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【社労士監修】定年65歳の義務化はいつから?2025年の制度改正と企業の対応策

【社労士監修】定年65歳の義務化はいつから?2025年の制度改正と企業の対応策

2024.12.10

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

2025年4月から「65歳までの雇用確保」が完全義務化されます。「定年年齢を65歳にしなければいけない」と誤解しがちですが、定年年齢を65歳にする方法以外で対応することも可能です。本記事では、制度改正のポイントと具体的な準備について解説します。

「定年65歳の義務化」とは2025年4月から「65歳までの雇用確保」が義務化されること

2025年4月1日より、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」に基づく経過措置が終了します。経過措置とは、2013年の法改正時点で継続雇用制度の対象者を限定していた企業に認められていた猶予期間のことです。

経過措置終了後、すべての企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • 65歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

重要なポイントは、「65歳定年の義務化」ではなく「65歳までの雇用確保」が義務化される点です。つまり、60歳定年制を維持したまま、希望者を65歳まで継続雇用する制度でも法令上の要件を満たせます。

2025年4月から「高年齢雇用継続給付」も縮小

2025年4月からは、もう一つ重要な制度変更があります。雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の見直しです。

高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)を以下表にまとめます。

区分 現在の制度(2025年3月31日まで) 改正後の制度(2025年4月1日以降)
支給対象 被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満である労働者 令和7年度から新たに60歳となる労働者
支給条件 60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合 60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合
支給率 60歳以後の各月の賃金の最大15%を支給 60歳以後の各月の賃金の最大10%を支給
補足 賃金低下率が61%超75%未満である場合は支給率逓減 賃金低下率が64%超75%未満である場合は支給率逓減

出典:厚生労働省|高年齢雇用継続給付について 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)令和5年12月11日

出典:厚生労働省|令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します

現在の制度では、60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合、賃金の最大15%が支給されます。2025年4月1日より、60歳以降の支給率が最大10%に縮小されます。賃金低下率が64%超75%未満である場合は、支給率は逓減されます。

事業主に支給される給付金の縮小は、シニア従業員の収入に直接影響を与える可能性があるため、賃金制度の見直しを含め、早めの対策検討が必要です。

定年65歳義務化を求める背景

少子高齢化による人手不足やシニアの意識変化によりシニア労働者は増えており、定年引き上げが求められています。

労働力不足

少子高齢化により人手不足が深刻化するなか、企業側もシニア人材の重要性を強く認識しています。人事向けポータルサイト日本の人事部による「人事白書レポート2024」では、人手不足が深刻化するなか、約7割の企業が「シニア活躍は重要」との認識であり、大企業ではその割合が84.9%に達していることが明らかになりました。シニア人材には「技術・ノウハウの伝承」「若手の育成」「専門性の活用」といった多様な役割が期待されています。

出典:日本の人事部による|人事白書レポート2024

シニアの意識変化

労働者の意識も変化しており、収入確保だけでなく、「健康維持」や「生きがい」として仕事を捉えるシニアが増加しています。

株式会社パーソル総合研究所の「働く10,000人の成長実態調査2023」によると、就業終了希望年齢まで働き続けたい理由として「働くことで健康を維持したい」が57.8%と最多で、「生活を維持するための収入確保」が47.6%、「働かないと時間をもてあましてしまう」が39.9%との結果となっています。

出典:パーソル総合研究所|働く10,000人の成長実態調査2023 シニア就業者の意識・行動の変化と活躍促進のヒント

シニア労働者の増加

労働者の平均年齢は年々上昇しています。総務省による「労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)」では、2023年の就業者数に占める65歳以上の割合は約13.4%、10年前である2013年9.8%と比べて3.6ポイント増加しました。65歳は「引退」の年齢ではないという認識が広がっています。

出典:総務省|労働力調査(基本集計)2023年(令和5年)

企業おけるシニア人材活用の現状

一般社団法人プロティアン・キャリア協会が2024年9月に企業の人事担当者に対して実施した「シニア社員のキャリア施策に関するアンケート調査」では、企業でのシニア人材活躍の状況がわかります。定年延長の動きやキャリア形成の研修の実施状況で把握しましょう。

60歳定年が主流も65歳シフトの動き

調査によると、企業の定年年齢は、60歳定年が73%で最多となり、続いて65歳定年が22%です。現状では60歳定年が主流ですが、すでに22%の企業が65歳定年制を導入しており、今後さらに増加することが予想されます。

シニア人材活用に向け研修を活用

調査によると、シニア社員向けのキャリア研修を実施している企業は52%に上ります。研修の対象者は「シニア社員全員」が42%、「希望するシニア社員」が39%、「指名されたシニア社員」が11%との結果になりました。

業種別に見ると、金融業で67%、製造業で63%がキャリアコンサルタントを活用しています。個人の職業選択や職業生活設計に関する相談・助言をする国家資格を持つ専門家が、シニアの活躍を後押しします。技術革新の速い業界では、シニア社員のスキルアップやキャリア転換支援が重要視されているようです。

定年後の再雇用制度でシニア活用を推進

調査では、85%の企業が定年後の再雇用制度を設けていることも判明しました。2025年4月からの65歳までの雇用確保義務化への対応として、多くの企業が再雇用制度を採用していることがわかります。

出典:HRpro|プロティアン・キャリア協会 シニア社員のキャリア施策に関するアンケート調査

65歳定年義務化に対する企業の対応方法

ここからは2025年4月の「65歳定年義務化」に向けた企業の対応方法を解説します。

65歳までの定年引き上げ

定年年齢を65歳まで引き上げます。安定的な人材確保が可能になり、従業員の長期的なキャリアプランも立てやすくなります。従業員のモチベーション維持にもつながりやすいものの、人件費の増加の問題や役職ポストの不足といった影響も考えなければなりません。

関連記事:【社労士監修】定年延長とは?2025年の法改正と企業の準備・助成金を詳しく解説

65歳までの継続雇用制度

多くの企業が2025年4月の「65歳定年義務化」に向けて導入している制度であり、定年後、希望者を65歳まで雇用を継続します。制度は再雇用制度と勤務延長の2種類の選択が可能です。再雇用制度では、一度退職して新たな雇用契約を結びます。勤務延長では、退職せずに雇用期間を延長します。

再雇用制度では、嘱託社員や契約社員などの雇用形態へと変わりますが、勤務延長の場合は雇用形態、役職、賃金などは大きく変わりません。

関連記事:【社労士監修】定年後再雇用制度とは|2025年法改正は?65歳以上の雇用はどうなる?

定年制の廃止

定年の概念自体をなくす選択肢です。ただし、令和5年「高年齢者雇用状況等報告」によると、定年制を廃止している企業は3.9%にとどまります。

定年 65歳 義務化 いつから00出典:厚生労働省|令和5年「高年齢者雇用状況等報告」

65歳定年義務化における人事対応

65歳定年義務化では、人事上の変更も求められます。

就業規則の変更

2025年4月の制度改正に向けての対応策を講じるにあたり、就業規則の変更が必要です。常時10人以上の労働者を使用する使用者は以下の項目について、明確な規定が必要となります。

  • 定年年齢に関する規定:定年を65歳未満に定めている場合
  • 継続雇用制度に関する規定:65歳までの継続雇用制度を導入する場合
  • 対象者の要件:継続雇用制度の場合、適用者は原則として「希望者全員」となるため
  • 労働条件の変更内容:高年齢者の労働条件を変更など

就業規則の改定では労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書が必要です。従業員に不利益な変更となる場合は、丁寧な説明と合意形成のプロセスを踏むことも求められます。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を変更し、所轄の労働基準監督署に届出を行わなければなりません。

なお、就業規則作成義務のない10人未満の事業所であっても、労働者とのトラブル防止ため、就業規則への明示、もしくは労働協約や労働契約に明記することをおすすめします。

参考:厚生労働省|高年齢者雇用安定法改正の概要

賃金制度の見直し

高年齢雇用継続給付の縮小を見据え、賃金制度の見直しも急務となります。繰り返しとなりますが、2025年4月から、60歳到達時の賃金が75%未満に低下した場合の支給率が、現行の最大15%から最大10%に縮小されます。高齢者雇用継続給付の受給を見込んで60歳以降の賃金水準について検討する必要があるでしょう。

処遇低下への対応策

再雇用などによる60歳以降の大幅な賃金低下は、従業員のモチベーション維持に悪影響を与える可能性があります。段階的な賃金調整の導入、職務や成果に基づく報酬体系への移行、福利厚生等による処遇の補完などで調整する努力と工夫が大切です。

処遇低下への対応として、ダイナミックマッププラットフォーム社では60歳超の嘱託社員に対して「チケットレストラン」を導入することでモチベーション維持に成功しています。次に紹介する同社の好事例も参考に、自社に適した賃金制度の設計を進めることが望ましいでしょう。

福利厚生でシニア人材の就業意欲を向上|ダイナミックマッププラットフォーム社の事例

自動運転向け高精度3次元地図データを手掛けるダイナミックマッププラットフォーム社では、20代から60代まで幅広い世代が活躍しています。同社では、60歳超となる嘱託社員のモチベーション低下を防ぐため、給与やベースアップ以外の方法で賃上げが実現できる「第3の賃上げ」に該当する福利厚生を導入しました。

具体的には、全国25万店舗以上の飲食店やコンビニで利用できる食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の提供です。日々の食事代をサポートしながら、一定の利用条件下において、非課税枠で運用できる仕組みで手取り収入の実質的な改善にもつながる福利厚生です。企業側も福利厚生費として計上でき、経費の面でも継続しやすいと評価されています。

福利厚生の充実は、2025年4月からの「65歳までの雇用確保」に向けた対応策としても有効です。金銭的なメリットと処遇改善をバランスよく組み合わせることで、シニア人材の長期的な雇用継続を実現します。

出典:エデンレッド|パート・アルバイト・契約社員 にも「第3の賃上げ」を!ラウンドテーブルを開催~“年収の壁”を抱える非正規雇用にも、福利厚生で実質手取りアップを実現~

“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

65歳定年義務化で活用できる助成金制度

65歳定年義務化への対応をサポートする助成金制度があります。ここでは主な助成金を紹介します。

65歳超継続雇用促進コース

65歳以上への定年引き上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主を助成します。

定年 65歳 義務化 いつから01

出典:厚生労働省|令和6年度65歳超雇用推進助成金の案内

高年齢者評価制度等雇用管理改善コース

高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主を助成します。

定年 65歳 義務化 いつから02

出典:厚生労働省|令和6年度65歳超雇用推進助成金の案内

高年齢者無期雇用転換コース

50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対する助成金です。

定年 65歳 義務化 いつから03出典:厚生労働省|令和6年度65歳超雇用推進助成金の案内

関連記事:【社労士監修】高齢者雇用に関する助成金一覧!パート・アルバイトにも活用

70歳の就業を見据えた対応

2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が「努力義務」となっています。令和3年4月1日より、以下の選択肢から一つを選んで実施するよう求められています。

  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
  • 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

65歳までの雇用確保が義務化された背景を考えると、70歳就業の義務化も将来的に検討されるかもしれません。中長期的な視点で65歳定年義務化の準備を進めることが賢明といえそうです。

参考:厚生労働省|高年齢者雇用安定法改正の概要

シニアと共に創る持続可能な組織の未来

2025年4月の制度改正は、シニア人材の活躍を後押しする転換点です。豊富な経験を持つシニアの活躍で、組織はより強くなります。

日本の労働人口が減少するなかで、シニア人材の活躍はますます重要性を増していきます。技術やノウハウの継承、若手の育成、専門性の活用など、シニアならではの貢献が期待できるでしょう。

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のような食の福利厚生の活用は、シニア従業員の処遇改善を企業負担が少ない形で実現します。日々の食事代という身近なサポートを通じて、シニア従業員の生活とモチベーションを支えられます。一人ひとりが活き活きと働ける職場づくりに「チケットレストラン」を活用しませんか。

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