健康経営は、CSRやSDGsとともに、企業や社会の成長と維持に欠かせない観点だとみられています。また、健康経営には国や自治体からさまざまなインセンティブや支援が受けられます。各省庁が発表した資料をもとに、健康経営とはどのようなものなのか、取り組みの具体的な施策や成功事例を紹介します。健康経営への取り組みのステップ、健康経営に対する課題や対応策も参考になるでしょう。
健康経営とは
健康経営とは、1990年代にアメリカで提唱され始めた「健康な従業員こそが収益性の高い会社を作る」という主張が基礎となっています。つまり「企業は有効な経営戦略の一つとして従業員の健康管理に努めるべき」という考え方です。
日本では深刻な少子高齢化を受け、今後、人材不足を解消することがあらゆる企業を円滑に経営・運営していくための大きな課題になると考えられています。企業が従業員の健康に配慮し長期間勤務しやすい環境づくりを行うことは、経営戦略の重要な要素の一つです。
これを受け、2006年にNPO法人健康経営研究会が発足されました。同研究会では「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」という考えを基盤に「人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与すること」が今後の経営戦略に必要だと主張しています。
近年、企業経営や成長とは切っても切れない関係にあるとされるSDGsの観点からも、日本国内の企業にとって健康経営は重要な取り組みです。日本企業や日本全体が、世界から取り残されないようにするためにも健康経営に着目した企業づくりが必要です。
健康経営研究会では、従業員の健康への戦略的な投資として、次の5つの指針の整備を推奨しています。2021年7月にNPO法人健康経営研究会が主体となって研究・発表した「未来を築く、健康経営」を基に解説します。
労働安全衛生(健康管理)
労働安全衛生とは、労働基準法や労働安全衛生法など「労働法令の遵守」を通じた従業員の健康管理に関する取り組みを意味します。従業員が快適な生活を過ごせるよう、安全・安心な労働環境整備と心身の健康づくりのための基本的な取り組みです。
労働安全衛生は、企業活動を推進する上で当然、かつ最低限守られるべき基準であり、他の4つの視点を支える重要な土台といえます。
心と体の健康づくり
「心と体の健康づくり」とは従業員のヘルスリテラシーを高める取り組みです。労働安全衛生と同じく、健康経営のための土台の一つと考えられています。
従業員自らが健康状態を意識し、必要に応じたセルフケアができる意識づくり・環境づくりに焦点を置いています。これにより、健康の質が高まり、労働や商品・サービスの質が保障され、最終的には企業の付加価値の向上につながるといわれています。
働きやすさ
働きやすさとは、従業員の健康を大前提とし、一人ひとりの従業員が心地よく働ける場や状況、コミュニケーションがあってこそ実現すると考えられています。
企業は、従業員が働きやすさを感じられるように、環境調整に努めることが推奨されています。健康経営に関する取り組みについて、従業員の「働きやすさ」から「働きがい」「生きがい」については、人を資本として新しい企業価値を創造する投資であると捉えられています。
働きがい
働きがいとは、仕事に対するエンゲージメントを高めることで生まれるものです。健康経営を指針とする場合、企業と従業員による価値感の統一、価値をともに作り上げることが重要だと考えられています。それには企業と従業員の双方が同じ目標をもつことが大切です。
経営戦略として自社の進路を積極的に示すとともに、仕事の質と量が従業員の心身の健康に及ぼす影響を考慮しながらマネジメントに努めましょう。
生きがい
健康経営における生きがいは、ワークライフバランスの実現が大きな尺度とみられています。従業員にとって、仕事は生活の中心ではなく、あくまで一部とし、適切なワークライフバランスを取ることで「ウェルビーイング」つまり「心身の良い状態」を獲得できるという考えです。
そして、この「個々の従業員が心身の良い状態でいること」こそが企業の屋台骨となり、社会の発展にも貢献するといわれています。
健康経営の具体的な施策例
優良な健康経営を実践している企業や組織は、経済産業省から「健康経営優良法人」として認定される制度があります。健康経営優良法人として認定を受けると、企業のPR等に使用できるロゴマークの利用許可や有利な条件の融資、自治体の公共調達における加点といった優遇措置につながる事があるようです。
健康経営を実現させ認定を受けるには、実行可能な施策を企画・実施することが大切です。健康経営優良法人認定のために企画され、かつ評価にもつながる施策についてみていきましょう。
健康課題の把握
従業員の健康に配慮した経営を行うためには、まず従業員の健康課題の把握が必要です。労働安全衛生法では、50人以上の従業員が勤める事業所には産業医を選任することが課せられます。産業医の指導の下、定期的なストレスチェック、受診の奨励、定期健診などが、健康経営の観点でも有効な施策例として評価を受けています。
ワークライフバランスの推進
健康経営の実践に向けた基礎的な土台づくりのため、さらに従業員一人ひとりのワークエンゲージメントを高めるためにもワークライフバランスの推進が求められます。これを受け、以前の日本企業では休日出勤や長時間労働が「称賛に値する働き方」と捉えられるのが一般的でしたが、現在は多くの企業、ひいては社会全体が有休をしっかり取得することを奨励し、長時間労働の是正に乗り出しています。
病気の治療と仕事の両立支援
ワークエンゲージメントを高めることは人材確保の観点からも大切な取り組みとして認められています。離職率を抑えることに直結する健康経営施策の一つとして、病気の治療と仕事の両立に乗り出す企業も少なくありません。
たとえば、治療が必要な従業員には時短労働を認めたり、通院・治療に無理のない範囲の部署移動を行ったりといった施策は、本人だけでなく、周囲の従業員や採用活動にも良い効果を与えるでしょう。こうした働き方に直結する施策は、誰もが活躍できる社会を目指す上で、心地よく働ける環境づくりにも役立っています。介護や育児といった事情を抱える従業員を支える施策にもそのまま適用できるからです。
健康増進・生活習慣病予防対策
健康経営には、制度を作って新しい雇用契約を生み出すだけでなく、従業員が改めてセルフケアに役立てられる取り組みを呼び掛けることも求められます。たとえば、社内でスポーツレクリエーションやクラブを企画し、運動機会の増進をはかったり、社食など健康的な食事を取れる福利厚生を採用し、従業員の食生活の改善を支援したりするなどです。
エデンレッドジャパンが提供する電子カード配布型食事補助サービス「チケットレストラン」も社食の一つとして検討する企業が増えています。チケットレストランは、全国7万店以上の飲食店・コンビニエンスストアで利用できます。各従業員が、勤務に関わる食事であれば、朝食やランチ・夕食など思い思いの時間に好きな店舗で利用できるため自由度が高く、経済的にも従業員を支援できます。健康経営施策として、食事での従業員の健康支援ができる福利厚生サービスをお探しの場合は、選択肢の一つにしてはいかがでしょうか?
健康経営の成功事例
健康経営をよく理解するには、実際に過去、もしくは現在進められている健康経営の成功事例を参考にするのが最もわかりやすいかもしれません。健康経営の成功事例を2020年に経済産業省が発表した「健康経営優良法人取り組み事例集」から紹介します。
社会福祉法人大洲育成園
社会福祉法人大洲育成園(以下、大洲育成園)は愛媛県大洲市にある福祉サービス事業を展開する施設です。長らく、福祉関連職は健康経営の要の一つであるワークライフバランスがとりづらい職種といったイメージがありました。大洲育成園では、従業員を宝と捉え、2017年4月に従業員数が50名を超えたことをきっかけに健康経営へと踏み切りました。
大洲育成園の取り組みの一つ「運動機会の増進に向けた取り組み」として、施設利用者と従業員が平日の昼食後20分間の歩行運動を続けています。こうした運動を大洲育成園では20年以上前から実施しており、毎日20分という短時間、天気の良い日はグラウンド、天気の悪い日は施設内を歩行するという、無理のないスタイルが長く続ける秘訣かもしれません。
大洲育成園では、施設をあげて有給を取りやすくする取り組みにも力を入れています。以前の有給消化率は30%あまりでしたが、2020年には50%まで増加しました。この効果のおかげか、育休・産休取得者が増え、離職率の低下にも一役買っていることは間違いないでしょう。
また、大洲育成園では、健康経営についての地域への情報発信も企業の責務と捉えています。玄関前に宣言書を掲示したり、「健康経営優良法人」認定の看板等を掲げたりして、健康経営を見える化し、地域住民等に取り組みを発信しています。世間的に重労働だと認識されがちな社会福祉法人が健康経営に乗り出したことで、非営利法人として地域住民からの信頼や協力を得られるという考えがもとになっています。
こちらの事例集が作成された令和2年時は、人材確保という面では、直接的な健康経営のメリットは感じられていないということでしたが、学生とのディスカッションの話題の一つとなっており、健康経営が採用活動に何らかの効果につながる日もそう遠くはないでしょう。
ナガオ株式会社
岡山県岡山市で化学工業薬品製造販売を手掛けるナガオ株式会社(以下、ナガオ)は、従業員の健康リテラシーを高める施策に取り組んでいます。ナガオでは社風として、ワークライフバランスの調整に力を入れていましたが「健康経営優良法人」への申請をきっかけにより、深く従業員全体に健康リテラシーの浸透と実践を呼び掛けています。
ナガオの健康経営への取り組みは、主に従業員自身による健康な生活を定着させるものです。これは、そもそもナガオが、全従業員が無理なく長期間働ける勤務スタイルを貫いてきたからこそ、すぐに取り組みが可能だった施策ともいえます。
健康チェックはもちろんのこと、それにより改善すべき食生活への具体的なアドバイスは、現在9割以上の従業員が活用しているといいます。また、マラソンやソフトボールなど、運動の機会を従業員に提供しています。マラソンについては競技や大会出場にかかる経費を補助したり、ソフトボールは社をあげて地域大会に参加したりして、全従業員の運動不足の改善と維持、コミュニケーションの促進などに役立てています。
ナガオでは、もともと従業員一人ひとりに合わせた働き方を推進していることもあり、離職率は低い水準でしたが、健康経営に取り組みだした前後10年間では、結婚後の退社や介護を理由とした退社に収まっています。数値化すると離職率はわずか0.5%と、令和3年上半期に厚生労働省が発表した平均離職率8.1%を大きく下回る成果を結んでいます。
また、採用活動でも健康経営のメリットを感じているそうです。志望動機として、ナガオのワークライフバランスを挙げる応募が多く、優秀な人材の確保とともに企業も成長していると実感しているようです。ナガオは健康経営が社内外とのエンゲージメントにも一役買っている良い事例といえそうです。
ネッツトヨタ山陽株式会社
ネッツトヨタ山陽株式会社(以下、ネッツトヨタ山陽)も岡山県岡山市の企業で、自動車関連の事業を行う企業です。ネッツトヨタ山陽では、風通しのよい「働きやすい職場づくり」・自ら成長できる「人財づくり」を掲げ、健康経営に取り組んでいます。
中でも力を入れている施策が「運動機会の増進に向けた取り組み」です。ネッツトヨタ山陽では従業員に電子万歩計を携行させ、歩いた歩数を集計し、個人別・部署別実績を毎月、ニュース形式で公表しているそうです。部署間の競争で終わることがないよう、社内でウォーキングコンテストを実施するなど楽しみながら継続できるよう環境づくりに力を入れています。
また、従業員の「食生活の改善に向けた取り組み」にも注力すべく、本社社員食堂をリニューアルしたそうです。通常の社食メニュ―のほか、カロリー別におかずをチョイスできるヘルシー仕出し弁当も提供しています。
健康経営のメリットとしてネッツトヨタ山陽も採用活動につながっていると感じているようです。働きやすい環境づくりと健康づくりについては、面接時の話題となることも多いとのことです。
ちなみに、岡山市では「桃太郎のまち健康推進応援団」という登録制度を設けています。こちらに登録したことで岡山県「おかやま健康づくりアワード」での入賞や、取り組みについてのメディア掲載など、社外へのアピールにも役立っているそうです。販促スタッフの中には顧客との会話にこうした活動へのPRを盛り込むなど、直接の経済活動に役立てているケースもあります。
健康経営の具体的な進め方
健康経営を戦略的に進めるには、どのようなステップを踏むのがよいのでしょうか?経済産業省から発行されている「企業の『健康経営』ハンドブック2018」を参考に、健康経営の具体的な進め方を紹介します。
①経営理念・方針への位置づけ
健康経営の手始めとして、まず企業がやるべきことは、経営層が健康経営の意義と重要性を認識し、経営理念として社内外にアピールすることです。一番効果的なアピールは「健康経営宣言」として文書化し、取引先や従業員・顧客・投資家など営業活動にかかわる、さまざまなステークホルダーに示すことだと考えられています。
健康経営にまつわる情報の発信は、現状のビジネスだけでなく、採用市場や株式市場にも大きな影響力を持っています。社会を構成する重要な要素の一つとも考えられているため、健康経営宣言とともに具体的な施策を示すことが大切です。
②組織体制づくり
続いて、従業員の健康保持・増進実現に向けて働きかける組織体制を整えることに努めましょう。健康経営を実行するための組織は専門部署を設置したり、人事や労務・総務といったバックオフィスの部署に専門のポジションを創設したりするのが望ましいとされています。同時に、健康経営実現に向けて研修などの社内教育を施すことも求められます。
また、健康経営に対する施策を実行可能なものとするため、企画の段階から役員会や、時には外部組織を招いて討議が行える体制を整えることも重要です。
③制度・施策の実行
健康経営の制度・施策を実行する前に、経営層や担当部署だけでなく、産業医や保険師などの産業保健スタッフや、健康保険組合・労働組合など従業員の心身の健康に関連する部署全てが連携することが大切です。
そのうえで、現状を把握し、日頃のマネジメントに健康経営制度や施策をどう落とし込むかを決定します。従業員の現在の健康状態を把握するには、定期健診や産業保健スタッフとの対話はもちろん、社内外にアンケート調査を行うのも有効でしょう。
現状の把握ができたら目標を設定し、そこまでの道のりに基づいた計画書を作成し、施策を実行します。具体的な施策の内容としては、長時間労働の是正や休暇取得の奨励など働き方に関するものや、喫煙・禁煙ルールや運動の促進、社食などでの健康的な食事の提供などがあげられます。
④取組を評価する
施策が実行されたら、定期的に取り組みを評価することも大切です。評価結果を客観的に判断できるよう文書化しましょう。想定していたような結果が得られなかったり、参加する従業員が少なかったりする場合には、改善策を検討・実行する事も大切なプロセスです。
なお、健康経営の施策についての評価はストラクチャー(構成)・プロセス(過程)・アウトカム(成果)を3つの指標として整理するのが重要だと考えられています。この3つは、のちに紹介する「健康経営銘柄選定」の格付けにも深く関わっているといわれています。
国や地方自治体の健康経営優良企業への支援策事例
政府や各省庁、地方自治体も健康経営や健康経営優良法人と認められた企業にさまざまなインセンティブなどの支援策を設けています。どのような支援策があるのか順にみていきましょう。
国の健康経営優良企業への支援策事例
経済産業省では、2015年から毎年、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を「健康経営銘柄」として選定しています。この取り組みは、東京証券取引所との共同であり、長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家に、健康経営優良企業を紹介するというものです。結果として、各企業が健康経営の取り組みに注力することを目的としています。第8回となる2022年度は過去最多となる32業種・50社が選定されました。
厚生労働省では、公共職業安定所(ハローワーク)に提示する求人票に、健康経営優良法人の認定を受けた企業はその記載を許可しています。健康経営優良法人と認められることが、いわゆるホワイト企業であると暗示することになり、人材の獲得に役立っているのです。
また、法務省では、出入国在留管理庁において入国を希望する外国人の在留資格審査で、健康経営優良法人に認定されている企業に採用されている、もしくは採用予定の外国人の手続きを簡素化しています。
地方自治体による支援策事例
地方自治体による健康経営優良法人の支援策には、主に下記4つのインセンティブがあげられます。
①中小企業融資制度における貸付利率の引下げなど
②中小企業に対する補助金優遇
③公共工事や公共調達等の入札における加点評価
④自治体独自の認定表彰制度への優遇
①のインセンティブの事例には、秋田県の「中小企業振興資金(一般資金)の『働き方改革支援枠』」として貸付金利の引き下げ(0.2%)、福島県の「ふくしま産業育成資金融資制度の県内育成枠」として、特別利率(信用保証協会の保証を付す場合:固定年1.9%以内、付さない場合:固定年2.4%以内)などがあげられます。
②の補助金優遇の事例には、青森県弘前市が「弘前市ライフ・イノベーション推進事業費補助金(健康経営促進)」として「健康経営優良法人」認定を受けている市内事業所に対し、平成31年4月1日から令和2年2月29日までの事業を対象に、補助対象経費の2分の1を優遇したり、兵庫県尼崎市の「尼崎市まちの健康経営推進事業」として市税の滞納がなく「健康経営優良法人」と認定された市内中小企業を対象に、対象事業にかかる補助対象経費の1/2以内の補助(上限10万円)を行ったりした事例が有名です。
③の公共事業入札に際する加点については、企業成長や経済活動そのものに大きなメリットがある支援策です。具体的な自治体の事例では、北海道江別市では、入札参加資格者登録業者の格付において、健康経営優良企業には3点を加点しています。山形県米沢市では、建設工事指名競争入札参加者の格付けに際し、健康経営優良企業には規定により10点も加点されるそうです。
④の自治体独自の認定表彰がされると企業のイメージアップにつながり、営業活動・採用活動の両面でPRになることは疑いの余地もありません。代表例は富山県が設立した「とやま健康経営企業大賞」や栃木県「健康長寿とちぎづくり表彰(健康経営部門)」、埼玉県さいたま市「さいたま市健康経営企業認定制度」などです。この認定表彰を受けられるということは、地域の中でも安定した運営・成長を見せる優良企業という看板を背負うに等しいでしょう。
健康経営の課題とは
健康経営優良企業になるとさまざまな優遇処置や経済産業省をあげての格付け評価が受けられるなど、メリットが多いです。しかし、未だに健康経営に着手できない企業や、昨今のコロナウイルス感染拡大防止策を発端とした社会の変化により、健康経営計画がとん挫した企業もあります。こうした課題に対し、どのような施策案があるか見ていきましょう。
伝統的なハードワーク
本記事でも何度か触れていますが、高度経済成長期や国民性の影響から日本は長年、長時間労働や休日を返上しての労働が良しとされてきた歴史があります。さらに、四半世紀前の就職氷河期には、労働者より企業の立場が強いといった見方もあり、多くの人が最低限守られるべき労働基準法を超えた働き方を強いられていました。
これが、現代の日本の課題ともいうべき、メンタルヘルスの阻害や自殺率の増加に関連していることは、いうまでもないでしょう。今までは労働環境や従業員の生活調整にかかる資金は、完全なコストとして捉えられていました。それを「投資」とし、従業員に人間らしく健康に長く働ける環境を作るのが、企業の利益や成長の糧になるとしたのが、健康経営の概念です。
レガシー的にハードワークを奨励する志向は主に、管理職より上の世代に多いといわれています。企業の上流人材がこうした考え方だと影響を受ける若い世代も多いかもしれません。そのような環境では、健康経営へのかじ取りがなかなか難しい面があるでしょう。しかし、ハードワークを放置すると社会に取り残される可能性もあります。
企業の人材獲得や育成、環境整備を担う人事や労務といった部署は、健康経営に関する研修を社内で取り入れたり、健康経営優良企業への支援事例やメリットを社報で取り上げたりなどして、社内で健康経営についての知識を広める働きを続けていきましょう。
リモートワークの普及
コロナ禍で急激に普及したリモートワークは、健康経営にも大きなメリットがある働き方です。コロナウイルス感染症をはじめとする、さまざまな感染症から従業員を守り、出社に無理がある持病や家庭の事情を抱える社員にとっても無理のない働き方を実現できるワークスタイルといえます。
しかし、リモートワークにより従業員同士のコミュニケーションの低下・集中力維持の困難など新たな問題が発生しました。不安や孤独を感じ「気持ちの切り替えがうまくできない」「睡眠障害」といったメンタルヘルスに関する訴えも増えたと聞きます。家にこもっていると運動不足や偏った食生活などフィジカルな健康状態にも悪影響が出る生活になりがちです。
現在では、徐々に出社を解禁する企業や人に会う回数を増やしている人もいますが、リモートワークを継続的に奨励する企業や事業所の縮小、地方移転などをした企業の従業員の中には出口が見えないと感じる人もいるかもしれません。
こうしたジレンマを抱える企業では、リモートワークでも利用できる法定外福利厚生を追加するなどの施策がおすすめです。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、リモートワーク環境下でも従業員の働き方と企業への信頼を高める福利厚生サービスです。食事補助なので、企業の健康経営への取り組み事例としても注目を集めています。リモートワークを導入しつつ、健康経営にも注力したい企業が、新たな福利厚生として取り入れるケースが増えています。
終わりに
健康経営は、企業成長や存続のために必要とされ、生まれた概念です。従業員一人ひとりの健康状態を重要視する考え方は社会的にも意義のある取り組みであるとされ、国や地方自治体、東京証券取引所などが一丸となって推進しています。
しかし、日本のレガシー的なビジネス文化や急速なリモートワークの普及により、健康経営の取り組みを始めるのが難しい企業もあるでしょう。健康経営を始めるにあたり、経営層をどう巻き込むかがカギともいえます。
また、成功事例の中には、すでに人の健康に直結する「食事」に関する施策もあります。何から始めるのが良いか検討中の企業は、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」で従業員に健康で豊かな食を提供するところからはじめてみてはいかがでしょうか?