監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
「家事代行補助金(家事支援サービス福利厚生導入実証事業)」は、働く男女のライフイベントとキャリアの両立支援を通じて、中小企業の人材確保と生産性向上を目指す制度です。年々深刻化する人手不足と、大企業に比べて人材確保が困難な中小企業ならではの実態を背景に、2024年に実施されました。本記事では、制度の仕組みから申請方法・よくある質問まで、家事代行補助金について中小企業が知っておきたい情報を網羅しています。ぜひ参考にしてください。
中小企業向け「家事代行補助金」とは
「家事代行補助金」は、経済産業省が2024年に開始した中小企業向けの福利厚生導入実証事業です。働く男女のライフイベントとキャリアの両立を目指して導入された制度で、正式名称を「ライフステージを支えるサービス導入実証等事業費(家事支援サービス福利厚生導入実証事業)」といいます。※本記事では「家事代行補助金」と表記
以下、制度の詳細について解説します。
参考:家事支援サービス 福利厚生導入実証事業
:家事支援サービス福利厚生導入実証事業事務局|令和5年度補正予算「ライフステージを支えるサービス導入実証等事業費(家事支援サービス福利厚生導入実証事業)補助金」公募要領
「家事代行補助金」の仕組み
家事代行補助金は、福利厚生として家事代行サービスを導入した企業の従業員が、割安でサービスを利用できる制度です。国が家事代行サービス提供事業者へ補助金を交付することにより、補助額を反映した価格でサービスが提供される仕組みです。
少子高齢化による人手不足が深刻化する中、働く人々のライフイベントとキャリア形成の両立は、企業の重要課題となっています。家事代行補助金は、こうした課題を踏まえ、家事代行サービスの利用を通じた従業員の家事負担を軽減し、多様な人材の活躍促進・企業の生産性向上を目指して創設されました。
この制度を利用することにより、従業員は家事の負担が減り、ワークライフバランスを向上させることができます。特に、育児や介護と仕事の両立に課題を抱える従業員にとって、大きな支援となることが期待されているのです。
「家事代行補助金」の対象者
家事代行補助金の対象は、中小企業に限定されています。具体的には、以下の条件を満たす企業です。
- 日本国内で法人登記され、事業を営んでいること
- 資本金が10億円未満かつ従業員数が2,000名以下であること
- 個人事業主でないこと
制度を利用するにあたり、業種による制限はありません。また、パートタイムやアルバイト・契約社員など、雇用形態による制限もありません。福利厚生の対象となる従業員であれば、誰でも利用可能です。
「家事代行補助金」の対象となる4つの事業
家事代行補助金で利用できる家事支援サービスは、日常生活に欠かせない「炊事・洗濯・掃除・買い物」の4つの分野に分類されています。それぞれの詳細は以下の通りです。
サービス分類 |
具体例 |
---|---|
炊事 |
献立考案・下ごしらえ・料理作り置き等 |
洗濯 |
洗濯・洗濯干し・取り込み・洗濯物たたみ・ベッドメイク・アイロンがけ・クリーニング受け渡し・布団干し等 |
掃除 |
掃除機掛け・風呂掃除・洗面台掃除・玄関掃除・庭掃除・草むしり・トイレ掃除・キッチン掃除・食器洗い・水回り掃除・窓掃除・片付け・整理整頓等 |
買い物 |
日用品・食料品の買い物等 |
「家事代行補助金」を受給する条件
補助金の受給には、家事支援サービス提供事業者と中小企業等が「連携体※」を形成する必要があります。
また、下記4つのテーマからひとつを選択し、その課題解決に向けた取り組みとして実施することが求められます。
- キャリア支援
- 従業員のエンゲージメント向上
- 子育て・介護支援
- 女性登用の推進
補助金の申請を行い、給付を受けるのは、家事支援サービス提供事業者です。サービス導入事業者とその従業員は、実証事業の効果測定に協力する必要があります。
※連携体|家事支援サービスを提供する事業者と、そのサービスを導入する企業(サービス導入事業者)が協力して構成するグループ
「家事代行補助金」の補助額
「家事代行補助金」を利用した場合の補助額は、家事支援サービスの利用料金(税抜定価)の2/3です。補助上限額は、ひとつの連携体あたり5,000万円・下限額は20万円と設定されています。また、ひとつのサービス導入事業者あたりの補助下限額も20万円です。
上限額 | 下限額 | |
1 連携体 (1 テーマあたり) |
5,000万円 | 20万円 |
1 サービス導入事業者 | ー | 20万円 |
「家事代行補助金」申請の流れ
家事代行補助金の申請は、家事支援サービス提供事業者が主体となって行います。ここでは、手続きの主なステップを順をかんたんに解説します。
- 応募手続き:家事支援サービス提供事業者とサービス導入事業者が連携体を形成し、マイページを通じて応募手続きを行います。応募には、企業の履歴事項全部証明書や、テーマに沿った現状課題と目標を記載した資料など、複数の書類の提出が必要です
- 審査・採択:外部有識者で構成される第三者審査委員会が応募内容を審査します。審査で評価される項目は、事業実施方法の適切性・実施体制・費用の合理性・実証内容の具体性などです。採択結果は本事業のホームページで公表され、採択された連携体には通知が送られます
- 補助金交付申請:採択された連携体は、応募時の申請金額をもとに、実証事業の内容と補助金交付申請額を再度精査します。必要な書類を事務局に提出し、内容に問題がなければ交付決定となります。この時点から実証事業を開始することが可能です
- 実証事業の実施:交付決定後、家事支援サービス提供事業者は、企業の従業員に対して福利厚生価格でサービスを提供します。実施中は毎月の利用状況を報告する必要があり、予定通りの実施が確認できない場合は改善が必要です
- 補助金の確定・交付:実証事業終了後、家事支援サービス提供事業者は、実績報告書や証憑書類を事務局に提出します。事務局による確定検査を経て、最終的な補助金額が確定し、交付されます
「家事代行補助金」よくある質問
家事代行補助金は、2024年に初めて実施された新しい制度です。興味はありつつも疑問点が多いと感じる事業者は少なくありません。ここでは、多く見られる質問を回答とともに紹介します。
参考:家事支援サービス 福利厚生導入実証事業|よくあるご質問
:家事支援サービス福利厚生導入実証事業事務局|令和5年度補正予算「ライフステージを支えるサービス導入実証等事業費(家事支援サービス福利厚生導入実証事業)補助金」公募要領
Q.複数の家事支援サービス提供事業者と連携して申請できますか?
複数の家事支援サービス提供事業者による共同申請が可能です。ただし、その場合は幹事社を1社決定し、幹事社以外の家事支援サービス提供事業者の情報を取りまとめて申請を行う必要があります。補助金は幹事社への一括振込となるため、分配は幹事社が責任を持って行います。
Q.実証事業期間中にサービス導入事業者を追加することはできますか?
採択後にサービス導入事業者を追加することはできません。そのため、申請前に参画企業を確定させ、実証期間中の利用見込みを十分に精査しておく必要があります。
Q.補助金の概算払いは可能ですか?
概算払いは可能です。ただし、サービスの提供実績があることが条件となります。申し込みから納品(サービスの提供)・検収(実績確認)・福利厚生価格での料金収受まで完了していることを前提とし、通常の実績報告と同様の証憑書類の提出が必要です。
Q.補助対象外となる経費にはどのようなものがありますか?
補助対象となるのは、登録された家事支援サービスの基本料金(税抜き定価)のみです。以下の費用は補助対象外となります。
- キャンセル料
- 交通費
- 時間外や休日の割増料金
- 鍵保管料や会員登録費用などのオプション費用
これらの費用は全額が利用者負担となるため、従業員への案内時に明確に説明しておきましょう。
中小企業が直面する「人材確保」と「賃上げ」の厳しい現実
家事代行補助金をはじめ、政府は中小企業向けのさまざまな支援策を用意しています。その背景には、大企業との賃金格差とそれに伴う深刻な人手不足という、中小企業ならではの厳しい実態があります。詳しく見ていきましょう。
人材確保・定着の課題
厚生労働省が発表している「職業安定業務統計」によると、有効求人倍率は、継続的に1倍を超える水準で推移しています。これは、求人数が求職者数よりも多いこと、すなわち多くの企業が人手不足に陥っていることを示すものです。
特に深刻な状況にあるのが中小企業です。帝国データバンクの「人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)」によると、2024年度上半期に人手不足倒産した163社のうち、全体の82.2%を占めたのが従業員数10人未満の企業(134件)でした。また、残りの29件も従業員数10~49人の企業です。
では、なぜ中小企業には人が集まりにくいのでしょうか。
まず考えられるのが、企業規模による賃金の格差です。「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」を見ると、同じ年齢層でも企業規模によって賃金に大きな違いがあります。
大企業 | 中企業 | 小企業 | |
20〜24歳 | 234,000円 | 220,900円 | 214,700円 |
30〜34歳 | 307,300円 | 277,600円 | 269,000円 |
40〜44歳 | 373,400円 | 331,600円 | 306,600円 |
50〜54歳 | 417,400円 | 361,100円 | 330,000円 |
60〜64歳 | 313,800円 | 305,900円 | 298,800円 |
※常用労働者1,000人以上「大企業」・100~999人「中企業」・10~99人を「小企業」
特に中小企業において、賃上げは人材確保、さらに企業の将来的な存続にかかわる重要な課題といえます。
参考:厚生労働省|職業安定業務統計
:株式会社 帝国データバンク[TDB]|人手不足倒産の動向調査(2024年度上半期)|(2024年10月4日)
:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況
関連記事:人手不足倒産が急増!これまでの推移と改善へ向けた取り組みを解説
関連記事:人手不足は低賃金が原因?中小企業の賃上げの実態と求められる施策を解説
中小企業の課題を解消!「福利厚生」の選択肢
中小企業の多くが、人手不足に悩みながらも、賃金等の待遇の差から大企業と比較して人材が集まりにくいというジレンマを抱えています。そんな中小企業の課題を解消する選択肢として、近年注目を集めているのが、家事代行補助金を含む福利厚生です。なぜ福利厚生が中小企業の課題解消に効果的なのか、その理由とおすすめのサービスを紹介します。
福利厚生を活用した「第3の賃上げ」で手取りアップを実現
一定の条件を満たす福利厚生は、会計処理上「経費」として損金計上できます。非課税枠を利用することで企業の法人税が軽減されるほか、給与として同額を支給するよりも従業員の手取りが増えます。これは、通常の賃上げでは得られない大きなメリットです。
この福利厚生の特徴を生かした実質的な賃上げは、エデンレッドジャパンによって「第3の賃上げ」として提案されています。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、
第3の賃上げで注目|食の福利厚生サービス「チケットレストラン」
数ある福利厚生の中でも、近年特に注目を集めているのが、食事補助に関する福利厚生です。食事は日々の健康維持に直結し、かつ経済的負担も大きい項目であることから、従業員満足度の向上に高い効果が期待できます。
そんな食事補助の福利厚生として、日本一の実績を持つサービスが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」は、一定の条件を満たすことにより全国25万店舗以上の加盟店での食事が半額になるサービスです。勤務時間内であれば時間や場所の利用制限がなく、正規従業員・非正規従業員・アルバイト・パートなどさまざまな雇用形態の方でも利用可能です。
加盟店のジャンルはコンビニ・ファミレス・カフェなど幅広く、あらゆる年代・性別・嗜好の従業員が平等に利用できる点も人気の秘密となっています。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
家事代行補助金への理解を深めよう
家事代行補助金は、家事負担の軽減を通じ、従業員のライフイベントとキャリアの両立をサポートする福利厚生施策です。中小企業の人材確保と生産性向上を目指し、2024年に実施されました。
家事代行補助金をはじめとする福利厚生は、エデンレッドジャパンが提案する「第3の賃上げ」として従業員の実質的な手取りを増やすことができ注目されています。「チケットレストラン」のような日常的に利用できる福利厚生と併用することで、従業員満足度の向上、ひいては生産性の向上が期待できるでしょう。
なお、家事代行補助金は2024年度限定の実証事業で、2025年度以降の実施は未定です(2025年1月時点)。継続された場合に備え、あらかじめ制度への理解を深めておきましょう。
「第3の賃上げ」としてチケットレストランを導入された企業様の事例:名古屋商工会議所様/株式会社sumarch様
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
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