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【社労士監修】健康経営の助成金とは?2024年版一覧と施策例

2024.06.12

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

健康経営のための助成金とはどのようなものでしょうか?まず、健康経営と助成金の定義と健康経営実現のために利用できる助成金についての理解を深めましょう。また、助成金制度は年度によって、要件や名称が変更されます。2024年2月現在、健康経営実現のための施策が対象となる助成金制度10種を目的別に紹介します。

健康経営の助成金とは?

健康経営の助成金とは「健康経営を実施するために企業が利用できる助成金」のことです。正しく理解できるよう「健康経営」と「助成金」について、わかりやすく解説します。

健康経営とは?

健康経営は従業員の健康を資本と捉え、従業員の健康維持と改善に投資する経営戦略のことです。健康経営に注力することで、従業員の労働意欲や生産性、ロイヤルティが向上し、人材確保の面でも良い効果をもたらし、結果として企業の利益につながると考えられています。

経済産業省が主導し「健康経営優良法人」や「健康経営銘柄」などの選定も行われており、選ばれた企業はさまざまなインセンティブや投資家などから高い評価を受けられます。

政府も健康経営は日本の労働生産性向上に向けた取り組みとして注目しているため、企業が健康経営を叶える施策を実施、もしくは開始する際に利用できるよう、さまざまな助成金が存在します。

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

参考:経済産業省 健康経営
参考:経済産業省 健康経営優良法人認定制度
参考:経済産業省 健康経営銘柄

関連記事はこちら:健康経営とは?いつから?定義や取り組み方・施策例もわかりやすく解説

助成金とは?

助成金とは、独立行政法人中小企業基盤整備機構のポータルサイトJ‐netには「国や地方公共団体(民間の団体で行っているものもあります)から支給されるお金」と明記されています。「支給される」ということは、つまり「返済義務がない」ということです。

助成金の多くは厚生労働省が管轄しており、原則として要件を満たし所定の様式に従って申請すれば受給できるものです。企業の福利厚生に対しての助成金は、経営層や企業の人事規定に関する目標をクリアすることで受給対象となるケースがほとんどですが、この「要件」が、企業によってはかなり厳しい内容だったり、「要件を満たしている」という証明にさまざまな書類が必要とされたりします。

なお、助成金と混同されやすい補助金も、同じく返済義務のないお金ですが、ほとんどが民間団体や経済産業省、地方自治体などが管轄しています。他にも補助金と助成金の違いとして、補助金は要件を満たして所定通りに申し込みしても、必ず受給できる見込みがないことが上げられます。「助成金は申請」「補助金は応募」といったイメージが近いです。

引用:J-Net21 ビジネスQ&A 補助金・助成金の違いや補助金活用における注意点について教えてください。

関連記事はこちら:福利厚生に使える助成金と補助金!種類や特徴とおすすめ施策を紹介

健康経営実現に利用できる助成金10種類

健康経営は、従業員の心身の健康維持・改善や、そのための労働環境の整備をした先に実現するものですが、ある程度まとまった経費がかかります。「健康経営の実現」を直接的に支援する助成金はありませんが、健康経営に関連したさまざまな施策に対する助成金は存在します。

健康経営を実現・継続する企業の多くが、こうした助成金を得て、さまざまな施策に活かしています。健康経営を実現させるための取り組みに利用できる助成金を目的別にいくつか紹介します。

働き方改革施策に対する助成金

健康経営は、従業員の働きがい・生きがいを高め企業価値を創造することも重要なステップだと考えられています。また、健康経営は、働き方改革法案の施行とも密接に関連しており、企業は生産性の向上を図りながら、従業員のワークライフバランス充実についても配慮する必要があります。

2020年4月1日から、中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されたことを受け、労働時間の短縮や有給消化の促進に向けて厚生労働省も動き出しています。その一つとして、働き方改革推進支援助成金制度が施行されました。働き方改革推進支援助成金制度は、中小企業・小規模事業者や傘下企業を支援する事業主団体で、コースによっても対象事業者の要件が異なります。対象事業者が従業員の待遇や働き方を改善する施策に取り組んだ時は、複数の助成金制度に申請できます。対象となる助成金制度について見ていきましょう。なお、2023年12月1日以降の申請については、交付申請期限などについて延長されています。

働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

働き方改革推進支援助成金制度の中でも「労働時間短縮・年休促進支援コース」は生産性を向上させ、労働時間の削減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備に取り組む労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主を支援する助成金です。

現状より生産性を向上させつつ、従業員の労働時間を削減するために、労務関連の改善施策や新しいシステムの導入、人材の投入などの計画を立てた際に申請できます。成果目標の達成度や施策にかかった経費によって助成金の額が変動しますが、最大で730万円もの助成金が支給されます。

参考:令和6年度「働き方改革推進支援助成金」

働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

「勤務間インターバル」とは、勤務と勤務の間に一定の休息時間を設けることを意味しています。2019年4月から勤務間インターバル導入は努力義務化されており、導入により従業員の生活時間や睡眠時間を確保し、健康保持や過重労働の防止につながると考えられています。

このコースは、終業から次の始業までの休息時間の確保を定めている労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業主を対象とし、勤務間インターバルの設定・周知の方法に一定の条件が示されています。勤務間インターバルを9時間以上または11時間以上に設定するために研修やシステムの改善、新たな設備や人材の投入などを計画する事業主が申請でき、助成額は最大580万円です。

参考:厚生労働省 令和5年度「働き方改革推進支援助成金」勤務間インターバル導入コースのご案内

働き方改革推進支援助成金(労働時間適正管理推進コース)

働き方改革法案の施行により、2020年4月1日から、賃金台帳などの労務管理書類の保存期間が5年(当面の間は3年)に延長されました。これを受け、制定された労働時間適正管理推進コースは、生産性を向上させつつ、労務・労働時間の適正管理の推進に向けた環境整備に取り組む、労働者災害補償保険の適用の中小企業事業主が助成対象です。

ポイントとなるのは、計画書を作成する時点で労務管理書類の保存期間を5年以上に設定していないことが条件の一つにあることです。今後新たに労務時間の適正管理を推進するために、人材やシステムの投入、研修や教育などに取り組んだ場合に最大で580万円の助成が受けられます。

参考:厚生労働省 令和5年度「働き方改革推進支援助成金」 労働時間適正管理推進コースのご案内

働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

働き方改革推進支援助成金の団体推進コースとは、中小企業事業主の団体や、その連合団体が、傘下の事業主のなかで従業員を雇用し、従業員の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取組を実施した場合に、事業主団体に対して助成をするものです。従業員や中小企業事業主だけでなく、加入団体ごとに支援する制度として注目されています。3事業者以上で構成され、かつ1年以上の活動実績がある事業主団体が助成対象です。

最大助成額は1,000万円で、市場調査やセミナーの実施のほか、下請取引適正化への理解促進や調整の施策なども含まれます。販路拡大の実現を図るための展示会開催・出展事業、参加事業所への見回りや新たなシステムや人材の投入などさまざまな施策が対象となるのが特徴の一つです。

参考:厚生労働省 令和5年度「働き方改革推進支援助成金」団体推進コースのご案内

働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)

適用猶予業種等対応コースの「適用猶予業種」というのは、2023年の時点で時間外労働時間の上限規制適用が猶予されている業種のことです。建設業・運送業・病院などが適用猶予業種にあたります。2020年4月の法改正により、2024年4月1日から、建設業・運送業・病院など、これまで長時間労働が当たり前とされてきた業種に対しても時間外労働の上限規制が適用されます。

このコースは、上限規制の適用に猶予がある業種であっても、生産性を向上させつつ時間外労働の削減や週休2日制の推進・勤務間インターバル制度の導入など働き方改革推進に向けた環境整備に取り組む、労働者災害補償保険の適用の中小企業事業主が対象です。生産性の向上を図りながら従業員の労働時間削減のため、研修や教育、新たな設備システムの導入を計画する際に申請できます。

助成の最大金額は業種によって異なり、建築業が830万円、運送業が880万円、病院などが930万円です。計画書を作成するにあたって、目指すべき成果目標も業種によって異なるので、資料をよく確認しましょう。

参考:厚生労働省 令和5年度「働き方改革推進支援助成金」適用猶予業種等対応コース(建設業)のご案内
参考:厚生労働省 令和5年度「働き方改革推進支援助成金」適用猶予業種等対応コース(運送業)のご案内
参考:厚生労働省 令和5年度「働き方改革推進支援助成金」適用猶予業種等対応コース(病院等)のご案内

心身の健康施策に対する助成金

健康経営実現に直接働きかける、従業員の心身の健康維持・改善をサポートする施策に助成金を支給する制度を紹介します。

受動喫煙防止対策助成金

受動喫煙防止対策助成金は、中小企業において非喫煙者の受動喫煙防止対策にかかった経費の一部を助成する制度です。2018年7月に健康増進法の改正もあり、副流煙により非喫煙者が健康被害にあったり、離職してしまったりすることがないよう、喫煙者が多い職場では喫煙室や分煙設備の導入が推進されています。

一定の基準を満たす喫煙専用室等の設置などにかかる工費・設備費・備品費・機械装置費などの経費に対して助成するものですが、上限は100万円です。近年「国の助成金を使えば、無料で喫煙室が設置できる」と触れまわる業者の存在が指摘されています。受動喫煙防止対策助成金を利用できるのは、工事費や設備費の一部分のみであり、さまざまな要件をクリアしたうえ、工事前に申請する必要があります。疑問や不明点は、地域の都道府県労働局に問い合わせるよう、国も注意喚起しています。なお、令和6年度の申請については、決定次第発表される見込みです。

参考:厚生労働省 受動喫煙防止対策助成金 職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)

団体経由産業保健活動推進助成金

団体経由産業保健活動推進助成金は、事業主団体等や労災保険の特別加入団体などが、傘下の中小企業等が何らかの産業保健の取り組みを従業員に提供した際に、費用の一部を助成するための制度です。産業保健の取り組みとは、産業医・保健師などの専門家が従業員との面談や指導、病気の治療と仕事の両立のサポートを行うなどの施策や民間の産業保健サービスの提供があげられます。

この制度を運営する「独立行政法人労働者健康安全機構(JOHAS)」は、厚⽣労働省所管の独立行政法⼈です。労働者の健康を守り、病気を治療し、職場復帰を推進するための活動や研究などさまざまな事業を⾏っています。団体経由産業保健活動推進助成金は、従業員の労災や過労死、仕事が起因の健康被害などを防ぎ、改善に導くための予防施策を講じた企業が申請できる助成金です。

参考:独立行政法人労働者健康安全機構 助成金

両立支援等助成金

両立支援等助成金は、介護や育児と仕事を両立する従業員の雇用を守る環境整備に対する助成と、不妊治療のために利用可能な休暇制度や両立支援制度を導入する企業に対する制度です。従業員が休暇制度・両立支援制度を利用した場合に申請できます。

少子高齢化の影響により、多くの企業では人材確保に困難を抱えています。両立支援等助成金は、介護や育児・不妊治療・出産前後の健康の維持と並行して、仕事に従事する従業員がキャリアを継続できるよう配慮を行う企業が申請できる助成金です。両立支援等助成金は、家庭や個人の事情が理由の離職にフォーカスし、企業から優秀な人材の流出を防ぐのが目的とされています。

令和6年1月より、「出生時両立支援コース」「介護離職防止支援コース」「育児休業等支援コース」に加えて、「育休中等業務代替支援コース」が新設されます。育児休業や育児短時間勤務を取得・利用する方の業務を代替する体制作りに対する支援を目的としたものです。しかも同一の育児休業につき、既存の「出生児両立支援コース」や「育児休業等支援コース」との併用も可能など、手厚い内容となっています。

参考:厚生労働省 事業主の方への給付金のご案内
参考:厚生労働省 令和6年1月から両立支援等助成金に「育休中等業務代替支援コース」を新設します

従業員の待遇改善に対する助成金

健康経営を実施する上で、従業員の給与・賞与や福利厚生などの待遇改善に取り組むことは必須といえるでしょう。従業員の待遇改善に乗り出した企業にも助成金が制定されています。賢く利用し、従業員が働きがいを感じながら働ける職場づくりを目指しましょう。

業務改善助成金

業務改善助成金は、中小企業等における事業所内の最低賃金の引き上げを図って設立された制度です。中小企業が生産性向上のための設備投資や人材育成制度の導入などと並行して、事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合、設備投資などにかかった費用の一部を助成します。

これから賃金の引き上げを行う中小企業が対象で、事業の規模・業種、地域の最低賃金との差額や引き上げ額によっても細かな要件や助成率が異なります。自社が対象となるかどうかは、地域の労働局または労働基準監督署で相談しましょう。

参考:厚生労働省 最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者支援事業
参考:厚生労働省 業務改善助成金

人材開発支援助成金

人材開発支援助成金とは、企業が事業に必要なスキルを持つ従業員を育てることを目的とした職業能力開発計画を立てたうえで、 計画に沿った職業訓練を実施した場合に得られる助成金です。社会人のリスキリング、特に新卒入社の従業員に対し、業務を担う上で必要な資格取得のための知識・技能を習得させる目的で支給されます。 ベテラン従業員の退職により有資格者が少なくなり、即戦力が必要となった企業にとっては心強い助成金でしょう。

人材開発支援助成金は、取り組みにあわせて以下の7つのコースが用意されています。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 障害者職業能力開発コース

それぞれ、訓練にかかる経費、賃金の一部を助成するものです。社会人のリスキリングは、政府も推進する政策の一つであり、特に、新規事業の立ち上げやデジタル人材の育成などを支援する目的で設立されました。2023年6月からは、雇用関係助成金ポータルでの電子申請も可能になりました。待遇の一つとして従業員の教育や育成に関連する福利厚生サービスの導入などを検討中の企業は申請を検討しましょう。

参考: 厚生労働省 人材開発支援助成金

関連記事はこちら:【社労士監修】人材開発支援助成金の条件は?活用事例をチェック

健康経営のために助成金を利用できる施策とは?

健康経営実現のために助成金の活用を視野に入れて導入できる施策にはどのようなものがあるのでしょうか?助成金が利用できる健康経営実現のための施策を紹介します。

リスキリング制度

政府も後押しするリスキリング制度は、複数の助成制度の対象となります。リスキリングに必要な研修やセミナー、教材などの費用のほか、資格取得にかかる費用、リスキリング中の従業員への賃金、リスキリング制度を広め理解する活動などに助成金が支給されます。社内のリスキリング制度が充実すれば、従業員のエンゲージメントや企業内の知見、資格保有者の数に反映され、企業成長につながる可能性も高いです。助成金を活用しながら、自社のリスキリング制度を整えていきましょう。

関連記事はこちら:経済産業省が補助金を交付するリスキリングとは?定義やメリットも

多様な働き方の推進

仕事と育児・介護の両立を図る従業員のために、新たな人材やシステムの導入、リモートワークに必要な設備支援などの施策に対する助成金もあります。事情に合わせた労働時間の短縮やオンラインでの会議参加やリモートワークが認められることで通勤や移動時間が削減できれば、働きやすくなる従業員は多いでしょう。多様な働き方を認めることは、交通費や光熱費・家賃等の経費削減に直接的な効果があるほか、企業のブランディングや採用活動へのアピールにもつながります。

健康管理システムの導入

民間の健康管理システムを導入し、従業員の健康管理を一元化する施策を行う企業も多いです。サービスにもよりますが、健診や産業医や保健師との面談で得た体調と結びつけ、従業員一人ひとりにあわせた健康指導や食事指導、ストレスチェックなどに役立ちます。健康システム導入にかかる経費も複数の助成制度の対象となります。

業務システムの新規導入

健康経営を目指す上で、働き方改革が推進する「生産性向上」と「従業員の労働時間の軽減」の両立がカギとなる企業も多いです。そのための業務システムの導入は、さまざまな助成制度の対象となるほか、従業員の負担を軽減する施策として有効です。在庫管理や生産管理、経理システムの導入資金のほか、プロジェクトをリードするコンサルタントの人件費に充てることもできます。

健康経営実現に助成金を活用しよう

健康経営実現のために利用できる助成金は、2024年2月現在10種類あります。それぞれ、助成の対象となるためには細かい要件が定められているため、利用や施策の開始前に地域の労働局で慎重に確認するのがおすすめです。

「助成金が支給されても大規模な施策はむずかしい」という企業もあるでしょう。こうしたケースでは、従業員のワークエンゲージメントや生活支援に直接的な効果を発揮する食事補助サービスがおすすめです。導入前のコストや負担が最小限の「チケットレストラン」をぜひご検討ください。

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