テレワークの普及や働き方の多様化により、社内コミュニケーションの希薄化が課題となる中、改めて「社内報」が注目されています。一方で「魅力的なネタが見つからない」「作っても読まれない」といった悩みを抱える人事担当者も少なくありません。そこで本記事では、社内報導入のメリット、読まれるコンテンツのアイデア、好事例を解説します。
社内報とは
社内報は、企業が従業員に向けて定期的に発行する情報共有ツールです。経営方針の伝達から従業員同士の交流促進まで、主に組織内コミュニケーションの活性化を目的として活用されています。
社内報の形式は紙だけではありません。Webサイト、動画、アプリなど、多様な形式で配信されます。特にリモートワークが増えた現在では、離れた場所にいる従業員をつなぐコミュニケーションツールとして注目されています。
社内報の導入率
東洋美術印刷株式会社が運営するWebサイト、コムデザの調査によると、従業員100人以上の企業の場合、約67%が社内報を導入しています。一方で、100人以下の企業では約33%にとどまっており、企業規模により導入状況に差が見られます。
出典:コムデザ|社内報って本当に必要なの?会社員100人に聞いてみた。
社内報が抱える課題
社内報に対して人事担当者が抱く主な課題は以下の2つです。
従業員の利用率が低い
社内報は「発行はしているが活用されていない」ことに悩む企業が多いようです。
株式会社Voicyの「社内コミュニケーションに関する調査」(2023年9月、対象はサービスを利用する1,987名)では、従業員の72.6%が社内報を重要視している一方で、31.4%が社内報を「開いていない」と回答しました。
また、社内報にアクセスしない理由として最も多いのが「時間不足(41.2%)」で、「関心の低さ(21.5%)」が続きます。以下は詳細です。
| 理由 | 割合 | |
| 1位 | 社内報を開く時間がないから | 41.2% |
| 2位 | 企業の取り組みに興味がないから | 25.1% |
| 3位 | 社内報を開く時間が限られていて場所を選ぶから | 21.7% |
| 4位 | 不定期に発行されることで忘れてしまうから | 20.2% |
| 5位 | 社内報の目的がわからないから | 16.9% |
| 6位 | 業務連絡が多く、親しみやすい内容ではないから | 16.5% |
出典:PR TIMES|7割の従業員が社内報を重視する一方、3割が開かない。社内報に求める改善点1位は「親しみやすい内容になること」【社内コミュニケーションに関する調査(Voicy調べ)】
企画側は「何を書けばいいかわからない」
人事担当者からよく聞かれるのが、コンテンツ選定の悩みです。「毎回似たような内容になってしまう」、「従業員が本当に求めている情報がわからない」、「ネタが思い浮かばない」といった声が多く、企画段階でつまずくケースも見られます。
社内報導入がもたらす7つのメリット
しかし、効果的に社内報を活用できれば、多岐にわたるメリットが得られます。
1.情報を共有できる
社内報は企業が伝えたいメッセージを全従業員に確実に届ける手段となります。経営方針や事業戦略から、社内外で表彰されたプロジェクトの成功事例、新しい従業員の紹介まで、幅広い情報を体系的に共有できます。
2. 社内コミュニケーションが活発になる
部署を超えた情報共有により、横のつながりが強化されます。他部署の業務内容や成果を知ることで相互理解が深まり、部署を跨ぐような大きなプロジェクトでの連携もスムーズになります。
テレワーク環境では対面での雑談や情報交換の機会が減るため、社内報による意図的な情報共有が重要です。
3. エンゲージメントを高める
社内報を通じて企業のビジョンや価値観を継続的に発信することで、従業員の企業に対する理解が深まります。経営陣からのメッセージや企業の取り組みの定期的共有は、「私はこの企業の一員である」という帰属意識を高めます。
4. 働きがいを高める
従業員同士の自然なコミュニケーションを促進することも、社内報のメリットです。特集記事が共通の話題となり、部署を超えた会話が生まれることで相互理解が深まり、チームワークが向上します。
さらに、企業の最新の取り組みや成果を定期的に共有することで、「自分たちの企業が生み出した価値」を実感でき、仕事に対する誇りや働きがいの醸成にもつながります。
5. 従業員満足度が高まる
社内報で従業員の活躍や成果を取り上げることで、「企業から認められた」という実感が得られ、働く意欲が向上します。福利厚生制度の利用方法や健康管理に役立つ情報を定期的に発信すると、従業員の働きやすさを高め、満足度向上につながります。
6. 学生に紹介すれば採用力を強化できる
充実した社内報は、採用活動のアピール材料としても有用です。会社説明会で社内報を紹介することで「コミュニケーションが活発」で、「従業員を大切にする」企業であることを印象づけ、他社との差別化が図れます。
特に、従業員インタビューや職場の日常を紹介する記事は、学生でも働く環境をイメージしやすく、志望度向上につながります。
7. 企業の経営方針を浸透させられる
社内報を通じてトップメッセージや経営戦略をわかりやすく伝えることで、組織全体の方向性を統一できます。
働き方改革や事業転換などの変革時には、従業員が感じる不安や疑問に寄り添うことが大切です。全社向けの発表だけでは伝えきれない経営陣の想いや変革の詳しい背景を、社内報でより深く説明することで、従業員の理解と協力を得やすくなります。
紙媒体とWeb版の選択:社内報の運用ポイント
社内報は適切な媒体選びがメリットを高める鍵です。ペーパーレス化の波は社内報でも進んでいます。紙媒体のまま、Webへのシフト、併用などの形式から自社に合うスタイルを選択しましょう。その判断材料となるメリット・デメリットを整理します。
紙媒体のメリット・デメリット
紙媒体はじっくりと読めるメリットがありますが、印刷・配送コストがかかるのがデメリットです。
紙媒体のメリット:
- 手にとってじっくりと内容を読み込める
- デジタルに慣れていない従業員でも利用しやすい
- 物理的に手渡しして情報を届けられる
- インターネット環境に左右されない
紙媒体のデメリット:
- 印刷・配送に関わるコストが継続的にかかる
- リアルタイムでの情報更新ができない
- ペーパーレス化の流れに逆行する
Web版のメリット・デメリット
Web版社内報の最大のメリットは情報の即時性です。一方で、全従業員が確実に閲覧するための環境整備や仕組みづくりが課題となります。
Web社内報のメリット:
- 情報の即時性に優れ、リアルタイムで更新できる
- 動画やリンク、アプリなど多様なコンテンツ形式に対応できる
- モバイル端末からも手軽にアクセスできる
- 印刷・配送コストを削減できる
- コンテンツの修正や追加がしやすい
Web社内報のデメリット:
- ネットワーク環境への依存度が高い
- 能動的なアクセスが必要になる
- セキュリティ制約による閲覧制限の可能性がある
- 未読の把握が難しい
社内報の形式はデジタルに移行しつつある
実際の動向として、コロナ禍を経て社内報のデジタル化が急速に進んでいます。社内報ナビが実施した「社内報白書2023」によると、特に5,001人以上の大企業では「Web社内報」、「スマホアプリ」、「動画配信」の導入が目立っており、これらのデジタルツールは相互に連携しやすいのが特徴です。
Web、アプリ、動画などを組み合わせたメディアミックスの考え方が浸透すれば、Web社内報が中心的な媒体として今後さらに拡大する可能性があるでしょう。
出典:社内報ナビ|『社内報白書2023』から浮き彫りになる、ICの現在地と未来予想
読まれる社内報にするための3つのポイント
媒体選択と並んで重要なのが、実際に読まれる社内報にするための工夫です。ここでは、社内報の課題である「読まれない」リスクを軽減するためのポイントを説明します。
1. 対象者と目的の設定
社内報制作では、「誰に」「何を伝えたいか」を定めることが重要です。全従業員を対象とする場合でも、特に重点的にアプローチしたい層(若手、管理職、非管理職など)を設定することで、より効果的なメッセージ設計が可能になります。
「社内報白書2023」では、30代向け中堅従業員をメインターゲットとする割合が4割で、最多のターゲット層です。
出典:社内報ナビ|『社内報白書2023』から浮き彫りになる、ICの現在地と未来予想
2. 親近感のあるコンテンツ作り
株式会社Voicyの「社内コミュニケーションに関する調査」によると、社内報への改善要望として最も多いのが「親近感のある内容」(22.1%)でした。業務連絡だけでなく、従業員が興味を持ちやすい話題の盛り込みが読者獲得に不可欠です。
出典:PR TIMES|7割の従業員が社内報を重視する一方、3割が開かない。社内報に求める改善点1位は「親しみやすい内容になること」【社内コミュニケーションに関する調査(Voicy調べ)】
3. 持続可能な仕組みの構築
社内報が従業員にとって「楽しみに待たれる存在」になるためには、安定した品質と定期的な配信も重要になります。
具体的な方法として、発行頻度(月1回、四半期に1回など)や年間テーマを事前に計画し、制作スケジュールを明確にします。また、特定の担当者に負担が集中しないよう、複数人での分担制や外部リソースの活用も検討しましょう。継続できる無理のない体制構築が、長期的に魅力的なコンテンツを発信する上でのコツです。
社内報の成功事例:企業のコンテンツアイデア
「何を書けばいいかわからない」という悩みの解決には、企業の事例が参考になります。以下では、実際の企業がどのようなコンテンツで成功しているか見ていきましょう。
株式会社マクロミル:アンケートツールの結果を社内報へ反映
マーケティングリサーチ事業を展開するマクロミルでは、自社のアンケートツール「Questant(クエスタント)」を活用して従業員のニーズや意識を把握し、社内報「ミルコミ」の企画に反映させています。
この取り組みが評価され、2022年と2023年の2年連続で「経団連推薦社内報審査」優秀賞を受賞しました。受賞号では「力を引き出す!より良いワークプレイスとは?」を特集し、従業員座談会の様子やキャリア支援制度の活用事例など、従業員が身近に感じられるコンテンツを展開しています。
出典:PR TIMES|マクロミル、社内報『ミルコミ』が「経団連推薦社内報審査」で2年連続優秀賞を受賞
名古屋商工会議所:食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の店舗情報共有
名古屋商工会議所では、賃上げの一環として食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入しています。専用のICカードを提携する全国の加盟店で利用すると、福利厚生として非課税枠内で食事補助を受けられるサービスです。
サービス利用促進にあたり、独自の「利用可能店舗リスト」をクラウドサービスに随時アップし、全職員に共有。このリストは職員も自由に利用可能な店舗情報を投稿できる、いわば従業員専用の掲示板のような機能を果たしています。職員同士で、「あのお店で使えるね!」といった声も多く聞くようになり、新たなコミュニケーションが生まれました。情報の提供から活用、更新へとサイクルが生まれ、従業員同士の交流促進につながっています。
導入事例:名古屋商工会議所
株式会社おもれい:社内報と動画の連携でエンゲージメント向上
高校生の部活動イベント「部活フェス」を全国展開する株式会社おもれいでは、2024年10月より月1回の社内報発行と社内動画配信を開始し、メディアミックス戦略のもと社内報を展開しています。
社内報では従業員の素顔に迫る記事や企業内イベントレポートを掲載し、「会話のきっかけになる」「趣味の幅を広げられた」といった声が寄せられたそうです。動画では、社長自らが企業の動向や新方針を説明し、従業員からの質問・意見に回答する双方向コミュニケーションを実現しています。
20名が回答した取り組みに対する従業員アンケートからは、動画での質問・回答について「心理的安全性を生み出している」との評価を得ました。文字や口頭では伝わりにくい雰囲気や価値観を共有できる動画の活用は、双方向のコミュニケーションを強く印象づけられます。
出典:PR TIMES|【社内マーケティング成功事例】遠くへ行くならみんなで行け!社員間のつながり強化を目指す新たな施策を公開
社内報で組織力を最大化
社内報は、組織の一体感醸成から人材定着まで、さまざまなメリットをもたらします。つい読みたくなる社内報を手がけて、組織の活性化につなげていきましょう。
紹介した3つの事例から見えてきたのは、社内報をきっかけとして、従業員同士が交流できる仕組みづくりの重要性です。「何を書けばいいかわからない」場合、従業員がどのような悩みや関心があるかを知ることが企画のヒントになるでしょう。
社内報と福利厚生の連携を検討するなら
名古屋商工会議所の成功事例でも紹介した食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、社内報での情報共有により従業員同士の交流促進にもつながる福利厚生制度です。社内報のコンテンツ充実と従業員満足度向上を同時に実現したい企業におすすめします。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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