監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)
共働き正社員の夫婦も配偶者控除の対象となります。マイナビの調査では、共働き世帯の46%が家計の厳しさを感じる中、特に配偶者の収入が一時的に減少する出産・育児休暇や介護の時期には、この制度の活用が有効です。
本記事では、2025年の税制改正で年収上限が103万円から123万円に引き上げられる配偶者控除の活用方法と、企業が従業員の家計をサポートする福利厚生制度について解説します。
共働き正社員世帯の現状:46%が「家計苦しい」
日本社会では共働き世帯が着実に増えています。総務省の「労働力調査」によると、2024年時点で共働き世帯は約1,300万世帯に達し、増加傾向が見込まれています。さらにマイナビの「【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2025年(2024年実績)」において、共働き世帯の約85.8%が「夫婦ともに正社員」の構成です。
夫婦共に正社員世帯ならば家計に余裕があるかというと、そうではありません。同マイナビ調査によれば、共働き正社員世帯の平均年収は806.4万円ですが、46.0%は「家計が苦しい」と回答しました。共働き正社員世帯が理想とする世帯年収は1,126.3万円との回答で、そのギャップはおよそ320万円です。物価高や教育費、住宅ローン負担などがこうした家計不安の背景にあると考えられます。
出典:マイナビキャリアリサーチLab|【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2025年(2024年実績)
出典:総務省|労働力調査
配偶者控除とは
配偶者控除は、配偶者がいる納税者の課税所得を軽減する「人的控除」制度です。控除額は最大38万円(配偶者が70歳以上の場合は48万円)で、所得税の負担を下げることができます。
例えば、合計所得金額が900万円以下で、所得税率10%の場合です。
- 計算式:38万円×10%=3.8万円(所得税の減少額)
年間で3.8万円の所得税負担減となります。共働き世帯にとって「控えめながらも確実に家計を助ける」存在と言えるでしょう。
控除額の詳細については以下を参考にしてください。
なお、所得税率については以下の通りです。
配偶者控除適用を受けるための要件
以下の要件を満たすことで配偶者控除の適用を受けられます。
- 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であること。
- 民法の規定による配偶者であること(内縁関係の人は該当しません。)。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円→2025年から123万円以下)
- 配偶者が青色または白色申告の事業専従者でないこと。
上記の中では「年間合計所得金額が48万円以下」の要件が重要です。
※2025年改正による変更点は次章で解説します。
2025年以降の税制改正と配偶者控除の関係
2025年度の年末調整から配偶者控除の年収上限が103万円から123万円に引き上げられます。配偶者控除の控除額や基本的な構造自体は変更はありませんが、基礎控除58万円(10万円の引き上げ)、給与所得控除65万円(10万円の引き上げ)を合計した「非課税枠」が123万円になることは重要なポイントです。
上記の改正によって、育児や介護などで収入を抑えつつ働く正社員の配偶者も、より幅広い年収帯で控除を受けられるようになりました。
併せて「配偶者特別控除」についても2025年改正により、満額(38万円)適用となる年収帯は「150万円まで」から「160万円まで」に拡大しています。納税者本人の合計所得が1,000万円を超える場合は、これらの控除が適用されない点は従来通りです。
出典:国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
配偶者控除は正社員かつ共働きでも適用可能
配偶者控除は「配偶者=専業主婦(主夫)」というイメージが強いかもしれませんが、実際には配偶者も働いている共働き世帯でも、要件を満たせば控除対象となります。収入や働き方にかかわらず、条件さえ合えば適用できる仕組みです。
共働き正社員世帯が配偶者控除を使えるタイミング
産休・育休中は所得が一時的に大きく減少しがちですが、こうしたタイミングこそ「配偶者控除」を活用できるチャンスです。産休・育休期間中の給与や賞与が少なければ、配偶者の年間所得が控除適用ライン(年収123万円以下)に収まるケースが増えます。
たとえば、育休開始月までの給与・賞与を合算し、年収が抑えられれば「配偶者控除」の満額が受けられる可能性もあります。もし年収がそれを超えても、配偶者特別控除の段階的な控除(年収201.6万円未満までは一定額)が利用可能です。育児休業給付金や出産手当金は非課税扱いで所得に含まれないため、計算時は注意しましょう。
配偶者控除適用を受けるメリット
近年は様々な物価高対策が話題となっていますが、配偶者控除も手取り収入アップにつながる制度の一つです。一時的に配偶者の年収が下がるなどで家計に余裕がない世帯にとって配偶者控除により「手取りが増える効果」は大きなメリットです。
配偶者控除適用を受けるための年末調整手続き
ここでは配偶者控除の適用を受けるための手続きを解説します。
年末調整での申告方法
会社員は年末調整で「給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に記入し、提出することで配偶者控除が適用となります。
共働きの場合、夫婦双方が配偶者控除の対象となることはできません。夫婦どちらが配偶者控除を申請するかを事前に話し合っておきましょう。
申告漏れ・修正方法
仮に年末調整で配偶者控除を受ける申請を失念した場合でも、2月から3月に行う確定申告で個別に還付請求が可能です。共働きの夫婦で、育児、介護、転職、病気などで年の途中に所得が大きく変動した場合も、同様に対応できます。
出典:国税庁|令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について
企業向け:配偶者控除の案内が必要なタイミング
企業側は、年末調整で従業員が適切な申請ができるように案内しましょう。年末調整以外でも配偶者控除の対象になるタイミングでアナウンスすると、申請漏れを防ぎやすくなります。
| 主に案内が必要なタイミング | 理由・背景 |
| 年末調整前(毎年10~11月) | 年末調整の準備・正確な控除適用のため |
| 育休取得開始時または期間中 | 所得減少による配偶者控除追加適用の可能性が高いため |
| 中途入社時 | 年度途中入社者も該当する場合申告が必要 |
| 配偶者の収入状況が大幅に変更したとき | 新たに該当・非該当となる可能性があるため |
| 家族構成変更(結婚・離婚等) | 配偶者控除対象となる、または対象外となる可能性があるため |
配偶者控除と組み合わせたい福利厚生制度
配偶者控除による税負担の軽減効果に加えて、企業が従業員の家計を支援する方法として「食事補助制度」の活用が注目されています。食事補助制度は、従業員の日々の生活をサポートしながら、企業にとっても効率的な福利厚生となる仕組みです。
非課税の食事補助制度が注目される理由
企業が従業員に提供する食事補助は、以下の(1)(2)の条件を満たすと月額3,500円まで非課税で支給できると定められています。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
出典:No.2594 食事を支給したとき|国税庁
従業員にとって実質的な収入アップ効果をもたらすだけでなく、企業側も福利厚生費として経費計上できることから、双方にメリットのある制度設計です。特に物価高が続く現在、毎月の食費負担を軽減できることは、従業員にとって大きな価値があります。
チケットレストランがおすすめの理由
非課税で食事補助を提供するには前述の条件を満たす必要があり、課題となるのが制度を確実に活用するための運用手段です。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、食事補助の非課税枠を最大限に活用できる食の福利厚生サービスです。従業員へ専用のICカード配布後は、毎月1回のチャージのみで簡単に運用できます。
導入企業は3,000社以上、直接雇用契約があれば正規雇用・非正規雇用のどちらでもサービスを提供できます。
関西エアポートオペレーションサービス株式会社では、正規雇用の従業員・非正規雇用の従業員を問わず「チケットレストラン」を支給しています。公平性を保ちながら、健康経営実現や従業員満足度向上、さらには採用力強化といった成功へと結びついています。
家計が苦しいからこそ適切に制度を活用
共働き正社員の46%が「家計が苦しい」と感じる現状において、配偶者控除や配偶者特別控除は確実に家計負担を軽減できる有用な制度です。人事担当者が年末調整時に正確な案内を行うことで、従業員の制度活用を最大化できます。
さらに「チケットレストラン」のような食事補助の非課税枠を活用した食の福利厚生サービスも効果的です。月額3,500円(税別)という小さな金額でも、年間を通じて家計の安定に寄与します。従業員への税制面・福利厚生面のサポートは、企業の採用力強化や定着率向上にもつながります。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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