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【社労士監修】適応障害で休職した従業員への会社の対応はどうする?ポイントを徹底解説

【社労士監修】適応障害で休職した従業員への会社の対応はどうする?ポイントを徹底解説

2025.06.27

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

従業員が適応障害で休職する場合、会社にはどのような対応が求められるのでしょうか。対応を誤れば、再発や退職につながるだけでなく、職場全体の士気にも影響します。本記事では、適応障害の基礎知識から、休職時の対応ポイント、職場復帰の支援、メンタル不調の予防策まで、企業が知っておきたい情報をわかりやすく網羅しています。ぜひ参考にしてください。

適応障害とは

職場や生活環境の変化などにより、強いストレスを感じて日常生活に支障をきたす「適応障害」。うつ病と同様に休職の原因となることも多い、企業にとって無視できないテーマです。まずは、適応障害の定義や症状、世代別の傾向などを解説します。

適応障害はどんな病気?うつ病との違いは?

適応障害とは、ある特定のストレス要因に対して心身の不調が現れ、社会生活に支障をきたす疾患です。厚生労働省は、ポータルサイト「こころの耳」の中で、適応障害を次のように定義しています。

環境変化によるストレスが個人の順応力を越えた時に生じる情緒面および行動面の不調です。うつ病など他の精神疾患の診断がつくには至っていない状態です。薬物療法も行われますが、環境調整、環境に慣れること、個人の順応力が増えることなどが状態の回復に重要です。

出典:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|適応障害:用語解説

適応障害の主な症状としては、抑うつ気分・意欲の低下・不安・不眠、食欲低下などが挙げられます。

適応障害は、しばしばうつ病と混同されますが、両者には明確な違いがあります。適応障害は、明確なストレス因があり、その状況から離れると症状が軽快する傾向にある疾患です。一方、うつ病の場合、環境に関係なく抑うつ状態が持続し、日常的な楽しみや関心まで喪失します。

適応障害は、不安障害やパニック障害などと併発することもあるため、診断には専門的な知見が必要です。初期の段階で適切な対応を講じることで、深刻な疾患への進行を防ぐことができます。

メンタル不調は若手社員に多い

適応障害をはじめとするメンタル不調は、特に新卒をはじめとする若手社員に多く見られます。

厚生労働省が所管する協会けんぽの「現金給付受給者状況調査(令和5年度)」によると、2025年度に傷病手当金を受給した人のうち、「精神および行動の障害」が原因となった割合は、20~24歳で54.56%・25~29歳では55.53%でした。これは、全年代の中でも突出して高い数値です。

この結果からは、若年層の休職理由の過半数がメンタル不調に起因していることがわかります。若手社員の獲得・定着を目指すにあたっては、社員一人ひとりのメンタル不調にいち早く気づき、早期に適切な対応をすることが求められます。

参考:協会けんぽ|全国健康保険協会現金給付受給者状況調査(令和5年度)

メンタル不調の実態

適応障害をはじめとするメンタル不調が原因の休職はどの程度発生しているのでしょうか。ここでは、協会けんぽの調査結果をもとに、メンタル不調の実態について解説します。

参考・画像出典:協会けんぽ|全国健康保険協会現金給付受給者状況調査(令和5年度)

メンタル不調による休職は全体の35.2%

傷病別構成割合

協会けんぽの「現金給付受給者状況調査(令和5年度)」によると、傷病手当金の総支給件のうち、適応障害を含む「精神及び行動の障害」による支給は35.2%と、すべての傷病分類の中でもっとも多くなっています。

また、前項で示した通り、20代の若年層では「精神及び行動の障害」が傷病手当金の支給原因として最多です。若手社員の長期的な育成を進める企業にとって、メンタル不調は経営戦略の視点からも大きな課題となっています。

メンタル不調の平均支給期間は最長クラスの218日

傷病手当支給期間

同調査によると、傷病手当金の平均支給期間は158.20日(約5カ月)でした。一方「精神及び行動の障害」による傷病手当金の平均支給期間は218.55日で、平均よりも60日ほど長い最長クラスとなっています。

「精神及び行動の障害」の次に多いのは「神経系の疾患」で198.68日、次が「循環器系の疾患」で195.10、「新生物」が約193.71日と続きます。

女別では男性の方が支給期間が長く、総数はもちろんのこと、「精神及び行動の障害」に限っても男性は225.24日・女性は212.61日と、約13日間もの差があるのが実情です。

メンタル不調の支給額は1件約21万円

同調査によると、「精神及び行動の障害」で傷病手当金を受給した人1人あたりの平均支給額は209,850円でした。これは全疾患の中でも高水準に位置し、「循環器系の疾患」の216,731円に次ぐ金額です。

支給額の多さには、支給期間の長さが大きく関係しています。前項で示されたように、適応障害をはじめとするメンタル不調では、他の傷病よりも休職が長期化しやすい傾向にあるため、支給額もおのずと高額になります。

こうした傾向は、企業にとって経済的な負担だけでなく人材損失のリスク要因ともなるものです。企業には、メンタル不調予防策の強化や職場環境の改善が求められます。

 

企業が押さえるべき休職制度の基本

休職制度は、法律で一律に定められたものではないため、企業ごとの制度設計が重要になります。ここでは、制度の基本と設計のポイントを解説します。

休職制度は法律上の義務ではない

休職制度は、労働基準法上の義務ではなく、就業規則に盛り込むことで初めて効力をもつ「相対的必要記載事項」です。そのため、制度の有無や期間・要件などは企業側に一定の裁量があります。

しかし、制度の不整備や曖昧な運用は労使トラブルの原因となりかねません。特にメンタルヘルスに関わるケースでは、個別対応が難しくなる場面も多いため、あらかじめルールを定めておくことが企業防衛にもつながります。

休職命令や復職判断の基準が明確であれば、従業員にとっても安心材料となるでしょう。

参考:厚生労働省|就業規則にはどのようなことを書けばいいのですか。

適応障害への対応では「開始日」を明確に

適応障害での休職対応では、「いつから休職とするか」という開始日の明確化が重要です。過去の裁判例でも、開始日が曖昧なまま対応した結果、企業側が不利となったケースが見られます。

例えば、主治医の診断書に「〇日から就業困難」と記載があっても、それをもって休職の開始とはなりません。企業が正式に「休職命令書」を交付し、就業免除の対象期間を明示する必要があります。

診断書のみで対応せず、制度運用の記録を残すことで、後のトラブルや訴訟リスクを抑えることが可能です。

復職時のトラブルを防ぐ「復職基準」の整備

メンタル不調からの復職では「就業可能かどうか」を誰がどのように判断するかが問われます。

主治医の診断書だけで早急に復職を進めた結果、再発に至るケースもあるため、企業には万全な「復職基準」の整備が求められます。

例えば、復職前の「通勤訓練」や「模擬出勤」期間を設けること、産業医の助言を得て体制を整えることなどが効果的です。また、リワーク支援機関との連携や、復職前の段階的な業務復帰(短時間勤務・軽作業など)も有効です。

復職基準を定め、文書化しておくことで、企業と従業員双方の安心と再発予防が実現できます。

参考:厚生労働省|心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

従業員のメンタル不調を放置したらどうなる?3つのリスク

従業員のメンタル不調への対応を怠った場合、企業にはさまざまなリスクが生じます。ここでは、具体的なリスクを「法的トラブル」「人材流出」「生産性の低下」の3つの視点から解説します。

法的リスク|解雇・復職拒否を巡るトラブル

適応障害をはじめとするメンタル不調を抱える従業員への対応を誤った場合、企業は解雇や復職拒否をめぐる法的トラブルに発展する恐れがあります。

特にリスクが高まるのは、休職開始・復職可否に関する記録が曖昧な場合や、主治医や産業医の意見を無視して復職を拒否した場合です。

例えば、復職可とする診断書が提出されたにもかかわらず、企業側が「業務遂行は困難」として復職を拒否した場合、訴訟に発展する可能性が否定できません。

こうした争いでは、医師の診断書・通勤訓練の有無・復職判断のプロセスなどが証拠として重視されるため、日常の記録や医療的判断を軽視せずに対応することが大切です。

参考:厚生労働省|中央労働委員会:集団労使紛争の調整事例と解説 [38]

人材流出リスク|再休職・退職が連鎖する職場

メンタル不調の従業員を放置すると、当人の休職・再休職や早期退職のリスクが高まるだけでなく、職場全体が人材流出のリスクにさらされる可能性があります。

特に、業務が属人化している企業では、1人の不在が組織内の他のメンバーに大きな影響を与えます。休職者の業務を代わりに担う人材の負担は非常に大きくなりがちで、こうした状況が長期化した場合、企業への不信感を募らせて退職につながるケースも可能性として否定できません。場合によっては、退職がさらなる退職を招く「退職ドミノ」が発生する可能性も考えられるでしょう。

メンタル不調は、特定の従業員の問題にとどまらず、企業文化や職場風土に影響を与える課題との認識が大切です。

生産性の低下リスク|周囲の業務負担・モチベーション低下

メンタル不調による長期離脱が発生すると、業務のしわ寄せが周囲に及び、チーム全体の生産性が低下するリスクがあります。

欠員状態が続けば、一時的な業務分担では追いつかず、残業の増加や業務負担の偏りが発生します。その結果「また誰かが休職するのでは」という不安や疲弊感が職場に蔓延し、モチベーションやエンゲージメントの低下に直結するのです。

さらに、こうした環境下では、新たなメンタル不調者を生むリスクも高まります。企業には、予防と初動対応の有無が将来の人材定着に大きく影響することを踏まえた体制づくりが求められます。

メンタル不調を予防する職場づくりのポイント

適応障害をはじめとするメンタル不調によって、企業に生じるリスクは決して軽視できるものではありません。では、メンタル不調を予防するためには、企業はどういった施策を講じるべきなのでしょうか。ここでは、3つの観点からわかりやすく解説します。

心理的安全性を高める仕組みづくり

職場における心理的安全性の欠如は、従業員が不安やストレスを抱える原因となり、メンタル不調の温床にもなります。

心理的安全性とは、誰もが気兼ねなく発言・提案・相談できる雰囲気が保証されている状態を指します。例えば、「こんなことを言ったら評価が下がるのでは」と不安に感じ、本音が隠されてしまう組織は、心理的安全性が確保されているとはいえません。

一方で、日常的に上司や同僚が傾聴の姿勢を示し、安心して声を上げられる組織は、心理的安全性が確保された組織です。

心理的安全性が確保された職場づくりには、管理職へのラインケア研修や、1on1ミーティングの定着、EAP(従業員支援プログラム)の導入などが有効です。

単なる制度整備ではなく、従業員が「相談しても大丈夫」「自分の存在が認められている」と感じられる文化づくりが、心理的安全性の確保につながります。

参考:こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト|職場のメンタルヘルス研修ツール

メンタル不調に寄り添うサポート体制の強化

メンタル不調は、本人が自覚する頃にはすでに深刻化しているケースも多く、周囲が初期の変化に気づくことが予防の鍵となります。

そのためには、人事や上司が従業員一人ひとりの遅刻や業務ミスの増加、無表情や口数の減少といった些細なサインを見逃さず、違和感をキャッチできるような意識づけが必要です。

また、産業医や社外カウンセラーとの連携により、専門的な支援がスムーズに受けられる体制を整備しておくことも重要です。会社の対応姿勢そのものが、従業員の安心感、ひいてはメンタル不調の発生率を左右します。

エンゲージメント向上のための工夫

エンゲージメントとは、従業員が企業の目標に共感し、主体的に貢献しようとする意欲や情緒的なつながりを指します。

このエンゲージメントが高い職場では、メンタル不調のリスクも相対的に低下し、離職率や欠勤率も下がる傾向にあります。エンゲージメントを高めるには、従業員の働きがいや安心感を支える仕組みづくりが重要です。

具体的な施策として、近年注目されているのが、福利厚生の充実です。例えば、食事補助制度や住宅手当、家事代行サービス利用補助といった、従業員の生活を直接サポートする福利厚生サービスは、エンゲージメントの向上に大きく寄与します。

「会社に大切にされている」という実感は、企業への帰属意識やモチベーションの向上、パフォーマンスの向上にも寄与するため、戦略的な投資としても有効です。

関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上に役立つ施策や取り組むメリット

人材の定着に効果的「チケットレストラン」

福利厚生の中でも、近年特に注目を集めているサービスに、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」があります。

チケットレストラン」は、従業員のランチ代を企業がサポートする食事補助の福利厚生サービスです。導入した企業の従業員は、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できます。

加盟店のジャンルは幅広く、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど、利用する人の年代や嗜好を問いません。勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用する場所や時間も自由なため、どのような勤務形態でも公平に活用できる点もうれしいポイントです。

さらに、一定の条件を満たした福利厚生は所得税の非課税枠を活用できるため、同額を給与として支給するよりも従業員の実質的な手取り額を増やす効果があるほか、企業の法人税も軽減されます。

福利厚生でなぜ手取りがアップする?

出典:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

日常生活に欠かせない食事という形で従業員をサポートしつつ、実質的な手取りアップも実現できる魅力的な福利厚生として、「チケットレストラン」はすでに3,000社を超える企業に導入されています。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

従業員の適応障害|人事が備えるべき視点と対応体制とは

適応障害をはじめとするメンタル不調による休職は珍しいものではありません。とはいえ、この状態を放置した場合、会社には「法的リスク」「人材流出リスク」「生産性の損失リスク」が生じます。これらのリスクが企業にもたらす損失は軽視できないため、会社はあらゆるリスクを想定し、十分な制度の整備や対応をしなければなりません。

具体的な施策としては、心理的安全性の感じられる職場づくり・サポート体制の強化・「チケットレストラン」のような福利厚生を含むエンゲージメント向上のための施策などが挙げられます。

制度や仕組みの整備に加え、従業員が「ここなら安心して働ける」と思える職場風土を育むことが、企業にとって最大のリスクマネジメントといえるでしょう。

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参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
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