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実質賃金と名目賃金の違い|物価上昇を上回る賃上げ目標についてもチェック

実質賃金と名目賃金の違い|物価上昇を上回る賃上げ目標についてもチェック

2025.07.08

実質賃金とは、名目賃金を物価変動の影響を差し引いて算出した賃金のことです。国内では2024年に引き続き2025年も大幅な賃上げが行われています。ただしそれ以上に物価上昇が進行しているため、実質賃金は上がっていないのが現状です。

賃金に関するこのような現状を押さえた上で「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」で初めて示された、実質賃金の目標について見ていきましょう。

実質賃金と名目賃金の違いを解説

労働者の賃金について正しく把握するには、実質賃金と名目賃金について理解しておく必要があります。それぞれの定義を知り、違いを把握しましょう。

実質賃金とは

実質賃金とは、労働者が受け取った賃金から、物価上昇分を除いた賃金のことです。労働者の購買力につながる賃金と考えてもよいでしょう。

受け取る賃金が増えていても、実質賃金が同じであれば生活水準は変わりませんし、減っていれば生活水準は低下します。

例えば缶コーヒーが1本100円であれば、1,000円で10本買えます。インフレの影響で缶コーヒーが1本150円になれば、1,000円で買えるのは6本です。缶コーヒー10本分の価値は、インフレ後に1,500円に上がっていると考えられます。

インフレで物価が上がっているにもかかわらず、労働者が実際に受け取る賃金に変化がないか、物価上昇よりも上昇幅が低ければ、実質賃金は低下している状態です。

労働者はインフレ前よりも購入できる物品が減るため、これまでと同じ生活を維持するのが難しくなるかもしれません。

名目賃金とは

名目賃金とは、労働者が実際に受け取る賃金の金額です。給与明細に記載されている額面金額を示します。

物価上昇を考慮していない金額のため、労働者の実際の生活水準を表しているわけではない点に注意が必要です。

国内の賃金の推移

日本の賃金は20年以上の間、ほとんど上がらない時期が続いていました。

令和6年賃金構造基本統計調査」で賃金の推移を見ると、賃金が前年より1%以上連続して上がり始めたのは2022年からです。日本の賃金が上がらない理由 簡単に_1

出典:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況|賃金の推移

2020年から2024年の平均賃金と、対前年増減率を見てみましょう。

平均賃金

対前年増減率

2020年

30万7,700円

0.6%

2021年

30万7,400円

-0.1%

2022年

31万1,800円

1.4%

2023年

31万8,300円

2.1%

2024年

33万400円

3.8%

春闘での賃上げ率が5.1%と33年振りに5%を超え、歴史的な賃上げとなった2024年には「賃金構造基本統計調査」でも対前年増減率が3.8%と高くなっています。

参考:日本労働組合総連合会|33年ぶりの5%超え!~2024春季生活闘争 第7回(最終)回答集計結果について~

関連記事:賃上げ率の見通しは?2025年春闘の予想や第3の賃上げについて解説

名目賃金は上がったが実質賃金は上がっていない

2022年から賃金は上がり始めています。ただし賃上げのペース以上に進む物価高の影響で、実質賃金は上がっていません。

毎月勤労統計調査 令和7年4月分結果確報」によると、実質賃金と名目賃金の前年比は以下の通りです。

年月

名目賃金の前年比

実質賃金の前年比

2019年

-0.4%

-1.0%

2020年

-1.2%

-1.2%

2021年

0.3%

0.6%

2022年

2.0%

-1.0%

2023年

1.2%

-2.5%

2024年

2.8%

-0.3%

2025年1月

1.8%

-2.8%

2025年2月

2.7%

-1.5%

2025年3月

2.3%

-1.8%

2025年4月

2.0%

-2.0%

名目賃金は2021年以降プラスになっていますが、実質賃金は2022年以降マイナスで推移しています。

またエデンレッドジャパンの実施した「ビジネスパーソンのランチ実態調査2025」によると、85.6%のビジネスパーソンが「家計が苦しい」と回答しています。

家計の状況を苦しく感じる人が過半数となっていることからも、実質賃金が上がっていないことで、生活水準の低下がうかがえる結果です。

参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 令和7年4月分結果確報

関連記事:
ビジネスパーソンのランチ実態調査2025~コメ高騰でランチの主食危機⁉ 7割近くが“影響あり”と回答~
日本の賃金が上がらない理由は?賃上げのために企業ができることも簡単に解説

政府が定めた実質賃金の目標

国内では経済が停滞した状態が長く続きました。その影響から、物価上昇や賃上げはされないのが当たり前、という感覚が根付いているといえるでしょう。

このような中、政府は2025年6月13日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」で、初めて実質賃金の目標を示しました。この目標と、目標達成に向けた取り組みについて見ていきましょう。

参考:内閣官房|新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版

実質賃金で年1%の上昇を目指す

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」には、実質賃金の目標が以下のように示されています。

2029 年度までの5年間で、日本経済全体で、実質賃金で年1%程度の上昇、すなわち、持続的・安定的な物価上昇の下で、物価上昇を年1%程度上回る賃金上昇を賃上げのノルム(社会通念)として我が国に定着させる。

引用:内閣官房|新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版

日本銀行の掲げる安定的な物価上昇である年2%を実現しつつ、実質賃金の年1%上昇を定着させることが示されています。

官民連携でデフレマインドを払拭する

目標達成に必要なのは、約30年間続いたデフレ経済により、社会全体に広がったデフレマインドを取り除くことです。

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」には、国が先導して賃上げと価格転嫁を進めるために、デフレを前提に設けられていたさまざまな制度の見直しを実施していくと記載されています。

具体的には、「中小企業・小規模事業者の賃金向上推進5か年計画」で定めている以下のポイントに取り組み、デフレマインドを払拭していく計画です。

  • 賃上げ原資を確保するために、官公需における価格転嫁を徹底する
  • 医療・介護・福祉・保育などの公定価格の引き上げに取り組む
  • 全府省庁の予算税制で公的制度の基準額・閾値がデフレ時代から固定されたままになっていないか総点検し見直す

中小企業や小規模事業者の経営変革を後押しする

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」では、賃上げを成長戦略の要と位置付けています。

目標として掲げている、物価上昇年2%の下で実質賃金の年1%上昇を実現するには、雇用の約70%を占める中小企業や小規模事業者の経営変革が欠かせません。

同計画内では以下の通り、2020年代に最低賃金の全国平均1,500円の達成を目指していることが示されています。

最低賃金については、適切な価格転嫁と生産性向上支援により、影響を受ける中小企業・小規模事業者の賃上げを後押しし、2020年代に全国平均1,500円という高い目標の達成に向、たゆまぬ努力を継続することとし、官民で、最大限の取組を5年間で集中的に実施する。

引用:内閣官房|新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議|新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版

中小企業や小規模事業者は、最低賃金の引き上げの影響を大きく受けることも予想されています。このような中でも、適切な価格転嫁と生産性向上により、目標を達成していくために、以下のようなサポートを計画しているそうです。

  • 価格転嫁状況の可視化と改善
  • 5年間で60兆円の生産性向上に向けた投資
  • 商工会・商工会議所・中小企業団体中央会などによるデジタル支援ツールを活用したサポート
  • 事業承継やM&Aなどを相談できる体制の構築
  • エッセンシャルワーカーがそれぞれの地域で活躍できる環境整備を通じた持続的な賃上げの実現
  • 地方での賃上げ環境整備の後押し

関連記事:最低賃金1,500円はいつから?企業の半分が「無理」と考える理由

福利厚生による第3の賃上げも検討を

エデンレッドジャパンでは、定期昇給を「第1の賃上げ」、ベースアップを「第2の賃上げ」としたとき、実質的な手取りアップや暮らしにかかる費用の負担軽減につながる福利厚生を活用した賃上げを「第3の賃上げ」と定義しました。

現金で支給する賃金を上げにくい場合でも、第3の賃上げであれば、コストを抑えつつ従業員の生活をサポートできます。

例えば食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を一定の利用条件下で導入すれば、所得税の非課税枠運用ができるため、従業員の実質的な手取りを増やせます。

加えて日ごろの感謝や健康への気遣いなど、現金支給の賃金では表現が難しいメッセージ性を伝えられるのも特徴です。

実質的な手取り額アップについての詳しい内容は、こちらの「資料請求」からお問い合わせください。

関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

実質賃金1%アップに向けて取り組もう

実質賃金とは、名目賃金から物価上昇分を差し引いた賃金のことです。名目賃金が上がっていても、実質賃金が下がっていれば、労働者の生活水準は上がりません。

2025年6月13日に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」では、約30年続いたデフレからの脱却を目指して、年2%の物価上昇の下で年1%の実質賃金上昇を目指すことが示されています。

この目標達成に向けて、中小企業や小規模事業者をサポートする計画も盛り込まれました。

ただし今すぐに現金で支給する賃金を上げるのは難しいというケースもあるでしょう。このようなときに役立つのが、実質的な手取りアップにつながる食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」です。

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