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【社労士監修】2025年金改革「遺族年金こう変わる」改正ポイント解説

【社労士監修】2025年金改革「遺族年金こう変わる」改正ポイント解説

2025.06.20

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

2025年の年金制度改革は、少子高齢化、働き方の多様化、家族構成の変化といった社会の大きな流れに対応するための抜本的な見直しです。特に遺族年金の改正は、影響を受ける従業員への説明が必要です。本記事では、遺族年金の改正ポイントを中心に、企業が知っておくべき年金制度改革の全体像を分かりやすく解説します。

2025年金制度改革:改正の背景

近年、少子高齢化が進み、現役世代が減少し高齢者が増加していることで、年金制度を持続させることが課題となっています。また、働き方が多様化し、パートやアルバイト、フリーランスなど、従来の枠組みではカバーできない働き方も広がっています。

共働き世帯や単身世帯も増えており、いわゆる「夫が働き妻が専業主婦」という世帯モデルは少数派となりつつあります。こうした社会変化に対応するには、年金制度の見直しが必要です。

2025年金改革:主な改正ポイント

2025年の年金制度改革法案における主だった改正は、以下の通りです。

改正項目 主な内容
社会保険の加入対象拡大
  • いわゆる年収106万円の壁がなくなる
  • 10年かけて企業規模要件の撤廃
在職老齢年金の見直し
  • 年金支給停止の基準額を月51万円から62万円に引き上げ
遺族年金制度の見直し
  • 男女差の解消
  • 原則5年の有期給付化
  • 子どもが遺族基礎年金受取対象となるケースの増加
標準報酬月額上限の引き上げ
  • 月65万円から75万円へ段階的引き上げ
iDeCo加入年齢の引き上げ
  • 70歳まで拡大
基礎年金の底上げ(検討)
  • 次期財政検証後に実施可否を判断

詳細は、厚生労働省の発表資料をご参照ください。

出典:厚生労働省|社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案の概要

遺族年金とは?

遺族年金は、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった際に、その方に生計を支えられていた遺族に支給される重要な社会保障制度です。

日本年金機構のサイトでは、遺族年金を「国民年金または厚生年金保険の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金」と説明しています。種類は以下の2つです。

  • 遺族基礎年金:子どもがいる配偶者や子に支給される年金。
  • 遺族厚生年金:会社員が死亡した場合、生計維持関係のあった配偶者等の遺族に支給される年金。

条件を満たした場合に、いずれかまたは両方の年金が支給されます。

出典:日本年金機構|遺族年金

2025年遺族年金改正主な変更ポイント

2025年遺族年金改正では、2028年4月の施行により遺族年金の給付対象者・給付期間・給付額が変更されます。特に子どものいない配偶者への影響が大きく、従業員によっては制度変更の影響を受けます。

厚生労働省のサイト「遺族年金の見直しについて」を元に、主な変更点を見ていきましょう。

改正の主旨は「男女差解消」です。それに伴い遺族の生活が立ち行かなくなるのを防ぐための年金額を増やす措置が導入されています。

2025 年金改革 遺族年金01出典:厚生労働省|年金制度総論

ポイント1. 「5年間の有期給付」による男女差解消(給付期間変更の可能性あり)

これまで性別により異なっていた支給ルールを統一し、男女平等な制度に変更されます。

現在の制度:

  • 30歳未満で妻が夫を亡くした場合:5年間限定の給付
  • 30歳以上で妻が夫を亡くした場合:生涯にわたる給付
  • 55歳未満で夫が妻を亡くした場合:給付なし
  • 55歳以上で夫が妻を亡くした場合:60歳から無期給付

改正後:

  • 男女とも60歳未満で配偶者を亡くした場合:原則5年間の給付(特別な事情がある場合は継続可能)
  • 男女とも60歳以上で配偶者を亡くした場合:無期給付

実施時期は男性が2028年4月から即座に、女性は2028年4月から20年間をかけて段階的に移行します。

出典:厚生労働省|遺族厚生年金の見直しについて

ポイント2.配慮措置(継続給付)

以下に該当し、5年経過後も生活再建が困難な場合、65歳まで継続給付される配慮措置が設けられています。

  • 障害状態にある方(障害年金受給権者)
  • 収入が十分でない方

概ね月収20万円から30万円を超えると継続給付は終了する見込みです。

ポイン3. 給付期間短縮に伴う年金額の増額(給付額増額のメリットあり)

給付期間が短縮される代わりに、5年間の給付額が増額されます。改正後の5年間について「有期給付加算」が新設され、年金額は現在の約1.3倍となる予定です。この措置により、配偶者を亡くした直後の生活再建期に、より手厚い支援が受けられます。

出典:厚生労働省|遺族厚生年金の見直しについて

ポイント4. 死亡分割制度の新設(給付額増額のメリットあり)

長期的な生活保障として、新たに「死亡分割」の制度が導入されます。

死亡分割制度は、亡くなった配偶者の厚生年金加入記録の一部(約半分)を、残された配偶者の年金記録に上乗せする仕組みです。その結果、65歳以降に受け取る老齢厚生年金の額が増加し、老後の生活保障が強化されます。

2025 年金改革 遺族年金02出典:厚生労働省|年金制度総論

出典:厚生労働省|遺族厚生年金の見直しについて

ポイント5. 中高齢寡婦加算の段階的廃止(給付額減少の可能性あり)

遺族厚生年金の男女差解消のため、40歳以上65歳未満の子がいない妻に支給されていた「中高齢寡婦加算」が段階的に廃止されます。

2025年度では年約62万円の加算額でしたが、2028年4月から25年間をかけて徐々に減額・廃止される予定です。

出典:厚生労働省|遺族厚生年金の見直しについて

ポイント6. 収入要件の廃止等、子どもが遺族年金を受け取れるケース増(給付額増加のメリットあり)

遺族厚生年金の受給要件が見直され、子どもが遺族基礎年金が受け取れるようになるケースが増えます。

被保険者が亡くなった以降の状態 考えられる状況
子どもの生計を維持している配偶者の収入が850万円以上 妻、または夫の収入が850万円以上
子どもの生計を維持している配偶者が、被保険者が亡くなった後に再婚 再婚により受給権が失権
子どもが直系血族(または直系姻族)の養子となる 祖父母と養子縁組
被保険者が死亡した後に、離婚していた元配偶者が子どもを引き取る 離婚後、元夫または元妻に引き取られる

離婚の増加による家庭環境の変化を踏まえ、子の生活の安定を図るという本来の遺族基礎年金の目的を達成するための措置です。

出典:厚生労働省|第17回社会保障審議会年金部会 2024年7月30日 遺族年金制度等の見直しについて

ポイント7.子どもがいる年金受給者は、加算額が引き上げ(給付額増加のメリットあり)

子を養育している年金受給者の場合、年金額が加算されています。遺族基礎年金の子の加算額が見直され、年間約23万5,000円から年間約28万円となり給付額が増えます。

加算対象となる条件:

  • 年金(※)を受給していること
  • 子どもがいること

     

    老齢基礎年金、老齢厚生年金、障害基礎年金、障害厚生年金(1級、2級)、遺族基礎年金、遺族厚生年金(下線部は2025年改正で加算が新設される年金)

2025 年金改革 遺族年金03出典:厚生労働省|遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方

遺族年金制度見直しの対象者と施行時期

原則5年の有期給付の対象となるのは、18歳年度末(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの日)までの子がいない、2028年度末時点で40歳未満の女性です。

施行直後から妻を亡くした18歳年度末までにある子のない20代〜50代男性の場合、新たに5年の有期給付が受給できるようになります。

見直しの対象外となる方

以下に該当する場合は、2025年遺族年金の改定の影響はありません。

  • すでに遺族厚生年金を受給している方
  • 60歳以降に遺族厚生年金の受給権が発生する方
  • 18歳年度末まで(精神障害にある場合は20歳未満)にある子(※)のある方
  • 2028年度に40歳以上になる女性

※子が規定年齢を超えた後、5年間は増額された「有期給付+継続給付」の対象となります。

施行時期

2028年4月施行予定です。

出典:厚生労働省|遺族厚生年金の見直しについて

企業人事が押さえておくべき改正のポイント

遺族年金の改正で、従業員へ適切な案内をする上で知っておきたいことを整理します。

男性従業員への影響:新たな保障の拡大

2028年4月施行予定の遺族年金改正により、これまで保障が限定的だった男性従業員への給付が拡大されます。これまで55歳未満の男性が配偶者を亡くした場合、遺族厚生年金の対象外でしたが、改正後は20代から50代の男性も5年間の給付を受けられるようになります。

特に子のいない男性従業員にとって、2025年の変更は大きな意味を持つはずです。共働き世帯が増加した現在、配偶者を亡くした男性が生活を立て直す際の経済的支援として機能します。

女性従業員への影響:給付条件の変更

女性従業員については、給付条件に重要な変更があります。これまで30歳以上の女性は配偶者の死亡後、終身にわたって遺族年金を受給できました。改正後は原則として5年間の有期給付に変更となります。ただし、5年間の給付額は従来の約1.3倍に増額され、また収入制限(年収850万円未満)も撤廃されます。

なお、収入が低い場合や障害がある場合など、特別な配慮が必要なケースでは最長65歳まで給付が延長となります。実施は2028年4月から20年かけて段階的に行われる予定です。

人事担当者としては、いざという時に備えて、対象従業員へ変更内容を正しく伝えることが大切です。

子育て世帯への配慮:遺族基礎年金の見直し

遺族基礎年金についても、子どもの実情に合わせた柔軟な給付が可能になりました。親の再婚や離婚、養子縁組などの家庭事情により、従来は給付対象外とされていた子どもにも、実態に応じて年金が支給される可能性が広がります。

離婚などにより従業員の家族構成が多様化する中で、より実情に即した支援が受けられるようになることを意味します。複雑な家庭状況を抱える従業員に対して、適切な制度案内を実施しましょう。

年金改革の見直し内容は正確に把握しよう

2025年の年金制度改革で、遺族年金が大きく変わります。男女間の支給ルールの差が解消され、原則として5年間の有期給付となりますが、給付額は増額です。また、配偶者の年金記録を上乗せする「死亡分割」制度も新設されます。

これらの変更を踏まえ、従業員の生活設計や福利厚生の見直し、情報を正しく提供する体制強化が必要です。制度変更は段階的に進むため、最新情報を定期的に発信し続けることも重要です。

年金制度の変化により、従業員の生活保障への関心が高まる中、企業の福利厚生制度の充実にも期待が寄せられています。時代に合わせた制度として、福利厚生の見直しを検討している企業においては、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を検討してみませんか。勤務中の食事代を補助しながら、実質的な手取りアップを実現します。

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