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【社労士監修】積立年休(失効年休積立制度)とは?仕組みと導入メリットを徹底解説!

【社労士監修】積立年休(失効年休積立制度)とは?仕組みと導入メリットを徹底解説!

2025.09.30

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

積立年休(失効年休積立制度)は、取得されずに消えてしまう年次有給休暇を企業が独自に積み立て、病気療養や介護、不妊治療、学び直しなどに再利用できる法定外福利厚生のひとつです。積立年休制度を導入することで、失効する年休(年次有給休暇)を特別休暇として活用し、より包括的に従業員を支援することができます。本記事では、制度の仕組みや導入状況、メリット・デメリットを整理して分かりやすく解説します。

積立年休制度(失効年休積立制度)とは

年休(年次有給休暇)は、取得されないまま2年が経つと時効により失効します。この課題への対策として、近年注目を集めているのが「積立年休制度(失効年休積立制度)」です。まずは、積立年休(失効年休積立制度)の詳細を解説します。

積立年休=「失効・未消化の年休」を特別休暇として再活用する制度

積立年休とは、取得されずに失効する年休(年次有給休暇)を企業が独自に積み立て、別枠の特別休暇として再利用できる制度です。

厚労省の「令和6年就労条件総合調査」によれば、労働者1人あたりの年休付与日数は16.9日、取得日数は11.0日でした。取得率は65.3%にとどまり、毎年約5.9日分が未消化となっています。年休は付与から2年で時効により消滅するため、使われないまま失効する割合が少なくありません。

一方、積立年休を制度として整えれば、この失効分の年休を病気療養や長期治療、不妊治療、自己啓発などの目的に活用でき、従業員の健康維持やキャリア継続支援が可能となります。結果として、企業の離職防止や人材定着が促進されるため、労使共にメリットの多い制度です。

なお、失効する年休について、検索上で「執行年休」と表記されるケースもありますが、正しくは「失効年休」です。

参考:厚生労働省|令和6年就労条件総合調査 結果の概況

関連記事:【社労士監修】有給休暇は福利厚生?基本ルールから活用術まで徹底解説

年休(年次有給休暇)とのちがい

年休(年次有給休暇)は労働基準法で定められた法定休暇です。労働者が請求すれば企業は原則として拒否できず、また、取得目的を限定することも禁止されているため、企業側に裁量はほとんどありません。

対する積立年休は、企業が任意に導入する制度であり、取得目的、取得単位(全日・半日・時間単位)、年間積立上限や総積立上限、有効期限、賃金水準などを自由に設計できます。

つまり、法定年休が「全従業員に一律で付与し、必ず取得させる義務的な休暇」であるのに対し、積立年休は「企業ごとの判断で柔軟に運用できる裁量型休暇」なのです。

参考:働き方・休み方改善ポータルサイト

他の休暇制度とのちがい

積立年休は、病気休暇や病気休職、子の看護休暇、介護休暇と混同されやすい制度ですが、その位置づけは異なります。

子の看護休暇や介護休暇は育児・介護休業法で定められた法定制度であり、全企業に整備義務があります。一方、積立年休や病気休暇、病気休職は任意で設けられる制度です。

厚生労働省の調査によると、病気休職・休業制度は47.3%、病気休暇は23.4%の企業で導入されています。積立年休はこれらの任意制度と補完関係にあり、長期療養や不妊治療、自己啓発など、法定制度ではまかなえない目的に柔軟に対応できる仕組みとして機能する制度です。

参考:厚生労働省|育児・介護休業法について
参考:厚生労働省|令和6年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書

関連記事:【社労士監修】特別休暇とは?制度の概要・有給無給・企業事例まで完全解説

積立年休が注目される背景

積立年休は以前から存在する制度ですが、近年特に注目を集めています。ここでは、その理由について解説します。

年休の平均取得率は65.3%|未消化分は毎年失効

日本の年休(年次有給休暇)取得率は年々上昇しており、2023年度(令和5年度)の平均取得率は65.3%と過去最高になりました。

また、同年度に年休を「90%以上」取得した人の割合は32.2%と、完全消化できているケースは3割程度にとどまっているのが実態です。

このように、依然として多くの労働者が、付与された年休をすべて消化することができていません。また、未消化分の年休は、労働基準法第115条の規定に基づき、2年で時効により失効します。

企業にとっては制度を設けても十分に機能していない状況であり、従業員にとっても心身の休養や治療、家族支援、学び直しなどに使える貴重な時間が失われています。

こうした生産性低下や離職リスクの増大といった間接的な損失を招くリスクへの対策として、失効するはずの年休を活用した積立年休が注目を集めているのです。

参考:厚生労働省|令和6年就労条件総合調査 結果の概況
参考:厚生労働省|令和6年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書
参考:e-Gov 法令検索|労働基準法(第115条)

病気・不妊治療・育児・介護・キャリア形成など長期休暇ニーズの高まり

厚生労働省の調査では、「勤め先に特別休暇制度があってほしいか」との問いに対し、65.5%の人が「病気休暇があってほしい」と回答しました※。

がんや生活習慣病など、長期的な治療を要する疾患を抱える人は決して少なくありません。定年が延長され、共働きが主流になる中で、定期通院や不妊治療が必要なケースも増加しています。

また、家族の看護や介護、子育てとの両立など、家庭の事情によって休暇を柔軟に取得する必要性も確実に高まっています。さらに近年では、自己啓発や学び直しを目的に、長期休暇を希望する人も多く見られるようになりました。

このように、病気・不妊治療・育児・介護・キャリア形成など、多様なニーズへの対応として、年休とは別枠で活用できる積立年休のような制度が求められているのです。

※「有給の特別休暇を設けてほしい」と「無給でよいので特別休暇を設けてほしい」を合わせた割合

参考:厚生労働省|令和6年度「仕事と生活の調和」の実現及び特別な休暇制度の普及促進に関する意識調査報告書

年休不足が離職やキャリア中断の原因に

十分な休暇が取れないことは、従業員のキャリアを考える上で深刻な課題です。

病気や治療に必要な時間を確保できず、体調が悪化して休職や退職に追い込まれる事例や、介護や育児との両立ができなくなり、キャリアを中断せざるを得ない事例も見られます。

特に、中堅層や女性人材の場合、一度離職すると再就職や職場復帰が難しくなる傾向があります。人手不足が社会的な課題となる中で、これは企業にとっても大きな損失です。

積立年休は、こうした長期的な休暇ニーズに対応しながら雇用を継続できるため、人材の定着やキャリア継続を強力に支援する制度として注目されています。法定年休を補完する安全弁として機能させることにより、離職防止や職場の安定に貢献することが期待されているのです。

積立年休を導入するには|制度設計のポイント

積立年休は任意制度のため、導入には自社で制度設計を行い、就業規則に明記する必要があります。ここでは、積立年休を制度として導入するにあたって意識したいポイントをまとめました。

年休との優先順位と取得ルールを決める

積立年休を導入する際は、まず法定年休との優先順位を明確にすることが重要です。

労働基準法では企業に年5日の年休取得義務が課されており、この義務は積立年休では代替できません。したがって、実務上は、通常の年休を優先して取得させ、そのあとで積立年休を活用する運用とするのが一般的です。

また、年休と積立年休は別管理とし、取得申請や承認手続き、勤怠システム上の扱いを区別することが欠かせません。こうしたルールを明文化しておくことで、制度導入後の混乱を防ぎ、年休取得義務を確実に履行できます。

参考:e-Gov 法令検索|労働基準法(第39条7項)
参考:厚生労働省|年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説 

関連記事:【社労士監修】有給休暇の年5日取得義務化について解説。罰則や中途入社・パートの対応も

取得単位・上限日数・有効期限の設定方法

積立年休は任意制度のため、取得単位や上限日数、有効期限などを自由に設計できます。

取得単位は、全日・半日単位とするのが一般的で、時間単位は勤怠管理が煩雑になるため慎重な検討が必要です。ただし、法定年休で時間単位取得をすでに導入している企業では、積立年休でも時間単位を認めるケースもあります。

また、毎年積み立てられる日数や総積立上限(日数または年数)を設けることで、休暇残高が過剰に膨らむのを防ぐことが可能です。

有効期限は設けなくても問題ありませんが、長期休暇を取りやすいよう、5〜10年程度の期限を設けるケースもあります。さらに、制度導入時には勤怠システムでの残日数管理が可能かを確認し、ルールと管理方法を整合させることも大切です。

利用事由・賃金水準・繁忙期取得制限の決め方

積立年休の利用事由としては、私傷病や療養、家族の看護・介護を中心に、不妊治療や学び直し、ボランティアなどを含めるのが一般的です。 対象範囲を広げることで、従業員の多様なライフイベントを支援できますが、取得期間や利用事由に応じ、医師の診断書や証明書類の提出を求めるかについても定める必要があります。多くの企業では、連続5日以上や長期間の場合に診断書を必要とする段階的な運用を採用しています。

また、積立年休は法律に根拠のない任意制度であるため、長期連続取得による業務停滞を避けるために「連続取得可能日数」を設けることも重要です。さらに、積立年休の取得日を勤続年数や出勤率の算定に含めるかどうかを就業規則で明確にしておく必要があります。

賃金水準も有給・一部有給・無給から選択でき、繁忙期の取得制限を設けることも可能です。加えて、法定年休の取得率が下がる逆転現象を防ぐため、「積立年休は制約のある特別休暇であり、まずは法定年休を取得する」という原則を従業員に周知することが求められます。制度の趣旨と企業文化に合わせて条件を設計することで、従業員の納得感を得ながら運用負荷を抑えることができます。

退職時の扱いと買取可否のルール化

積立年休は任意制度であるため、退職時に未使用分をどう扱うかも企業が決定できます。

多くの企業は退職時に失効させる運用を取っていますが、退職前にまとめて取得させたり、一定の条件を満たした場合に限り買い取る方法を採用する例もあります。

買取を認めると、給与所得として課税される可能性があるため、対象者や支給額の基準を明確に定めることが不可欠です。買取を行わない場合でも、「退職時に失効する」と就業規則に明記しておかなければトラブルの原因になります。

制度設計段階で最終的な取り扱いを必ず決め、社内周知を徹底することが求められます。

積立年休導入のメリット・デメリット

積立年休は、導入により従業員の安心感を高め、働きやすさを向上させられますが、その一方で設計や管理の負担も生じます。ここでは、積立年休を導入することで生じる具体的なメリットとデメリットを整理します。

積立年休導入のメリット

  • 離職防止・人材定着率の向上
  • 従業員の安心感・エンゲージメント向上
  • 採用力の強化(福利厚生の充実)
  • 多様なライフイベントへの対応力向上
  • 失効年休の「資産化」による有効活用

積立年休は、私傷病や家族介護などで長期休暇を必要とする従業員を支える有効な仕組みです。通常の年休だけでは不十分な場面でも利用できるため、離職やキャリアの中断を防ぎ、人材の定着に寄与します。柔軟な活用は働き方改革を推進する企業にとって大きな魅力といえます。

積立年休導入のデメリット

  • 就業規則改定・労使協議などの初期負担
  • 勤怠管理システムの複雑化
  • 制度・運用ルール設計の負担
  • 代替要員確保などの調整の負担
  • 利用促進の困難さ(制度があっても使われない)

制度は任意設計であるため、導入には就業規則の改定や労使協議が不可欠で、初期対応には一定の人的・時間的コストが避けられません。勤怠管理上も通常の年休と区別した管理が必要になり、取得条件や退職時の扱いなど詳細なルール策定が求められます。

また、制度を導入しても実際に利用されないケースや、取得時に職場の理解が得られない場合もあり、長期休暇時の代替要員確保など運用面での課題も発生します。こうした管理コストや制度設計負荷をどう吸収するかは、導入の成否を左右する大きなポイントです。

積立年休と相乗効果のある福利厚生の検討も

積立年休は長期休暇を確保する仕組みですが、これだけで従業員の健康や働きやすさを十分に支えられるわけではありません。制度を最大限に活かすには、日常的な生活支援が行える福利厚生との併用が効果的です。

例えば食事補助の場合、従業員の経済的負担を軽減し、質の高い食事を取る環境を整えられます。長期的には、健康状態改善による病気休暇の減少、職場での食事機会増加によるコミュニケーション活性化、ブランディングによる採用力強化といったメリットもあります。

エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できる食事補助の福利厚生サービスです。

加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど幅広く、利用する人の年代や嗜好を問いません。また、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用する場所や時間に制限がないのも大きな魅力です。

さらに、一定の条件を満たすことによって所得税の非課税枠を活用できるため、従業員の実質的な手取りアップに貢献するほか、企業の法人税の削減にも寄与します。

従業員の定着や採用市場での競争力強化が期待できるとして、すでに3,000社を超える企業に選ばれている人気の福利厚生制度です。

チケットレストラン」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

積立年休で「失われる年休」を資産に─柔軟で持続可能な職場づくりへ

積立年休(失効年休積立制度)は、毎年失効していた年休を「人材の健康・キャリアを守る資産」に転換する仕組みです。年間平均約5.9日分の未消化年休を、病気療養、介護、不妊治療、学び直しなど多様なライフイベントに活用することで、従業員の離職防止と定着率向上を実現できます。

ただし、積立年休があることで「将来に備えてストックしよう」と通常の年休取得を控えてしまう本末転倒な状況を避けるため、まずは法定年休の取得促進を進めることが求められます。積立年休は法定年休を補完する制度であり、代替するものではないという原則を従業員に周知することが重要です。

制度の導入には、就業規則の改定や勤怠管理の複雑化といった課題もありますが、適切な制度設計により運用負荷を抑制することが可能です。さらに、積立年休を単体で導入するのではなく、「チケットレストラン」のような日常的な支援と併用することにより、「日常の健康維持」と「いざという時の安心」を両立できます。

積立年休と食事補助の組み合わせで、従業員の働きやすさと企業の競争力に相乗効果をもたらしてみてはいかがでしょうか。

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社会保険労務士 吉川明日香

社労士と民間企業の人事部で働くハイブリッド型社労士。労働者、経営者、人事担当者それぞれの視点から、バランスのとれたサポートを心がけています。子育て世代の生活環境や就業環境の課題を探るために保育士の資格を取得し、特定の専門分野を作らず、給与計算、手続き業務、労務相談、助成金等、幅広く実践的なアドバイスを行っています。
吉川社会保険労務士事務所
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