春闘2026年は、引き続き高い賃上げ率になると予測されています。日本労働組合総連合会(連合)やその他の労働組合では、2025年11月時点でどのような方針を発表しているのでしょうか?あわせて2026年の賃上げを発表した企業についても紹介します。
春闘2026年に関するQ&A
まずは春闘2026年についての概要をQ&Aで見ていきましょう。
春闘2026年はどうなる?
浜銀総合研究所や伊藤忠総研の調査レポートによると、賃上げ率は4.4~5.0%の予測です。2025年よりは下がるものの、高い賃上げ率で推移する予測となっています。
関連記事:2026年の賃上げは失速?これまでの推移と失速の理由を解説
参考
:浜銀総合研究所|調査レポート|2026年春闘も5%弱の高い賃上げ率が実現か
:伊藤忠総研|日本経済:26年度春闘も4%台半ば以上の高い賃上げ率を予想
企業の賃上げ動向は?
複数の労働組合が、2026年も引き続き高い賃上げ率を求める方針を示していますが、ニッセイ基礎研究所の「高水準の賃上げをもたらしたのは人手不足か、物価高か」の見通しでは、2026年の賃上げ率は下がることが予想されています。
人材確保を目的に賃上げを実施してきた企業の中には、2026年の賃上げが難しいケースもあるでしょう。
関連記事:防衛的賃上げの実態と中小企業の課題|人材確保のための厳しい選択
参考:ニッセイ基礎研究所|高水準の賃上げをもたらしたのは人手不足か、物価高か
春闘2026年の予測
春闘2026年では、2023年から続く高い水準の賃上げ率が実現すると予測されています。ここでは、浜銀総合研究所と伊藤忠総研の調査レポートをチェックしましょう。
浜銀総合研究所の予測は賃上げ率4.9%
浜銀総合研究所の調査レポートによると、消費者物価上昇率・実質労働生産性・完全失業率から推計した2026年春闘の賃上げ率は4.9%でした。連合の発表した2025年春闘の賃上げ率5.25%よりは低いものの、高い水準になると考えられています。
ただし賃上げ率が高い水準だとしても、暮らしに余裕が持てるようになるとは限りません。調査レポート発表時の見通し通りに消費者物価上昇率が推移すれば実質賃金はプラスになりますが、以下にあげる通り消費者物価上昇率が上振れする要素が複数あります。
- 人件費率の高い業種での価格転嫁の動き
- 仕入れにかかる費用の高止まり
- 円安や供給制約などの物価高への根本的な対策が不十分な点
高い賃上げ率が、生活水準の改善につながらない可能性も考えられる状況です。
参考
:浜銀総合研究所|調査レポート|2026年春闘も5%弱の高い賃上げ率が実現か
:日本労働組合総連合会|2025年春闘|第7回(最終)回答集計(2025年7月1日集計・7月3日公表)|プレスリリース・総括表
伊藤忠総研の予測は賃上げ率4.4%
伊藤忠総研の調査レポートでは、企業利益・労働需給・物価動向をもとに計算した結果、2026年春闘の賃上げ率を4.4%と予測しています。
連合の発表した2025年春闘の賃上げ率5.25%より低い数値ですが、2024年・2025年は予測より実績が上回っているため、5.0%程度の賃上げ率もあり得るとのことです。
参考:伊藤忠総研|日本経済:26年度春闘も4%台半ば以上の高い賃上げ率を予想
連合が示す2026年春闘の方針
まずは連合の発表をもとに、2020~2025年の春闘での賃上げ率をチェックしましょう。
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年 |
賃上げ率 |
従業員300人未満の企業の賃上げ率 |
従業員300人以上の企業の賃上げ率 |
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2020年 |
1.90% |
1.81% |
1.91% |
|
2021年 |
1.78% |
1.73% |
1.79% |
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2022年 |
2.07% |
1.96% |
2.09% |
|
2023年 |
3.58% |
3.23% |
3.64% |
|
2024年 |
5.10% |
4.45% |
5.19% |
|
2025年 |
5.25% |
4.65% |
5.33% |
賃上げ率は長く横ばいで推移していましたが、2023年から上がり始め、2024年・2025年は5.0%を超えています。
このような状況の中、連合は2026年春闘に向けて、どのような方針を示しているのでしょうか。「2026春季生活闘争 基本構想」をもとに見ていきましょう。
関連記事:賃上げ率の推移はどうなる?2025年春闘の結果と今後の予想
参考
:日本労働組合総連合会|2026年春闘|2026春季生活闘争 基本構想
:日本労働組合総連合会|労働・賃金・雇用 春季生活闘争
賃上げ率5%、実質賃金1%アップを目指す
2年連続で賃上げ率は5.0%を超えているものの、あわせて進行している物価高の影響により、暮らしに余裕を感じている人はそれほど多くありません。労働者が受け取った賃金から、物価上昇分を除いた実質賃金は、2022年からマイナスが続いています。
|
年月 |
名目賃金の前年比 |
実質賃金の前年比 |
|
2020年 |
-1.2% |
-1.2% |
|
2021年 |
0.3% |
0.6% |
|
2022年 |
2.0% |
-1.0% |
|
2023年 |
1.2% |
-2.5% |
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2024年 |
2.8% |
-0.3% |
|
2025年1月 |
1.8% |
-2.8% |
|
2025年2月 |
2.7% |
-1.5% |
|
2025年3月 |
2.3% |
-1.8% |
|
2025年4月 |
2.0% |
-2.0% |
|
2025年5月 |
1.4% |
-2.6% |
|
2025年6月 |
3.1% |
-0.8% |
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2025年7月 |
3.4% |
-0.2% |
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2025年8月 |
1.3% |
-1.7% |
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2025年9月 |
1.9% |
-1.4% |
このような状況の中で、連合ではベースアップと定期昇給分を合わせて、賃上げ率5.0%以上の実現にこだわる方針を発表しています。
加えて「暮らしが良くなった」という実感を得られるようにすることや、賃金の国際的ポジション回復に向けて、実質賃金の1%アップにも取り組むことを明記しました。
関連記事:実質賃金と名目賃金の違い|物価上昇を上回る賃上げ目標についてもチェック
参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査2025(令和7)年9月分結果速報等
非正規労働者は賃上げ率7%を目安として取り組む
連合では、春闘2025年に引き続き、拡大傾向にある格差是正にも取り組むことを表明しています。その一環として、非正規労働者の賃上げ率の目標を7%を目安に、少なくとも最低賃金を上回る賃上げに取り組むよう促す方針です。
また企業内最低賃金は時給1,300円以上を、経験5年相当であれば時給1,450円以上を目指します。
UAゼンセンが示す2026年春闘の方針
流通・外食・繊維などの労働組合が加盟しているUAゼンセンでは、春闘2026年の要求基準を以下のように示しました。
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正社員 |
パートタイム |
|
|
賃金体系が維持されている組合 |
賃金体系維持分+4% |
制度昇給分+時給65円アップ |
|
賃金体系が維持されていない組合 |
6%+格差是正分1% |
時給85円アップ |
あわせて実質賃金1%アップの定着に取り組むことに触れている点は、連合と同様です。
参考:UAゼンセン|“組合員の生活向上を目ざし、1%の実質賃金引き上げを定着させる” 2026政策フォーラムで闘争方針素案を討議
働き方に中立な社会保障制度についても言及
UAゼンセンでは、年収の壁の抜本的な制度改正を求める考えも示しました。これは社会保険制度に合わせて働き方の調整が生じるような現状の制度ではなく、働き方に中立的な社会保障制度の構築を求めるものです。
関連記事:【2025年10月最新】新しい年収の壁はいつから適用?今後の動向も解説
参考:UAゼンセン|日本経済新聞11月7日朝刊 掲載記事について
自動車総連が示す2026年春闘の方針
自動車メーカーをはじめとする企業の労働組合で構成されている自動車総連は、物価上昇が続いている状況が続く中、実質賃金をプラスにするために、春闘2026年でも賃上げを目指すことを表明しています。
金属労協が示す2026年春闘の方針
金属産業の労働組合からなる金属労協では、賃上げの流れを今後も持続するものとしなければいけない、と表明しています。生活水準の改善に向けて、賃上げによる実質賃金の引き上げが必要という考えです。
実質賃金アップが実現することによる、国内での需要拡大にも期待しています。
参考:全日本金属産業労働組合協議会|新着情報2025年|機関紙「金属労協JCM」第609号(2025年10月1日発行)
薬粧連合が示す今後の賃上げに向けた方針
製薬会社の労働組合で構成されている薬粧連合(医薬化粧品産業労働組合連合会)は、春闘2025年で連合が5.25%の賃上げ率となったのに対して4%台前半にとどまったことから、2026年は賃上げに向けて薬価のベースアップを求める方針です。
参考:医薬化粧品産業労働組合連合会|トピックス|【開催報告】10月28日 薬粧連合第1回政策フォーラム2025秋を開催しました
2026年企業別賃上げ速報【2025年11月時点】
2026年に向けて、既に賃上げを表明している企業もあります。2025年11月時点で賃上げが分かっている企業を見ていきましょう。
セガ
セガは2026年4月1日から、既存従業員の基本給を平均10%引き上げます。基本給のベースアップ・賞与の一部組み込み・報酬制度の改定によって実現していく方針です。この改定によって、大卒初任給は33万円となります。
参考:セガ|2025年 お知らせ|従業員に関する報酬制度改定のお知らせ
塩野義製薬
塩野義製薬は2026年4月に入社する大学卒業者の初任給を30万円に修士課程修了者の初任給を32万5,000円に、博士課程修了者の初任給を35万5,000円に引き上げます。優秀な人材を採用し、研究開発力を強化するのがねらいです。
また今いる従業員の待遇改善も検討中であることを示しています。
企業の賃上げはどうなる?
ニッセイ基礎研究所の「高水準の賃上げをもたらしたのは人手不足か、物価高か」の見通しでは、2026年の賃上げ率は大幅に低下するそうです。低下の要因には、物価上昇率の鈍化やトランプ関税の行方などがあげられています。
また日本商工会議所の「中小企業の賃金改定に関する調査」によると、賃上げ余力がない中で人材採用や人材流出の防止を目的に行う、防衛的な賃上げを実施した企業は2025年度に60.1%でした。
賃上げ余力がない中での賃上げは長く続きません。2024・2025年と賃上げを実施した中小企業の中には「2026年の賃上げは難しい」「2026年は賃上げ率を維持できない」というケースもあるでしょう。
春闘2026年では、どの労働組合も2025年に引き続き高い賃上げ率を求める方針を示していますが、企業によっては賃上げが難しいという状況も考えられます。
参考
:ニッセイ基礎研究所|高水準の賃上げをもたらしたのは人手不足か、物価高か
:日本商工会議所|「中小企業の賃金改定に関する調査」の集計結果について~中小企業の賃上げ率は正社員全体で4.03%、20人以下の小規模企業で3.54%~
春闘2026年は生活水準の向上に焦点
賃上げ率は、2024年・2025年の春闘で2年連続5.0%を上回りました。ただし賃上げによって暮らしが豊かになったと感じている人の割合はそれほど多くありません。
賃上げ以上に物価高が進む中、春闘2026年では、連合やUAゼンゼンなどでは、実質賃金の上昇を要求する方針です。
企業の賃上げ動向は、思わしくないという調査もあります。特に中小企業では、賃上げ余力に乏しいケースも少なくありません。
このようなケースで人材確保を目的とした従業員の待遇改善に取り組むには、福利厚生の充実度アップが役立ちます。例えばエデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
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