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【社労士監修】中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)|概要と申請方法

【社労士監修】中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)|概要と申請方法

2024.10.08

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

最低賃金の引き上げは、労働者の生活の安定と経済の活性化に重要な役割を果たします。一方で、特に中小企業では、人件費の増加が経営を圧迫するケースが少なくありません。そこで厚生労働省は「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)」をはじめとする補助金を通じ、中小企業の賃金引き上げを支援しています。本記事では、2024年の最低賃金にまつわる最新情報を含め、補助金制度の詳細と活用方法を紹介します。

最低賃金とは

最低賃金制度は、労働者の生活を守り、公正な労働市場を維持するための大切な仕組みです。日本の最低賃金制度には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。企業には、これらの最低賃金を遵守する義務があり、違反した場合は罰則の対象となります。

参考:厚生労働省|あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度|最低賃金の種類は?

地域別最低賃金

地域別最低賃金は、都道府県ごとに設定される最低賃金です。この賃金は「労働者の生計費」「労働者の賃金」「通常の事業の賃金支払能力」を総合的に検討し定められており、労働者が健康的で文化的な最低限度の生活を営めるよう、生活保護との整合性にも配慮されています。

地域別最低賃金は、一部の例外を除き、雇用形態を問わずその地域で働くすべての労働者が適用対象です。使用者が最低賃金未満の賃金しか支払わない場合、最低賃金法により50万円以下の罰金が科される可能性があります。

なお、2024年改定による地域別最低賃金の全国加重平均額は1,055円となり、前年度から51円(5.1%)の引き上げとなりました。

この新しい最低賃金は、2024年10月1日から東京都や大阪府など25の都道府県で適用が開始され、11月1日の徳島県まで順次引き上げられます。

参考:厚生労働省|あなたの賃金を比較チェック|最低賃金制度|適用される対象者は?

特定(産業別)最低賃金

特定(産業別)最低賃金は、特定の産業において、地域別最低賃金よりも高い水準で設定される最低賃金です。2024年3月末現在、全国で224件の特定最低賃金が定められています。この最低賃金は、その産業の基幹的労働者に適用されますが、18歳未満や65歳以上の労働者、技能習得中の労働者などには適用されません。

特定(産業別)最低賃金は、産業の特性や労働市場の状況に応じ、より高い賃金水準を確保するために設定されています。これにより、優秀な人材の確保や産業の健全な発展を促進する効果が期待されています。

地域別と特定(産業別)の両方の最低賃金が適用される場合、使用者が支払うのは高い方の最低賃金額以上の賃金です。

関連記事:2024年の最低賃金引き上げの動向は?企業への影響や対策をチェック

中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)の概要

最低賃金の引き上げに伴い、人件費の負担増に苦しむ企業は少なくありません。中でも、大企業に比べて人件費の増加が経営に及ぼす影響が大きくなりがちな中小企業に対し、政府はさまざまな支援策を用意しています。

ここでは支援策のひとつ「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)」の概要を解説します。

参考:厚生労働省|中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)申請マニュアル

対象となる中小企業と助成内容

業務改善助成金の対象となるのは、以下の条件を満たす中小企業・小規模事業者です。

  • 資本金の額または出資の総額が一定基準以下であること、または常時使用する企業全体の労働者数が一定数以下であること
  • 事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること
  • 解雇や賃金引き下げなどの不交付要件に該当しないこと

さらに、助成金を受けるためには、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げる必要があります。加えて、生産性向上につながる設備投資を行わなければなりません。これには、機械設備の導入・コンサルティングの利用・人材育成や教育訓練の実施などが含まれます。

なお、助成上限額は、事業場内最低賃金の引き上げ額と引き上げる労働者数に応じて決まります。

助成上限額

助成率

出典:中小企業庁|最低賃金引き上げに伴う支援を強化しています

たとえば、30円以上の引き上げで1人の場合、助成上限額は30万円(事業場規模30人以上の事業者)または60万円(事業場規模30人未満の事業者)となります。

助成率は事業場内最低賃金によって異なり、900円未満の場合は9/10、900円以上950円未満の場合は4/5(9/10)・950円以上の場合は3/4(4/5)です。

申請から受給までの流れ

業務改善助成金の申請から受給までの流れは以下の通りです:

  1. 助成金交付申請書の提出: 業務改善計画(設備投資などの実施計画)と事業場内最低賃金の引き上げ計画を記載した交付申請書(様式第1号、別紙1、2)を作成し、必要な添付資料とともに都道府県労働局に提出する
  2. 事業(業務改善計画)の実施: 労働局からの交付決定通知を受けたあと、業務改善計画に基づいて設備投資等と事業場内最低賃金の引き上げを行う(交付決定前に行った設備投資等は助成対象とならないため注意)
  3. 事業実績報告書及び支給申請書の提出: 業務改善計画の実施結果と賃金引き上げ状況を記載した事業実績報告書(様式第9号、別紙1、2)及び助成金支払いのための支給申請書(様式第10号)を作成し、都道府県労働局に提出する
  4. 助成金の支払い: 都道府県労働局が助成金額の確定及び支給決定通知を行い、後日、助成金の支給を受ける
  5. 状況報告の提出: 助成金支給後、状況報告(様式第8号)の提出により、不交付要件に該当していないことを確認する

この流れに沿って申請を進めることで、適切に助成金を受給することができます。

なお、申請にあたっては、各段階で必要な書類や添付資料を漏れなく準備することが重要です。また、事業場内最低賃金の引き上げは、交付申請書の提出後から事業完了期日までの間に実施する必要があります。

参考:厚生労働省|中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)申請マニュアル|P10〜11

関連記事:【社労士監修】賃上げで最大600万円の業務改善助成金とは?その他の支援制度も解説

その他の関連助成金

業務改善助成金以外にも、中小企業の賃上げや生産性向上を支援するさまざまな助成金や補助金があります。以下、主要な支援制度を紹介します。

参考:中小企業庁|最低賃金引き上げに伴う支援を強化しています

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の正社員化や、処遇改善の取り組みを実施した事業主を助成する制度です。特に、賃金規定等改定コースは最低賃金引き上げと密接に関連しており、企業の人事戦略に活用できます。

このコースでは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、実際に賃金を引き上げた場合、中小企業では1人当たり5万円・5%以上の場合は1人当たり6万5,000 円の助成金を受けることができます。

参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)は、中小企業・小規模事業者等が取り組む、生産性向上に資する革新的な製品・サービス開発やプロセス改善等の設備投資等を支援する制度です。この補助金は、賃上げに取り組む事業者に対して優先的に採択される仕組みがあります。

補助上限額は、補助率や企業規模によって異なりますが、最大で8,000万円です。さらに、一定の賃上げを行う場合は、上限額が最大2,000万円引き上げられます。この補助金を活用することで、生産性向上と賃上げを同時に実現し、企業の競争力強化につなげることができます。

参考:ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイト|トップページ
参考:経済産業省|ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートする制度です。この補助金も、賃上げに取り組む事業者に対して加点措置があります。

補助上限額は最大450万円で、補助率は1/2~4/5となっています。ITツールの導入により業務効率化を図ることで、人件費増加に伴うコストの補填が可能です。

参考: IT導入補助金2024|トップページ
参考:中小企業庁|IT導入補助金 (令和6年9月時点版)

中小企業の賃上げは福利厚生とのハイブリッド型がおすすめ

最低賃金の引き上げは、従業員の満足度向上や優秀な人材の確保・定着をかなえる、企業にとって重要な施策です。一方で、人件費の増加がもたらす経営リスクは軽視できません。

そこでおすすめなのが、福利厚生を組み合わせたハイブリッド型の賃上げです。

たとえば、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、一定の利用条件下であれば、経費として計上できるため、法人税の軽減が可能です。食費を直接的にサポートし、従業員の実質的な手取りを増やせることから、従業員満足度の向上はもちろん、他社との差別化による採用市場での競争力強化にもつながります。

「中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金」をはじめとする各種支援制度を活用しながら、企業と従業員の双方にメリットをもたらす施策を検討してはいかがでしょうか。

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関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も