.7%が、新卒で就職活動をしていたときよりも「福利厚生・手当」を重視するようになったと回答しています。
Create転職の「転職活動で重視するポイントは?求人で重視する項目」でも、求人で重視するポイントとして「福利厚生が充実しているか」をあげる人は38.5%、「有給休暇を取得しやすいか」をあげる人は46.2%です。
福利厚生の充実度は、求職者が企業を選ぶときの基準のひとつとなっています。このような状況の中、必要な人材の確保に向けて、福利厚生の充実度アップが求められています。
参考:
マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)
PR TIMES|約7割が「転職活動で重視するポイント」は、就職活動時と異なると回答。就職活動時と比較して重視するようになった点、1位は「仕事内容」。2位は「今後のキャリアビジョン」/20代アンケート
Create転職|転職活動で重視するポイントは?求人で重視する項目
多様な人材が活用しやすい福利厚生の導入
少子高齢化による生産年齢人口の減少により、人手不足が進行しています。これまでは正規雇用の従業員としてフルタイムで勤務できる人材を中心に採用していた企業でも、正規雇用の従業員のみでは人材が不足するケースもあるでしょう。
企業が人材を確保して、これまで通り運営できるようにするためには、多様な人材が働きやすい環境を整備する福利厚生が必要です。
例えば短時間勤務制度・休暇制度・フレックスタイム制度などを導入すれば、育児・介護・治療などによりフルタイムで働くのが難しい人材の活躍を促せます。
また海外人材の活用を目指すなら、寮の整備や帰国費用の補助制度などを設けてもよいでしょう。
関連記事:【社労士監修】DEIB推進が企業価値向上に果たす役割とは|新しい時代の戦略
中小企業が福利厚生を導入すべき理由
中小企業が福利厚生を充実させると、どのようなメリットがあるのでしょうか?中小企業が福利厚生を導入すべき理由を紹介します。
従業員満足度アップにつながる
従業員満足度とは、企業の働きがい・働きやすさ・制度・職場環境などに対する、従業員の満足度を示す指標のことです。働きやすい環境や制度が整っている企業では、従業員満足度が高くなりやすい傾向があります。
福利厚生を導入して、働きやすい環境を整えられれば、従業員満足度アップに役立つでしょう。
関連記事:【2024年】従業員満足度が高い企業ランキング6選!取り組み事例も紹介
人材確保につながる
福利厚生が充実しており働きやすい環境が整っている企業は、求職者にとって魅力的です。実際に新卒の就活生も、転職を目指す求職者も、企業選びのときに福利厚生を重視する傾向が見られます。求職者の求める福利厚生を充実させることで、スムーズな採用が期待できるでしょう。
また今いる従業員の定着を促すことにもつながります。同業他社と比べて充実した福利厚生が整っていれば、よりよい条件を求めて転職する従業員を減らせるためです。
関連記事:人材確保をかなえる実践的取り組み事例集|魅力ある企業になるために
業績アップにつながる
福利厚生によって従業員が働きやすい環境を整備できれば、業績アップにつながりやすくなります。
例えば休暇制度やフレックスタイム制でプライベートとのバランスが取りやすくなれば、リフレッシュして仕事に臨めるでしょう。パフォーマンスの向上により、成果につながるアイデアが生まれることも期待できます。
食事手当でバランスのよい食事をとりやすくしたり、ジムの費用補助で運動不足の解消に取り組みやすくしたりすれば、従業員は健康を維持しやすくなるでしょう。体調が整っていれば、業務へ集中しやすくなることも期待できます。
また研修制度や資格取得支援を行えば、従業員のスキルアップによってこれまでは難しかった商品やサービスの開発・提供ができるかもしれません。
結果として、福利厚生の充実度アップは業績アップにもつながる取り組みといえます。
人的資本経営につながる
経済産業省のホームページによると、人的資本経営の定義は以下の通りです。
人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です
環境・社会・ガバナンスといった非財務情報を指標とするESG投資に取り組む投資家が増えていることから、人的資本経営への取り組みは資金調達を考える企業にとって重要性を増しています。
またリクルートの実施した「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査 2024」によると、求職者は人的資本の情報開示が充実している場合、その企業の選考に対する優先度が高まる傾向があると分かりました。人材確保の点からも注目されています。
そのような人的資本経営を実践するにあたり、人材の価値を最大限に引き出すには、従業員が満足して働けるよう福利厚生による待遇改善が重要です。
2023年から上場企業を対象に義務化された、人的資本の情報開示19項目に福利厚生が含まれていることからも、福利厚生は人的資本経営に欠かせない要素といえます。
7分野 |
19項目 |
育成 |
リーダーシップ |
育成 |
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スキル/経験 |
|
エンゲージメント |
エンゲージメント |
流動性 |
採用 |
維持 |
|
サクセッション |
|
ダイバーシティ |
ダイバーシティ |
非差別 |
|
育児休業 |
|
健康・安全 |
精神的健康 |
身体的健康 |
|
安全 |
|
労働慣行 |
労働慣行 |
児童労働/強制労働 |
|
賃金の公正性 |
|
福利厚生 |
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組合との関係 |
|
コンプライアンス/倫理 |
コンプライアンス/倫理 |
関連記事:人的資本経営とは?事例を用いて解説!メリットや導入のステップ
大企業と中小企業の福利厚生の違い
法定外福利費全体で見ると、企業規模が大きいほど金額が大きくなっていることが「令和3年就労条件総合調査の概況」から分かります。ただし法定外福利の種類によっては、中小企業の方が金額が大きいものもあります。法定外福利費の内訳をチェックしましょう。
企業規模 |
1,000人以上 |
300~999人 |
100~299人 |
30~99人 |
法定外福利費合計 |
5,639円 |
4,567円 |
4,546円 |
4,414円 |
住居に関する費用 |
3,974円 |
2,506円 |
1,832円 |
960円 |
医療保険に関する費用 |
768円 |
710円 |
756円 |
660円 |
食事に関する費用 |
174円 |
427円 |
690円 |
849円 |
文化・体育・娯楽に関する費用 |
141円 |
161円 |
176円 |
183円 |
私的保険制度への拠出金 |
111円 |
157円 |
367円 |
1,027円 |
労災付加給付の費用 |
35円 |
67円 |
123円 |
159円 |
慶弔見舞等の費用 |
168円 |
198円 |
204円 |
172円 |
財形貯蓄奨励金・給付金および基金への拠出金 |
64円 |
34円 |
45円 |
41円 |
その他の法定外福利費 |
204円 |
309円 |
353円 |
362円 |
「食事に関する費用」や「私的保険制度への拠出金」などは、企業規模が小さいほど費用が大きくなっています。
また大企業と中小企業の差が大きいのは「住居に関する費用」です。企業規模が大きいほど費用が大きいため、中小企業で拡充できれば大企業との福利厚生の差を縮められます。
中小企業におすすめの福利厚生サービス
中小企業が福利厚生を充実させるときには、手間や費用を抑えて導入しやすい福利厚生サービスの活用が向いています。
ここでは大企業との待遇差を縮めるのに役立つ住居に関する福利厚生「freee福利厚生」と、対象の従業員が平等に利用しやすい食事に関する福利厚生「チケットレストラン」について見ていきましょう。
関連記事:パート・アルバイト・契約社員 にも「第3の賃上げ」を!ラウンドテーブルを開催~“年収の壁”を抱える非正規雇用にも、福利厚生で実質手取りアップを実現~
住居に関する福利厚生を充実させられる「freee福利厚生」
「freee福利厚生」は借り上げ社宅の仕組みを手間なく導入できる福利厚生サービスです。導入に伴い発生する、必要書類の準備や確認・承認などの手続きを、全て任せられます。
利用時には従業員が不動産会社とともに探した物件を、企業が契約し、従業員へ社宅として貸し出す流れです。
従業員へ社宅を提供するときには、家賃相当額の50%以上を企業が受け取っていれば、従業員の給与として課税されません。
このとき従業員の給与から家賃相当額の50%以上を天引きし、家賃相当額の残額を現物支給として給与から差し引きます。給与の現金支給が減ることで給与の等級が下がり、従業員の税額が下がる仕組みです。
企業は新たな費用をかけることなく、税額が減る仕組みを利用して、従業員の実質的な手取り額を増やせます。
食事に関する福利厚生を使いやすくする「チケットレストラン」
食事補助も社宅と同様、一定の要件を満たすと従業員の非課税枠で運用ができる福利厚生です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」でも、この仕組みを使って実質的な手取り額アップを実現できます。
また全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できるため、どこで勤務していても利用しやすい公平さも魅力といえます。導入企業では98%の従業員が利用しており、従業員満足度も93%と高い水準のサービスです。
加えて導入や運営のシンプルさもメリットといえます。導入はICカードを従業員へ配布するだけで完了しますし、その後の運営は月に1回チャージ作業を行うのみのため、日常的な運営の手間がかかりません。
中小企業こそ福利厚生を活用しよう
中小企業は大企業と比べると福利厚生費の金額が少なく、制度は手薄といえます。ただし福利厚生の種類によっては、中小企業の方が金額が大きなものもあります。
また大企業との差が大きな福利厚生も、活用する福利厚生サービスによっては差を縮められる可能性もあるでしょう。
中小企業の方が支給が充実している食事補助を、さらに使いやすく充実したものにするなら、エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
人材確保や待遇改善に向けて、制度の導入を検討してみませんか。