「定年65歳の義務化」とは2025年4月から「65歳までの雇用確保」が義務化されること
2025年4月1日より、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」に基づく経過措置が終了します。経過措置とは、2013年の法改正時点で継続雇用制度の対象者を限定していた企業に認められていた猶予期間のことです。
経過措置終了後、すべての企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
- 65歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
重要なポイントは、「65歳定年の義務化」ではなく「65歳までの雇用確保」が義務化される点です。つまり、60歳定年制を維持したまま、希望者を65歳まで継続雇用する制度でも法令上の要件を満たせます。
65歳までの雇用確保義務を求める背景
少子高齢化による人手不足やシニアの意識変化によりシニア労働者は増えており、定年引き上げが求められています。
労働力不足
少子高齢化により人手不足が深刻化するなか、企業側もシニア人材の重要性を強く認識しています。人事向けポータルサイト日本の人事部による「人事白書レポート2024」では、人手不足が深刻化するなか、約7割の企業が「シニア活躍は重要」との認識であり、大企業ではその割合が84.9%に達していることが明らかになりました。シニア人材には「技術・ノウハウの伝承」「若手の育成」「専門性の活用」といった多様な役割が期待されています。
出典:日本の人事部による|人事白書レポート2024
シニアの意識変化
労働者の意識も変化しており、収入確保だけでなく、「健康維持」や「生きがい」として仕事を捉えるシニアが増加しています。
株式会社パーソル総合研究所の「働く10,000人の成長実態調査2023」によると、就業終了希望年齢まで働き続けたい理由として「働くことで健康を維持したい」が57.8%と最多で、「生活を維持するための収入確保」が47.6%、「働かないと時間をもてあましてしまう」が39.9%との結果となっています。
出典:パーソル総合研究所|働く10,000人の成長実態調査2023 シニア就業者の意識・行動の変化と活躍促進のヒント
シニア労働者の増加
労働者の平均年齢は年々上昇しています。総務省による「労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)」では、2025年の就業者数に占める65歳以上の割合は約13.7%、10年前である2015年の11.2%と比べて2.5ポイント増加しました。65歳は「引退」の年齢ではないという認識が広がっています。
出典:総務省|労働力調査(基本集計)2025年(令和7年)
65歳までの雇用確保義務への企業の対応方法
65歳までの雇用確保義務に対応する方法は、以下の3種類です。どの方法を選択するかは、賃金制度や人員構成、既存の就業規則などを踏まえて検討します。
|
対応方法
|
定年年齢
|
定年後の雇用
|
特徴
|
|
定年の引き上げ
|
65歳以上
|
定年まで継続
|
雇用を安定させやすい
|
|
継続雇用制度
|
60歳など
|
65歳まで継続
|
再雇用・勤務延長など
|
|
定年制の廃止
|
定めない
|
年齢による終了なし
|
長期的な人材活用が可能
|
ここからは2025年4月からの「65歳までの雇用確保義務」に向けた企業の対応方法を解説します。
65歳まで定年を引き上げる
定年年齢を65歳まで引き上げます。安定的な人材確保が可能になり、従業員の長期的なキャリアプランも立てやすくなります。従業員のモチベーション維持にもつながりやすいものの、人件費の増加の問題や役職ポストの不足といった影響も考えなければなりません。
関連記事:【社労士監修】定年延長とは?2025年の法改正と企業の準備・助成金を詳しく解説
65歳までの継続雇用制度を導入する
定年後、希望者の雇用を65歳まで継続する制度です。制度は再雇用制度と勤務延長の2種類から選択できます。再雇用制度は一度退職して新たな雇用契約を結ぶ仕組み、勤務延長は退職せずに雇用期間を延長する仕組みです。
再雇用制度では、嘱託社員や契約社員などの雇用形態へと変わりますが、勤務延長の場合は雇用形態、役職、賃金などは大きく変わりません。
関連記事:【社労士監修】定年後再雇用制度とは|2025年法改正は?65歳以上の雇用はどうなる?
定年制を廃止する
定年の概念自体をなくす選択肢です。ただし、令和6年「高年齢者雇用状況等報告」によると、定年制を廃止している企業は3.9%にとどまります。
出典:厚生労働省|令和6年「高年齢者雇用状況等報告」
65歳までの雇用確保義務に向けて企業が確認すべきこと
65歳までの雇用確保義務では、人事上の変更も求められます。
就業規則を確認・変更する
2025年4月の制度改正に対応するには、就業規則の変更が必要な場合もあります。自社の就業規則が制度に適した内容になっているか確認しましょう。
常時10人以上の労働者を使用する使用者は以下の項目について、明確な規定が必要となります。
- 定年年齢に関する規定:定年を65歳未満に定めている場合
- 継続雇用制度に関する規定:65歳までの継続雇用制度を導入する場合
- 対象者の要件:継続雇用制度の場合、適用者は原則として「希望者全員」となるため
- 労働条件の変更内容:高年齢者の労働条件を変更など
就業規則の改定では労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書が必要です。従業員に不利益な変更となる場合は、丁寧な説明と合意形成のプロセスを踏むことも求められます。常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を変更し、所轄の労働基準監督署に届出を行わなければなりません。
なお、就業規則作成義務のない10人未満の事業所であっても、労働者とのトラブル防止ため、就業規則への明示、もしくは労働協約や労働契約に明記することをおすすめします。
参考:厚生労働省|高年齢者雇用安定法改正の概要
関連記事:定年延長導入事例|高齢者雇用確保の成功例と導入時の注意点を解説
60歳以降の賃金・処遇を見直す
高年齢雇用継続給付が縮小されたことから、賃金制度の見直しも必要です。2025年4月から、60歳到達時の賃金が75%未満に低下した場合の支給率が、現行の最大15%から最大10%となりました。
高齢者雇用継続給付の受給を見込んで60歳以降の賃金水準について検討する必要があるでしょう。
出典:厚生労働省|令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
継続雇用後の労働条件を整理し、処遇低下に対応する
再雇用などによる60歳以降の大幅な賃金低下は、従業員のモチベーション維持に悪影響を与える可能性があります。段階的な賃金調整の導入、職務や成果に基づく報酬体系への移行、福利厚生等による処遇の補完などで調整する努力と工夫が大切です。
処遇低下への対応として、ダイナミックマッププラットフォーム社では60歳超の嘱託社員に対して「チケットレストラン」を導入することでモチベーション維持に成功しています。次に紹介する同社の好事例も参考に、自社に適した賃金制度の設計を進めることが望ましいでしょう。
福利厚生でシニア人材の就業意欲を向上|ダイナミックマッププラットフォーム社の事例
自動運転向け高精度3次元地図データを手掛けるダイナミックマッププラットフォーム社では、20代から60代まで幅広い世代が活躍しています。同社では、60歳超となる嘱託社員のモチベーション低下を防ぐため、給与やベースアップ以外の方法で賃上げが実現できる「第3の賃上げ」に該当する福利厚生を導入しました。
具体的には、飲食店やコンビ二など全国の加盟店25万店舗以上で利用できる食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の提供です。日々の食事代をサポートしながら、一定の利用条件下において、非課税枠で運用できる仕組みで手取り収入の実質的な改善にもつながる福利厚生です。企業側も福利厚生費として計上でき、経費の面でも継続しやすいと評価されています。
福利厚生の充実は、2025年4月からの「65歳までの雇用確保」に向けた対応策としても有効です。金銭的なメリットと処遇改善をバランスよく組み合わせることで、シニア人材の長期的な雇用継続を実現します。
出典:エデンレッド|パート・アルバイト・契約社員 にも「第3の賃上げ」を!ラウンドテーブルを開催~“年収の壁”を抱える非正規雇用にも、福利厚生で実質手取りアップを実現~
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
関連記事:第3の賃上げとは?企業が押さえるべき仕組みと、メリット・デメリットを解説
65歳までの雇用確保義務への対応に活用できる助成金
65歳までの雇用確保義務への対応をサポートする助成金制度に「65歳超雇用推進助成金」があります。ここでは当助成金の3つのコースについて見ていきましょう。
65歳超継続雇用促進コース
65歳以上への定年引き上げ、定年の定めの廃止、希望者全員を対象とする66歳以上の継続雇用制度の導入、他社による継続雇用制度の導入のいずれかを実施した事業主を助成します。
出典:厚生労働省|65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)
関連記事:【社労士監修】令和6年度「65歳超雇用推進助成金」を徹底解説!申請方法も詳しく紹介
高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
高年齢者向けの雇用管理制度の整備等に係る措置を実施した事業主を助成します。
出典:厚生労働省|65歳超雇用推進助成金(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
高年齢者無期雇用転換コース
50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換させた事業主に対する助成金です。
出典:厚生労働省|65歳超雇用推進助成金
関連記事:【社労士監修】高齢者雇用に関する助成金一覧!パート・アルバイトにも活用
70歳の就業を見据えた対応
2021年4月に改正された高年齢者雇用安定法では、70歳までの就業機会確保が「努力義務」となっています。令和3年4月1日より、以下のいずれかの措置を講じるよう努めることが求められています。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
中長期的な視点で制度の整備を進めることが賢明といえそうです。
参考:厚生労働省|高年齢者雇用安定法改正の概要
高年齢雇用継続給付も2025年4月から縮小
2025年4月からは、もう一つ重要な制度変更があります。雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の見直しです。
高年齢雇用継続給付の縮小により、60歳以降の従業員が受け取れる給付額にも影響があります。企業は、給付の縮小を踏まえて、60歳以降の賃金や処遇を検討するとよいでしょう。
| 区分 |
改正前の制度(2025年3月31日まで) |
改正後の制度(2025年4月1日以降) |
| 支給対象 |
被保険者であった期間が5年以上ある60歳以上65歳未満である労働者 |
2025年4月1日以降に60歳に達した人 |
| 支給条件 |
60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合 |
60歳時点と比べて賃金が75%未満に低下した場合 |
| 支給率 |
60歳以後の各月の賃金の最大15%を支給 |
60歳以後の各月の賃金の最大10%を支給 |
| 補足 |
賃金低下率が61%超75%未満である場合は支給率逓減 |
賃金低下率が64%超75%未満である場合は支給率逓減 |
出典:厚生労働省|高年齢雇用継続給付について 職業安定分科会雇用保険部会(第188回)令和5年12月11日
出典:厚生労働省|令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
定年65歳の義務化についてよくある質問
定年65歳の義務化について、よくある質問に回答します。
定年65歳の義務化はいつからですか?
2025年4月1日から、65歳までの雇用確保がすべての企業に義務付けられました。ただし、65歳定年そのものが義務になったわけではありません。
60歳定年の会社は違法になりますか?
いいえ、60歳定年でも違法ではありません。65歳までの定年引き上げ、定年制の廃止、継続雇用制度のいずれかを導入する必要があります。
65歳まで再雇用すれば義務を果たせますか?
はい。60歳定年を維持して65歳までの継続雇用制度を導入することも、雇用確保措置の一つです。原則として希望者全員が対象となります。
65歳以降の雇用も義務ですか?
いいえ。65歳以降の就業機会の確保は努力義務です。企業には70歳までの就業機会を確保するための措置を講じる努力が求められています。
65歳定年にすると給与も維持する必要がありますか?
いいえ。65歳定年にした場合でも、60歳以降の給与を同額に維持することが一律に義務付けられているわけではありません。ただし、賃金変更の合理性には注意が必要です。
65歳までの雇用確保には制度の整備や助成金の活用を
2025年4月から、すべての企業に65歳までの雇用確保が義務付けられました。定年を65歳に引き上げるだけでなく、65歳までの継続雇用制度を導入する、定年制を廃止するといった方法でも対応できます。
企業はまず、自社の定年年齢や継続雇用制度、就業規則などを確認し、法令に沿った雇用確保措置を整えることが重要です。そのうえで、60歳以降の賃金や働き方、福利厚生なども含め、シニア従業員が継続して働きやすい環境を整えていくことが求められます。
人手不足が続くなか、シニア人材の経験や専門性を生かすことは、企業にとって人材確保や技能継承の面でも重要です。65歳までの雇用確保を制度対応だけで終わらせず、長く活躍できる職場づくりにつなげていきましょう。
従業員が働きやすい環境づくりには、福利厚生の活用も選択肢の一つです。例えばエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を導入すれば、従業員の日々の食事にかかる負担を抑えることが可能。
一人ひとりが活き活きと働ける職場づくりに導入企業4000社以上の「チケットレストラン」を活用しませんか。
資料請求はこちら