日本企業における男女の賃金格差はいまだ深刻で、女性の平均賃金は男性の約7割に留まります。女性活躍推進法の施行をはじめ、女性の活躍が社会全体の課題として注目される近年、男女間に大きな賃金格差が存在する現状は、企業にとって大きなリスクといっても大げさではありません。そこで本記事では、格差の実態と主な要因を整理した上で、企業に求められる是正策と、より魅力ある職場づくりのための具体的なヒントを紹介します。
日本における男女の賃金格差の現状とは
日本では、男女間の賃金格差がいまだ深刻な水準にあります。まずは、政府が公開している資料をもとに、国内における賃金格差の実態を見ていきましょう。
女性の賃金は男性の約7割
厚生労働省の「男女間の賃金格差解消のためのガイドライン」によれば、「一般労働者」の男性の平均賃金を100とした場合、女性の平均賃金は74.8にとどまっています。
これは、女性が男性の約7割の賃金水準で働いていることを意味するものです。男女間の賃金には、依然として大きな格差が存在していることがわかります。
非正規雇用の多くが女性であり、平均賃金水準が低い傾向にあることを踏まえると、非正規を含めた全労働者ベースで見た場合、実際の男女の賃金格差はさらに広がることが推察されます。
世界的にも大きい格差
日本の男女間賃金格差は、国際的にも際立って大きい水準にあります。
「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」が公開している「データブック国際労働比較2024」によると、2021年における日本の男女の賃金差は22.1%でした。韓国(31.2%)に次ぐワースト2位と、先進国の中でも顕著な格差があることが明らかになっています。
さまざまな面で男女平等の価値観が浸透しつつある現代日本ですが、国際的な視点で見ると、いまだ多くの課題が残されているといえそうです。
参考:労働政策研究・研修機構|データブック国際労働比較2024
なぜ賃金格差が生じるのか?主な要因を解説
男女の賃金格差の背景には、制度的・構造的な要因が複雑に絡んでいます。ここでは、厚生労働省の資料をもとに、企業における代表的な格差の要因を整理していきます。
男女の管理職比率の違い
男女の賃金格差が生じる主な理由として、まず挙げられるのが、管理職に占める女性の割合が少ないことです。
「男女間の賃金格差解消のためのガイドライン」によれば、企業規模100人以上の企業における課長級の女性の割合は13.2%、部長級ではわずか8.3%(いずれも令和5年)にすぎません。
さらに国際比較では、日本の管理的職業従事者に占める女性の割合は12.9%(2022年)と、スウェーデン(41.7%)やアメリカ(41.0%)などと比べて極めて低い水準です。
こうした背景を受けて、厚生労働省は2024年11月、従業員101人以上の企業に対して「管理職に占める女性割合」の公表を義務付ける方針を打ち出しました。この義務化は2026年4月の施行が予定されており、企業の女性登用状況がこれまで以上に社外から可視化されることになります。
今後は、単なる数値目標だけでなく、着実な登用と育成の取り組みがより一層求められることになるでしょう。
参考:厚生労働省|賃金構造基本統計調査
参考:NHK|厚生労働省|女性の管理職比率 従業員101人以上の企業に公表義務の方針案
関連記事:【社労士監修】女性管理職比率の公表義務化へ|企業の女性活躍はどう進めるのが正解?
勤続年数の違い
男女間で勤続年数に差があることも、平均賃金に影響を与える大きな要因です。
「男女間の賃金格差解消のためのガイドライン」に掲載されたデータ(図5)をもとに、令和5年の一般労働者における勤続年数10年以上の層(10〜14年・15〜19年・20年以上)を合計すると、男性は52.2%、女性は37.4%となっており、約15ポイントの差が見られます。
こうした差は、女性がライフイベントによって継続就業が難しくなる傾向の表れと考えられ、結果的に昇進・昇給の機会格差につながっています。
賃金格差が企業にもたらす3つのリスク
男女間の賃金格差は、企業に多くのリスクをもたらす喫緊の経営課題です。ここでは、格差を放置することによって、企業が直面する恐れがある3つの代表的なリスクについて解説します。
採用力の低下
近年、若年層や女性を中心に、企業選びの基準として「平等性」や「多様性への配慮」を重視する傾向が高まっています。賃金格差が可視化される中で、格差解消への取り組みが不十分な企業は、就職・転職先として敬遠されるリスクが否定できません。
なお、2022年7月8日より、従業員301人以上の企業においては「男女の賃金差」を情報開示することが義務化されています。これにより、格差の大きさが事実として求職者の目に触れる機会が増えました。企業が将来的に優秀な人材を確保していくためには、格差是正への積極的な姿勢を打ち出すことが重要です。
企業イメージの悪化
男女間の賃金格差に対する対応の遅れは、企業のイメージに悪影響を与えるリスクがあります。
SNSや口コミサイトの普及により、社内の制度や実態が一瞬で拡散される現代において、ジェンダー平等に対する無関心は「時代遅れ」「配慮不足」と捉えられかねません。
たとえ法令を遵守していたとしても、格差を放置している企業は、消費者や取引先・求職者からの信頼を損なう恐れがあります。社会全体で多様性への理解が進む中、無自覚であること自体が企業リスクとして認識される時代に入っています。
人材の流出とエンゲージメント低下
社内での評価や昇進において、性別による不公平感がある場合、従業員のモチベーションやエンゲージメントは大きく損なわれます。
「努力しても正当に評価されない」と感じた女性は、その環境に留まることに抵抗感や危機感を覚えます。長期的なキャリアに対する意識が高い女性ほど、離職を決断する大きな要因となるでしょう。
また、格差に気づいた男性従業員の職場に対する信頼が揺らぐケースも想定されることから、組織全体の生産性や定着率の低下につながる可能性もあります。
ジェンダーに関係なく公正な制度運用がされているかどうかは、従業員にとって、企業への信頼や愛着を左右する重要な要素となっています。
賃金格差の解消に向けて企業ができること
男女間の賃金格差は、偶然や個人差ではなく、企業内の制度設計や運用の偏りにより生じているケースが大半です。格差を是正するためには、自社における格差の実態を客観的に把握し、構造的な問題を一つずつ是正していくことが大切です。ここでは、企業が取り組める具体的な施策を紹介します。
まずは自社の実態を把握する
賃金格差の是正に向けた最初のステップは、現状を客観的に可視化することです。給与・役職・勤続年数・雇用形態・評価結果などの人事データを整理し、性別によって偏りが生じていないかを正しく分析しましょう。
個々の従業員が同じような貢献をしていても、性別によって昇進や昇給のペースに差が出ていないかを確認することで、格差の根本的な要因を把握できます。単に平均値を比較するだけではなく、部門別・職種別などの粒度での分析も必要です。
自社の課題を正確に認識しないまま制度を修正しても、効果的な改善にはつながりません。経営層の理解が求められます。
「男女間賃金差異分析ツール」を活用してみよう
厚生労働省が提供している「男女間賃金差異分析ツール」は、企業が自社の賃金差の構造を把握する上で有効な支援ツールです。
同ツールでは、エクセル形式のテンプレートに人事データを入力することで、男女別の賃金差やその要因(役職・勤続年数・雇用形態など)を可視化できます。さらに、同業種・同規模の企業との比較もできるため、自社の水準が相対的にどうかを客観的に確認することが可能です。
公表が義務化されている指標への対応だけでなく、改善計画の策定にも役立つ実践的なツールとして、多くの企業での活用が期待されています。
参考:厚生労働省|「男女間賃金差異分析ツール」を公開しました
評価・昇進制度の透明性を高める
昇進や昇給の判断基準が不明瞭なままでは、無意識のバイアスや属人的な判断が賃金差に影響する可能性があります。
特に「期待値」や「コミュニケーション力」といった主観的な評価項目が多い場合、性別による評価の偏りが生じやすくなるため注意が必要です。
これを是正するには、評価項目を具体化・明文化するとともに、評価者研修を通じて客観的かつ公平な運用がなされるよう意識づけを行うことが重要です。また、評価結果を丁寧にフィードバックすることにより、不信感の解消と納得感のあるキャリア形成を後押しできます。
育児・介護との両立を支える制度設計
育児や介護といったライフイベントにより、女性がキャリアを中断せざるを得ない状況は、男女間に賃金格差が生じる要因のひとつです。
具体的な対策としては、短時間勤務や時差出勤、在宅勤務など、柔軟な制度の整備が挙げられます。同時に、制度を利用する従業員が正当に評価される企業風土づくりも重要なポイントです。
また、育児休業後の復職支援や、職場復帰前後の面談制度など、継続的なキャリア形成をサポートする仕組みづくりも必要です。実際に使いやすく、かつキャリア上の不利益につながらない両立支援制度を整備することが、従業員の安心感と企業の定着力向上につながります。
女性登用を促進するポジティブ・アクション
管理職や意思決定層における女性比率の低さは、賃金格差の根本要因と密接に関係しています。そのため、企業が意識的に女性登用を進める「ポジティブ・アクション」は、格差解消に向けた重要な取り組みとなります。
たとえば、性別を基準に一定の人数や比率を割り当てる「クオーター制」の導入は、有効な選択肢のひとつです。
また、候補者となる女性人材を計画的に育成し、管理職に就くための研修機会を提供したり、ロールモデルとなる先輩社員を見える化したりといった施策も効果的です。
魅力ある企業づくりのヒント
賃金格差の是正は、企業の魅力をより高めるチャンスでもあります。従業員が性別に関係なく安心して働き続けられる環境を整備することにより、優秀な人材の採用や定着、さらに生産性の向上も可能です。ここでは、より魅力ある企業づくりのヒントとして、男女の賃金格差の是正と並行して実践したい主な取り組みを紹介します。
職場環境の改善
働きやすい職場づくりの第一歩として、まず実践したいのが、職場環境の改善です。
具体的には、清潔で安全な環境の整備をはじめ、ハラスメント対策や相談窓口の設置、メンタルヘルスへの配慮などが挙げられます。
また、上司との信頼関係やチーム内の風通しも、従業員満足度や定着率に大きく影響します。職場に安心感があれば、挑戦や改善提案も生まれやすくなり、組織全体の活性化にもつながるでしょう。
制度や福利厚生に先立って、まず「この会社で働き続けたい」と思える空気づくりが、魅力ある企業への第一歩です。
柔軟な働き方の導入
育児や介護、病気治療などと仕事を両立するには、柔軟な働き方の選択肢が欠かせません。
リモートワーク・フレックスタイム制度・時短勤務制度などを整備することで、ライフイベントを抱える従業員も柔軟に働き続けることが可能になります。
特に、女性は男性と比べてライフイベントの影響を受けやすいのが一般的です。画一的な働き方では、優秀な人材の離脱を招く可能性が否定できません。
女性に限らずとも、柔軟な制度の導入は、企業全体の生産性向上や離職率低下にもつながります。多様な働き方を受け入れる文化そのものが、次世代に選ばれる企業の条件といえそうです。
待遇の改善(賃上げ・福利厚生)
待遇の改善は、従業員の働きがいや、エンゲージメントに直結する要素です。
特に、同業他社と比較して高水準の賃金を提示することは、企業としての魅力度向上に大きく寄与します。求職者へのアピール度が高いのはもちろんのこと、在職者の企業に対する満足度を高め、離職防止につながります。
とはいえ、中小企業にとっては、予算面の制約から大幅な賃上げが難しいケースも少なくありません。
そこで検討したいのが、賃上げの代替策としての福利厚生の充実です。充実した福利厚生は、賃上げと同様に「従業員を大切にする会社」としての強力なアピールになります。
また、福利厚生は、一定の基準を満たすことで経費計上できるため、給与として支給するよりも従業員の実質的な手取りを増やす効果があります。企業としても法人税の削減につながり、低コストで効果の高い施策です。
注目される食事補助制度「チケットレストラン」
賃上げの代替策として活用する福利厚生の中でも、特に人気を集めているサービスのひとつに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、一定の利用条件を満たせば消費税を非課税枠運用でき、全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できる食事補助の福利厚生サービスです。加盟店には、有名ファミレスやカフェ・コンビニ・三大牛丼チェーンなどの人気店が名を連ね、勤務時間内にとる食事の購入であれば、利用時間や場所の制限もありません。
こうした利便性が高く評価され、すでに3,000社以上が導入する人気サービスとなっています。
関連記事:チケットレストランにデメリットはある?導入前の不安を徹底解消
男女の賃金格差を是正してより魅力あふれる企業へ
男女間の賃金格差は、制度的・構造的な問題に起因する根深いものです。
放置すれば、従業員のエンゲージメントが低下するだけでなく、企業の採用力やブランド価値を損なうリスクにもなり得るため、企業には積極的に是正を図る姿勢が求められます。
格差の是正に取り組むためには、まず現状を正しく把握した上で、評価制度や両立支援の見直しや、女性登用の推進といった対策を着実に実行することが重要です。
「チケットレストラン」のような福利厚生の拡充も含め、不当な格差のない、誰もが安心して働ける職場環境の整備を目指しましょう。
自社の取り組みにどう活かせるか、具体的なサービス資料もぜひご確認ください。
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