SDGsに関する企業の取り組みには、再生可能エネルギーの利用や資源のリユース・リサイクルなどがあげられます。これからSDGsに取り組もうと考えている場合には、具体的にどのようなことを実施すればよいのでしょうか?参考になるよう10社の取り組みを紹介します。
SDGsとは
SDGsとは持続可能な開発目標のことです。2030年までに、持続可能でよりよい世界を目指すための目標として、2015年9月に行われた国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載されています。
17の目標からなるSDGsでは、地球上の誰ひとりとして取り残さないことを誓っているのも特徴です。全世界で取り組むべき共通の目標として定められています。
SDGsに関する企業の取り組み状況
SDGsへの取り組みは、日本国内でも積極的に行われています。帝国データバンクの「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」によると、取り組みに積極的な企業は過去最高になったそうです。ここではSDGsに関する企業の取り組みについて、同調査をもとに紹介します。
参考:帝国データバンク|SDGsに関する企業の意識調査(2024年)
SDGsに積極的に取り組む企業は54.5%
「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」によると、SDGsへの理解や取り組みに対して「意味および重要性を理解し、取り組んでいる」「意味もしくは重要性を理解し、取り組みたいと思っている」を合わせた、SDGsに積極的な企業の割合は、以下の通り2020年以降増加し続けています。
2024年はSDGsに積極的な企業の割合が54.5%となり、過去最高となりました。
年代 |
SDGsに積極的な企業の割合 |
2020年 |
24.4% |
2021年 |
39.7% |
2022年 |
52.2% |
2023年 |
53.6% |
2024年 |
54.5% |
取り組みを行う企業の意見を見ると、求職者や取引先からSDGsへの取り組みが求められていると感じるケースが増えているそうです。この動きから、人材確保や取引先との関係強化を目的にSDGsに取り組んでいる企業もあります。
企業規模が小さいほどSDGsへの取り組みには消極的
SDGsへ積極的に取り組んでいる企業の割合は54.5%です。ただし企業規模や業界によって、積極的にSDGsに取り組む企業の割合は異なります。積極的にSDGsに取り組んでいる企業の割合を、企業規模別に見てみましょう。
企業規模 |
SDGsに積極的な企業の割合 |
大企業 |
71.8% |
中小企業 |
51.2% |
小規模企業 |
42.9% |
企業規模が小さくなるほど、SDGsに取り組む企業の割合が低くなっていることが分かります。
中小企業や小規模企業では、目先の業務や人手不足への対応に手一杯になっている、SDGsにどのように取り組めばよいのかがイメージできないといった理由から、SDGsに取り組めない企業もあるようです。
SDGsに積極的に取り組む企業は69.5%が効果を実感
「SDGsに関する企業の意識調査(2024年)」によると、17の目標のいずれかに力を入れていると回答した企業の中で、取り組みによる効果を実感しているのは69.5%です。この69.5%にどのような効果を実感しているか調査した結果を見ていきましょう。
SDGsへの取り組みによる効果 |
効果を実感している企業の割合 |
企業イメージの向上 |
39.8% |
従業員のモチベーションの向上 |
32.9% |
経営方針等の明確化 |
17.8% |
採用活動におけるプラスの効果 |
16.7% |
売上の増加 |
11.6% |
取引の拡大(新規開拓含む) |
11.4% |
競合他社との差別化 |
10.7% |
新規事業立ち上げ、新商品・サービス開発 |
8.1% |
補助金や助成金の採択増加 |
6.6% |
金融機関からの融資の際の優遇や債券の発行支援 |
4.1% |
表彰等のノミネート |
2.3% |
国や行政の入札や企画提案時などの優遇 |
2.0% |
投資家や個人からの資金調達(SDGs・ESG投資) |
0.9% |
その他 |
2.3% |
効果を実感している企業の割合が高い「企業イメージの向上」「従業員のモチベーションの向上」について解説します。
参考:帝国データバンク|SDGsに関する企業の意識調査(2024年)
企業イメージの向上
環境問題や社会問題など、持続可能な開発目標に関する取り組みを行うことは、企業イメージの向上につながります。顧客・取引先・投資家などが企業に抱くイメージが向上すれば、売上アップや資金調達にプラスに働くでしょう。
SDGsが広まり、環境や社会に配慮した商品やサービスへの関心が高まっているからこそ、企業イメージの向上につながります。
従業員のモチベーションの向上
携わっている業務が環境問題や社会問題の改善につながる意義あるものだと従業員が理解することで、モチベーションの向上が期待できます。
従業員の仕事へのモチベーションが高くなれば、業務効率化や新たな商品・サービスの開発などが進みやすくなるでしょう。結果として売上や業績の向上につながります。
SDGsに関する企業の取り組みの具体例10選
SDGsについて企業がどのような取り組みを行っているのでしょうか?これからSDGsに取り組む企業に役立つよう、10社の事例を紹介します。
ユニクロの行うSDGsに関する取り組み
「服のチカラ」で世界をよい方向へ変えていく、というユニクロの理念とSDGsの考え方は共通しています。具体的な取り組みとして、自立支援・衣料支援・雇用支援といった難民支援をアジア・アフリカ・ヨーロッパ・アメリカなどで実施中です。
また環境問題に関しては「気候変動への対応」や「エネルギー効率の向上」などによって、環境負荷の低減を行っています。例えば従来に比べて仕上げ加工時の水の使用料を99%削減しているBLUE CYCLE JEANS (ブルーサイクルジーンズ)は、環境問題に配慮した商品です。
全商品のリサイクルやリユースを推進しているのも、ユニクロだからこそできる取り組みの1つ。その第一歩として、ユニクロのダウン商品をリサイクルする活動を行っています。
トヨタの行うSDGsに関する取り組み
トヨタでは「私たちは幸せを量産する」をキーワードに「地球環境への取り組み」「幸せに暮らせる社会への取り組み」「働く人への取り組み」の3つの取り組みを実施しています。
例えば「地球環境への取り組み」として、車を作るときの二酸化炭素排出量を減らすために、電気に頼らずものを動かす約2,500件の「からくり」が活躍中です。
また「働く人への取り組み」として、ダイバーシティやインクルージョンも推進しています。これにより、年齢や心身の状態を問わず全ての人が自由に動けることの実現を追求しています。
【社労士監修】DEIB推進が企業価値向上に果たす役割とは|新しい時代の戦略
日本理化学工業の行うSDGsに関する取り組み
ガラスやお風呂にも描けるチョーク「キットパス」を作る日本理化学工業は、半世紀以上にわたり「人にやさしく、地球にやさしい」を掲げて事業に取り組んできました。
1959年から知的障害者を従業員として受け入れている体制もその1つです。人に工程を合わせる工夫を重ねることで、一人ひとりが目標を持ち、高いモチベーションを持って仕事に取り組んでいます。
また環境に配慮した材料でチョークを作れるよう、ホタテ貝殻について研究し、微粉末にしてチョークに配合することに成功しました。キットパスの材料を米ぬかから抽出されるライスワックスに置き換えたのも、環境への配慮の一環です。
参考:日本理化学工業|SDGs
⼭翠舎の行うSDGsに関する取り組み
2006年から古木を活用した事業を開始し、古民家再生なども行っている⼭翠舎の活動は、SDGsの目標と合致しているのが特徴です。
古民家を解体することで出る古木の活用から事業が始まったそうですが、古木の保管には広いスペースが必要だそうです。
より無駄なく活用できるよう、古民家の解体ゼロを目指して再利用した上で、やむを得ず解体することになった古民家は古木・土・石などのパーツとして再利用しています。
併せて古民家再生や古木の利用に関係する全ての人や環境に、おもいやりの循環が生じるよう「全方よし」のシステムを取り入れているのも特徴です。
参考:⼭翠舎|山翠舎のSDGs
エネジンの行うSDGsに関する取り組み
ガス事業や太陽光電池・次世代エネルギー事業などを展開しているエネジンの合言葉は「SDGs方程式で人とエネルギーの未来を創造する」です。
ハード面である総合エネルギー事業に力を入れるのはもちろん、ソフト面にあたる人と地域とのつながりで事業展開を実施しています。
また持続可能なエネルギーとして自然エネルギーへの転換も目指しており、新規事業に取り組んでいる最中です。
地域での活動も活発で、小学生を対象としたエネルギーを考える授業の実施や、環境フェアへの参加なども行っています。
参考:エネジン|SDGs活動
諸岡の行うSDGsに関する取り組み
1958年に土木建設会社として始まった諸岡は、土木建設機械を自社開発するようになったことをきっかけに、全油圧式トレンチャーやブルドーザーなどを製造販売しています。
SDGsに関する取り組みの具体例としては、太陽光発電による再利用可能エネルギーの利用促進や、開発した木材破砕機による廃木材のリサイクル推進、労働時間の短縮や有給休暇の取得促進を含む働き方改革宣言などがあげられます。
経営理念の「人と自然環境の調和を目指し、豊かな社会づくりに貢献」に基づいた取り組みです。
ウォータースタンドの行うSDGsに関する取り組み
水道につないで使用するウォーターサーバーを中心に取り扱うウォータースタンドでは、よりよい地球環境を未来の世代へ残すことを目的に、SDGsに取り組んでいます。
具体的な取り組みとしてあげられるのはボトルフリープロジェクトです。手軽に手に入るペットボトルはプラスチック製で、マイクロプラスチックによる海洋汚染といったごみ問題につながっています。
マイボトルを持参してペットボトルを減らすことを目指して、イベントへの参加やウォータースタンドの設置などを実施中です。
TBMの行うSDGsに関する取り組み
TBMはプラスチックや紙の代わりになる新素材LIMEXを開発しました。石灰石を主原料とするLIMEXは、レジ袋・食器・文房具・建築資材など幅広い用途のある素材です。
石灰石は日本でも自給自足できるため、プラスチックや紙の代わりに使用することで、環境負荷の軽減と持続可能な生産を実現しています。自社工場で利用する電力を、実質100%再生可能エネルギーとしたこともSDGsにつながる取り組みです。
加えてサステナビリティ委員会を設置して、サステナビリティ経営を推進しているのも特徴といえます。
雪ヶ⾕化学⼯業の行うSDGsに関する取り組み
天然ゴム由来の製品を製造する企業として始まった雪ヶ⾕化学⼯業は、石油由来の合成ゴムを開発した企業です。近年では脱石油を目指す流れから、サステナブルスポンジシリーズの開発に成功しています。
サステナブルスポンジシリーズの原料となる天然ゴムの取引では、強制労働等に結びついていないか現地調査を実施しました。
また2030年に向けて、二酸化炭素の排出量ゼロ・再生可能原材料比50%・廃棄物の50%減・女性管理職割合50%・フェアトレード天然ゴム100%、といった目標を立てて達成率を報告しています。
参考:雪ヶ⾕化学⼯業|SDGs
大川印刷の行うSDGsに関する取り組み
価格競争が激化している印刷業界で、SDGsへの取り組みで他社との差別化に成功したのは大川印刷です。
同社では環境に配慮した「環境印刷」というサービスを提供しています。環境印刷の一環として提供している「CO2ゼロ印刷」は、屋上太陽光パネルによる自家発電と風力発電により実現しました。
また従来であれば廃棄されていたバナナ繊維から作られるバナナペーパーを選ぶことも可能です。フェアトレード認証を受けている印刷用紙という点でも、SDGsにつながります。
加えて使用しているインキは環境負荷の低いノンVOCインキがほとんどです。仕上がった印刷物の配送も、環境負荷を考慮して電気自動車やディーゼル車を使用する他、プラスチックコンテナによる納品で段ボールの使用量を減らしています。
企業イメージの向上やモチベーションの向上には福利厚生も有効
SDGsに取り組むことで期待できる、企業イメージの向上や従業員のモチベーションの向上は、福利厚生の充実度アップによっても実現できます。
福利厚生により働きやすい環境を整えている企業であれば、顧客・取引先・求職者などから評価されやすくなります。
加えて投資家からは、従業員を企業の成長に欠かせない投資対象と考える人的資本経営に取り組んでいる点が評価され、資金調達をスムーズに実施しやすくなるでしょう。
福利厚生の拡充により、このような効果を実現するには、どのような福利厚生を導入するとよいのでしょうか?福利厚生の選び方や、おすすめの福利厚生サービスを紹介します。
企業にプラスになる福利厚生の選び方
企業イメージの向上や従業員のモチベーションの向上により、企業にプラスに働く福利厚生を導入するには、自社の従業員や自社を志望する求職者が喜ぶ福利厚生を選びましょう。
ランキングを参考にするのもおすすめです。例えば「2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)」では、就活生が就職する企業にあったら嬉しいと考えている制度をチェック可能です。調査結果から分かる「就活生があったら嬉しいと回答した制度」を紹介します。
順位 |
制度 |
あったら嬉しいと回答した割合 |
1 |
休暇制度 |
58.2% |
2 |
食事手当や住宅手当などの諸手当 |
55.3% |
3 |
フレックスタイム制 |
54.7% |
4 |
通勤費や通信費などの各種補助 |
50.8% |
5 |
在宅勤務制度 |
46.6% |
6 |
キャリアアップ制度 |
40.6% |
7 |
寮・社宅 |
36.1% |
ランキングに入っている福利厚生を参考に、従業員にアンケートをとるのもよいでしょう。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)
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食の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめ
福利厚生サービスで企業イメージの向上や従業員のモチベーションの向上を目指すなら、エデンレッドジャパンの提供している食の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できる食の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、従業員の食事代をサポートすることで、実質的な手取り額アップにもつながります。
実際に導入することで「採用がスムーズに進んだ」「働きやすい環境が整いモチベーションアップにつながった」といった成果が出ている企業もあるサービスです。
関連記事:パート・アルバイト・契約社員 にも「第3の賃上げ」を!ラウンドテーブルを開催~“年収の壁”を抱える非正規雇用にも、福利厚生で実質手取りアップを実現~
企業の取り組みの具体例を参考にSDGsに取り組もう
SDGsに取り組む企業の割合は年々高まっています。ただし規模の小さな企業の中には「自社にどのような取り組みができるか分からない」という理由から、積極的な取り組みができていないケースもあるそうです。
これからSDGsに取り組むなら、実際にSDGsに取り組んでいる企業の具体例を参考にするとよいでしょう。紹介した企業の事例をチェックすると、自社で取り組めそうなことが見えてくるかもしれません。
またSDGsに、企業イメージの向上や従業員のモチベーションの向上を期待している場合には、福利厚生の充実度アップに取り組むのも有効です。例えば食の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入することで、企業イメージや従業員のモチベーションの向上を実現したケースもあります。