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物価高対策とは?企業がすべき支援と補助とは?中小企業などの対策例

2023.07.04

急激な物価高騰により、国や地方自治体、企業は物価高対策に乗り出しています。本記事では物価高とは何か、現在の物価高騰の原因を中心に、現在施行されている「国や地方自治体が行う物価高支援策」や「企業が従業員向けに行う物価高支援策」を紹介します。各企業が取るべき、物価高騰支援策や事例、その効果などについてもさまざまなデータを基に取り上げました。

物価高対策とは?

急激な物価高騰を受け、国や企業は物価高対策に踏み出しています。主な物価高対策としては、インフレ手当、賃金アップ、助成金などが代表的です。物価高対策について詳しく解説する前に「物価高」や「インフレ」について理解を深めましょう。

物価高とは

物価高とは、市場に流通する物やサービスの価格が以前より高い状態です。単に物価が上がった状態ではなく、急激に物価が高騰したときや多くの人が「物価が高い」と感じる状況を指すので、インフレが起こっているときに指摘されることが多いです。

インフレとの違い

物価高は、あくまで物価を対象とした状況を表す言葉です。一方、インフレはインフレーションの略で、デフレ(デフレーション)の対義語です。

インフレとデフレは、物やサービスの需要と共有のバランスを表します。需要が供給を上回る状況だと物やサービスの値段が高くなり、インフレの状況になります。反対に、供給が需要を上回れば物価が下がり、デフレ状況を迎えます。

物価高は、インフレの状況下で起こります。急激な物価高により、日常生活に必要なものが気軽に購入できなくなれば、生活が立ち行かなくなる人もいるでしょう。そのため、インフレは悪いものと捉えられがちですが、デフレの状況が長く続けば経済活動が低迷するため、インフレは経済成長のためにも必要だといわれています。

現在の物価高とは

長らく日本経済は低迷状態にあり、市場の物価も全体的に安価な状況が長く続いていました。しかし、ここ数年は景気回復の兆しを見せ、市場でもさまざまな商品の価格が改定され、緩やかな物価が上昇傾向でした。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2021年頃から、物価高騰がさまざまなメディアが取り上げるようになりました。さらに、ウクライナ侵攻の影響から原油・原材料の高騰が起こり、円安も相まって2022年上半期にはいわゆる値上げラッシュが起こりました。2022年11月には、総務省より消費者物価指数が40年ぶりに上昇したと発表されたこともあり、社会全体の物やサービスの価格が高騰を続けています。

特に、食料品や電気代、ガス代といった消費者の生活に直結する物価高騰が相次ぎ、国や企業が物価高対策や支援に乗り出しています。

国による物価高への対応策

国民の生活を脅かすほどの急激な物価高騰に対し、国もさまざまな政策を打ち出しています。政府が国民、企業向けに行う物価高対策について見ていきましょう。

国民への物価高支援

政府は2022年度後半より、物価高騰を受けた国民への経済支援策を何度も協議、実行しています。主な内容は「低所得世帯への給付金」「電気代の負担軽減策」「ガソリン補助金」などです。こうした対策により、最終的には国内のGDP(国内総生産)を4.6%押し上げる効果を見込んでいるとのことですが、結果はどうなのでしょうか?

まだ政府は支援策に乗り出したところですが、野村総合研究所が発表した物価高対策の経済効果の試算値によると、電力・ガス・ガソリン代支援策の財政支出は11.1兆円、年間名目GDP押し上げ効果は0.51%となっています。また、首相は「来年にかけて消費者物価を1.2%以上引き下げていく」と強調しています。

参考:内閣府 電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金について
参考:野村総合研究所 物価高対策の経済効果試算

企業への物価高支援

政府は中小企業を中心に物価高支援にも乗り出しています。企業に対し、一般家庭と同様に、電力・ガス・ガソリン代の緩和政策を行っていることはよく知られているでしょう。

加えて、原油価格や物価高騰の影響で売り上げや利益が減少している中小企業やフリーランスには、従業員数など事業規模に応じて最大4,000万円までの補助金を交付する「中小企業等事業再構築促進事業」も発表されました。

また、2021年9月より、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」と設定し、価格転嫁を促す施策を打ち出しています。発注側の企業に経済産業大臣名で価格転嫁を要請、フォローアップ調査を行う、などが主な内容です。

参考:中小企業庁 中小企業等事業再構築促進事業
参考:中小企業庁 価格交渉促進月間

企業に求められる物価高対策とは

こうしたなか、企業も積極的に物価高対策に乗り出す姿勢が求められます。企業が取るべき物価高対策とはどのようなものがあるのでしょうか? 詳しく見ていきましょう。

自治体の支援制度の活用

昨今の物価高騰には国だけでなく、各地方自治体も支援制度を立ち上げています。全国商工団体連合会の調査発表によると、調査に回答があった775自治体のうち約6割が2022年度中に「中小企業に対するエネルギー価格高騰対策」を策定したとのことです。加えて、全国で2,000件を超す事業者支援策が実施されています。

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出典:全国商工団体連合会「2022(令和4)年度・物価高騰の影響を受ける中小業者向け支援策・実施状況調査」

また、多くの自治体で23年度以降も地方創生臨時交付金、コロナ交付金などの継続を要請しており、自治体から企業への物価高騰に対する支援策は、補助金、助成金といった形で今後も継続する見込みです。企業は、こうした自治体による物価高騰支援策をうまく活用し、安定した企業運営、事業継続を図りましょう。

出典:全国商工団体連合会「2022(令和4)年度・物価高騰の影響を受ける中小業者向け支援策・実施状況調査」

事業やコストを見直す

事業によって生まれた粗利益を守るために、新たな利益を生み出す事業や企業運営にかかるコストを見直すことも重要な物価高対策の施策です。新しい事業の立ち上げたり、営業活動を活発化させたりという攻めの姿勢だけでなく、固定費の見直しや光熱費、人件費に無駄はないかなどコストの見直しなど、守りの施策も同時進行できると良いでしょう。

 ただし、過剰な売上重視やコストカットに走りすぎると従業員の離職が相次ぐことになり、採用活動に新たなコストが生じかねません。「社内にリモートワーカーを増やして社内の光熱費を減らす」「オンラインの商談を増やして移動費を抑える」「管理システムを導入し無駄な残業を減らす」といった施策が企業と従業員双方にとってプラスになります。オフィスに人が減った分、賃料を抑えられる物件に移転し、浮いた賃料で新規事業を立ち上げるといった施策を行い、利益拡大に成功した企業も存在します。

従業員のロイヤルティや生産性を上げる

物価高騰に頭を悩ませているのは、企業だけではなく一般消費者も同様、もしくは一層切実ともいえる状況です。政府の国民向けの物価高騰支援策は、一般的な企業に勤める従業員は対象とならないケースがほとんどのため、企業が自社の従業員の生活支援を実行するケースが増えています。

また、企業が自社の従業員向けに物価高騰における生活支援を行うことにより、従業員のロイヤルティが上がり、生産性が上がる効果も期待できます。従業員のための施策は、離職率を下げ、採用活動でもアピール材料としても有効です。人材確保の観点でも、企業が従業員に物価高騰対策として生活支援を実行するのには大きな意味があるでしょう。

従業員のロイヤルティを高めるなら?おすすめの施策事例やポイントを解説!メリットや類似語も確認しよう

企業の従業員向け物価高への対策

大手、中小を問わず、自社の従業員むけに物価高支援策を行う企業のニュースを耳にすることもあるでしょう。多くの企業が従業員向けに行っている代表的な物価高支援策を紹介します。

インフレ手当

「インフレ手当」とは、物価高が急激に進むのにあわせて賃金を上昇させる代わりに、従業員がインフレに対応できるよう生活支援を目的として企業が支払う特別手当のことです。 特別手当なので、あくまで一時的なものとして今後インフレが落ち着けば廃止される可能性もあります。企業によって「一時金」「月額支給」と支払い方法も分かれます。

帝国データバンクが、2022年11月に発表したデータによると、その時点で「インフレ手当を支給した企業」は全体の6.6%、「支給を予定している企業」は5.7%、支給を検討中の企業」は14.1%となり、4社に1社がインフレ手当に取り組んでいると答えました。2023年6月現在はさらに多くの企業がインフレ手当の支給に取り組んでいると推察できます。

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出典:帝国データバンク インフレ手当に関する企業の実態アンケート

また、インフレ手当の支給額としては、一時金では「1万円~3万円未満」が27.9%で最も多く、平均支給額は約5万3,700円です。月額手当としてインフレ手当を支給する企業は月額支給額が「3千円~5千円未満」と「5千円~1万円未満」が30.3%で最も多く6,500円程度が平均支給額です。

出典:帝国データバンク インフレ手当に関する企業の実態アンケート(PR TIMES)

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出典:帝国データバンク インフレ手当に関する企業の実態アンケート

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賃金のベースアップ

2023年度の春闘では、さまざまな業界で高水準のベ―スアップや賃金の改善が約束されました。今年のベア獲得には近年の物価高騰が影響するという見方が濃厚です。

2022年4月より、経済産業省主導のもと、政府は資本金10億円以上かつ従業員数1,000名以上の大手企業向けの賃上げ促進税制では、従業員の給与を3%増加させた場合に増加額の15%を法人税から控除、4%増加させれば25%まで控除すると表明しています。さらに、人的資本経営促進のための「教育訓練費」を20%以上前年より増額すれば、最大30%の控除を受けられます。

中小企業向け賃上げ促進税制でも、従業員の給与を前年より1.5%増加させた場合、増加額の15%を法人税から控除、2.5%増加させれば、さらに15%プラスして控除すると発表しました。「教育訓練費」を前年より10%以上増額すれば、最大40%の控除を受けられます。両者とも要件がありますが、企業にとっては大きな控除が受けられるとあって賃上げに前向きな企業が増えています。厚生労働省も「賃金引き上げ特設ページ」を開設し、賃上げの取り組み事例や業種ごとの平均賃金等の情報提供を行うなど、国をあげて積極的な賃上げ、基本給与の底上げ支援を始めています。

しかし、インフレを受けて経営不振や価格転嫁に困難を抱える企業も多く、なかなか賃金のベースアップに踏み切れない企業も多いです。大同生命保険株式会社が発表した中小企業の経営者を対象にした調査によると、2022年12月の時点で「賃上げしない(できない)」と答えた企業は全体の32%にのぼりました。

「賃上げをした」「賃上げをする見込み」と回答した企業は全体の34%にとどまりました。従業員規模別に見ると21名以下の従業員を抱える企業では55%が賃上げを実行、もしくは検討している一方で、5名以下の小規模事業で賃上げを実行、検討しているのは20%となっています。小さい規模の企業の方が賃上げが難しい傾向にあるといえるでしょう。

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出典:大同生命保険株式会社 中小企業経営者アンケート「大同生命サーベイ」2022年12月調査レポート

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物価高騰経済支援に直結する福利厚生サービスの導入

中小企業や小規模事業所の中には、インフレ手当や賃金アップに踏み出せなくても、物価高に対する従業員支援策として、消費活動に直結する福利厚生サービスを導入する企業が増えています。

現在ほどの物価高騰を迎える前の調査ですが、2020年7月にエデンレッドジャパンが行った「コロナ共存時代における家計と生活支援に関する調査」 では、高校生以下の子どもを持つ家庭の7割以上が「金銭的余裕がない」と回答し、特に負担が重いと感じる費用として6割の人が「食費」をあげました。 勤務先企業に導入してほしい福利厚生・手当という設問でも、第1位も食事補助です。

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福利厚生サービスにはもともと、税制において優遇があるほか、食事補助に関しては、非課税枠もあるため企業、従業員双方にとって導入することで利益や手取りが増えるのと同じ効果があります。

また、株式会社マイナビの研究機関マイナビキャリアリサーチLABで発表された「2023年卒大学生活動実態調査(3月)」によると就活生が「企業に安定性を感じるポイント」として「福利厚生が充実している」を上げた学生が53.3%と第1位でした。つまり、福利厚生を充実させることが「企業経営が安定している」というアピールにつながり、人材確保に関する施策としても有効なことがわかります。

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そこでおすすめなのが、電子カード配布型の食事補助サービス「チケットレストラン」です。チケットレストランを導入する企業では、利用率99%・継続率98%・満足度90%と重宝されている様子が伺えます。チケットレストランへの加盟店は、2023年5月現在25万件を超え、2023年3月より Uber Eats ともサービスを連携しています。さまざまな好みや食に関する特性がある人、リモートワークや外回り営業と言ってオフィス外勤務の従業員も平等に利用できるサービスです。資料請求はこちら

参考:マイナビキャリアリサーチLAB

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企業の物価高騰支援策事例

現在、企業ではどのような物価高騰支援策を行っているのでしょうか?企業事例をいくつかご紹介します。

株式会社すかいらーくホールディングス|インフレ手当

外食産業大手の一つである株式会社すかいらーくグループ(以下、すかいらーく)は、正規雇用だけでなく多くのパート、アルバイトといった非正規雇用の従業員を雇用しています。昨今の急激な物価高騰を受け2023年1月に、3月の給与に上乗せして生活支援としてインフレ手当を支給することを発表しました。

支給対象者は、すかいらーくの社会保険加入者に限るものの、支給額は正社員と嘱託社員が5~12万円、パート/アルバイトが一律1万円と大きな一助になると推察できます。なお、個々の正社員、嘱託社員によって生まれる支給額の差は、子どもの人数によるそうです。多くのファミリー向け外食事業を手掛ける、すかいらーくらしいと評価されています。

参考:https://www.skylark.co.jp/

ケンミン食品株式会社|インフレ手当と賃金アップ

兵庫県神戸市に本社を構える、食品加工、卸売業のケンミン食品株式会社(以下ケンミン食品)は、2022年、7月と12月の2度にわたってインフレ手当を支給を発表しました。

支給額と対象者の内訳を見ていきましょう。2022年7月は夏季賞与に上乗せする形で在籍日数1年以上の正社員、契約社員計170名には5万円、1年未満の20名に対しては在籍日数に応じて1万円~3万円を支給しました。同年12月は、対象者を正社員だけでなく、契約社員、フルタイム勤務のパート、アルバイトに広げ253名にインフレ手当を支給しました。冬季賞与に上乗せして「生活応援一時金」と銘打ち、従業員本人へは1万円、家族にも1人あたり1万円を加えた支給となりました。

ケンミン食品は売上自体は好調なものの、原材料価格高騰により営業利益の減少が見込まれる中でのインフレ手当支給となり、メディアでも大きく取り上げられました。インフレ手当に踏み切った目的として「社員の生活を支援することを最優先にし、終わりの見えない物価上昇の不安感を和らげること」をあげており、従業員の働きがいやロイヤルティを優先する施策といえます。

2023年度には、平均2%のベアを取り決め、家族手当の増額実施についても検討中とのことです。

参考:https://www.kenmin.co.jp/

アイシーティーリンク株式会社|福利厚生サービス導入

アイシーティーリンク株式会社(以下、アイシーティーリンク)は、2016年に創業のICTインフラ基盤構築やシステムインテグレーション事業、セキュリティコンサルティング事業 、デバイスライセンス販売事業を展開する企業です。アイシーティーリンクでは物価高騰を受け、従業員の生活支援とIT業界の採用市場における差別化を図って食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入しました。

数ある食事補助サービスの中でも、チケットレストランを導入する決め手となったのは税制優遇です。食事補助は、一定の条件を満たしていれば、費用を福利厚生費として計上できます。また、福利厚生の一環として支給される食事補助は、給与が増えたときのように所得税に影響せず、従業員にも税制上のメリットがあります。税制優遇を受けるには「社員1人あたり月3,500円(税別)が上限」「社員が企業支給額と同額以上を負担すること」など細かい条件があります。

リモートワークや外回りといったスタイルで働く従業員にも、オフィスのスタッフと同様の福利厚生が受けられます。こうした公平性もチケットレストランをインフラ手当代わりに支給する企業からは決め手になったと評価されています。

チケットレストランは電子カード配布型システムのため、導入や利用開始の手続きもスムーズです。賃金を上げたり、金銭でインフラ手当を支給を検討したりするよりスピーディーに従業員の生活支援を実行できる点もポイントが高いです。

参照:https://www.ictlink.jp/

チケットレストラン導入で解決できたこと~アイシーティーリンク株式会社 様~

企業は制度を活用しながら独自の物価高支援を始めよう

急激な物価高騰への対応策として国や地方自治体が補助金などの支援策を講じていますが、企業の中にも独自の支援策を施行し、従業員の生活支援に乗り出す企業も増えています。インフレ手当や賃上げなどが主な施策ですが、迅速な実現のために福利厚生サービスの導入で物価高騰に対する支援を実践する企業も少なくありません。

今後も物価の高騰は続くと見られており、まだまだ急速なインフレを引き起こす可能性も指摘されています。また、人材確保の観点からみても、現在の物価高騰の中で従業員の生活支援を行うことはプラスになると見られています。企業には、国や地方自治体の支援策や補助金、助成金を活用しながら、従業員とともにこの難局を乗り切る心が前が必要とされるでしょう。