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【社労士監修】在職老齢年金の支給停止とは?計算方法と共に分かりやすく解説!

【社労士監修】在職老齢年金の支給停止とは?計算方法と共に分かりやすく解説!

2024.09.18

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

在職老齢年金の支給停止は、働く高齢者の収入に大きな影響を与える制度です。支給停止による手取り額の減少は、いわゆる「働き控え」の原因ともなっています。これは、人手不足が深刻化する現代社会において、喫緊の課題のひとつです。

本記事では、在職老齢年金の支給停止の仕組みから、具体的な計算方法・企業と従業員への影響・さらには効果的な対策まで、在職老齢年金の支給停止について知っておきたい情報を分かりやすくまとめています。ぜひ参考にしてください。

在職老齢年金の支給停止とは

「在職老齢年金」とは、厚生年金保険の被保険者が、働きながら(厚生年金に加入したまま)受け取る老齢厚生年金のことです。この制度の対象となるのは、次の要件を満たす人です。

  • 60歳以上
  • 厚生年金保険の被保険者
  • 老齢厚生年金を受給している

在職老齢年金制度では、受給者の月額総収入が一定の基準を超えることにより、受給中の老齢厚生年金の一部もしくは全部が支給されなくなります。これを「在職老齢年金の支給停止」といいます。

この制度の目的は、現役世代と年金受給者の給付バランスを保ちながら、年金財政の安定化を図ることです。一方で、収入が増えた分だけ年金が減少し、いわゆる「働き損」になるケースも少なくありません。

仕事へのモチベーションの低下や、働き控えの原因にもなることから、企業の人材戦略にも大きな影響を与える制度といえます。

参考:日本年金機構|在職老齢年金

支給停止の仕組みと計算方法

在職老齢年金の支給停止は、受給者の収入が一定の基準を上回ったときに適用されます。以下、その仕組みと計算方法・計算例まで分かりやすく解説します。

基準は「支給停止調整額」

在職老齢年金の支給停止の基準となるのが「支給停止調整額」です。在職老齢年金受給者の1カ月あたりの総収入がこの額を超えた場合、老齢厚生年金の一部、もしくは全額が支給停止されます。

支給停止調整額は、現役世代の男性被保険者が受け取る賞与を含む平均月収を基準に設定されており、2024年度は50万円です。

ここ数年を振り返ると、2023年度は48万円・2022年度は47万円でした。段階的に引き上げられることで、より多くの高齢者が年金を受給しながら就労できるようになっています。

参考:厚生労働省|年金制度の仕組みと考え方_第10_在職老齢年金・在職定時改定
参考:厚生労働省|令和6年度の年金額改定について

「基本月額」と「総報酬月額相当額」

在職老齢年金の支給停止額は、次の式で求めます。

支給停止額 =(基本月額+総報酬月額相当額 − 支給停止調整額)÷ 2

以下、日本年金機構が公開している「在職老齢年金の計算方法」から、「基本月額」と「総報酬月額相当額」について引用します。

・基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額

・総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12


※上記の「標準報酬月額」、「標準賞与額」は、70歳以上の方の場合には、それぞれ「標準報酬月額に相当する額」、「標準賞与額に相当する額」となります。

出典:日本年金機構|在職老齢年金の計算方法

つまり、1カ月あたりの「老齢厚生年金」と「給与+賞与」の合計が支給停止調整額を上回った場合、上回った金額の半額が老齢厚生年金から差し引かれます。

支給停止額の具体的な計算例

では、実際の計算例を見てみましょう。

【例1】老齢厚生年金の支給月額が10万円・月給20万円・年2回各60万円(10万円/月)のボーナスがある場合

支給停止額 = (10万円 + 30万円 − 50万円) ÷ 2 = 0円

このケースでは、基本月額 と総報酬月額相当額の合計額が40万円で、支給停止調整額の50万円に達していません。このため、支給停止額は0円となり、老齢厚生年金は減額されずに満額の10万円が支給されます。つまり、1カ月あたりの総収入額は40万円のままで、変更はありません。

【例2】老齢厚生年金の支給月額が15万円・月給30万円・年2回各60万円(10万円/月)のボーナスがある場合

支給停止額 = (15万円 + 40万円 − 50万円) ÷ 2 = 2.5万円

このケースでは、基本月額 と総報酬月額相当額の合計額が55万円で、支給停止調整額の50万円を5万円超えています。5万円の1/2にあたる2.5万円が老齢厚生年金から支給停止され、実際の総収入額は52.5万円となります。

在職老齢年金の支給停止にまつわる注意点

支給停止制度を適切に運用するためには、いくつかの重要な注意点があります。詳しく見ていきましょう。

老齢厚生年金と老齢基礎年金

在職老齢年金制度において、支給停止の対象となるのは老齢厚生年金のみです。老齢基礎年金は、総収入額を問わず全額支給されます。

例えば、月額6万円の老齢基礎年金と月額10万円の老齢厚生年金を受給している場合、支給停止の計算対象となるのは老齢厚生年金の10万円のみです。

70歳以上の従業員への適用

従業員が70歳以上の場合、在職老齢年金制度は適用されるものの、厚生年金保険料の負担はありません。保険料を支払うことなく、仕事をしながら老齢厚生年金を受給できます。

ただし、月額総収入が支給停止調整額を超えた場合には、70歳以下の高齢労働者と同様に老齢厚生年金の支給額が減額されます。

加給年金への影響

加給年金は、年金受給者に扶養されている配偶者や子どもがいる場合に上乗せされる年金です。支給停止額が老齢厚生年金の額を上回る場合、加給年金も含めて老齢厚生年金全額が支給停止となります。

例えば、基本月額が10万円・総報酬月額相当額が70万円のケースを見てみましょう。

支給停止額 = (10万円 + 70万円 - 50万円)÷ 2 = 15万円

このケースでは、支給停止額(15万円)が基本月額(10万円)を上回るため、加給年金を含む老齢厚生年金全体が支給停止となります。

参考:日本年金機構|在職老齢年金の計算方法

高年齢雇用継続給付との関係

「高年齢雇用継続給付」は、次の要件を満たす高齢労働者を対象に、最高で賃金額の15%に相当する額が雇用保険から支払われる制度です。

  • 60歳以上65歳未満
  • 雇用保険の被保険者
  • 雇用保険の加入期間が5年以上
  • 給与額が60歳到達時の75%未満

高年齢雇用継続給付を受給すると、標準報酬月額の最大6%が老齢厚生年金から減額されます。

参考:日本年金機構|在職老齢年金の支給停止の仕組み

関連記事:【社労士監修】高年齢雇用継続給付とは?申請方法や支給額の計算方法をチェック

支給停止が及ぼす影響

在職老齢年金の支給停止は、従業員と企業の双方に大きな影響を与えます。その詳細について、それぞれの立場からピックアップして紹介します。

従業員への影響

  • 収入が減少する:支給停止により、就労による収入増加が老齢厚生年金の減額で相殺される可能性があります
  • 就労意欲が低下する:支給停止による実質的な収入の減少が、高齢労働者の仕事に対するモチベーションの低下や働き控えを招く可能性があります

企業への影響

  • 人材確保が困難になる:支給停止制度は、高齢労働者の就労意欲に影響を与えます。豊富な経験や高いスキルを持つ人材の確保が難しくなる可能性があります
  • 待遇改善の必要性が高まる:支給停止を考慮した給与設計が必要となります。福利厚生やボーナス制度の見直しが求められます

支給停止の影響を最小限に「福利厚生の活用」

在職老齢年金の支給停止による従業員や企業へのネガティブな影響を最小限に留める手段として、まず挙げられるのが福利厚生の活用です。福利厚生を活用することで得られるメリットと、おすすめの福利厚生サービスを紹介します。

福利厚生を活用するメリット

食事補助や健康サポートをはじめとする福利厚生は、給与とは別の形で企業が従業員へ提供する報酬です。一定の条件を満たすことで損金として計上できるため、企業の法人税が削減されるほか、従業員の所得税にも影響を与えません。

充実した福利厚生は、減額された老齢厚生年金を補う役割を果たし、高齢労働者のモチベーションの低下や働き控えを防ぐ効果が期待できます。

関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

高齢労働者もうれしい食事補助の福利厚生「チケットレストラン」

新たに福利厚生の導入を検討する企業の中で、特に人気を集めているサービスに、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生「チケットレストラン」があります。

チケットレストラン」は、一定の利用条件を満たしていれば、加盟店での食事が半額になるサービスです。日常的に利用でき、お得感も強いため、福利厚生としてのアピール度が高いのが魅力です。

ICカードによるタッチ決済で簡単に利用でき、ファミレスやコンビニなど、全国に25万店以上の加盟店が存在する「チケットレストラン」は、高齢労働者の嗜好にも対応できる福利厚生として注目度を高めています。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

老齢年金の支給停止を理解してWin-Winの雇用関係を構築しよう

在職老齢年金の支給停止は、高齢労働者のモチベーション低下や、それに伴う働き控えの原因となるものです。

企業が高齢労働者が持つ経験やスキルを十分に活用するためには、福利厚生の充実などを通じ、在職老齢年金の支給停止がもたらす総収入の減少を補う施策を用意することが求められます。

今後ますます加速していくことが予想される少子高齢化の中で、人材の持つ力を最大限に発揮し、成長を続ける企業となるためにも、老齢年金の支給停止への理解を深め、高齢労働者とのWin-Winの雇用関係構築を目指してはいかがでしょうか。

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