年々上がる東京都の最低賃金を意識し、給与体系の見直しを検討されている企業もいることでしょう。本記事では、2024年度における東京都の最低賃金改定や2023年度からの推移などについて、わかりやすく解説します。
東京都最低賃金 2023年度から2024年度の推移
東京都の最低賃金は、2023年度から2024年度にかけて大幅な上昇を見せています。2023年度の東京都最低賃金は時給1,113円でしたが、2024年度には1,163円へと引き上げられました。これは、50円の引き上げとなり、約4.5%の上昇率を示しています。
- 2023年度の東京都最低賃金:1,113円
- 2024年度の東京都最低賃金:1,163円(+50円)
2024年度の新しい最低賃金である1,163円の適用は、2024年10月1日からです。この引き上げにより、東京都の最低賃金は引き続き全国でもトップクラスの水準を維持することになります。
- 2023年度の全国平均最低賃金:1,004円
- 2024年度の全国平均最低賃金:1,055円(+51円)
参考までに、2023年度の全国平均最低賃金を見てみると、1,004円です。これは日本の最低賃金制度の歴史上、初めて全国平均が1,000円の大台を突破したという点で注目に値します。2024年度はさらに51円引き上げとなり、全国での賃金上昇がみられました。なお、東京都の最低賃金は、この全国平均を大きく上回っていることがわかります。
出典:厚生労働省|令和6年度 地域別最低賃金 答申状況
過去10年の東京都最低賃金の推移
過去10年間の東京都の最低賃金の推移についても解説します。推移の傾向は、基本的には右肩上がりの上昇を示しますが、2019年から2020年にかけては据え置きとなりました。これは、2020年は新型コロナウイルス感染症流行の真っ最中であったことが影響しています。新たな最低賃金は例年10月1日より適用されることを考えると、大幅な引き上げができなかったのです。
出典:ひと目でわかる!最低賃金|東京都の最低賃金
参考:ADVANCE|人事・労務ニュース 2020年度の最低賃金40県で1円~3円の引上げに
東京都の最低賃金今後の予測
東京都の最低賃金は、前述のとおり過去数年間で着実に上昇を続けています。2025年度の最低賃金はまだ先の決定ですが、2021年(+24円)、2022年(+31円)、2023年(+41円)となっており、過去の傾向から30円から40円程度の上昇が予想されます。企業においては、この予測を踏まえて中長期的な人件費計画を立てることが重要です。
東京都の最低賃金から正社員年収・月収の目安をチェック
企業は、最低賃金以上を従業員に支払わなければなりません。最低賃金は、アルバイト・パート・派遣労働者・正社員などすべての従業員に対して適用される制度であるため、定期的なチェックが肝心です。
時給換算である最低賃金について、正社員の場合、基準を超えているかおおよそ年収のイメージをつかんでおくと、最低賃金を超えているかの確認の目安になります。ここでは、正社員の年収の目安を最低賃金から確認します。
2024年度の東京都最低賃金をベースに正社員の月収を計算すると、以下のようになります。
月20日、1日8時間労働をする場合の「月収」の目安:
- 時給1,163円 × 8時間 × 20日= 186,080円
計算結果から、東京都の企業は186,080円以上の月収を支払う義務があります。
続いて、2024年度の東京都最低賃金をベースに正社員の年収を計算します。
月20日、1日8時間労働をする場合の「年収」の目安:
- 時給1,163円 × 8時間 × 20日 × 12ヶ月 = 2,232,960円
計算結果より、企業は正社員に年収約223万円以上の賃金支払いを最低でも行わなければなりません。ただし、上記2つの計算結果は基本給のみの計算です。最低賃金の計算に加味すべき手当もあるため、実際の月収・年収は諸手当や賞与によって変動します。
東京都正社員の最低賃金では、手取りはいくら?
最低賃金ベースの月給から、概算で手取りを計算すると次のようになります。なお、給与以外の収入がなく、扶養家族がいないケースとします。
月給(報酬月額)186,000円の場合:
上記計算により、手取りは約149,600円となります。なお、上記の計算で求められる手取りは概算です。実際の手取り額は、個人の状況(扶養家族の有無など)により変動します。
出典:全国健康保険協会|令和6年3月分(4月分納入)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク|令和6年度の雇用保険料率について
出典:国税庁|No.2260 所得税の税率
出典:東京都主税局|個人住民税
最低賃金に関する法的知識|人事担当者が押さえるべきポイント
企業が最低賃金を遵守できているか確認する際に役立つ法的な知識についても押さえましょう。
地域別最低賃金と特定最低賃金の違い
最低賃金には、以下の2つの種類があります。
- 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められる一般的な最低賃金
- 特定最低賃金:特定の産業に適用される最低賃金(該当する場合は注意が必要)
注意すべきは、特定の産業に該当するケースです。上記2つのどちらにも対応する場合、使用者は高い方の最低賃金額以上の支払いが求められます。
出典:厚生労働省|最低賃金額以上かどうかを確認する方法
最低賃金の適用範囲
最低賃金(地域別最低賃金)の適用範囲は正社員だけではありません。パート、アルバイト、嘱託社員など、雇用形態を問わず適用されます。また、試用期間中の従業員にも適用されます。
出典:厚生労働省|最低賃金の適用される労働者の範囲
最低賃金の対象となる賃金
最低賃金は、基本給と定期的に支払われる手当が対象です。臨時的な手当(残業手当、通勤手当、家族手当、精皆勤手当など)は計算の対象から除外します。
出典:厚生労働省|最低賃金制度の概要
関連記事:【社労士監修】最低賃金の計算方法をわかりやすく解説!対象とならない賃金も確認
最低賃金の対象とならない賃金
以下の手当は、最低賃金の計算対象外となります。
- 通勤手当
- 家族手当
- 残業手当
- 賞与
- 臨時に支払われる賃金(結婚祝い金など)
出典:厚生労働省|最低賃金の対象となる賃金
罰則規定
最低賃金以下の賃金を労働者に支払うケースは、最低賃金法によりその部分についての契約が無効化され、最低賃金と同額を定めたものとされます。差額を支払わない場合、最低賃金法違反として地域別最低賃金額については50万円以下、特定最低賃金額については30万円以下の罰金が定められています。
出典:厚生労働省|最低賃金制度とは
高水準の最低賃金の持続には企業の努力が必須
東京都の最低賃金は、日本の中でも最高水準を維持しています。この環境下で企業が持続的に成長するためには、単に法令遵守にとどまらず、戦略的な給与設計が不可欠です。
最低賃金の遵守など企業の給与設計の見直しにあたって、福利厚生の拡充を併用することが効果的です。企業の魅力を高めるような福利厚生は、従業員満足度向上などに効果が期待でき、間接的に企業価値を高められます。企業価値の向上により、増えた収益を給与として還元するという好循環を生み出せるのです。
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