人的資本経営は、人材をコストではなく「資本」と捉え、企業価値の向上につなげる経営手法です。本記事では、国内企業の成功事例をもとに、人的資本経営の考え方やメリット、導入ステップを解説します。あわせて、エンゲージメント向上に有効な具体施策や福利厚生サービスも見ていきましょう。
人的資本経営とは
少子高齢化や新型コロナウイルスによるパンデミックなどの影響により、人的資本経営が注目を集めています。経済産業省のホームページによると
人的資本経営とは、人材を『資本』として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方です
と明記されています。
つまり、企業に所属する従業員に関わる経費を単なるコストとしてではなく、企業成長や生産率を向上させる投資対象と捉え、投資することで企業価値を高める経営戦略と言い換えるとわかりやすいでしょう。
あらゆる分野でDX、GXが推進されている現在、人的リソースを軽視する側面もありますが、IT化が進む今だからこそ、ESGやSDGs、健康経営などの側面からも人的資本経営が重要だと考えられています。
投資家なども、以前は投資先企業に対し、利益率や経営成績などを重視する傾向がありましたが、近年はそれに加えて「どれだけ従業員を大切にしているか」も投資先の選定にあたり重要なチェック項目だと捉えています。「従業員への投資を行っているか」「従業員に対して行った投資により利益は上がっているか」などが投資家が重要視する基本的なチェック項目といえるでしょう。
関連記事:人的資本経営とは?エンゲージメント向上が企業価値を高める理由と実践ステップ
人的資本経営の成功事例
人的資本経営を理解するには、実際に人的資本経営に成功している企業の事例が役立ちます。ここでは人的資本経営に取り組む代表的な国内企業20社の事例をチェックしましょう。
旭化成株式会社
旭化成株式会社では、人的資本経営の一環として、人材ポートフォリオを経営戦略と連動させています。事業ごとに必要な人材の質と量を明確にした上で、事業軸と機能軸の両面から、今いる人材を毎年確認しています。
人材の不足分は採用や育成に加え、M&AやCVC投資を通じて外部から獲得する仕組みです。またDX人材をレベル別に定義しており、レベル4・5の高度人材を230名育成する目標を達成しました。
ポイント:必要な人材を定義し、内外で確保する設計
参考:経済産業省|人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集|旭化成株式会社
伊藤忠商事株式会社
伊藤忠商事株式会社の人的資本経営は、労働生産性を軸に人材戦略とKPIを連動させている点が特徴です。大手総合商社の中では規模の小さな同社では、少ない従業員数で競争に勝つため、労働生産性の向上を重視しています。
具体的な施策は、効率化を推進するための20時以降の残業禁止や、経営参画意識を高める従業員持株会への加入促進などです。また、社員数に対する純利益を指標として開示しているのも特徴といえます。このような施策により高い労働生産性を実現したことは、就活生からの高い人気にもつながっています。
ポイント:指標を明確化し働き方と連動させる設計
参考:経済産業省|人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集|伊藤忠商事株式会社
オムロン株式会社
オムロン株式会社の人的資本経営は、グローバルコアポジションを設定し、KPIとしてグローバルコアポジションの現地化比率を設定しているのが特徴です。
迅速な意思決定を行うには、現地に権限を委ねる体制が課題でした。この課題解決にむけて、同社では約200のコアポジションを設定し、必要な能力や経験を明確化した上で人財を選抜・育成しています。その結果、KPIとして設定しているグローバルコアポジションの現地化比率は、2020年度には75%を達成しました。
ポイント:重要ポジションを定義しKPIに設定する設計
参考:経済産業省|人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集|オムロン株式会社
花王株式会社
花王株式会社の人的資本経営は、目標設定や目標管理のためのフレームワークであるOKRの導入による挑戦目標の設定が特徴です。従来のKPI中心の目標管理では、達成前提の運用により挑戦的な行動が生まれにくいという課題がありました。
同社は2021年からOKRを導入し、社員が自ら高い目標を設定し、グループ全体で共有する仕組みに転換しています。これにより部署を超えた対話や連携が促進され、社員から「もっとチャレンジしたい」という声が生まれる変化が確認されています。
ポイント:高い目標設定と全社共有の仕組み
参考:経済産業省|人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集|花王株式会社
ソニーグループ
ソニーグループ株式会社の人的資本経営は、「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」というパーパスを軸に、エンゲージメントを高める設計が特徴です。
多様な事業と人材を束ねる同社ではこのパーパスを共通の価値基準として設定し、グループ各社の迅速な人事運営を実現しています。さらにCEOやCHROが社員と直接対話する機会を継続的に設けることで、パーパスへの共感や会社への信頼向上をはかりました。その結果、2020年度にはエンゲージメント指標が88%と過去最高水準に達しています。
ポイント:共通の目指すべき方向を明確化し対話を通じて浸透させる設計
参考:経済産業省|人的資本経営の実現に向けた検討会 報告書~人材版伊藤レポート2.0~実践事例集|ソニーグループ
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所の人的資本経営は「ジョブ型人財マネジメント」への転換とグローバル基盤の整備が特徴です。
同社では、社会イノベーション事業への転換に伴う、戦略に適合する人材配置が課題でした。この課題を解消するために、約25万人の人材データベースを整備し、役割と成果を明確にしたジョブ型へ移行しています。さらにDX人材の数値目標を、2021年度末までにデータサイエンティスト3,000人と設定し、2021年4月に前倒しで達成しました。
ポイント:人材データと役割定義を連動させる設計
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|株式会社日立製作所
富士通株式会社
富士通株式会社の人的資本経営は、営業職のリスキリングによる職種転換が特徴です。「Fujitsu Uvance」事業への転換に伴い、新たな価値創出人材の不足が課題でした。
同社はこの課題を解決するために、国内営業職約8,000名を対象に、スキルの見える化と導入・実践・専門の3段階研修を実施し、ビジネスプロデューサーへの転換を推進しています。また、全従業員の80%以上が活用している学習プラットフォームの導入により、自律的な学びが浸透しました。
ポイント:人材のリスキリングに向けた段階的な再教育
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|富士通株式会社
日本電信電話株式会社(NTT)
日本電信電話株式会社の人的資本経営は、従業員体験(EX)を軸にしたKPI連動型の人材戦略が特徴です。同社では、事業構造を成長分野へ転換する中で、人材の自律的な成長と配置が課題でした。
この課題を解決するために、ジョブ型人事制度や社内公募制度「Job Board」、企業内大学などを整備し、自律的なキャリア形成を支援しています。さらに抜擢率や申込数、エンゲージメントスコアなどをKPIに設定しました。これにより、人材施策と事業成果を連動させる体制を整えています。
ポイント:施策とKPIを一体で設計する仕組み
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|日本電信電話株式会社
三井住友トラストグループ株式会社
三井住友トラストグループ株式会社の人的資本経営は、従業員のWell-beingを基軸にKPIで管理する点が特徴です。
同社の課題は、価値創造と従業員の働きがいを両立する仕組みの構築でした。そこでWell-beingを健康・パーパスへの共感・認め合う良好な人間関係・自己実現の4要素で定義し、従業員の働きがいと価値創造の好循環を目指しています。実現に向けて、各領域でKGIとKPIを設定し、四半期ごとに経営層が進捗をモニタリングし、戦略をアップデートしていく仕組みとしました。
ポイント:指標設計と定期レビューの仕組み構築
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|三井住友トラストグループ株式会社
北國フィナンシャルホールディングス株式会社
株式会社北國フィナンシャルホールディングスの人的資本経営は、人財エコシステムによる循環型の人材戦略が特徴です。採用・育成・活躍・輩出の4段階で人材を循環させる仕組みにより、戦略の根幹である「地域のクオリティ向上」に貢献できる人材の育成と活用に取り組んでいます。
さらに人材課題を質・量・配置に分け、スキルデータや採用比率、女性管理職比率などのKPIで管理も行なっています。これにより人材戦略と地域価値創出の連動が明確化しました。
ポイント:人材の循環設計とKPI管理
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|北國フィナンシャルホールディングス株式会社
出光興産株式会社
出光興産株式会社の人的資本経営は、自律的キャリア支援による組織横断の人材活性化が特徴です。事業ポートフォリオの転換に向けて、部門の縦割り、視野の狭さ、安定化志向といった課題の解決を目的としています。
目的に向けた具体的な取り組みの1つとして実施したのが、キャリアデザイン部の設立による、自律的なキャリアプラン策定の支援です。さらに交流や業務理解のために、全部門が業務内容を紹介するジョブフェスティバルを開催し、1,100名以上が参加しました。この結果、部門を越えた理解と交流が進み、人材の流動性が高まっています。
ポイント:キャリア支援と部門を横断した交流の取り組み
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|出光興産株式会社
セイコーエプソン株式会社
セイコーエプソン株式会社の人的資本経営は、「As is - To be」ギャップの把握から始まるのが特徴です。事業戦略の達成に必要な、スキル・知識・行動特性を明確にします。その上で、不足している部分を、外部からの人材獲得や内部人材の育成で補います。
この実現に向けて、ローテーション率15%以上、管理職女性比率8%、男性育休取得率100%などのKPIを設定しています。
ポイント:現状と目標達成時のギャップ可視化とKPI連動の設計
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|セイコーエプソン株式会社
株式会社荏原製作所
株式会社荏原製作所の人的資本経営では、全世界で勤務する従業員が「競争し、挑戦する」企業風土の構築に向けて取り組んでいるのが特徴です。この実現に向けて、同社では全世界共通の役割等級や評価制度を整えています。2030年までに、海外拠点で働く人材の現地社員比率を50%まで引き上げるのがKPIです。
加えて、若手研究者との共同研究や、退職者とのネットワーク構築などにより、社外との連携も進めています。
ポイント:重要ポジションの定義とKPIの設定
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|株式会社荏原製作所
株式会社ベネッセホールディングス
株式会社ベネッセホールディングスの人的資本経営は、変革に必要な人材の充足と最適配置を核とする点が特徴です。
人口減少下で企業が持続的な成長を実現するには、人材戦略の再構築が欠かせません。そこで、必要スキルと人数を明確にし、育成・採用・配置・評価する仕組みを導入しました。このアクションをより活性化する方法として、ジョブ型人事制度も導入しています。取り組みの結果、組織を超えた人材の最適化や、若手の抜擢が進んでいるそうです。
ポイント:必要な人材の可視化とアクションプランの設定
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|株式会社ベネッセホールディングス
株式会社メルカリ
株式会社メルカリの人的資本経営は、多様な人材が能力を発揮できる柔軟な働き方制度「YOUR CHOICE」の導入が特徴です。
同社では、グローバル展開を進める中で、多様な人材のパフォーマンス最大化が課題でした。2021年から働く場所・時間・居住地を自由に選択できる制度を導入し、週休3日も選択可能としました。さらに日本国内であれば居住地制限を設けていません。これにより個人と組織のパフォーマンス最大化を図る環境が整いました。
ポイント:働き方の自由度を制度として明確化する設計
参考:人的資本経営コンソーシアム|人的資本経営の現状・課題とトップランナーたちの取組|株式会社メルカリ
人的資本経営が注目される背景
事例から人材を育てたり、働きやすい環境を整えたり、採用したい人材を効率的に確保するための体制を整えたりする人的資本経営の具体的な取り組みを紹介しました。
こうした人的資本経営が注目を集めるようになった背景には、リモートワークやフレックス、成果型、都市部企業に勤めながらの移住など、場所や労働時間にとらわれない多様な働き方が急速に広まったことや新型コロナウイルス感染症の流行などが関係しています。この動きは、終身雇用の概念が薄まった現在、採用や転職活動だけでなく、企業価値にも大きな影響を及ぼしています。
少子高齢化が進む現在、人材確保は全ての企業の懸念事項ともいわれています。投資家たちにとっても従業員を大切にし、人材確保、育成への投資状況やそれによる利益が可視化できる企業、つまり中長期的に人的資本経営に対して真剣に取り組む企業に、良い評価を与えるようになりました。
言い換えれば、人的資本への投資が企業価値や今後の成長も左右するといっても過言ではないでしょう。現在のビジネスシーンで人的資本経営戦略が活発化したのには、2022年に発起人7名で設立された人的資本経営コンソーシアムの影響もあります。
関連記事:人的資本とは何かをわかりやすく解説。今注目されている理由も
人的資本経営コンソーシアムとは
「人的資本経営コンソーシアム」は、日本企業及び投資家等により「人的資本経営の実践」「先進事例の共有」「企業との協力体制」を通じて、日本企業における人的資本経営を実践と開示の両面からの促進を目的として設立されました。経済産業省や金融庁がオブザーバーとして、人的資本経営コンソーシアムに参加するなど、官民一体となって人的資本経営を推進しようとしている、現在の日本経済界の姿勢が垣間見れる組織といえるでしょう。
人的資本経営コンソーシアムは、総会と企画委員会、実践委員会、開示委員会を運営する団体で、以前はコストとして捉えられがちだった「人への投資」を資本と捉え、積極的に改善に取り組む企業が増えることを期待しています。人的資本経営コンソーシアムでは、人的資本経営には、以下の3つの視点と5つの要素から取り組むことが重要だと呼びかけています。
(3つの視点)
- 経営戦略と人材戦略の連動
- As is‐To beギャップの定量把握
- 企業文化への定着
(5つの要素)
- 動的な人材ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキル・学び直し
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
人的資本経営のメリット
人的資本経営コンソーシアムの設立や注目を集めるようになった背景には、人的資本経営のメリットが関係しているでしょう。人的資本経営のメリットを整理します。
採用活動への効果
人的資本経営に注力する企業は育成、教育制度の整備、労働環境や条件の改善など、従業員にとってメリットのある取り組みを行う企業として社外的なアピールができます。結果として「従業員を大切にする企業」として認知される傾向があります。新卒者や求職者などへの採用活動ではポジティブな効果を発揮するでしょう。
従業員のエンゲージメント強化
企業が人的資本経営に取り組むことで、従業員の勤務先企業へのロイヤリティやワークエンゲージメント向上につながります。エンゲージメントが高い従業員が多い企業では、顧客や取引先への態度に現れるものです。社会的な企業のイメージが上がり、さらなる企業成長につながるという好循環が生まれやすいです。
生産性アップ
人間はスキルやモチベーションアップを常に図れる環境では、前向きに業務に取り組めるものです。従業員一人ひとりの生産性が上がり、ひいては企業全体の生産性向上につながります。企業の生産性が上がると企業価値が高まり、多くの出資金や優秀な人材、安定した取引先が自然と集まってくるものです。こうして集まった資本がさらなる企業成長を導くという良いサイクルを生み出します。
株価への好影響
優秀な人材が集まりやすい企業は、人材確保にネガティブな要素がない企業として投資家からも注目を集めやすい傾向です。人的資本への取り組みを強化する企業に投資すること自体が投資家の社会的なイメージを向上させることにつながり、さらなる投資家を呼ぶことになります。最終的には株価が上がる、安定するなど好影響を及ぼします。
人的資本経営導入のステップ
人的資本経営の導入は、慎重にステップを踏んで進めるのがよいでしょう。ポイントとなる人的資本経営のステップを順に見ていきましょう。
①企業理念を明確にする
人的資本経営の実現には、企業が社会的、人道的に目指すべき姿を見定める作業が必要です。そのうえで「ビジョン、ミッション、バリュー」といった明確な理念を設定しましょう。
人的資本経営に向かう企業の姿勢や考えを従業員や社外と共有することで企業の理念に賛同を得られたり、理念に賛同する人材を獲得できたりする可能性が高く、人的資本経営の概念が企業内で浸透するスピードも早まるでしょう。
また、企業が前向きに目指すゴールを設定することで「リスキングにチャレンジしやすい」「ゴール到達のための新しいアイデアを忌憚なく上司に伝えられる」といった従業員にとってのメリットも期待できます。企業が成長する過程にある場合、施策に期待するほどの効果が生じない時期や経営層の意見が割れる時期などがあるものです。こうした状況でも明確で具体的な企業理念がある限り、立ち返る一助となるでしょう。
②目標と現状を受け止める
受験勉強などと同様に企業が何かの目標に向かうときには、現状や課題を知ることがとても重要です。現状の経営課題が、実は人材資本経営を目指すうえでも障害となる可能性もあります。現実を受け止め、前向きに解消に向けて取り組むことが組織や従業員の成長につながりますし、人材資本経営実践に必要な施策や取り組みも明確になるでしょう。
人的資本経営において、ギャップを可視化するには、数字ばかりを追うのではなく、従業員にアンケートを取ったり、専門家に企業内の成長を妨げている要因を調査、分析してもらったりすることも大事です。企業が真に目指すべき姿とそこまでの道のりが見えてくるでしょう。
③CHROの設置
人的資本経営を実践するにはCHROの存在が不可欠だといわれています。CHROとは、Chief Human Resource Officerの頭文字を取ったもので「最高人事責任者」を意味します。つまり、人事に関する業務を経営戦略の視点で統括、戦略実行を担う立場にあり、人事領域に関して投資家をはじめとするステークホルダーと対峙するのがCHROです。
CHROの存在は、人的資本経営戦略を「ぶれることなく推進していく」という社内外へのアピールになります。人的資本を大切にし投資するという一大プロジェクトに対して、責任と権利を行使できる立場です。「本気で人的資本経営を実行する」という企業のシンボル的扱いを受けるポジションでもあります。
人的資本経営に向けた具体的な取り組み例
人的資本経営を具体的に進めるには、新しい取り組みや施策を打ち出す必要があります。人的資本経営に向けた具体的な取り組みの中で、効果を実感しやすく、従業員のエンゲージメント強化につながる施策を解説します。それぞれの強みについて理解を深めましょう。
多様性の尊重を徹底
企業は、所属する従業員の性質や属性、性別、特性、バックグラウンドなど個性を尊重できる環境を整える必要性に迫られています。企業は今や、求職者に選ばれる存在であり「自分らしさ」を叶えられない企業には優秀な人材が集まらないケースも多々見られます。また、働き方改革の中でも触れられている「同一労働、同一賃金」を確立しない限り、離職やエンゲージメントの揺らぎが起こりやすいでしょう。
あらゆる事業がグローバル化する現代、ダイバーシティを受け入れる体制を整えていない企業は取り残されると見られています。人材不足やパワハラの横行など、事業を揺るがしかねない事態に追い込まれる未来が待ち受ける可能性もあります。まずは経営層がダイバーシティとインクルージョンについて学び、社内教育に役立てるところから始めましょう。
関連記事:ダイバーシティ推進で企業価値向上!取り組み事例や経営上のメリットを解説
多様な働き方の推進
ITツールの発展や働き方改革の推進、新型コロナウイルス感染拡大などの影響により、時間や場所にとらわれない働き方が一般的になりました。多様な働き方を企業が認めることにより、今まで女性の社会進出の妨げや少子高齢化の余波として、大きな話題となっていた仕事と育児、介護の両立についても一定の解決策となった側面があります。
多様な働き方は「病気療養しながらも仕事を続けること」「都市部にいながら地方企業で働く」反対に「地方に移住した後も都市部の企業で働く」など、従業員の働きやすさを後押ししています。事情がある人でもキャリアを断絶することなく一つの企業で長く勤めることを可能にしました。
こうした労働条件の緩和も人的資本経営を推進する上で無視できない項目です。人材を大切にし、それぞれの事情を尊重した働き方を選べるようにするために企業が多様な労働条件や労働環境を整えることが喫緊の課題といえます。また、職種上、こうした自由度の高い働き方が難しいポジションに関しては「リモートやフレックス可能な部署の従業員より多い有休を与える」「手当を出す」などの施策もあわせて検討する必要があります。
ワークライフバランスの見直し
長年、日本では従業員の長時間労働が当たり前とされ、むしろ定時出社、定時退社が多い従業員はやる気がないといった見方が優勢でした。しかし、働き方改革や健康経営の論点から仕事とプライベートの両立、つまり良いワークライフバランスが働きがい、生きがいに欠かせないという考え方が一般的になっています。
プライベートを充実させられない働き方を強いる企業では、仕事のモチベーションや生産性、ワークエンゲージメントが下がる傾向があり、離職も多発する傾向です。企業は人的資本経営の実現のためにも、従業員一人ひとりが自分なりのワークライフバランス充実を叶えられる労働環境づくりに取り組む必要があります。
関連記事:【社労士監修】ワークライフバランスの取り組み事例を紹介。メリットや注目の理由も解説
社内教育とキャリアアップ制度の整備
人的資本経営の肝となるのは「従業員に投資し、定着と成長を促すこと」です。従業員の学び直しを後押しし、意欲ある従業員にはキャリアチェンジやキャリアアップの道を開くことも人的資本経営の大事な施策の一つです。
学習や研修ツールの選定や制度の整備も大切ですが、従業員それぞれが成長のために必要とする時間を企業が提供することも大事な役割の一つです。業務の見直しや必要なときは特別休暇、特別手当などの提供も視野に入れましょう。
給与や福利厚生などの待遇の充実
人的資本経営を実現するには、従業員が満足して働けるよう待遇を見直すことも大切です。分かりやすい評価制度や昇給なども検討、整備しましょう。ただし、評価制度や給与の見直しは一朝一夕に推進できるものではありません。
そこで税制措置でも優遇される福利厚生を充実させ、待遇を改善させるのが企業と従業員の双方にとって早急に取り組みやすくモチベーションやロイヤリティの向上につながりやすい施策といえるでしょう。
労働政策研究・研修機構の実施した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」では、従業員に対して制度の有無を調査し、「ある」と回答した人を対象に利用の有無を質問しています。この結果によると、利用率が50%を超えているのは、食堂や食事手当といった食事に関する福利厚生でした。
エデンレッドジャパンが高校生以下の子どもがいるビジネスパーソンを対象に行った「コロナ共存時代における家計と生活支援に関する調査」をみると「今後導入を望む福利厚生・手当とその導入率」という設問の中でも食事補助を希望する割合は46.9%と最も多いという結果が出ています。食費は今や家計を圧迫する要因の一つとなっているので、何らかの社食サービスを導入してほしいと望む声が高まるのは当然のことといえるでしょう。
出典:エデンレッドジャパン コロナ共存時代における家計と生活支援に関する調査
現代のビジネスシーンでおすすめなのが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン 」です。電子カード配布型の食事補助サービスで、従業員の食事代をサポートできます。手間やコストを抑えつつ、効果的な福利厚生を導入できる方法といえます。
参考:労働政策研究・研修機構|企業における福利厚生施策の実態に関する調査
人的資本経営につながる福利厚生サービス例
人的資本経営につながる取り組みの中では、福利厚生の充実が早道で、人的資本経営に乗り出す企業の意気込みが従業員に伝わりやすい施策といえるでしょう。人的資本経営の実現につながりやすく、また人的資本経営の観点から見ても、企業と従業員の双方にメリットが高い福利厚生サービスをいくつか紹介します。
チケットレストラン|エデンレッドジャパン
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国にある加盟店25万店舗以上で、実質半額で飲食ができる食事補助の福利厚生サービスです。業務中の食事や飲み物を購入できます。
加盟店の他に「 Uber Eats 」でのデリバリーでも利用可能なため、出社する従業員はもちろん、リモートワークやワーケーション、交代制シフトや出張など多様なワークスタイルで勤務する従業員が利用しやすいサービスです。
加えて、一定の条件を満たして導入すると、所得税の非課税枠を活用できるため、実質的な手取りアップにもつながります。詳細については、こちらの「資料請求」から問い合わせ可能です。
ベネフィット・ステーション|株式会社ベネフィット・ワン
「ベネフィット・ステーション」は、加入企業の従業員が映画やショッピング、観光など全国各地140万件以上の施設の割引優待を受けられる総合福利厚生サービスです。業界トップシェアを誇るサービスで導入企業法人は、16,000社を超えています。
ベネフィット・ステーションはレジャー施設などでの利用が知られていますが、フィットネス施設や介護サービスの利用割引や健診データと結びつけて従業員の健康状態を可視化する健康支援サービスも整っています。
人的資本経営に向けたサービスとして、従業員教育の面にも力を入れているのがベネフィットステーションの強みです。英会話やビジネススキルなど384もの講座や研修を開講しており、人事や労務は、従業員一人ひとりのベネフィットステーション利用頻度も管理できるシステムになっています。従業員それぞれが、自己啓発にどれだけ注力しているかも把握できます。
参照:https://bs.benefit-one.co.jp/bs/pages/bs/top/top.faces
ライフサポート倶楽部|リソルライフサポート株式会社
リソルライフサポート株式会社が提供する「ライフサポート倶楽部」は、「ウェルビーイング」を意識した総合福利厚生代行サービスです。ライフサポート倶楽部は、特に、女性活躍支援に注力しており、出産、育児、介護にまつわるサービスを広く提供しています。保養やワーケーションに利用できる施設利用にまつわるサービスもあり、日々の健康管理や息抜きだけでなく、リフレッシュもサポートします。
健康を意識した福利厚生は、企業が「従業員の健康や幸せに配慮している」と示しやすいでしょう。企業への満足度やエンゲージメントにつながりやすい福利厚生サービスとして注目されています。
参照:https://www.fukuri-resol.jp/fukuri.html#section02
オフィスおかん|株式会社OKAN
「オフィスおかん」も従業員からの支持が高い食事補助サービスで社食代わりに導入する企業が増えています。オフィスおかんは、オフィスに家庭的なお惣菜などのミールを常備する食事補助サービスです。
メニューは全て、栄養管理士が監修し、可能なかぎり添加物を使わない新鮮なミールが揃っています。従業員が味に飽きないように、毎月複数の新メニューを考案するなどさまざまな工夫がされています。安いものだと1品100円から購入でき、主食と主菜から副菜まで幅広いバラエティが人気の理由といえるでしょう。
WELBOX|株式会社イーウェル
「WELBOX」は、株式会社イーウェルが提携契約している全国各地の施設やサービスを組み合わせ自由で利用可能なパッケージ型福利厚生サービスです。専用Webサイトやスマホアプリ、ガイドブックから提携先の施設やサービスを検索し、いつでも自由に会員価格で利用できます。
WELBOXの特徴は企業ごとにカスタマイズが可能なことです。自治体の補助金制度などを運用することにより、子育てや介護、特定地域の宿泊施設などの利用に手厚い割引を加えられます。企業から従業員への想いが伝わりやすいサービスとして注目されています。
参照:https://www.ewel.co.jp/category/service/welbox
人的資本経営に関するよくある質問
人的資本経営について、よくある質問を見ていきましょう。
Q1. 人的資本経営とは簡単にいうと何ですか?
人的資本経営とは、人材をコストではなく「価値を生み出す資本」と捉え、育成や配置に投資することで中長期的な企業価値向上を目指す経営手法です。従業員のスキルやエンゲージメントを高めることで、競争力の強化につなげます。
Q2. 人的資本経営と従来の人事との違いは何ですか?
従来の人事制度では労務管理や制度運用が中心でしたが、人的資本経営では経営戦略と連動した人材投資が重視されます。KPIを設定し、育成や配置の成果を数値で管理・開示する点が大きな違いです。
Q3. 人的資本経営は中小企業でも導入できますか?
人的資本経営は中小企業でも取り組めます。まずは必要な人材要件を明確にして、育成や配置の優先順位を決めることが重要です。すべてを一度に整備するのではなく、KPIを1つ設定するなど、小さく始めることで実行しやすくなります。
Q4. 人的資本経営の具体的な施策にはどのようなものがありますか?
主な施策としては、スキルの可視化、リスキリング、社内公募制度、ジョブ型人事制度の導入などがあります。また、エンゲージメント向上を目的とした福利厚生の充実や柔軟な働き方の整備も、人的資本経営の一環です。
Q5. 人的資本経営はなぜ投資家から評価されるのですか?
人材への投資は中長期的な企業成長につながるためです。人的資本の情報を開示することで、企業の成長性や持続性が可視化され、投資判断の材料として評価されやすくなります。
人的資本経営は企業と従業員の未来を守る戦略
人的資本経営は従業員を資産として捉える経営戦略です。経済産業省が中心となり政府も後押ししています。企業の存続に関わる人材確保にも影響を与える取り組みです。
紹介した事例のポイントを参考にしながら、自社でもできることから始めるとよいでしょう。手軽に始めやすい、エンゲージメント向上に向けた福利厚生の充実を実施するのもおすすめです。
例えば、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」 を導入すれば、従業員がバランスのよい食事をとりやすくなるのはもちろん、実質的な手取りアップにもつながります。人的資本経営の実現に向けた一歩として、まず検討してみませんか。
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