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【社労士監修】無期転換申込権とは何?有期労働契約の無期転換ルールについて解説

【社労士監修】無期転換申込権とは何?有期労働契約の無期転換ルールについて解説

2024.08.07

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

無期転換申込権とは、有期契約で働く従業員が5年を超えて契約を更新したときに発生する権利です。有期契約労働者の無期転換申込に対して、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか?無期転換ルールの概要を押さえた上で、申込に対応するメリットについても解説します。

無期転換申込権とは

無期転換申込権とは、無期転換ルールによって有期契約労働者に発生する権利のことです。この権利により、有期契約が5年を超えて更新されると、有期契約労働者は無期契約の申込ができます。

1年や3年というように期間を定めて労働契約を結んでいる場合でも、その職場の業務に精通しており、他の人材でただちに代わりがきかない、というケースは少なくありません。

このように有期契約が形式的なものになっているとき、有期契約労働者が無期転換申込権を行使することで、実態に合わせた労働契約を結べます。

また無期転換申込権が発生した有期契約労働者が、無期転換の申込をすると、企業はこの申込を拒否できません。

無期転換ルールとは

無期転換ルールとは、有期契約労働者の雇い止めに対する不安を解消し、処遇改善を実施するために設けられた制度です。

有期契約労働者の中には、職場において恒常的な役割を担っている人もいます。実態としては欠かせない人材であるにもかかわらず、有期労働契約を結んでいるため、雇用が安定しません。

このような働き方をしているパート・アルバイト・契約社員などの有期雇用労働者を、実態に併せて無期労働契約へ転換するために、無期転換ルールが設けられました。

ここでは無期転換ルールによって無期転換申込権が発生するタイミングと、無期転換ルールの対象企業について「有期契約労働者の無期転換ポータルサイト」を参考に解説します。

参考:厚生労働省|有期契約労働者の無期転換ポータルサイト|契約社員・アルバイトを雇っている企業さまへ!

関連記事:「無期転換ルール」を基礎からわかりやすく解説!2024年改正対応版

有期労働契約が5年を超えると無期転換申込権が発生する

無期転換ルールでは、有期労働契約が5年を超えると無期転換申込権が発生するルールです。

例えば労働契約が1年間の有期契約なら、原則通算5年を超えて更新を行うと、無期転換申込権が発生します。

また有期契約労働者との労働契約が3年間の有期契約なら、契約を締結もしくは更新してから3年間経過すると、更新後の3年間は契約社員に無期転換申込権が発生します。1回目の更新時には通算契約期間が6年間になるためです。

無期転換申込権が発生している期間中に、契約社員が無期転換を申し込むと、有期労働契約が終了する日の翌日から無期労働契約に切り替わります。

定められている明示事項について説明する

労働契約を結ぶときには、定められている明示事項を説明しなければいけません。2024年4月から、この明示事項に以下が追加されました。

追加された明示事項

明示のタイミング

就業場所や業務の変更の範囲

全ての労働契約締結時と有期労働契約の更新時

更新上限の有無と内容

有期労働契約の締結時と更新時

無期転換申込機会

無期転換申込権が発生する更新ごと

無期転換後の労働条件

無期転換申込権が発生する更新ごと

全ての企業が対象となる

企業の規模や業種にかかわらず、無期転換ルールは全ての企業が対象です。パート・アルバイト・契約社員などの有期契約労働者が在籍しているなら、無期転換ルールについて把握し、適切に対応しなければいけません。

企業が更新回数や更新年限の上限設定を行ったとしても、無期転換ルールの適用を避けるのが目的であれば、雇い止めが許されない場合もあります。

無期転換ルールに対応するための手順

2013年4月1日の改正労働契約法の施行により、無期転換ルールが導入されてから11年が経過しています。無期転換申込権が発生している無期契約労働者が在籍している企業も多いでしょう。

無期契約労働者が無期転換の申し込みをすると、企業は必ず対応しなければいけません。スムーズに無期転換できるよう、紹介する対応に向けた手順に沿って準備を進めましょう。

関連記事:【社労士監修】無期転換ルールとは?企業に求められる対応と人材戦略

有期契約労働者の実態を把握する

まず必要なのは、有期契約労働者の実態把握です。有期契約労働者について、以下を把握し整理しましょう。

  • 有期契約労働者の人数
  • 更新回数
  • 勤続年数
  • 担当業務

自社の状況に合わせて、他にも必要な情報があれば一緒に書き出します。

無期転換後の処遇を明確にする

実態を把握できたら、無期転換ルールに則って無期転換したあとの処遇について検討します。無期転換したあとの業務や働き方はどうするのか、正社員との区別を明確にしておかなければ現場で混乱が生じかねません。

例えば無期転換後も有期契約のときと同じ労働条件で契約期間のみ無期にするのか、もしくは職務限定正社員や短時間制社員など多様な正社員となるのか、通常の正社員になるのか、といった点を決めます。

それぞれの雇用形態で、労働時間・休憩時間・休暇・福利厚生などについても、明確にしておくとよいでしょう。

就業規則を整備する

無期転換後の処遇を明確にしたら、その内容を考慮して就業規則を整備します。雇用形態ごとにルールを明確にしておくことで、スムーズな無期転換を実施しやすくなるためです。

従業員に説明する

無期転換に対応するために制度を変更し就業規則を整備するときには、従業員へ説明しましょう。制度を変更した点のみを知らせるのではなく、制度設計をしている段階から周知して意見を募るのも有効です。

全ての従業員へ分かりやすく説明することで、無期転換によるトラブルを避けられます。

無期転換によるメリット

有期契約労働者の無期転換は企業にメリットのある取り組みです。具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。

長期的な戦略を立てやすくなる

企業は戦略を立てて事業を展開していきます。このとき戦略に合致した人材がそろっていることが重要です。

有期契約労働者が多い企業では、事業展開の途中で労働契約の期間が終了した従業員が辞めてしまうこともあるでしょう。これでは戦略どおりに事業を展開できません。

無期転換を行えば、期間の定めのない労働契約で働く従業員が増えるため、長期的な戦略を立てやすくなるメリットがあります。

人材確保につながる

無期転換は人材確保にもプラスに働きます。業種を問わず人手不足感が強まりつつある状況の中、人手不足により倒産する企業が増えています。このような事態を避けるために、無期転換が有効です。

自社の事業や業務に精通している従業員を無期転換することで、期間の定めなく働ける人材の確保ができます。

無期転換申込権を理解し今後の事業展開に活かそう

無期転換申込権は5年を超えて更新している有期契約労働者に発生する権利です。権利のある有期契約労働者が無期転換の申し込みをした場合、企業はルールに従って対応しなければいけません。

無期転換は企業にとって、長期的な戦略を立てやすくなることや、人材確保につながる取り組みです。人手不足に陥る企業が増えている今、今いる従業員の離職を防ぐためにも有効な方法といえます。

従業員の離職を防ぎ人材確保を行うには、福利厚生の充実度アップも重要です。例えば従業員満足度93%の食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

充実した福利厚生により働きやすい環境を提供すれば、人材確保がスムーズに進み、今後の事業展開に役立つことが期待できます。

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