社会保険料未納や税金滞納による会社倒産が急増しています。帝国データバンクの調査によると、2023年度には過去最多の138件を記録しており、2024年も増加傾向です。本記事では、最新の倒産動向やリスク・効果的な対策について解説します。自社の現状把握やリスク分析の参考にしてください。
「公租公課滞納」倒産の急増傾向と最新統計
社会保険料や税金の未納を原因とする「公租公課滞納※」倒産が急増しています。
帝国データバンクが行った【「公租公課滞納」倒産動向調査(2023年)】をもとに、その詳細を解説します。
※公租公課=税金や社会保険料など、公的な負担金のこと
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|「公租公課滞納」倒産動向調査(2023 年度)|(2024年4月25日)
2023年度の倒産件数は138件で過去最多
帝国データバンクの調査によると、2023年度の「公租公課滞納」による倒産件数は138件に達し、過去最多を記録しました。この数字は、2022年度の97件から1.4倍に増加しており、支払いが猶予されていたコロナ禍の2020年度(46件)と比較すると、実に3倍にも及びます。
出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|「公租公課滞納」倒産動向調査(2023 年度)|(2024年4月25日)
2024年も過去最多ベースで推移
特に注目すべきは、2024年に入ってからの急激な増加傾向です。2024年1月には14件、2月には16件、そして3月には20件と、毎月過去最多を更新し続けています。この3ヶ月間だけで50件の倒産が発生しており、事態の深刻さを物語っています。
この急増の背景として考えられるのが、コロナ禍で設けられた納付猶予の特例措置の終了です。特例措置によって一時的に支えられていた企業の中に、措置終了後の支払いに窮するケースが多く見られます。
業種別・態様別にみる「公租公課滞納」倒産の実態
「公租公課滞納」倒産は、特にどのような業界で、どのような態様で行われているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
業種別ではサービス業が最多
帝国データバンクの調査によると、2020~2023年度の4年間で発生した334件の倒産を業種別に見た場合、最も多かったのはサービス業の86件で、中でもソフトウェア開発などの業種で多く発生しています。
次いで運輸・通信業が64件、建設業が55件、製造業が48件と続いています。
出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|「公租公課滞納」倒産動向調査(2023 年度)|(2024年4月25日)
これらの倒産の大半が中小企業で発生していることが特徴です。中小企業は大企業と比べて財務基盤が脆弱であり、社会保険料や税金の未納が資金繰りに直接的な影響を与えやすいことが要因と考えられます。
清算型倒産が大多数を占める現状
企業の倒産は、「清算型」と「再建型」の2種類に分かれます。このうち「清算型」は、会社としての営業活動を停止し、資産を売却して債務弁済にあてる倒産の態様です。対する「再建型」は、債務の弁済をしつつ会社の建て直しを目指す倒産の態様です。
帝国データバンクの調査では、ほとんどのケースで破産となり「清算型」の倒産が多く見られました。2020~2023年度の 倒産累計334 件のうち、清算型が314件で94.0%を占め、「再建型」はわずか20件に留まります。
この数字は、多くの企業が事業の継続を断念せざるを得ない厳しい状況に置かれていることを示しています。
社会保険料滞納の現状と企業への影響
社会保険料の滞納は、多くの企業が直面している深刻な問題です。その現状と、滞納が企業へ与える影響について紹介します。
滞納事業所数の推移と適用事業所全体に占める割合
日本年金機構の報告によると、2022年度末時点で社会保険料を滞納している事業所は14万811事業所に上り、適用事業所全体に占める割合は5.2%となっています。前年度に比べて減少したものの、依然として多くの企業が納付に困難を抱えていることが示される結果となりました。
出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|「公租公課滞納」倒産動向調査(2023 年度)|(2024年4月25日)
滞納が企業経営に与える具体的リスク
社会保険料の滞納は、企業経営に多大なリスクをもたらします。
具体的には、資産の差し押さえや取引先からの信用低下、金融機関からの融資拒否などです。これらは企業の事業継続を直接的に脅かす要因となります。
従業員への影響と人材流出の可能性
社会保険料の滞納は、企業の信頼性に影響を与え、従業員に不安を与える可能性があります。長期的な滞納が続くと、間接的に従業員の福利厚生や将来の年金に影響が出る可能性も否定できません。
これらの問題は従業員の会社への信頼を損ない、優秀な人材の離職リスクを高める可能性があります。
「公租公課滞納」倒産の背景と要因分析
「公租公課滞納」倒産の増加には、複数の要因が絡み合っています。ひとつずつ紐解いていきましょう。
コロナ禍特例措置終了後の影響
コロナ禍で設けられた特例措置の終了が、多くの企業に影響を与えています。最長3年にわたる納付猶予措置が企業の資金繰りを支えてきましたが、その終了後に支払いに窮する企業が増加しています。
物価高騰による企業財務への圧迫
物価高騰も、企業財務を圧迫する大きな要因となっています。原材料費や光熱費の上昇が企業の収益を圧迫し、社会保険料や税金の納付に充てる資金の確保を困難にしています。
中小企業特有の資金繰り課題
中小企業は、特に資金繰りの課題に直面しやすい状況にあります。大企業と比べて財務基盤が脆弱であり、急激な経営環境の変化に対応しきれないケースが多く見られます。
企業が取るべき未納対策と事業継続のための戦略
未納問題に直面した企業が取るべき対策について、具体的に解説します。
早期の専門家相談と対応策の検討
未納問題に気づいた際は、速やかに税理士や社会保険労務士などの専門家に相談することが重要です。専門家は法律や制度に精通しており、企業の状況に応じた最適な対応策を提案することができます。
納付猶予制度の活用方法
一時的な資金不足の場合、納付猶予制度の活用を検討しましょう。国の制度として「厚生年金保険料等の猶予制度」や「国税の猶予制度」があり、条件を満たせば納付の猶予が認められる可能性があります。
参考:厚生労働省|厚生年金保険料等の猶予制度について
参考:国税庁|納税に関する総合案内
資金繰り改善のための具体的アプローチ
資金繰り改善の基本は収益構造の見直しです。不採算事業の整理や高収益事業への注力、コスト削減などを検討しましょう。また、新規顧客の開拓や既存顧客へのアップセルなど、売上増加策も重要です。
経営基盤を支える優秀な人材の獲得に有効な「福利厚生」
企業の持続的成長には、優秀な人材の獲得と定着が不可欠です。
しかし、近年、少子高齢化による労働力不足が深刻化し、人材の確保・定着は困難さを増しています。そんな中で、他社との差別化を図るために多くの企業が検討・実施しているのが、新たな福利厚生の導入です。
充実した福利厚生が果たす役割は、従業員の生活支援に留まりません。従業員の会社に対する帰属意識や満足度を高め、優秀な人材の定着率向上や生産性の向上・ひいては企業の競争力強化にも寄与します。
なお、魅力的な福利厚生は、新たな人材の獲得にも効果的です。人材確保が困難な現在の労働市場において、大きなアドバンテージとなります。
社会保険料・税金未納への対策と企業の持続可能な成長戦略
社会保険料や税金の未納による倒産リスクが高まる中、企業は早急な対策が求められています。まず、資金繰りの改善や納付猶予制度の活用など、直接的な対策を講じることが重要です。同時に、専門家への相談を通じて、自社の状況に適した戦略を立てることが不可欠です。
しかし、これらの対策は一時的な解決策に過ぎません。長期的な企業の持続可能性を確保するためには、優秀な人材の獲得と定着が鍵となります。そのために、福利厚生の充実など、従業員満足度を高める施策が効果的です。
例えば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国25万店以上の加盟店での食事を半額補助する食事補助の福利厚生サービスで、利便性の高さからすでに2,000社を超える企業に導入されています。
未納問題への対処と、魅力的な福利厚生をはじめとする人材戦略を適切に組み合わせることで、企業は現在の危機を乗り越え、より強固な経営基盤を築くことができるでしょう。社会保険料や税金の適切な納付は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、持続的な成長への指標なのです。