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【社労士監修】賃上げで最大600万円の業務改善助成金とは?その他の支援制度も解説

【社労士監修】賃上げで最大600万円の業務改善助成金とは?その他の支援制度も解説

2023.11.20

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

賃上げに取り組む中小企業への助成金や支援制度が強化されています。例えば業務改善助成金やキャリアアップ助成金などです。これらの助成金や支援制度を受けるために満たすべき要件や、受けられる支援の内容をチェックしましょう。賃上げに取り組みたいと考えている中小企業に役立ちます。

近年の賃金の動向

2023年は低成長と物価高が同時に起こっています。このような中、東京商工リサーチによる「2023年度「賃上げに関するアンケート」調査」では、約84.8%の企業が賃上げを実施したと回答しています。物価上昇が続いていることを背景に、定期昇給・ベースアップ・賞与の増額などを実施した割合です。

全体的に賃上げが進む中、中小企業ではどの程度の割合で賃上げが実施されているのでしょうか?併せて最低賃金の引き上げについても解説します。

参考:東京商工リサーチ|2023年度「賃上げに関するアンケート」調査

中小企業の約60%が賃上げを実施予定

日本商工会議所・東京商工会議所が2023年3月に発表した「最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査」によると、58.2%の中小企業が賃上げを実施予定と回答しています。

ただし足下の消費者物価上昇率を概ねカバーできる4%以上の賃上げを予定しているのは18.7%です。2022年の6.1%と比べると増加していますが、約80%以上の中小企業は、賃上げで消費者物価上昇率をカバーできていません。

また業績の低迷や元手の不足から、賃上げを見送る中小企業も4.6%存在しています。

参考:日本商工会議所・東京商工会議所|最低賃金および中小企業の賃金・雇用に関する調査

2023年10月の最低賃金引き上げ幅は過去最大

2023年10月には最低賃金が引き上げられ、全国加重平均が初めて1,000円台の1,004円となりました。引き上げ幅が過去最大であったことからも、注目を集めています。

厚生労働省の「令和5年度 地域別最低賃金 答申状況」で都道府県ごとの最低賃金もチェックしましょう。

都道府県

2023年10月からの最低賃金(円)

北海道

960

青森

898

岩手

893

宮城

923

秋田

897

山形

900

福島

900

茨城

953

栃木

954

群馬

935

埼玉

1,028

千葉

1,026

東京

1,113

神奈川

1,112

新潟

931

富山

948

石川

933

福井

931

山梨

938

長野

948

岐阜

950

静岡

984

愛知

1,027

三重

973

滋賀

967

京都

1,008

大阪

1,064

兵庫

1,001

奈良

936

和歌山

929

鳥取

900

島根

904

岡山

932

広島

970

山口

928

徳島

896

香川

918

愛媛

897

高知

897

福岡

941

佐賀

900

長崎

898

熊本

898

大分

899

宮崎

897

鹿児島

897

沖縄

896

物価高を背景とした賃上げを見送った企業も、最低賃金を満たすための賃上げは行わなければいけません。

出典:厚生労働省|令和5年度 地域別最低賃金 答申状況

厚生労働省・中小企業庁は賃上げの支援を強化

物価高や最低賃金の引き上げにより、賃上げを実施する企業に対し、厚生労働省と中小企業庁は支援を強化しています。業績が思わしくない企業でも、以下の助成金や補助金などを活用することで、賃上げに取り組みやすくなるでしょう。

  • 業務改善助成金
  • キャリアアップ助成金
  • 事業再構築補助金
  • 中小企業向け賃上げ促進税制
  • 企業活力強化貸付(働き方改革推進支援資金)

紹介した5つの制度について、詳しく紹介します。

業務改善助成金

業務改善助成金は、事業場で最も低い時間給である事業場内最低賃金の引き上げと、設備投資やコンサルティング・教育訓練などを計画し、結果を報告することで受けられる助成金です。

対象となる事業者

助成金の対象となるのは、中小企業もしくは小規模事業者で、事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内で、解雇や賃金引き下げなどの不交付事由がない事業者です。

<中小企業・小規模事業者の要件>

業種

資本金もしくは出資額

常時使用する労働者

小売業

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

東京都内にA・B・C3つの事業場を持つ中小企業のケースで考えてみましょう。3つの事業場内最低賃金は以下の通りです。東京都の最低賃金は1,113のため、差額が50円以内のB・Cは助成金を申請できますが、差額が87円のAは賃上げを行っても助成金の対象にはなりません。

事業場

事業場内最低賃金

助成金の申請可否

A

1,200円

不可

B

1,120円

C

1,150円

助成金の対象となる経費

対象となる経費は、一般事業者と特例事業者で異なります。

特例事業者とは、事業場内最低賃金950円未満であるか、直近3カ月の売上高や生産量などが前年・前々年・3年前いずれかの同期より15%減っているか、申請前3カ月のうち任意の1カ月の利益率が前年同期より3%ポイント以上低下しているかのいずれかに当てはまる事業者です。

助成対象経費

一般事業者

特例事業者

生産性向上につながる設備投資・経営コンサルティングなどの費用

定員7人以上の車両もしくは200万円以下の乗用車、パソコン・スマホなどの購入費用

×

広告宣伝費・事務室の拡大などの関連する経費

×

また助成率は事業場内最低賃金により、以下のように定められています。生産性を向上させ生産性要件を満たした事業者は、助成率が割り増しされる仕組みです。

事業場内最低賃金

助成率

生産性要件を満たしたときの助成率

900円未満

9/10

9/10

900円以上950円未満

4/5

9/10

950円以上

3/4

4/5

また助成額の上限は、事業場内最低賃金の引き上げ額・引き上げる労働者数・事業場の規模の組み合わせで決まっています。最大で600万円です。

参考:厚生労働省|業務改善助成金

キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、非正規雇用の労働者の正社員化や処遇改善を行った場合に受け取れる助成金です。以下の7つのコースのうち、賃金規定等改定コースが賃上げによる助成金の対象になります。

支援

コース

正社員化支援

正社員化コース

障害者正社員化コース

処遇改善支援

賃金規定等改定コース

賃金規定等共通化コース

賞与・退職金制度導入コース

短時間労働者労働時間延長コース

社会保険適用時処遇改善コース

賃金規定等改定コースの対象事業者

賃金規定等改定コースで助成金を受けるには、以下の全てを満たしていなければいけません。

  • 非正規労働者に適用される賃金規定などを作成していること
  • 賃金規定などを3%以上増額改定し非正規労働者に適用すること
  • 増額改定前の賃金規定などを3カ月以上運用していたこと
  • 増額改定後の賃金規定などを6カ月以上運用し、対象労働者に定額で支給される諸手当を減額していないこと
  • 支給申請日に増額改定後の賃金規定などを継続して運用していること
  • 加算措置の対象となるには、職務評価に基づいて賃金規定などの改定を行う場合、非正規労働者および正規雇用者に職務評価を実施していること

賃金規定等改定コースの支給額

賃金規定などを改定し、3%以上基本給を増額した場合には、1事業所あたり100人を上限に以下の助成額を受け取れます。

企業規模

賃金増額率3%以上5%未満

賃金増額率5%以上

中小企業

5万円

6万5,000円

大企業

3万3,000円

4万3,000円

加えて加算措置の対象となる場合には、中小企業20万円・大企業15万円が、1事業所につき1回のみ加算されます。

参考:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク|キャリアアップ助成金のご案内(令和5年度版)

事業再構築補助金

事業再構築補助金では事業再建や事業再構築を目指す中小企業をサポートしています。以下の7つのコースのうち、賃上げで補助金の対象になるのは最低賃金枠と大規模賃金引上促進枠です。

コース

対象

成長枠

成長分野へのチャレンジで事業再構築に取り組む事業者

グリーン成長枠

グリーン分野での事業再構築で成長を目指す事業者

卒業促進枠

成長枠・グリーン成長枠を活用し中小企業から中堅企業へ成長する事業者

大規模賃金引上促進枠

成長枠・グリーン成長枠を活用し大規模な賃上げに取り組む事業者

産業構造転換枠

国内市場の縮小などの理由で事業再構築が強く求められる業種や業態の事業者

物価高騰対策・回復再生応援枠

コロナや物価高などで業況が厳しい事業者

最低賃金枠

最低賃金引き上げを受け、その原資の確保が難しい業況の厳しい事業者

どのコースを受給する場合にも、認定経営革新等支援機関から事業計画の確認を受けた上で、補助事業終了後3~5年で付加価値額を年率平均3~5%上げるか、従業員1人あたりの付加価値額を年率平均3~5%上げる必要があります。

大規模賃金引上促進枠の概要

大規模賃金引上促進枠を利用するには、成長枠かグリーン成長枠へ同じ公募回で申請しなければいけないため、以下いずれかの要件を満たしていなければいけません。

<成長枠の要件>

  • 取り組む事業が過去から今後の10年間で市場規模が10%以上拡大する業種か業態であること
  • 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増やすこと

<グリーン成長枠【エントリー】の要件>

  • グリーン成長戦略「実行計画」14分野のうち課題の解決に役立つ取り組みとして記載があるものに該当し、その取り組みに関連する1年以上の研究開発・技術開発もしくは従業員の5%以上に対する年20時間以上の人材育成を行うこと
  • 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増やすこと

<グリーン成長枠【スタンダード】の要件>

  • グリーン成長戦略「実行計画」14分野のうち課題の解決に役立つ取り組みとして記載があるものに該当し、その取り組みに関連する2年以上の研究開発・技術開発もしくは従業員の10%以上に対する年20時間以上の人材育成を行うこと
  • 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増やすこと

加えて成長枠もしくはグリーン成長枠の補助事業終了後3~5年以内に事業場内最低賃金を年額45円以上引き上げ、従業員を年率平均1.5%以上増員する必要があります。

これらの要件を満たしたあと、実績報告を行うと、3,000万円を上限に、中小企業は補助対象経費の1/2、大企業は1/3の支給を受けられます。

最低賃金枠の概要

最低賃金枠の対象になるのは、以下の要件を満たす事業所です。

  • 2022年1月以降の連続した6カ月のうち、任意の3カ月の合計売上高が2019~2021年の3カ月の合計売上高より10%以上減少している
  • 2022年10月~2023年8月に3カ月以上最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全ての従業員の10%以上いる

要件を満たすと、従業員数ごとに異なる以下の金額を上限に、中小企業は補助対象経費の3/4、中堅企業は2/3が補助されます。

  • 5人以下:500万円
  • 6~20人:1,000万円
  • 21人以上:1,500万円

参考:経済産業省・中小企業庁・中小機構|事業再構築補助金

中小企業向け賃上げ促進税制

前年度と比べ賃上げした中小企業者に対し、給与の増加額のうち最大40%を法人税額もしくは所得税額から控除できるのが、中小企業向け賃上げ促進税制です。通常要件に加え上乗せ要件を満たすことで、控除割合が上がります。

税額控除の適用要件

法人税額もしくは所得税額の控除割合

通常要件:給与が前年度より1.5%以上増加

15%

上乗せ要件1:給与が前年度より2.5%以上増加

30% ※15%上乗せ

上乗せ要件2:教育訓練費が前年度より10%以上増加

40% ※10%上乗せ

参考:経済産業省・中小企業庁|中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック

企業活力強化貸付(働き方改革推進支援資金)

中小企業が事業場内最低賃金を2%以上引き上げる場合、低金利で日本政策金融公庫から融資を受けられる企業活力強化貸付の対象です。支援内容をチェックしましょう。

  • 貸付限度額:7億2,000万円
  • 貸付利率:基準利率から0.4%引き下げ ※2023年3月1日時点の基準利率は1.20%
  • 貸付期間:設備資金20年以内・運転資金7年以内 ※うち据置期間2年以内

参考:日本政策金融公庫|企業活力強化資金
参考:厚生労働省・中小企業庁|最低賃金・賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援施策紹介マニュアル

企業の魅力アップには福利厚生の充実も有効

賃上げは企業の魅力を高め、従業員の雇用や定着に役立つ取り組みです。他にも従業員の雇用や定着に役立つ方法に、福利厚生の充実度アップがあげられます。導入する福利厚生によっては、賃上げと同じような働きも期待できる取り組みです。

ここではおすすめの福利厚生として、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を紹介します。全ての従業員へ公平に食事補助を提供できる福利厚生サービスです。

従業員全員が公平に使える

福利厚生を導入するとき、制度によっては全従業員が利用できない場合があります。「チケットレストラン」と同じ食事をサポートする福利厚生でも、社員食堂や配達のお弁当では昼食時にオフィスにいなければ利用できません。

外回りに出る従業員、自宅でリモートワークをする従業員、リモートワークと出社を併用している従業員など、さまざまな働き方を選べる職場では、全ての従業員に使いやすい制度であることが重要です。

チケットレストラン」を導入すると、従業員は全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を買えます。昼食時にどこにいても利用できるため、導入した企業での利用率は98%です。全従業員が公平に利用できる福利厚生といえます。

インフレ手当としても活用できる

物価高が続く中、賃上げに取り組む企業は多くあります。ただし消費者物価上昇率に追いつく賃上げができている企業は限られているのが現状です。

チケットレストラン」を導入すると、昼食にかかる費用のサポートにより、給与のうち従業員が自由に使えるお金が増えます。物価高の中でも、従業員がこれまでと同様の生活を維持するために役立つサポートです。

非課税枠を活用できる

チケットレストラン」の導入や運用にかかる費用は、一定の条件を満たすと福利厚生費として計上できます。福利厚生費は法人税額を算出するために用いる課税所得を計算するとき、益金から差し引ける損金の一種です。

損金が多いほど課税所得は少なくなるため、税額も低くなります。

賃上げに助成金を活用しよう

継続する物価高や最低賃金引き上げにより、賃上げに取り組む企業が増えています。ただし十分な元手が必ずしもあるわけではありません。中には元手が不足している中で賃上げを行っている企業もありますし、賃上げをしたくても業況が悪化しており難しい企業もあります。

そのような状況で役立つのが業務改善助成金やキャリアアップ助成金など、賃上げすると受け取れる助成金です。他にも事業再構築補助金や、賃上げにより税額控除を受けられる中小企業向け賃上げ促進税制もあります。

企業の賃上げにより経済状況が上向くよう、政府は複数の支援制度を用意しています。自社が活用できるものはないか、探してみてはいかがでしょうか。

加えて賃上げと同様に、人材確保に役立つ福利厚生の充実度アップも検討してみませんか。食事補助サービスの「チケットレストラン」を活用すれば、費用を損金にしつつインフレ手当として提供できます。

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