深刻な人手不足が続く中、氷河期世代の採用に注目する企業が増えています。40~50代の転職市場は空前の活況を呈しており、豊富な経験と高い責任感を持つ優秀な人材が転職を検討している実情があります。そこで本記事では、氷河期世代を採用すべき理由から具体的な採用戦略、さらには福利厚生を活用した差別化手法まで、企業が知っておきたい情報を分かりやすくまとめました。採用力の強化に効果的な福利厚生も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
なぜ今、氷河期世代の採用が注目されるのか
労働力不足が深刻化する近年、自社の持続的成長に欠かせない戦略として、氷河期世代の採用に注目する企業が増えています。まずは、その背景から解説します。
「氷河期世代」とは
「氷河期世代(就職氷河期世代)」とは「バブル崩壊後の1993~2005年頃、雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った世代」のことです。解釈によっても変わりますが、一般的には1970年代前半から1980年代前半に生まれた世代を指します(※諸説あり)。
この世代が就職活動を行った時期は、バブル経済崩壊後の長期不況により企業の新卒採用が大幅に減少し、「就職氷河期」と呼ばれる深刻な就職難に直面しました。
有効求人倍率が1.0を大きく下回る状況が続き、大学卒業者の就職内定率も一時60%台まで落ち込むなど、現在では考えられないほど厳しい就職環境でした。
その結果、希望する企業に就職できず非正規雇用に就いたり、フリーターや派遣社員として働き続けることを余儀なくされた人が多数存在します。
参照:厚生労働省|就職氷河期世代の方々への支援について-就職氷河期世代の方々への支援のご案内
深刻化する人手不足と「砂時計型」組織の課題
少子高齢化に伴い、日本の労働力不足は年々深刻化しています。
生産年齢人口は1995年にピークを迎え、総人口は2008年にピークを迎えました。以降はそれぞれ減少傾向が続き、回復の見込みはありません。
さらに問題なのが、多くの企業で見られる「砂時計型」の年齢構成です。リーマンショックや就職氷河期の影響で、現在の40~50代前半の採用を控えた結果、中間管理職層が極端に薄くなっている企業が増えています。
このような組織構造の歪みは、若手社員の急激な昇進や過度な責任負担を招くものです。結果的に離職率の増加や生産性の低下につながる恐れがあるため、中間管理職層にあたる氷河期世代の採用は、各企業にとって急務となっています。
氷河期世代の転職市場が急拡大
転職市場では、氷河期世代の活動が急激に拡大しています。株式会社リクルートの調査によると、ミドル世代(40~59歳)の転職者数は10年間で約6倍に増加しました。
出典:株式会社リクルート|ミドル世代の転職は10年で約6倍へ 経験の棚卸しは10年以上さかのぼることが重要
特に50代の転職者数の伸びは顕著で、転職界隈における「35歳限界説」は過去のものとなっています。
また、エン・ジャパン株式会社の分析によれば、2024年に転職をした40代のうち、52%が年収アップを実現しました。50代では42%とやや減少しますが、2018年には33%に留まっていたことを踏まえると、ミドル世代の転職市場における価値は高まっています。
この背景には、日本企業における中間管理職層の不足に加え、氷河期世代の持つ豊富な経験やスキルが市場で高く評価されている実態があります。
参考:株式会社リクルート|ミドル世代の転職は10年で約6倍へ 経験の棚卸しは10年以上さかのぼることが重要
参考:エン・ジャパン(en Japan)|ミドル世代の転職、6年で2.45倍ー『ミドルの転職』転職者分析レポート2025ー
政府も後押しする氷河期世代支援の流れ
政府は、氷河期世代を対象とした中途採用を行うなど、同世代の支援に積極的に取り組んでいます。令和7年度からは支援対象を「中高年層(おおむね35歳から59歳)」へ拡大し、さまざまな支援策を提供しています。
こうした動きは、政府だけのものではありません。自治体レベルでも、東京都をはじめとする多くの地方自治体が独自の支援制度を設けており、企業の氷河期世代採用を後押ししています。
これらの公的支援により、社会全体で氷河期世代の就労促進に向けた機運が高まり、企業にとっても採用しやすい環境が整備され始めました。
国や地方自治体のこうした取り組みは、氷河期世代の雇用促進だけでなく、人手不足に悩む企業にとっても大きなメリットをもたらしています。
参照:厚生労働省|就職氷河期世代の方々への支援のご案内
参照:就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議|新たな就職氷河期世代等支援プログラム
の基本的な枠組みについて
氷河期世代を採用する4つのメリット
氷河期世代の採用は、企業にとって多くのメリットをもたらします。ここでは、氷河期世代を採用することで企業が得られるメリットを4つの視点から解説します。
豊富な実務経験と危機管理能力
20年以上の社会人経験を積んでいる氷河期世代は、業界を問わず幅広い実務スキルを身につけています。リーマンショックやコロナ禍の経験によって培った危機への耐性も魅力です。
これらの世代は、不況時の事業縮小、人員削減、事業再構築といった厳しい局面を実際に経験しているため、限られたリソースで最大限の成果を出すノウハウを持っています。また、変化に対する適応力も高く、急激な市場変化や予期しないトラブルに対しても冷静かつ的確な判断を下すことができます。
さらに、業界知識と人脈の豊富さも大きな魅力です。このような実務経験・危機管理能力・人的ネットワークは、新卒採用では得られない大きなアドバンテージです。
高い責任感と組織貢献意識
就職難を経験した氷河期世代は、仕事に対する真摯な姿勢と高い責任感を持つ傾向にあります。正規雇用の機会を得ることへの感謝の気持ちが強く、会社に対する忠誠心と貢献意識も非常に高いことが特徴です。
この世代の多くは、不安定な雇用環境を経験してきたため、安定した職場環境に対する価値観が若い世代とは大きく異なります。転職先の企業に対しては長期勤続を前提として考えており、短期間での離転職を繰り返すリスクが低いのが特徴です。
また、これまでの苦労した経験から、現在の仕事環境や待遇に対する感謝の気持ちが強く、与えられた職務に対して責任を持って取り組む姿勢が見られます。このような氷河期世代ならではの安定志向と責任感は、組織を長期的に支える重要な基盤づくりに貢献します。
若手社員への指導・メンター効果
氷河期世代は、豊富な実務経験を生かし、若手社員の指導・メンター役としても大きな役割を果たします。技術的なスキルはもちろんのこと、ビジネスマナーや顧客対応、危機管理といった幅広い分野で後輩への指導が可能です。
なかでも注目したいのが、世代間の橋渡し役としての機能です。管理職世代と若手社員の間に位置する氷河期世代は、双方の立場や考え方を理解し、円滑なコミュニケーションを促進する役割を担えます。これにより、組織全体の一体感の向上や世代間のギャップ解消が期待できます。
また、氷河期世代の持つ実践的な知識やノウハウの伝承は、組織全体のスキルレベル向上や技術継承の促進にも効果的です。特に中小企業では、限られた人数で多様な業務をこなす必要があるため、このような多面的な指導力は非常に価値の高い資産となります。
新卒採用と比較したコストメリット
氷河期世代の採用は、新卒採用と比較して大幅なコスト削減効果をもたらします。新卒採用では説明会の開催、大学との関係構築、長期間にわたる選考プロセスなど、多額の採用費用が発生しますが、氷河期世代の中途採用ではこれらのコストを大幅に圧縮できます。
研修期間の短縮も大きなメリットです。基本的なビジネススキルや社会人としてのマナーはすでに身についているため、即戦力として活用できます。新卒社員の場合、戦力として機能するまでに1~3年程度を要するのに対し、氷河期世代は数週間から数カ月で本格的な戦力となります。
厚生労働省の調査から、新規大卒就職者のうち、約3人に1人にあたる34.9%が3年以内に離職している実態が明らかとなりました。一方、氷河期世代の転職者は安定志向が強く、長期勤続への意欲も高いため、離職率の低さによる採用効率の向上が期待できます。
氷河期世代の採用は、企業にとって、採用から定着まで含めた総合的なコストパフォーマンスの大幅な改善をもたらす施策といえます。
参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します
氷河期世代採用で注意すべき課題と対策
氷河期世代の採用には多くのメリットがありますが、その一方で、この世代特有の課題も存在します。事前に課題を把握し、適切な対策を講じることで、採用の成功率を高めることができます。詳しく見ていきましょう。
家庭環境による制約
氷河期世代の多くは40~50代という年齢層のため、親の介護や育児といった家庭の事情を抱えているケースが少なくありません。親の介護については、団塊世代の高齢化に伴い、今後ますます深刻化することが予想されます。
晩婚化等の影響で、40代になってから子育てに取り組む人も多く、教育費の負担や子どもの受験対応など、若い世代とは異なる育児課題を抱えているのが実情です。これらの家庭環境による制約は、勤務時間や出張の制限、急な休暇取得の必要性など、業務に影響を与える可能性があります。
具体的な対策としては、フレックスタイムやリモートワークの導入、介護休暇制度の充実など、柔軟な働き方を支援する環境を整備することが大切です。また、面接時に家庭環境について率直に話し合い、互いの理解を深めることで、入社後のトラブルを防ぐことができます。
組織への適応
氷河期世代の採用で特に注意が必要なのは、年下の上司や同僚との人間関係です。これまでのキャリアで培った価値観や仕事の進め方が、現在の職場環境と異なる場合があり、適応に時間がかかるケースが珍しくありません。
また、新しい業務システムやITツールへの適応についても配慮が必要です。従来のアナログな業務手法に慣れ親しんできた氷河期世代にとって、新しいシステムやツールの習得は大きなハードルとなる場合があります。
既存従業員との世代間ギャップを埋めるためには、相互理解を促進する機会づくりが求められます。歓迎会や懇親会の開催、メンター制度の導入、定期的な面談の実施など、コミュニケーションを活発化させる取り組みが効果的です。
採用選考での見極め
氷河期世代の採用選考では、従来の新卒採用とは異なる評価軸が必要です。
長期間のキャリアギャップがある場合、そのブランクの理由と期間中の活動内容を適切に評価しなければなりません。一見すると職歴に空白があったとしても、育児や介護・資格取得・職業訓練など、実際には貴重な経験を積んでいるケースも多くあるからです。
スキルの有効性と学習意欲の見極めも重要なポイントです。過去の経験やスキルが現在の業務にどの程度適用できるか、新しい知識や技術に対する学習意欲があるかを慎重に判断する必要があります。
また、転職に至った経緯や動機を詳しく聞き、企業文化や職場環境との適合性を見極めることで、入社後の活躍度合いを予測することができます。
氷河期世代に選ばれる企業になるためには
優秀な氷河期世代の人材を獲得するためには、彼らのニーズや価値観を理解し、魅力的な職場環境を提供することが不可欠です。以下、氷河期世代から選ばれる企業になるためのポイントをまとめました。
▼求人・採用プロセスの最適化:求人票では「経験不問」「年齢不問」を明記し、安定性や将来性を具体的に記載します。面接では画一的な評価ではなく、豊富な経験や多様なバックグラウンドを適切に評価し、キャリアギャップへの理解を示すことが重要です。
▼働きやすい職場環境の整備:フレックスタイムやリモートワークを導入し、家庭との両立を支援します。特に介護休暇の取得しやすさや勤務時間調整など、介護支援制度の充実が長期定着の鍵となります。
▼長期定着を実現する職場文化づくり:世代を超えたチームワーク構築と、指導役やプロジェクトリーダーなど、氷河期世代の経験を生かせる役割設計をします。安定性・責任感・指導力を適切に評価する制度も必要です。
▼魅力的な待遇パッケージの提供:生活を安定させる給与水準や福利厚生を提示し、他社との差別化を図ります。
関連記事:2026年の賃上げは失速?これまでの推移と失速の理由を解説
福利厚生で差をつける氷河期世代採用戦略
即戦力となる氷河期世代の人材は、多くの企業にとって魅力的です。採用競争を勝ち抜くには、他社との差別化を可能とする待遇の提示が求められます。
そこで注目を集めているのが、福利厚生を通じた他社との差別化です。
一定の要件を満たす福利厚生は、所得税の非課税枠を活用できるため、同額を賃金として支給するよりも従業員の実質手取り額を増やせます。また、企業側の法人税削減にも寄与します。
特に、食事補助や家事代行サービスなどの生活に密着した福利厚生は、従業員に「会社から大切にされている」実感を抱かせるため、エンゲージメントやモチベーションの向上にも効果的です。
このように、最小限のコストで多くのメリットを得られる人材戦略として、福利厚生の重要性が高まっているのです。
食の福利厚生で氷河期世代をサポート「チケットレストラン」
採用力強化の施策として注目度を高める福利厚生ですが、なかでも近年特に人気を集めているサービスが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できるサービスです。
加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど幅広く、利用する人の年代や嗜好を問いません。また、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用する場所や時間に制限がないのも大きな魅力です。
生活に密着した福利厚生として、すでに3,000社を超える企業に導入されています。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
氷河期世代採用で組織力&生産性を高めよう
氷河期世代の採用は、人手不足の解消と同時に、組織そのものを見直すチャンスでもあります。豊富な実務経験と高い責任感を持つ氷河期世代を迎えることで、若手指導や危機管理能力の向上が期待でき、組織全体の底上げが実現します。
特に、限られた人材で最大限の成果を求められる中小企業にとって、氷河期世代の採用は組織力や生産性を強化する魅力的な施策となるでしょう。
なお、優秀な人材の獲得には、求人・採用プロセスの最適化や職場環境の整備のほか「チケットレストラン」のような福利厚生の充実も効果的です。
変革が求められる時代だからこそ、ぜひ積極的に氷河期世代採用へ取り組んでみてはいかがでしょうか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
:「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
当サイトにおけるニュース、データ及びその他の情報などのコンテンツは一般的な情報提供を目的にしており、特定のお客様のニーズへの対応もしくは特定のサービスの優遇的な措置を保証するものではありません。当コンテンツは信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性、適時性、適切性または完全性を表明または保証するものではなく、お客様による当サイトのコンテンツの利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。
エデンレッドジャパンブログ編集部
福利厚生に関する情報を日々、ウォッチしながらお役に立ちそうなトピックで記事を制作しています。各メンバーの持ち寄ったトピックに対する思い入れが強く、編集会議が紛糾することも・・・今日も明日も書き続けます!
