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【社労士監修】中小企業の人材育成に役立つ助成金や補助金は?助成金活用の注意点も

【社労士監修】中小企業の人材育成に役立つ助成金や補助金は?助成金活用の注意点も

2024.10.29

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

中小企業で人材育成を行うとき、資金不足で十分な取り組みができないこともあるでしょう。そのようなときに役立つのが助成金や補助金です。これから人材育成に取り組む企業に役立つよう、どのような制度があるのかを見ていきましょう。助成金を利用するときの注意点も紹介します。

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、仕事に関する技術やスキルを従業員が身につけられるよう、計画的に職業訓練を実施している企業に対して、必要な資金や訓練中の賃金をサポートする制度のことです。

ここでは6種類のコースの中から「人材育成支援コース」「教育訓練休暇等付与コース」「人への投資促進コース」「事業展開等リスキリング支援コース」の4種類を紹介します。

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金

関連記事:【社労士監修】人材開発支援助成金の条件は?活用事例をチェック

人材育成支援コース|職務に関するスキルアップや正社員化に

人材育成支援コースは以下の3種類です。

訓練の種類

内容

人材育成訓練

職務に関連したスキルを習得する10時間以上のOFF-JTによる訓練

認定実習併用職業訓練

厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練。OJTとOFF-JTを組み合わせて実施

有期実習型訓練

有期契約労働者等の正社員化に向けて行う訓練。OJTとOFF-JTを組み合わせて実施

要件を満たす訓練を実施すると、従業員1人1職業訓練実施計画届あたりのOFF-JTにかかる経費の一部が、以下のように支給されます。

企業規模

10時間以上100時間未満

100時間以上200時間未満

200時間以上

中小企業事業主・事業主団体等

15万円

30万円

50万円

中小企業以外の事業主

10万円

20万円

30万円

併せて従業員1人1訓練あたりにつき、1,200時間を限度として賃金の助成も受けられます。訓練にかかる経費と賃金、どちらの助成も、従業員1人につき1年度に3回までが上限です。

また1事業所もしくは1事業団体等が1年度に受給できる助成額の上限は、1,000万円と定められています。

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内

教育訓練休暇等付与コース|休暇を取って訓練を受ける場合に

教育訓練休暇等付与コースでは、3年間に5日以上の有給休暇の取得や所定労働時間の短縮・免除の制度を教育訓練を受けられるよう導入して、実際に適用したときに助成金を受け取れます。

教育訓練休暇等付与コースに含まれる3種類の制度の要件と助成額は以下の通りです。

教育訓練休暇等付与コースの3種類の制度

要件

助成額

教育訓練休暇制度

・制度導入・適用計画期間(3年間)のうちに、被保険者数100人以上の企業は5人以上、100人未満の企業は1人以上の従業員に休暇制度を適用すること
・制度導入・適用計画期間(3年間)の初日から1年ごとの期間内に、被保険者1人以上に休暇を付与すること

・制度導入に対して1事業主あたり30万円 ※賃金要件か資格等手当要件を満たすと6万円加算

長期教育訓練休暇制度

・所定労働日に合計30日以上の長期教育訓練休暇を付与すること
・所定労働日に1日単位の長期教育訓練休暇を10日以上連続して1回以上付与すること
・休暇取得開始日と最終休暇取得日が制度導入・適用計画期間内であること
・職業訓練・教育訓練・各種検定・キャリアコンサルティングを受けた日数が長期教育訓練休暇の取得日数の1/2以上であること

・従業員1人につき1時間あたり960円、大企業は760円の賃金助成 ※大企業は賃金要件か資格等手当要件を満たすと200円加算
・制度導入に対して1事業主あたり20万円 ※賃金要件か資格等手当要件を満たすと4万円加算

教育訓練短時間勤務等制度

・制度導入・適用計画期間(3年間)内に、所定労働日に1回以上の所定労働時間の短縮や所定外労働時間の免除を行うこと
・教育訓練短時間勤務等制度を利用し受講する教育訓練は、同一の教育訓練機関が行う一連の15回以上の訓練を含むものであること

・制度導入に対して1事業主あたり20万円 ※賃金要件か資格等手当要件を満たすと4万円加算

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(教育訓練休暇等付与コース・人への投資促進コース)のご案内

人への投資促進コース|デジタル人材や高度人材の育成に

人への投資促進コースは「高度デジタル人材訓練」「成長分野等人材訓練」「情報技術分野認定実習併用職業訓練」「定額制訓練」「自発的職業能力開発訓練」からなり、従業員へ訓練を実施すると、訓練にかかった経費や訓練期間中の賃金の助成を受けられます。

社内でデジタル人材や高度人材の育成に取り組む場合に利用できる助成金です。

1事業所が1年度に受け取れる助成額の限度額は「成長分野等人材訓練」を除いて2,500万円、「成長分野等人材訓練」は1,000万円、「自発的職業能力開発訓練」は300万円と定められています。

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金 人への投資促進コースのご案内

事業展開等リスキリング支援コース|新規事業等に必要なスキル習得に

新規事業の立ち上げといった事業展開やDXの推進に向けて、従業員が新たな分野のスキルを習得できるようOFF-JTによる訓練を実施するときに利用できるのが、事業展開等リスキリング支援コースです。

訓練にかかった経費の75%(大企業は60%)、訓練中の賃金1時間あたりに960円(大企業は480円)の助成を受けられます。

参考:厚生労働省|人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金には、非正規雇用で働く従業員の正社員化をサポートする「正社員化支援」と、賃金アップや諸手当の制度化などを行う「処遇改善支援」があります。それぞれの要件や助成額などを見ていきましょう。

参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

関連記事:【社労士監修】キャリアアップ助成金正社員化コースが拡充!改正ポイントと注意点

正社員化支援 正社員化コース|非正規雇用から正社員化するときの教育に

「正社員化コース」では、非正規雇用の従業員を正社員化するときに必要な教育を行うことで、かかった費用に対する助成を受けられます。従業員1人あたりの助成額は以下の通りです。

企業規模

正社員化前の雇用形態が有期雇用労働者

正社員化前の雇用形態が無期雇用労働者

中小企業

80万円(40万円×2期)

40万円(20万円×2期)

大企業

60万円(30万円×2期)

30万円(15万円×2期)

また実施する措置に応じた加算額も設定されています。

処遇改善支援|従業員の賃金や賞与など処遇改善のために

従業員の賃金アップや、賞与・退職金制度の創設、新たに社会保険が適用されるときのサポートに活用できるのが「処遇改善支援」の4つのコースです。

処遇改善支援の4コース

対象となる処遇改善

賃金規定等改定コース

賃金規定を3%以上増額改定し、規定を適用した

賃金規定等共通化コース

有期雇用と正規雇用に共通の賃金規定をつくり適用した

賞与・退職金制度導入コース

有期雇用労働者等に賞与・退職金制度をつくり、支給か積立を実施した

社会保険適用時処遇改善コース

新たに社会保険の被保険者となった短時間労働者の賃上げを行った、所定労働時間の延長により従業員が社会保険の被保険者となった

専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」

従業員が自らキャリア形成を考え、スキルアップや新たなスキルの習得のために利用できる制度に「教育訓練給付金」があります。企業が受け取る助成金とは異なり、従業員が自身で手続きを行うと利用できる制度です。

専門実践教育訓練の場合は、対象となる講座の受講にかかった費用のうち、最大80%がハローワークから支給されます。

一定の条件を満たすと在職中に利用できる制度のため、従業員が活用しやすいよう制度に関する案内を行い周知すると、人材育成に役立つかもしれません。

参考:厚生労働省|専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」のご案内

人材育成に助成金を活用するときの注意点

資金に限りがある中で人材育成を行うとき、助成金の活用は有効な方法です。十分に助成金を活用するには、注意点を確認しておきましょう。

要件を満たしていなければ対象外

助成金を受け取るには、必要な要件を全て満たしていなければいけません。企業はもちろん、対象となる従業員や施策の要件も細かく定められています。全ての要件を満たせるよう、計画的な準備が必要です。

支給されるまでのキャッシュフロー

助成金は申請してから実際に受け取るまでに時間がかかります。その間に計画通りに人材育成の施策を実施しなければいけません。

要件を全て満たしていれば後から助成金を受け取れますが、まずは人材育成に必要な経費を全て負担する必要があるため、キャッシュフローには要注意です。

人材育成の計画を立てる段階で、必要なタイミングに必要な資金を用意できるか、よく検討しましょう。余剰資金のみで必要な金額を用意できない場合には、金融機関からの借り入れや、計画の変更も検討が必要です。

中小企業の人材育成には助成金や補助金の活用を

中小企業が事業を拡大したり新規事業を立ち上げたりするには、従業員のスキルアップが必要になることもあるでしょう。このとき人材育成にかかる経費や、人材育成中の賃金の一部を受け取れる助成金が役立ちます。

人材育成に活用できる助成金として代表的なのは「人材開発支援助成金」や「キャリアアップ助成金」です。複数のコースの中から、自社が必要としている人材育成に合うものを選び申請しましょう。

併せて育成した従業員の離職を防ぐには、待遇改善にも取り組む必要があります。従業員が働きやすい環境を整えられるよう、福利厚生を拡充するとよいでしょう。

従業員満足度93%と好評の、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入もおすすめです。優秀な人材の定着に向けて、検討してみてはいかがでしょうか。

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