監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
事業再構築補助金は、ポストコロナ時代に対応した企業の変革を後押しする国の支援制度です。新分野への進出や業態転換に取り組む企業にとって大きなチャンスですが、「中堅企業も対象になるのか?」「自社が該当するか判断できない」といった疑問の声も少なくありません。本記事では、制度の全体像から中小企業・中堅企業の定義、申請条件までをわかりやすく整理し、制度を有効活用するためのヒントを紹介します。
※本記事は、2024年度「第13回公募」(令和2年度第3次補正予算)に基づく最新情報をもとに執筆しています。
事業再構築補助金とは
「事業再構築補助金」とは、経済産業省が実施する企業変革支援のための制度です。まずは、制度の目的や対象者・補助額など、事業再構築補助金にまつわる基礎知識をわかりやすく解説します。
参考:事業再構築補助金|事業再構築補助金とは|はじめての方
参考:事業再構築補助金|事業再構築補助金リーフレット|第13回公募
【事業再構築補助金】制度の目的
事業再構築補助金は、もともと新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少した事業者に対し、新分野展開や業態転換などの思い切った取り組みを支援する目的で創設された制度です。
急激な経済環境の変化に対応し、持続的な成長を実現するための「構造転換支援」を制度の柱とし、2021年3月26日に第1回公募が開始されました。
しかし、世の中の変化とともに、現在ではポストコロナの枠を超えた制度へと位置づけが変化しています。新市場進出、事業・業種転換、国内回帰、地域サプライチェーンの強靭化など、中長期的な事業戦略を持つ企業の挑戦を後押しする制度となっています。
【事業再構築補助金】対象者
本制度の対象者には、中小企業を中心とした法人に加え、中堅企業や個人事業主も含まれます。
法人格の有無を問わず、一定の売上減少要件や、再構築に関する事業計画の策定ができれば申請可能です。※一部売上減少要件が撤廃されている申請枠もあり
中堅企業についても申請が認められており、企業規模を問わず事業再構築に意欲を持ち、変革を志す事業者が広く支援の対象となるのが特徴です。
【事業再構築補助金】補助上限
出典:事業再構築補助金|事業再構築補助金リーフレット|第13回公募
事業再構築補助金の補助上限額は、申請する枠・企業規模・従業員数によって異なります。
成長分野進出枠(通常類型)では、中堅企業は一律6,000万円(賃上げ等の加点条件達成時は7,000万円)、従業員101人以上の中小企業も同額が上限です。
一方、脱炭素やグリーン成長を推進する「GX進出枠」では、中堅企業は最大1億円(同1.5億円)、従業員101人以上の中小企業は8,000万円(同1億円)の補助が可能です。
なお、従業員20人以下の小規模な中小企業については、成長分野進出枠(通常類型)での補助上限が1,500万円(加点条件で2,000万円)と異なります。
【事業再構築補助金】補助率
補助金の補助率は企業の区分によって異なり、中小企業の場合は通常で1/2、要件を満たすと2/3まで引き上げられることがあります。
一方で、中堅企業は基本的に1/3の補助率となりますが、一定の要件を満たせば補助率が1/2に引き上げられる加点制度も設けられています。具体的には、大幅な賃上げを実施する企業や、GX分野など成長市場への進出を行う企業などです。
【事業再構築補助金】対象となる経費
補助の対象となる経費は、企業が再構築に必要とする広範な投資活動に対応しています。主な経費としては、以下のようなものが挙げられます。
- 建物費(建物の建築・改修等)
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費(知的財産権導入に要する経費)
- 外注費(加工、設計等)
- 広告宣伝費・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
- 研修費(教育訓練費等)
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス使用料
- 知的財産権等関連経費
- 廃業費
- 事業再構築補助金における【中小企業】
中小企業は「中小企業基本法」に基づき、業種ごとに資本金または従業員数のいずれかを基準として定義されています(例:製造業=資本金3億円以下または従業員300人以下)。個人事業主のように資本金のない場合は、従業員数のみで該当判定されます。
事業再構築補助金では、中小企業に対して補助率や上限額で優遇措置があり、成長分野進出枠(通常類型)では最大7,000万円(加点条件あり)、補助率は原則1/2(同じく加点により2/3)となっています。
なお、従業員20人以下の小規模事業者は、1,500万〜2,000万円が上限です。
事業再構築補助金における【中堅企業】
事業再構築補助金における中堅企業とは、「中小企業基本法による中小企業の定義に該当しない企業」のうち、資本金10億円未満または従業員2,000人未満の企業を指します。
これは法的な定義ではなく、あくまで制度上の取り扱いですが、中堅企業も成長分野進出枠やGX進出枠などで申請が可能です。
補助率は原則1/3、加点要件を満たせば1/2まで引き上げられます。補助上限額は通常枠で最大6,000万円(加点で7,000万円)、GX進出枠では1億円〜最大1.5億円に設定されています。
個人事業主はどうなる?
事業再構築補助金は、個人事業主も申請対象となります。制度上は法人と同様の扱いとなり、認定支援機関の確認や事業計画書の作成が必要です。
審査においては、事業規模や収益見通し、再構築の実現性などが重視されるため、十分な準備が求められます。
事業再構築補助金|申請の手引き
実際に事業再構築補助金の申請をするにあたっては、どのような流れで行えばよいのでしょうか。ここでは、主な流れや申請に必要なものなど、事業再構築補助金の申請に際し知っておきたいポイントをまとめています。
申請から交付までの流れは?
出典:事業再構築補助金|事業再構築補助金リーフレット|第13回公募
申請から補助金交付までの流れは、まず公募期間中に必要書類を準備し、電子申請システム「jGrants」から申請することから始まります。
申請内容は審査を経て、採択されれば交付決定通知が発行されます。その後、事業を実施し、実績報告書を提出。補助金額の確定を経て、実際の交付が行われます。申請から交付決定までは、通常約2~4か月、補助金入金までさらに3~6か月を要するため、スケジュールには十分な余裕が必要です。
なお、交付後も5年間にわたって毎年「事業化状況報告」の提出が必要とされ、補助金を活用した事業が実際に継続・成長しているかを報告する義務があります。
申請に必要なものは?
申請にあたっては、いくつかの基本的な準備が必要です。まず、電子申請に必要な「GビズIDプライム」の取得は必須です。また、事業計画書には認定経営革新等支援機関の確認が求められ、その確認書を添付する必要があります。
さらに、過去の決算書(法人の場合は2期分)・売上減少の根拠資料・投資計画の概要などをそろえる必要があります。これらの書類不備が原因で不採択となる例もあるため、事前のチェックは怠れません。
参考:事業再構築補助金|よくあるご質問
参考:デジタル庁|GビズID
事業再構築補助金|よくある質問
事業再構築補助金を検討する企業の多くが、制度の細かなルールや申請要件について疑問を抱えています。ここでは、申請時によくある質問をピックアップし、誤解されやすい点や見落としがちな注意点をわかりやすく解説します。
申請したら必ず補助金が交付されるのですか?
いいえ、必ず交付されるわけではありません。
事業再構築補助金では、事業計画の実現可能性や成長性を厳格に審査し、第12回公募(2024年7月締切)では7,664件の応募に対し2,031件が採択され、採択率は26.5%でした。
参考:事業再構築補助金事務局|事業再構築補助金 第12回公募の結果について
認定支援機関って何?どこに相談すればいいですか?
申請時には、認定経営革新等支援機関(いわゆる「認定支援機関」)の関与が必要です。これは国に認定された支援専門家であり、補助金の事業計画書に対する助言や確認書の発行を行います。
対象となるのは、中小企業診断士・税理士・金融機関・商工会議所などです。申請は電子申請システム「jGrants」から行うため、事前に「GビズIDプライムアカウント」の取得も必須です。アカウント発行には数日〜1週間ほどかかるため、余裕を持った準備が求められます。
補助金の対象にならない経費はありますか?
はい、あります。
事業再構築補助金は幅広い経費が対象となりますが、汎用性の高い事務機器(例:パソコン・コピー機)や、既存事業の維持にかかる費用(例:通常のメンテナンス費用など)は対象外とされています。
そのほか、人件費・土地取得費・借入金の返済なども原則対象外です。補助対象経費については、公式の「公募要領」での確認が不可欠です。
赤字企業や創業間もない企業でも申請できますか?
申請可能です。ただし、申請枠によって要件が異なります。
たとえば、「物価高騰対策枠」や「コロナ回復加速化枠」では、売上10%以上の減少が必要ですが、「成長分野進出枠」や「GX進出枠」では売上減少要件はありません。
また、創業3年未満など売上実績が乏しい企業についても、1期分の決算書等で対応できる場合があり、申請は可能です。ただし、計画の妥当性や実現可能性が厳しく問われるため、実績の少なさを補えるだけの説得力ある内容が求められます。
事業再構築補助金を活用し、経営の転換と働き方の見直しを
事業再構築補助金は、ポストコロナ以降の経済変化に対応する企業の挑戦を支援する制度です。中小企業だけでなく、中堅企業や個人事業主も対象です。
新たな市場への進出や業態転換など、経営の転換を図る際に大きな資金的支援となりますが、補助率や申請要件は申請枠や企業規模によって異なります。まずは自社が中小企業に該当するのか中堅企業なのかを正しく把握し、制度の特性を理解した上で、戦略的に活用することが重要です。
また、事業再構築を機に、従業員の働く環境や福利厚生を見直す企業も増えています。たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のような食事補助制度の導入は、健康促進だけでなく、採用競争力や定着率の向上にもつながる施策として注目されています。
補助金制度による事業転換と並行して、こうした人的投資を経営戦略に組み込むことが、持続的成長への鍵となるでしょう。
自社の取り組みにどう生かせるか、具体的なサービス資料もぜひご確認ください。
関連記事:チケットレストランにデメリットはある?導入前の不安を徹底解消
※本記事は、2024年度「第13回公募」(令和2年度第3次補正予算)に基づき、制度の最新情報を整理したものです(本公募をもって新規受付は終了しています)。
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