監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)
くるみん認定は子育てサポート企業として、えるぼし認定は女性の活躍に関する取り組みが充実しており一定の要件を満たしている企業として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。2024年からは、くるみん認定・えるぼし認定が賃上げ促進税制の上乗せ要件になりました。くるみん認定・えるぼし認定について確認した上で、強化された賃上げ促進税制の概要をチェックしましょう。
くるみん認定とは
「くるみん認定」とは、次世代育成支援対策推進法に基づいて「一般事業主行動計画」を策定し、一定の基準を満たした企業が申請することで、厚生労働大臣の認定を受けられる制度のことです。
認定を受けた企業は「くるみんマーク」を商品や広告などへ掲載して、子育てサポート企業であることをアピールできる仕組みです。
くるみん認定を受けるには、以下に挙げる10項目の認定基準を全て満たしていなければいけません。
- 雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らしながら適切な行動計画を策定したこと
- 行動計画の計画期間が2年以上5年以下であること
- 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと
- 策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っていること
- 計画期間における、男性労働者の育児休業等取得率が10%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること。もしくは男性労働者の育児休業等取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度利用率が合わせて20%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること、かつ、育児休業等を取得した者が1人以上いること
- 計画期間における、女性労働者の育児休業等取得率が75%以上であり、当該割合を厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること
- 3歳から小学校就学前の子どもを育てる労働者について「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、所定労働時間の短縮措置または始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること ※「企業独自の育児を目的とした休暇制度」は措置の対象には含まれません
- 計画期間の終了日の属する事業年度において、フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満である、月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいない、のどちらも満たしていること
- 所定外労働の削減のための措置、年次有給休暇の取得の促進のための措置、短時間正社員制度・在宅勤務・テレワークその他働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置のいずれかについて、成果に関する具体的な目標を定めて取り組んでいること
- 法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと
他により高い水準の取り組みを実施し要件を満たすと認定を受けられる「プラチナくるみん認定」や、2022年4月から始まった「トライくるみん認定」があります。
参考:厚生労働省|次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、くるみん認定・トライくるみん認定・プラチナくるみん認定を目指しましょう!!!
関連記事:くるみん認定とは?子育てサポート企業の証!取得基準やメリットを解説
えるぼし認定とは
女性活躍促進法に基づき、女性の活躍を積極的に推進している企業が、厚生労働大臣の認定を受けられるのが「えるぼし認定」です。認定を受けることで、認定マークを商品や広告などに掲載できるようになります。
えるぼし認定では、以下の5つの基準のうち1~2個を満たすと「1段階目」、3~4個を満たすと「2段階目」、5つ全てを満たすと「3段階目」の認定を受けられます。
- 採用においての基準
採用において男女別の競争倍率が同程度であること。もしくは直近の事業年度に、正社員に占める女性労働者の割合と、正社員の基幹的な雇用管理区分における女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること - 継続就業に関する基準
直近の事業年度において「女性労働者の平均継続勤務年数÷男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ7割以上であるか、「女性労働者の継続雇用割合÷男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ8割以上であること。これらを算出できない場合には、正社員の女性労働者の平均継続勤務年数が産業ごとの平均値以上であること - 労働時間に関する基準
雇用管理区分ごとの労働者の法定時間外労働及び法定休日労働時間の合計時間数の平均が、直近の事業年度の各月ごとに全て45時間未満であること - 管理職における女性の比率基準
直近の事業年度において、管理職に占める女性労働者の割合が産業ごとの平均値以上であること。もしくは「直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した女性労働者の割合÷直近3事業年度の平均した1つ下位の職階から課長級に昇進した男性労働者の割合」が8割以上であること - 女性のキャリアアップ・多様なキャリアコースに関する基準
女性の非正社員から正社員への転換、女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換、過去に在籍した女性の正社員としての再雇用、おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用のうち、直近の3事業年度において中小企業は1項目以上、大企業は2項目以上の実績があること
またより高い基準を満たした企業が認定を受けられる「プラチナえるぼし」もあります。
関連記事:えるぼし認定とは?認定企業となるメリットや申請手順を確認
賃上げ促進税制とくるみん認定・えるぼし認定の関係
賃上げ促進税制とは、企業や個人事業主が前年度より給与などを上げた場合に、増加額の一部を法人税や個人所得税から差し引く制度です。
企業規模別・賃上げ割合別の税額控除率を見ていきましょう。
給与等支給額の前年度比 |
税額控除率 |
|
全企業向け |
++3% |
10% |
+4% |
15% |
|
+5% |
20% |
|
+7% |
25% |
|
中堅企業向け |
+3% |
10% |
+4% |
25% |
|
中小企業向け |
+1.5% |
15% |
+2.5% |
30% |
さらに教育訓練費を増加させると、以下の通り税額控除率の上乗せが可能です。
教育訓練費の前年度比 |
税額控除率の上乗せ |
|
全企業向け |
10% |
+5% |
中堅企業向け |
10% |
+5% |
中小企業向け |
5% |
+10% |
2024年4月から上乗せ要件として新設されたのが「子育てとの両立・女性活躍支援」です。くるみん・えるぼしの認定を受けている企業は、さらに税額控除率の上乗せを受けられます。
子育てとの両立・女性活躍支援 |
税額控除率の上乗せ |
|
全企業向け |
プラチナくるみん、もしくはプラチナえるぼしの認定 |
+5% |
中堅企業向け |
プラチナくるみん、もしくはえるぼし3段階目以上の認定 |
+5% |
中小企業向け |
くるみん以上、もしくはえるぼし2段階目以上の認定 |
+5% |
例えば前年度から1.5%の賃上げを行った中小企業が、教育訓練費を5%増加し、くるみん認定を受けた場合、30%の法人税額控除を受けられる計算です。
参考:経済産業省|賃上げに取り組む経営者の皆様へ~政府は、賃上げに取り組む企業・個人事業主を応援します~
関連記事:賃上げ促進税制の基本を分かりやすく解説!別表記載時の注意点も
くるみん認定・えるぼし認定で税制優遇を活用しよう
2024年4月から、くるみん認定・えるぼし認定を受けている企業は、賃上げ促進税制の税額控除率が上乗せされることとなりました。税制優遇を受けるには、賃上げの取り組みと同時に、企業規模に合わせた認定を受けましょう。
また従業員の待遇改善には、賃上げと合わせて福利厚生の拡充も有効です。中でも一定の要件を満たすと、従業員の税負担を増やすことなく支給できる食事補助や社宅などは、実質的な手取り額アップにもつながります。
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