女性管理職を増やすことは、企業の生産性向上やイノベーション創出に直結する重要な経営課題です。一方で、管理職に占める女性比率は依然として1割台にとどまり、女性活躍が十分に推進されているとはいえません。本記事では、最新データと企業事例をもとに、女性管理職を増やすための具体的な方法と、活躍し続けられる環境づくりのポイントを分かりやすく解説します。
女性管理職が増えない日本の現状
政府の積極的な後押しにもかかわらず、日本の女性管理職比率は依然として低迷しています。まずは、日本における女性管理職の現状から解説します。
日本の女性管理職比率は依然として低迷

出典:厚生労働省|令和6年度雇用均等基本調査|調査の概要|企業調査
日本企業における女性管理職比率は、依然として低い状況が続いています。
厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」によると、管理職に占める女性の割合は、係長相当職以上で15.8%、課長相当職以上で12.3%でした。役職が上がるほど女性比率が下がる構造が明確で、女性管理職の割合は1割台にとどまっています。
また、企業規模が大きいほど女性管理職比率が低下する傾向も続いており、役職序列と企業規模の双方で“昇進の壁”が残っている状況です。こうした構造は、若手女性のキャリア形成やリーダー経験の不足につながり、管理職層での男女格差を固定化させる要因となっています。
関連記事:【社労士監修】女性管理職比率の公表義務化へ|企業の女性活躍はどう進めるのが正解?
政府目標「2030年30%」は大幅に未達の見込み
2003年、政府は女性活躍推進目標を「2020年までに指導的地位※に占める女性の割合を30%にする」と定めました。
しかし、2020年に目標は達成できず、同年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画において、「2030年代には指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す」として、事実上「2030年30%」目標へと修正されました。この目標も、大幅に未達となる見込みです。
なお、東証プライム市場上場企業に対しては、2023年6月に決定された「女性版骨太の方針2023」の中で「2025年を目途に女性役員を1名以上選任するよう努める」「2030年までに女性役員の比率を30%以上とすることを目指す」という段階的な目標も設定されています。
※女性管理職比率の統計は厚生労働省の「係長相当職以上」を基準としています。政府目標「2030年30%」は、役員や課長級以上の“指導的地位”が対象です。
参考:内閣府男女共同参画局|第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定)
参考:男女共同参画推進本部|女性活躍・男女共同参画の重点方針 2023(女性版骨太の方針 2023)
女性管理職を増やすメリット
女性管理職が増えることは、単なるダイバーシティ推進にとどまらず、企業の成長力や組織の競争力を高める重要な要素です。ここでは、女性管理職を増やすことで企業が得られる具体的なメリットを紹介します。
多様性が組織の意思決定を強くする
女性管理職が増えるメリットとして、まず挙げられるのが、組織の意思決定の質の向上です。
性別・価値観・キャリア背景が異なるメンバーが意思決定層に加わることで、盲点となるリスクを発見しやすく、顧客視点を踏まえた判断が可能となります。特に、女性消費者が購買の主導権を握る領域では、女性管理職の存在が製品企画やサービス開発の精度を高める効果が期待できます。
多様な価値観が交わることで生まれる組織内のコミュニケーション活性化やイノベーションの創出は、企業の成長を後押しする重要な資源です。
業績・ESG評価が向上する
女性が管理職や役員として登用されている企業は、ESG評価※の向上や、投資家からの評価が高まる傾向があります。
特に、E・S・Gのうち「S(社会)」の観点から、女性活躍推進は国際的にも重視されており、ガバナンスの健全性を示す重要な指標のひとつとなっています。また、多様性を重視する企業風土は、従業員のエンゲージメント向上や生産性の向上を後押しするものです。
女性登用は、企業の社会的評価を高めるだけでなく、持続的な成長の基盤となる要素なのです。
※ESG評価とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の観点から企業の持続可能性を評価する指標です。
優秀な女性人材の採用・定着率が向上する
女性管理職が増えることは、若手女性従業員のキャリア形成に大きな影響を与えます。同じ組織にロールモデルがいることで、キャリアの見通しを描きやすくなり、離職防止にも効果があるからです。
また、採用市場でも「女性活躍が進んでいる企業」は強いアピールポイントになり、優秀な女性人材の応募が増える好循環が生まれます。
採用・定着の両面において、女性管理職の存在は企業の競争力を高める重要な資源といえます。
女性が管理職になりにくいのはなぜ?
女性が管理職へ進みにくい背景には、個人の意欲だけでは解決できない構造的な課題が横たわっています。ここでは、女性の働き方に特に大きな影響を与えている4つの要素について解説します。
昇進意欲を下げる“長時間労働”のイメージ
管理職=「長時間労働」「家庭との両立が難しい」という固定観念は、女性の昇進意欲を引き下げる大きな原因のひとつです。
特に日本では、管理職が実質的に"残業を前提とした働き方"になっている組織も多く、家事・育児・地域活動を担う時間が多い女性ほど、管理職を「自分事として想像しにくい」状況に置かれます。
また、周囲への迷惑を懸念して、「責任が重い役職につくのは難しい」と感じ、自ら昇進を諦めてしまうケースも珍しくありません。
こうした"イメージの壁"は、制度だけを整えても改善が進まない大きな要因です。管理職の働き方そのものを見直し、時間ではなく成果で評価する文化づくりが求められます。
ライフイベントでキャリアが中断される不安が大きいから
女性は妊娠・出産・育児・介護といったライフイベントが重なりやすく、キャリアの連続性が保ちにくいという構造的課題を抱えています。
中でも40代以降の世代は「ビジネスケアラー」が急増し、働きながら親の介護を担うケースが少なくありません。
たとえ勤務先の制度が整っていたとしても「迷惑をかけたくない」「キャリアに影響しそう」という心理的ハードルが強く、結果として昇進や挑戦をためらう行動につながるのも大きな特徴です。こうした現状に対処するには、両立支援策の認知向上と、両立をためらわない心理的安全性の確保が不可欠です。
アンコンシャス・バイアスが機会を奪っているから
アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)は、女性のキャリア形成に大きな影響を与える要因のひとつです。
代表例として「家庭があるから負担の大きい仕事は避けさせた方がいい」「女性にはプレッシャーが強すぎるかもしれない」といった"配慮"が挙げられます。これらは一見、善意に見えますが、実質的には女性の経験機会を奪い、管理職への道を狭める要因になります。
また、評価や登用の場面でも「男性の方が任せやすい」という無意識の選別が起こりがちです。企業側は、管理職を対象としたバイアス研修や意思決定プロセスの透明化を進め、機会の公平性を確保する必要があります。
管理職経験を積む機会そのものが少ないから
管理職に必要な経験を積む機会が男性より少ないことも、女性登用が進みにくい根本的な要因のひとつです。
若手〜中堅層でリーダー職やプロジェクト管理を任される頻度が低い職場では、女性を含む従業員一人ひとりの自信の醸成やスキル形成が遅れ、結果として管理職候補層に十分な人材が育ちません。
対策としては、企業が積極的にチャレンジの機会を提供し、ジョブローテーションやメンター制度を組み合わせるなど、経験の格差を埋める取り組みが挙げられます。
経験と自信の不足は個人の問題ではなく、組織設計の問題と捉えることが重要です。
女性が活躍する企業
女性活躍が進む企業には、共通して「登用を後押しする仕組み」と「働き続けられる環境」の双方が整っています。
女性誌「日経WOMAN」と日本経済新聞社グループの「日経ウーマノミクス・プロジェクト」が共同で調査・発表している2025年版「女性が活躍する会社BEST100」の"管理職登用部門"は、次のような結果になっています。
| 順位 | 企業名 |
|---|---|
| 1位 | EY Japan |
| 2位 | PwC Japanグループ |
| 3位 | 日本航空 |
| 4位 | イオン |
| 5位 | メットライフ生命保険 |
「課長職から経営層まで女性リーダーを輩出しているか」を評価するこの部門では、EY Japan、PwC Japanグループ、日本航空などが上位に選出されました。
上位企業に共通するのは、早期からのリーダー育成制度の充実や、重要な職務への積極的な女性登用などの"計画的な育成投資"です。
女性管理職を増やす施策を、単発ではなく組織全体の運営方針として根付かせることの重要性が分かる結果となっています。
参考:日経BP|2025年版「女性が活躍する会社BEST100」 総合ランキング1位はEY Japan
参考:日経xwoman|3位ANA、4位東京海上、1位は?女性が活躍する会社ランキング
女性管理職を増やすには?3つの方法
女性管理職を計画的に増やすには、個人の努力に任せるのではなく、企業主導の積極的な取り組みが欠かせません。ここでは、女性管理職を増やすために効果的な3つの方法を紹介します。
経営層が「女性登用」を明確に打ち出す
女性管理職比率を高める取り組みは、経営層の明確なコミットメントがあるかどうかで成果に大きな差が生まれます。
経営層の方針が曖昧な企業では、部門ごとの指針や判断が統一されません。結果として、価値観や体制の刷新も遅れ、女性が挑戦する機会を得にくくなります。
経営層の姿勢を明確にするためには、まず女性管理職比率の数値目標を掲げ、登用状況を社内外に見える化することが重要です。加えて、管理職候補の早期発掘やキャリア面談など、長期的な育成を前提とした仕組みづくりを進めると効果的です。
経営層のコミットメントは"行動の優先順位"に影響を与え、組織全体に女性登用を促進する空気をつくります。
女性社員が"管理職に挑戦できる機会"を増やす
女性が管理職に進む上で、もっとも大きな壁となるのが「経験不足」です。
キャリアの早い段階で、プロジェクトリーダーやチーム責任者を経験する機会が少ないまま年次だけが進んだ場合、管理職候補としての成長が遅れます。
特に、慣例として男性にのみこうした経験を積むチャンスが与えられている企業では、男女の昇進チャンスや実績の格差を埋めることは困難です。
挑戦の経験が増えれば、男女問わず「自分にもできる」という自信が芽生え、昇進意欲の向上にもつながります。今ある"チャンスの配分"を見直すことが、女性登用の根本的な対策のひとつです。
管理職に必要なスキル研修を整える
経験の差を埋めるには、体系的なスキルの研修が効果的です。
多くの女性は、周囲に女性管理職が少ないこともあり、「自分にはマネジメントが向いていないのでは」「経験が浅いまま管理職になるのが不安」という心理的ハードルを抱えがちです。
こうした懸念や不安を払拭するためにも、スキル研修の充実は不可欠な施策といえます。
なお、この研修は、女性だけに提供するのではなく、男女共通のプログラムとして整えるとよいでしょう。そうすることで「女性だけが特別扱いされている」という誤解を防ぎ、公平性の高い育成が可能になります。
女性管理職に立ちはだかる「介護の壁」
女性管理職の登用を進めるうえで、見過ごせないのが"介護の壁"です。
40代以降の管理職候補層は、子育てが落ち着く一方で、親の介護が始まりやすい時期を迎えます。介護は突発的に発生しやすい一方、時間的・精神的な負担が大きいため、業務との両立が難しくなるケースも少なくありません。
特に、家庭内において家族をケアする役割を担いがちな女性は、介護が直接的にキャリアの中断へとつながりやすい傾向があります。
さらに、社内風土として職場で介護の状況を共有しにくい場合、必要な支援が届かずに負担を抱え込む原因にもなります。
企業が女性管理職を増やすには、介護を前提とした柔軟な働き方や早期相談しやすい環境づくり、情報提供の仕組みなど、両立を支える体制の整備が欠かせません。
女性管理職が"定着して活躍し続ける"ための職場環境づくり
女性が家庭と仕事を両立しやすい体制とは、具体的にどのように用意すればよいのでしょうか。ここでは、女性管理職を増やすだけでなく、"定着して活躍し続ける"ための職場環境づくりについて解説します.
"柔軟な働き方"を整備する
女性管理職が長期的に活躍するには、ライフステージに応じて働き方を選べる環境が不可欠です。
介護・育児・通院など、突発的に時間を確保しなければならない場面は誰にでも訪れます。これらの事態に備え、フレックスタイム制や在宅勤務、短時間管理職制度を組み合わせることで、業務と私生活の調整がしやすくなり、キャリアの中断を避けやすくなります。
現代社会において、働き方の柔軟性は"辞めさせないための対策"ではなく、"安心して挑戦し続けられる組織"の必須条件です。
関連記事:ハイブリッドワークとは?柔軟な働き方の推進で採用・定着力の強化を実現
社内コミュニティとロールモデルづくりを進める
女性管理職が孤立せずにキャリアを築くためには、相談できる仲間やロールモデルの存在が欠かせません。
特に女性管理職の人数が少ない企業では、判断が難しい場面やマネジメント上の悩みを抱え込みやすく、心理的に負担が増大します。こうした事態への対策として、社内の女性管理職コミュニティやメンターネットワークの整備は不可欠です。
また、ロールモデルの可視化は「自分にもできる」という自己効力感を高めるため、昇進への意欲喚起にも直結します。共感し合い、支え合えるコミュニティは、単なる育成だけでなく、定着と活躍を支える基盤にもなります。
ストレスと負担を減らす福利厚生を提供する
管理職は業務負荷が高く、責任の重さからストレスを抱えやすい立場です。女性管理職の場合、男性管理職と比較して家事・育児・介護に割く時間の割合が多く、より重度のストレスにさらされるリスクがあります。
こうした背景から、健康維持や生活負担の軽減に直接つながる福利厚生は、女性の定着を支える重要な仕組みになります。
食事補助はその代表例で、栄養バランスの良い食事や、時短に有効な食事を提供することにより、心身のコンディションを整えやすくなります。
また、食事補助をはじめとする"直接的に従業員の暮らしを支える福利厚生"は、従業員へのアピール度が高く、従業員満足度の向上やモチベーションの向上にも有効です。
関連記事:食事補助は社食以外にもある!社食以外の食事補助をチェック
3,000社以上に選ばれている食の福利厚生「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できる、食事補助の福利厚生サービスです。
加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど幅広く、利用する人の年代や嗜好を問いません。 Uber Eats を通じ、モスバーガーやスターバックスなどの人気ファストフードも利用可能です。
内勤の従業員はもちろんのこと、出張中やリモートワークの従業員も平等に利用できる柔軟性や、コスパの良さが高く評価され、すでに3,000社を超える企業に導入されている人気サービスです。
女性管理職を増やす取り組みは“組織の未来”を左右する
女性管理職をどう増やすかは、企業の生産性向上や採用力の強化など、組織の競争力に直結するテーマです。
一方、日本では昇進機会の不足や長時間労働のイメージ、介護との両立不安といった構造的な壁が依然として残っています。そのため、家庭での役割が大きくなりがちな女性にとって、管理職を担うことのハードルは決して低くありません。
この現状に対処するため、企業には"チャンスの提供"や"柔軟な働き方の整備"、"上司の理解"、「チケットレストラン」をはじめとする"福利厚生の充実"など、仕組みとして支援が求められます。
女性が挑戦し続けられる環境の整備を通じ、誰もが働きやすく成果を出しやすい組織の基盤づくりを進めてみてはいかがでしょうか。
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