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短時間労働者の社会保険適用が拡大|企業がおこなうべき準備と対策

短時間労働者の社会保険適用が拡大|企業がおこなうべき準備と対策

2024.05.02

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2022年10月以降、短時間労働者に対する社会保険の適用が拡大されました。2024年10月からは、適用範囲のさらなる拡大が決定しています。

社会保険が適用拡大されることで、多くのパート・アルバイトなどの短時間労働者が新たに社会保険の対象となり、正社員と同様に将来の年金額アップや手厚い医療保障が提供されるようになります。しかし、新たな改正がもらたすものはメリットばかりではありません。

本記事では、短時間労働者の社会保険適用拡大の概要と課題・企業が取るべき対応策について詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

短時間労働者の社会保険適用拡大とは?

短時間労働者の社会保険適用拡大とは、どのような目的で行われる、どのような内容の法改正なのでしょうか。まずは、その概要について分かりやすく解説します。

短時間労働者の適用拡大の背景と目的

日本の少子高齢化は年々深刻化しています。生産年齢人口が減少の一途を辿ることに伴う危機は多岐にわたりますが、中でも喫緊の課題となっているのが年金財政の悪化です。納付される国民年金保険料が減少し続ければ、年金制度そのものが破綻しないとも限りません。

そこで検討されたのが、働き方に関わらず、より多くの人が社会保険へ加入できる仕組みづくりです。社会保険の適用外だった短時間労働者の適用を段階的に拡大し、加入者を増やしていくことで、将来にわたって持続可能な社会保障制度の実現を目指しています。

社会保険適用拡大のスケジュール

短時間労働者に対する社会保険の適用拡大は、2016年10月に従業員数501人以上の企業からスタートしました。その後、2022年10月からは従業員数101人以上の企業に拡大され、2024年10月からは従業員51人以上の企業まで対象が広がります。

社会保険適用拡大

出典:厚生労働省|従業員数500人以下の事業主のみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト

なお、ここでいう「従業員数」は、「フルタイムの従業員数+週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数(パート・アルバイトを含む)」です。

対象企業の経営者や人事担当者は、自社が適用拡大の対象となるタイミングを確認し、スムーズに対応できるよう準備を進める必要があります。

新たに社会保険への加入が義務づけられる短時間労働者の四つの要件

2024年の適用拡大では、従業員数51人以上の企業が対象となります。しかし、従業員数が51人以上だからといって、該当企業に勤務するすべての短時間労働者が対象になるわけではありません。

2024年10月以降、新たに社会保険への加入が義務づけられるのは、下記四つの要件すべてを満たした短時間労働者です。

参考:厚生労働省|パート・アルバイトのみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省

労働時間要件

  • 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満であること(※週所定労働時間が40時間の企業の場合)

ここでいう所定労働時間とは、就業規則や雇用契約書で定められた労働時間のことです。変形労働時間制を採用している場合は、1年間の所定労働時間数を52で割った時間数が週の所定労働時間となります。所定労働時間が週によって異なる場合は、1カ月間の平均で判断します。

なお、所定労働時間が20時間に満たない場合でも、2カ月連続で実労働時間が週20時間を超え、なお引き続くと見込まれる場合には、3カ月目から社会保険加入への加入が義務づけられます。

賃金要件

  • 所定内賃金が月額8.8万円以上(年収約106万円)であること

月額賃金には、基本給に加え、各種手当が含まれます。また、日給や時給で賃金が定められている場合には、1日の所定労働時間数や1カ月の平均所定労働日数から月額に換算します。

なお、時間外労働の割増賃金(残業手当・深夜手当・休日手当)・賞与や結婚手当などの臨時に支払われる賃金・精皆勤手当・通勤手当・家族手当は月額賃金には含みません。

雇用見込み要件

  • 2カ月を超える雇用の見込みがあること

2022年10月の改正により、短時間労働者の雇用見込み要件が「1年以上」から「2カ月を超える」に緩和されました。

2カ月を超える雇用見込みがあると判断するのは「雇用契約書などで2カ月を超える雇用期間が明示されている場合」「契約更新により2カ月を超えて雇用されることが見込まれる場合」などです。

例えば、契約期間が2カ月以下でも、過去の同様の雇用契約で契約更新の実績がある場合などは、適用要件を満たすと判断されます。

学生除外要件

  • 学生ではないこと

社会保険適用の対象となる短時間労働者から、学生は原則として除外されています。これは、学業を主としている学生のアルバイトまで強制加入の対象とすることは適当でないと考えられているためです。

ただし、例外として「卒業前に就職が内定しており、卒業後も引き続き雇用される予定の学生」「夜間部・定時制・通信制課程に在籍する学生」「休学中の学生」については、適用対象となります。除外の例外に該当するかどうかは、個別のケースに応じて慎重に判断する必要があります。

短時間労働者の社会保険の適用拡大によるメリット

短時間労働者が社会保険へ加入すると、企業側・労働者側双方に大きなメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

企業にとってのメリット

短時間労働者の社会保険適法拡大により、企業が得られるメリットとして、まず挙げられるのが「人材の獲得・定着」です。

社会保険への加入は、従業員にとって生活の安定につながります。その点、短時間労働者であっても社会保険へ加入できることは、安定した環境で安心して働きたい労働者にとって大きな魅力です。求職者への強力なアピールとなり、人材の獲得率・定着率を高められるでしょう。

また、制度によって社会保険へ加入する短時間労働者は、社会保険加入にまつわる「年収の壁」を意識せずに働くことができるようになります。勤務時間をあえて短時間に抑える必要がなくなることから、企業にはシフト管理がしやすくなるメリットが生まれます。

これらは、人手不足(労働力不足)が喫緊の課題となっている多くの企業にとって非常に大きなメリットです。

従業員にとってのメリット

社会保険へ加入した短時間労働者には、「将来受け取れる年金額が増える」「健康保険が充実する」という二つの大きなメリットがあります。それぞれ詳しく解説します。

将来受給する年金額の増加

厚生年金は、加入期間や加入時の収入に応じて、老後に受け取る年金額が増えていく仕組みになっています。具体的には、定額の老齢基礎年金に、報酬比例の老齢厚生年金が上乗せされます。

つまり、短時間労働者が厚生年金に加入することで、加入しなかった場合よりも多い年金額を将来受け取ることができるのです。

参考:老齢年金|日本年金機構

健康保険の充実

短時間労働者が社会保険に加入することで、医療保険である健康保険の適用も受けられるようになります。健康保険には、病気やケガの治療費の7割を負担してもらえる医療給付に加えて、傷病手当金や出産手当金などの現金給付も用意されています。

傷病手当金が支給されるのは、働くことができなくなった日から起算して3日を経過した日からです。以降、働くことができない期間(最長1年6カ月間)、給与の2/3相当が支給されます。また、出産手当金は、産前42日〜産後56日までの期間、給与の2/3相当が支給されます。

国民健康保険にはないこうした手厚い保障は、短時間労働者にとって大きな魅力です。

参考:厚生労働省|パート・アルバイトのみなさま | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省

短時間労働者の社会保険の適用拡大によるデメリット

短時間労働者が社会保険へ加入することで得られるメリットは多数存在しますが、一方で一定のデメリットも存在します。ポイントを整理していきましょう。

企業にとってのデメリット

社会保険料は労使で折半して負担するため、加入対象者が増えれば、企業が負担する金額も必然的に増えます。対象となる短時間労働者が多い企業では、負担増加額も多いため、企業の財政を圧迫する可能性があります。

ただし、今後ますます深刻化していく労働者不足へ備えるには、これを人材への投資と捉え、生産性の向上や人材の定着、企業の発展につなげていく視点も重要です。

従業員にとってのデメリット

社会保険の適用拡大によって、社会保険の被保険者となった短時間労働者には、保険料の納付義務が発生します。保険料は企業と折半ですが、手取り額が減少するため、加入前と比較して毎月の収入が減少することになります。

長期的に見れば、保障や受給する年金額の増加という形で返ってくるお金です。しかし、直近の収入が減るというのは、労働者にとってやはりデメリットといえます。

【社会保険の適用拡大】スムーズな制度対応のポイント

社会保険の適用拡大により、多くの企業で新たに加入対象となる短時間労働者が発生します。円滑に制度へ対応するためには、計画的な準備が欠かせません。以下、企業が知っておきたい制度対応のポイントを解説します。

適用対象者の把握

社会保険の適用拡大への対応として、企業がまず行わなければならないのが、適用対象者の把握です。

労働時間や賃金、雇用見込み期間などの情報を整理し、新たな加入要件に照らし合わせてチェックしていきましょう。短時間労働者の労働時間や賃金は変動することも多いため、平均値で見るなど、適切な方法で判断することが求められます。

これらの作業を効率的に行うためには、勤怠管理や給与計算のシステム化が有効です。適用対象者の的確な把握は、社会保険料の予算管理や、従業員への説明の前提となる重要な情報となります。

制度理解と社内への周知

社会保険の適用拡大について、人事労務担当者が制度の内容をよく理解し、対象となる従業員だけでなく、すべての従業員に周知することが重要です。

特に、新たに適用対象となる短時間労働者には、加入の必要性やメリットについてしっかりと説明し、不安を解消することが求められます。社内説明会の開催や個別の面談など、様々な機会を捉えて丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

厚生労働省が作成している「社会保険適用拡大特設サイト」のコンテンツなども、周知・説明に役立てることができます。

円滑な加入手続き

社会保険の適用拡大に伴う加入手続きは、通常の社会保険の加入手続きと同様に、事業主が年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を提出することで行います。

被保険者番号をはじめ、必要な情報を事前に用意・確認しておくと、手続きがスムーズに進みます。なお、保険料は資格取得日から発生しますので、届出の遅れには注意が必要です。社会保険・労働保険の手続きを社会保険労務士に委託している場合は、早めに相談し、対応方法を確認しておくことをおすすめします。

参考:日本年金機構|従業員を採用したとき

懸念される「手取り額の減少を理由とする短時間労働者の退職」

社会保険の適用拡大を前に、懸念されているのが「保険料負担による手取り額の減少を嫌った短時間労働者の退職」です。この問題の詳細と、企業が行える対策について解説します。

短時間労働者の退職が企業へ及ぼす影響と対策

短時間労働者の大半を占めるのが、「家事・育児・介護等で自由になる時間が限られている人」や「ある程度の収入が欲しい」などの「扶養内で可能な範囲で働きたい」という層です。

この層にとって、扶養から外れ、社会保険料の負担が発生する社会保険の適用拡大は、決して望ましいものではありません。制度の適用を避け、退職を決断する人が出る可能性も十分考えられるでしょう。

ただでさえ人手不足の現状で、即戦力の短時間労働者を失うことは、企業にとって深刻な課題です。特に、大企業に比べて企業体力に問題を抱えがちな中小企業の場合、経営を揺るがす問題にもなりかねません。

この問題への対応としては、短時間労働者の社会保険料の負担分を、賃上げによって補填する方法が考えられます。しかしこの方法は、企業に対し社会保険料の負担に加え、賃上げの負担をも強いるものです。必要性の高さを認識していても、安易には決断できない難問といえるでしょう。

賃上げを行わずに社会保険料増をカバーする「福利厚生」

新たに社会保険へ加入する短時間労働者の保険料負担額をカバーする方法として、注目度を高めているのが「福利厚生」の活用です。福利厚生が注目される理由や、人気の福利厚生サービスを紹介します。

福利厚生の役割と効果

一般的な賃上げや手当と異なり、福利厚生は経費として計上できます。課税対象とならないために、短時間労働者の税金や社会保険料にも影響を与えず、手取り額を効率的に増やすことができます。

企業側も同様で、福利厚生の提供にかかったコストは利益からの控除が可能です。これにより、法人税の負担軽減につながります。

つまり、福利厚生は、従業員側・企業側双方にとってうれしい社会保険料負担のカバー方法なのです。

食事補助の福利厚生「チケットレストラン」

数ある福利厚生の中でも、高い人気度で注目されているサービスのひとつに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。

チケットレストラン」は、日本一の実績を持つ食事補助の福利厚生です。従業員と企業が半額ずつをチャージしたICカードで食事代を支払うことにより、実質的に食事代の半額が補助されるサービスです。

サービスの加盟店舗数は全国に25万店を超え、勤務時間内であれば、利用時間や場所の制限もありません。ランチ・おやつ・夜勤の食事などはもちろん、リモートワーク中や出張中の従業員も通常通り利用できます。

少額から利用できる利便性も支持され、導入企業での利用率98%・継続率99%・従業員満足度93%を誇る人気サービスとなっています。

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社会保険の適用拡大を企業成長の原動力に

短時間労働者に対する社会保険の適用拡大は、従業員の手厚い保障につながる重要な施策です。企業にとっては、保険料負担の増加というコスト面での課題もありますが、それ以上に人材への投資と捉えることが肝要です。スムーズに新制度へ対応できるよう、加入対象者の的確な把握や制度の周知徹底など、実務面での丁寧な対応を心がけましょう。

社会保険料の負担を嫌った退職への対策としては「チケットレストラン」のような食事補助をはじめとする福利厚生を活用するのがおすすめです。非課税の福利厚生を活用することで、企業の負担を最小限に抑えながら、従業員の実質手取りアップを実現できます。

社会保険の適用拡大への対応は、企業にとって人事労務管理の体制を再点検し、働き方改革を推進するまたとない好機でもあります。目の前のコストに目を奪われるのではなく、中長期的な視点を持ち、適用拡大の波を企業の成長の原動力として活かしていきましょう。

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