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【社労士監修】最低賃金の計算方法をわかりやすく解説!対象とならない賃金も確認

【社労士監修】最低賃金の計算方法をわかりやすく解説!対象とならない賃金も確認

2024.10.16

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

最低賃金制度は、労働者の生活を守り、公正な労働条件を確保するための重要な制度です。企業の人事や総務担当者として、制度を正しく理解し、適切に運用することは非常に重要です。本記事では、最低賃金の計算方法について、わかりやすく丁寧に解説していきます。

最低賃金の基本

最低賃金とは、労働者に支払われるべき賃金の最低額を定めたものです。日本では、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の2種類があります。

  • 地域別最低賃金:都道府県ごとに定められる最低賃金
  • 特定(産業別)最低賃金:特定の産業に適用される最低賃金

最低賃金は主に時間額で定められています。一定の産業では、地域別最低賃金よりも金額水準の高い「特定(産業別)最低賃金」が定められています。

最低賃金の計算方法

最低賃金の計算方法は、賃金の支払い形態によって異なります。ここでは、主な形態の計算方法を説明します。

1.時間給の場合

時間給の場合は最もシンプルな計算方法で計算でき、以下のとおりです。

  • 時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)

2.日給の場合

日給の場合は、1日の所定労働時間で割って時間当たりの賃金を算出します。

  • 日給÷1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

ただし、日額が定められている特定(産業別)最低賃金が適用される場合は、以下の計算になります。

  • 日給≧最低賃金額(日額)

3.月給の場合

月給の場合は、1か月の平均所定労働時間で割って時間当たりの賃金を算出します。

  • 月給÷1か月平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

4.出来高払制その他の請負制の場合

出来高払制や請負制の場合は、以下の計算方法を用います。

  • 出来高払制その他請負制等で計算された賃金総額 ÷ 当該賃金算定期間の総労働時間数 ≧ 最低賃金額(時間額)

5.複数の支払い形態の組み合わせの場合

基本給が日給制で各種手当が月給制など、複数の支払い形態が組み合わされている場合は、それぞれを時間額に換算して合計し、最低賃金額(時間額)と比較します。

1〜5の計算方法について、最寄りの都道府県労働局労働基準部賃金課(室)、または労働基準監督署への問い合わせにより詳しく知ることができます。

出典:厚生労働省|必ずチェック 最低賃金 使用者も労働者も 低賃金のチェック方法は?

最低賃金の対象となる賃金と対象とならない賃金

最低賃金の計算において、すべての賃金が対象となるわけではありません。ここでは、対象となる賃金とならない賃金を解説します。

最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。

  • 基本給
  • 諸手当(職務手当、資格手当など)

次に紹介する「最低賃金の対象とならない賃金」を実際に支払われる賃金から除外したものが、最低賃金の対象となります。

最低賃金の対象とならない賃金

最低賃金の計算で、実際に支払われる賃金から除外することになるのは、以下の賃金や手当です。

  • 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
  • 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外手当、休日手当、深夜手当)
  • 所定労働日以外の労働に対して支払われる賃金(休日出勤手当)
  • 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

最低賃金 計算方法

出典:厚生労働省|最低賃金の対象となる賃金

具体的な最低賃金の計算例

ここでは、厚生労働省のサイトの事例を元に、最低賃金の計算例を3つ紹介します。

事例1.月給制の場合

賃金内訳:

  • 基本給:150,000円/月
  • 職務手当:30,000円/月
  • 通勤手当:5,000円/月
  • 時間外手当:35,000円/月
  • 合計:220,000円/月

労働条件:

  • 年間所定労働日数:250日
  • 1日の所定労働時間:8時間
  • 適用される最低賃金:1,000円/時間

このケースでの計算手順をみてみましょう。

  1. 最低賃金の対象となる賃金を抽出します。
    220,000円 −(5,000円+35,000円)=180,000円
  2. 時間額に換算します。
    (180,000円 × 12か月)÷(250日×8時間) =1,080円/時間
  3. 最後に、最低賃金との比較です。
    1,080円/時間 > 1,000円/時間(最低賃金)

この結果から、賃金は最低賃金を上回っていることがわかります。

事例2.日給制と月給制の組み合わせの場合

賃金内訳:

  • 基本給:6,000円/日(日給制)
  • 職務手当:25,000円/月
  • 通勤手当:5,000円/月
  • 合計:150,000円/月(20日勤務の場合)

会社の労働条件:

  • 年間労働日数:250日
  • 1日の所定労働時間:8時間
  • 適用される最低賃金:950円/時間

計算手順:

  1. 基本給(日給制)と手当(月給制)をそれぞれ時間額に換算します。
    基本給:6,000円 ÷ 8時間 = 750円/時間
    手当:(25,000円 × 12ヶ月) ÷ (250日 × 8時間) = 150円/時間
  2. 基本給と手当の合計における時間換算額を計算します。
    750円/時間 + 150円/時間 = 900円/時間
  3. 最低賃金との比較は、以下のとおりです。
    900円/時間 < 950円/時間(最低賃金)

この結果から、賃金が最低賃金を下回っていることがわかります。

事例3.歩合給(出来高払制)の場合

賃金内訳:

  • 歩合給:168,000円/月
  • 時間外割増賃金:6,300円/月
  • 深夜割増賃金:3,150円/月
  • 合計:177,450円/月

労働条件:

  • 1か月平均所定労働時間:170時間
  • 当月の時間外労働:30時間
  • 当月の深夜労働:15時間
  • 適用される最低賃金:950円/時間

計算手順:

  1. まず、歩合給を総労働時間で割って時間当たりの賃金を算出します。
    168,000円 ÷ (170時間 + 30時間) = 840円/時間
  2. 続いて、最低賃金との比較です。
    840円/時間 < 950円/時間(最低賃金)

この賃金は最低賃金を下回っていることがわかります。なお、前述のとおり時間外割増賃金や深夜割増賃金は、最低賃金の算出対象となりません。

出典:厚生労働省|必ずチェック 最低賃金 使用者も労働者も 低賃金のチェック方法は?

最低賃金計算の注意点

最低賃金計算をする際に気をつけたいポイントや間違えやすいポイントを以下にまとめます。

1.端数処理

最低賃金の計算結果に端数が生じた場合は、1円未満の端数は四捨五入します。

出典:厚生労働省東京労働局|3.残業手当等の端数処理はどうしたらよいか

2.変形労働時間制の場合

変形労働時間制を採用している場合は、変形期間における平均所定労働時間を用いて計算します。

参考:新潟労働局|最低賃金に関する質問

3.固定残業代の取り扱い

固定残業代は最低賃金の計算に含まれません。そのため、固定残業代を含む賃金の場合、基本給と固定残業代を分けて考える必要があります。基本給部分が最低賃金を上回っているかを確認することが重要です。

4.住宅手当の取り扱い

手当は、一般的に最低賃金の対象とはなりません。ただし、住宅手当のように実質的に基本給の一部として支払われている場合は、基本給と合算する形で最低賃金の対象となります。

参考:厚生労働省|労働法コラム「割増賃金の基礎となる賃金」と「最低賃金の対象となる賃金」は同じ?

5.賞与(ボーナス)の取り扱い

賞与は通常、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金として、最低賃金の対象外となります。

最低賃金計算ツールを活用することも可能

最低賃金の計算を効率的に行うために、エクセルなどを使用した計算ツールを活用することをおすすめします。多くの労働局のWebサイトでは、最低賃金計算ツールを提供しているので、ぜひ活用してください。

参考:連合|チェック!あなたの賃金、大丈夫? 〜最低賃金をクリアしてる?〜
参考:全国労働組合総連合|最低賃金最賃チェッカーで自分の賃金をチェックしよう

企業は最低賃金の遵守が責務

最低賃金の計算方法は、一見複雑に見えるかもしれません。しかし、基本的な原則を理解し、適切な手順で計算を行えば、正確に判断できます。本記事で解説した計算方法や注意点を参考に、企業の賃金体系が最低賃金法を遵守しているかを定期的に確認することが大切です。

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関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も

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