不動産業界で福利厚生サービスを充実させることは、計画的な人材確保につながります。具体的にはどのような福利厚生を導入するとよいのでしょうか?おすすめの福利厚生や、福利厚生サービスを見ていきましょう。実際に不動産業の企業が導入している福利厚生も紹介します。
不動産業界の人手不足の現状
厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年5月)の概況」によると、業界ごとの正社員等労働者の過不足感は以下の通りです。
以下に示す「正社員等労働者の過不足感」の数値は、労働者数が「不足」と回答した事業者の割合から、「過剰」と回答した事業者の割合を差し引いた値で、数字が大きいほど正社員等労働者の不足感が強いことを示します。
不動産業は他の産業と比べると、正社員等労働者の不足感は強くはないといえるでしょう。
産業 |
正社員等労働者の過不足感 |
調査産業計 |
45 |
建設業 |
60 |
製造業 |
43 |
情報通信業 |
53 |
運輸業、郵便業 |
55 |
卸売業、小売業 |
26 |
金融業、保険業 |
36 |
不動産・物品賃貸業 |
37 |
学術研究、専門・技術サービス業 |
57 |
宿泊業、飲食サービス業 |
49 |
生活関連サービス業、娯楽業 |
34 |
医療、福祉 |
52 |
サービス業(他に分類されないもの) |
46 |
「令和4年 雇用動向調査結果」でも、不動産業は入職率18.4%・離職率13.8%で、入職率の方が上回っています。入職超過率も4.6ポイントとなっており、2024年時点の人手不足はそれほど深刻な状況ではありません。
ただし国全体で少子高齢化が進み、働く人口は今後ますます減っていくことが予想されています。このような状況の中、不動産業界でも人材確保に向けた何らかの取り組みが必要です。
参考:
厚生労働省|労働経済動向調査(令和6年5月)の概況
厚生労働省|令和4年 雇用動向調査結果の概要|産業別の入職と離職
参考記事:人手不足倒産とは何か?人不足倒産の現状や原因・対策をチェック
不動産業にできる人材確保に向けた取り組み
社会全体として人手不足が進行している今、不動産業でも計画的な人材確保への取り組みが必要です。ここでは人材確保に有効な取り組みを解説します。
システムの導入による業務効率化
人材確保に取り組むときには、業務効率化をはかることも重要です。これまで人の手で行ってきた業務を、システムで実施できるようにすれば、その業務を担当していた人材に別の業務を任せられます。
例えば経理や労務などバックオフィスの業務をシステムで自動化する、内見予約システムで内見予約を自動化する、などの方法で業務効率化が可能です。
アウトソーシングの活用によるコア業務への人材の集中
業務の一部をアウトソーシングすることを検討してもよいでしょう。例えば物件の写真撮影・間取りの作成・物件情報の入力などをアウトソーシングできます。
これまで社内で行ってきた業務をアウトソーシングすることで空いたリソースを、コア業務である営業や商談に使えば、業績アップも目指せるでしょう。
ただしアウトソーシングにより、人材育成が進みにくくなる、コストが膨らみすぎてしまう、といった弊害も考えられます。バランスを考えて利用するとよい方法です。
給与アップによる待遇改善
人材確保を計画的に行うには、給与アップも重要なポイントです。同業他社と比べて給与を高く設定していれば、採用がスムーズに決まりやすくなります。今いる従業員がよりよい待遇を求めて転職することも減らせるでしょう。
福利厚生の充実による働きやすい環境の整備
働きやすい環境整備のために福利厚生を充実させるのも、計画的な人材確保につながる取り組みです。例えば柔軟性の高い働き方ができるよう、休暇制度や時短勤務制度を導入すれば、ライフステージが変化しても働き続けられる従業員が増えます。
福利厚生で働きやすい環境を整備するときには、制度を整えると同時に、制度を利用しやすい職場環境づくりにも取り組みましょう。
不動産業におすすめの福利厚生
計画的な人材確保には福利厚生を充実させることが役立ちます。具体的にどのような福利厚生を導入すればよいのでしょうか?不動産業の企業におすすめの福利厚生を紹介します。
借り上げ社宅・家賃補助
住まいに関する出費は生活する上で欠かせません。企業がサポートをすれば、従業員の負担が減り、実質的な手取り額を増やせます。
借り上げ社宅であれば、定められた要件に従い支給することで、従業員の税金や社会保険料の負担を増やさずに提供可能です。
現金で支給する家賃補助を行う方法もあります。家賃補助を支給する基準は企業ごとにさまざまです。例えば「自社管理物件に限定して月3万円の家賃補助を行う」といった支給の仕方もできます。
参考:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
持ち家支援制度
持ち家を購入する従業員を対象とした、持ち家支援制度を設けるのもよいでしょう。例えば自社で扱う物件を割引価格で購入できるようにしたり、持ち家を購入するときの頭金に利用できる資金の貸付制度を設けたりする方法があります。
従業員が自ら家を買う経験は、仕事にも役立つでしょう。
資格支援制度
不動産業に役立つ資格は以下の通り複数あります。
- 宅地建物取引士
- 賃貸経営不動産管理士
- マンション管理士
- 管理業務主任者
- 不動産鑑定士
- 土地家屋調査士
- ファイナンシャルプランナー
これらの資格取得を目指す従業員に対して、学習に必要なテキストの購入費用や講座費用、試験を受けるための費用などをサポートする福利厚生です。
社内に有資格者が増えることで、より質の高いサービスを提供できるようになるメリットもあります。
特別休暇制度
不動産業の企業は水曜日に定休日のケースが多く、土曜日や日曜日に休みにくいこともあります。
中には家族や友人と過ごす時間を取りにくく、子どもの学校行事に参加できない・旅行やレジャーの予定が立てにくいなど、プライベートの満足度が十分ではない人もいるでしょう。
特別休暇制度を設けて、土曜日や日曜日にも休みやすい環境を整備できれば、従業員はプライベートの充実度を高めやすくなります。
食事補助
食事補助は人気の福利厚生です。従業員の食事代をサポートすることで、従業員の実質的な手取り額アップにもつながります。
また食事代のサポートがあれば、従業員は野菜のおかずを一品増やすというように、健康に気遣ったメニューを選びやすくもなるでしょう。従業員の健康に経営の視点から積極的に取り組む、健康経営にもつながる福利厚生です。
不動産業におすすめの福利厚生サービス
これから福利厚生を導入するときには、一から自社で制度づくりをすると手間とコストがかかります。充実した福利厚生を手間を抑えつつ導入するには、福利厚生サービスを活用するとよいでしょう。
自社のみでは導入が難しい制度も、福利厚生サービスを利用すれば従業員へ提供しやすくなります。
選べる福利厚生「ライフサポート俱楽部」
2,000社以上の導入実績がある「ライフサポート倶楽部」は、1人につき月350円~導入できる福利厚生のパッケージサービスです。ホテルリソル・ペット&スパホテル・リソルゴルフなど全国の施設を優待価格で利用できるため、特別休暇制度とともに導入すれば、充実した休暇を過ごせるでしょう。
また介護や育児のサポートにも対応しています。自社独自の福利厚生を導入したいときには、基本サービスにプラスできる研修や社員旅行のプランを取り入れるのもおすすめです。
従業員が好みや必要に合わせて受けるサービスを選べることで、福利厚生に対する利便性が高まります。
参考:リソルライフサポート株式会社|リソルの福利厚生サービス ライフサポート倶楽部
資格取得につながる「LEC東京リーガルマインド 法人研修・eラーニング」
「LEC東京リーガルマインド 法人研修・eラーニング」では、従業員に必要な研修や講座を提供できます。選べる講座数は約400あり、講師派遣・オンライン・eラーニングなどさまざまな学習スタイルに対応可能です。
講座の中には不動産業に役立つ宅地建物取引士の試験対策も用意されています。企業のニーズに合わせたカリキュラムによる講座にも対応しているため、自社の従業員に合わせた適切なレベルの講座を提供可能です。
また修了すると試験で5問免除となる宅建登録前講習や、合格者向けの宅建登録実務講習などにも対応しています。
参考:LEC東京リーガルマインド|LEC東京リーガルマインド 法人研修・eラーニング
食の福利厚生サービス「チケットレストラン」
従業員の食事代をサポートする食の福利厚生「チケットレストラン」の導入を検討してもよいでしょう。日々の食事代をサポートすることで、従業員はバランスのよい食事をとりやすくなります。
これまでに「チケットレストラン」を導入した企業の中には、おにぎりやパンのみで昼食を済ませていた従業員が、健康に気遣い野菜のおかずを購入するようになったケースもあるそうです。
全国にある25万店舗以上の加盟店で利用できるため、オフィスに出社している従業員にはもちろん、テレワークの従業員にも、毎日異なる現場で業務を行う従業員にも支給できます。
不動産業では営業に出る従業員も多いため、出先で昼食を済ませたいという従業員も利用しやすい福利厚生です。
対象となる従業員にとって使い勝手がよいため、従業員満足度が93%あり、従業員に喜ばれる福利厚生といえます。
不動産業で導入する福利厚生の選び方
不動産業を営む企業が導入する福利厚生を選ぶときには、人気の福利厚生ランキングを参考にする、従業員の意見を取り入れるといった方法があります。それぞれの選び方について見ていきましょう。
ランキングを参考にする
導入する福利厚生に迷っているなら、まずはランキングを参考にするとよいでしょう。自社にない福利厚生を導入する際に、求職者から人気の福利厚生を検討することで、人材確保につながりやすくなることが期待できます。
例えば「2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)」では、就活生が就職する企業にあったら嬉しいと考えている制度をチェック可能です。調査結果から分かる「就活生があったら嬉しいと回答した制度」を紹介します。
順位 |
制度 |
あったら嬉しいと回答した割合 |
1 |
休暇制度 |
58.2% |
2 |
食事手当や住宅手当などの諸手当 |
55.3% |
3 |
フレックスタイム制 |
54.7% |
4 |
通勤費や通信費などの各種補助 |
50.8% |
5 |
在宅勤務制度 |
46.6% |
6 |
キャリアアップ制度 |
40.6% |
7 |
寮・社宅 |
36.1% |
このランキングからは、休暇制度・食事手当や住宅手当などの諸手当・フレックスタイム制・通勤費や通信費などの各種補助は、調査に協力した就活生の半数以上が「あったら嬉しい」と考えていると分かります。
これらの制度を導入すれば、若手人材のスムーズな採用につながりやすくなるかもしれません。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)
関連記事:福利厚生が良い会社ランキングを紹介!従業員が喜ぶ福利厚生もチェック
従業員の意見を取り入れる
自社の従業員に、導入するとよい福利厚生についてのアンケートを取るのもよいでしょう。今働いている従業員の意見を取り入れることで、自社の業務や環境に合う福利厚生を導入しやすくなります。
ランキング上位の福利厚生をもとにアンケートを作成するのもおすすめです。単にアンケートを実施するだけでなく、どのような制度で従業員にどのようなメリットがあるのか、説明会を実施した上でアンケートを取るとよいでしょう。
不動産業で福利厚生を導入するメリット
不動産業で福利厚生を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットを紹介します。
従業員満足度の向上
従業員満足度とは、企業の働きがい・働きやすさ・制度・職場環境などに対する、従業員の満足度を示す指標のことです。働きやすい環境や制度が整っている企業では、従業員満足度が高くなりやすい傾向があります。
不動産業で福利厚生を充実させることで、制度や職場環境が改善すれば、高い従業員満足度の実現につながります。
関連記事:【社労士監修】従業員満足度(ES)とは何か?向上により得られるメリットを解説
スムーズな人材採用
福利厚生が充実している企業は、働きやすい環境が整っている職場と考えられます。就職先や転職先を探すときに、福利厚生の充実度をチェックする人は少なくありません。
「2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)」によると、就活生が大手企業の選考に参加した決め手として51.5%が「福利厚生が手厚い」ことをあげています。
福利厚生を重視して企業選びをする傾向は、転職活動も同様です。Re就活が行った20代アンケートでは、就業経験3年以上の34.7%が、新卒で就職活動をしていたときよりも「福利厚生・手当」を重視するようになったと回答しています。
Create転職の「転職活動で重視するポイントは?求人で重視する項目」でも、求人で重視するポイントとして「福利厚生が充実しているか」をあげる人は38.5%、「有給休暇を取得しやすいか」をあげる人は46.2%です。
福利厚生を充実させることで、応募者が集まりやすくなり、人材採用がスムーズに進むことが期待できます。
参考:
マイナビキャリアリサーチLab|2025年卒 大学生 活動実態調査 (4月)
PR TIMES|約7割が「転職活動で重視するポイント」は、就職活動時と異なると回答。就職活動時と比較して重視するようになった点、1位は「仕事内容」。2位は「今後のキャリアビジョン」/20代アンケート
Create転職|転職活動で重視するポイントは?求人で重視する項目
売上や業績の向上
福利厚生によって従業員が働きやすい環境を整備できれば、売上や業績の向上につながりやすくなります。
例えば食事補助を提供してバランスのよい食事をとりやすくしたり、家賃補助を提供して心地よい住環境を整えたりすれば、従業員は心身を休められるため仕事でパフォーマンスを発揮しやすくなるでしょう。
効率的に業務に取り組める従業員が増えるため、売上アップや業績アップの実現可能性が高まります。
不動産業のイメージアップ
不動産業に対して、「厳しいノルマがある」「休日を取りにくい」などのマイナスイメージを持っている人もいます。福利厚生を充実させれば、不動産業界にあるこのようなイメージを払拭できるでしょう。
イメージに反して働きやすい環境が整っていると分かれば、マイナスイメージがプラスイメージに転じることが期待できます。
不動産業の企業が導入している福利厚生をチェック
不動産業の企業が実際にどのような福利厚生を導入しているかも見てみましょう。これから福利厚生の充実アップを行いたいと考えている企業の参考になります。
三菱地所
三菱地所の福利厚生は「ワークライフバランスへの取り組み」「活力のある職場づくりに向けて」「独身寮・社宅」の3種類に分類されています。それぞれに設けている制度は以下の通りです。
福利厚生の種類 |
制度の詳細 |
ワークライフバランスへの取り組み |
・フレックスタイム制度 |
活力のある職場づくりに向けて |
・従業員のアイデアから新事業の創出する新規事業提案制度 |
独身寮・社宅 |
・若手従業員のための独身寮 |
従業員が長く働きやすいための環境を整えていることが分かります。
IPPO
オフィス移転仲介・居抜きプラットフォームの運営・原状回復退去サポートといった、企業向けの事業を展開しているIPPOでは、不動産会社っぽくない福利厚生として、以下にあげる8つの制度を設けています。
福利厚生制度 |
制度の詳細 |
取得日自由の夏期休暇 |
・7~9月の間に自由に取得できる3日間の休暇 |
生理休暇 |
・周期的に仕事をするのが難しい場合に有給休暇とは別に取得可能 |
その他の休み |
・カレンダー通りのGW休暇 |
産休・育休 |
・男女問わず取得可能で、取締役も取得済み |
住宅手当 |
・規定範囲内の住宅に住むことで月3万円を支給 |
服装・髪型自由 |
・第三者を不快にしなければ自由 |
食事補助 |
・オフィス内の冷蔵庫にペットボトル飲料・缶コーヒー・炭酸水・豆乳・トマトジュースなどを常備 |
結婚休暇 |
・入籍1年以内に5日間連続で取得できる休暇 |
この他に、資格手当・資格取得支援・研修制度なども整えています。
参考:
株式会社IPPO(イッポ)|採用情報
株式会社IPPO|不動産会社っぽくない会社の福利厚生って?
駅前不動産グループ
駅前不動産グループは、住宅の建築・リフォーム・分譲地開発などに加えて、賃貸不動産の仲介や管理、資産活用なども行っている企業です。従業員がワークライフバランスを重視しながら働けるよう、以下のような福利厚生を整えています。
福利厚生の種類 |
制度の詳細 |
各種休暇 |
・結婚、配偶者の出産などの慶弔休暇や各種特別休暇 |
手当・補助 |
・公共交通機関は月10万円、マイカー通勤は最大月3万4,700円まで支給の通勤手当 |
育児支援 |
・産前産後休業 |
各種制度 |
・チャレンジしたい職種や事業会社へ立候補できる公募制度 |
社内イベント |
・グループ全従業員参加のスポーツ大会 |
仕事もプライベートも充実させながら、成長を目指せる制度が充実している企業です。
不動産業の福利厚生は今後の人材確保に向けて戦略的に
不動産業を営む企業が福利厚生を充実させると、従業員満足度の向上やスムーズな人材採用などによる人材確保が可能です。不動産業界全体では今はまだ人手不足感はそれほど強くありませんが、少子高齢化が進んでいる中、計画的な人材確保が欠かせません。
これから福利厚生を充実させていくなら、家賃補助や資格支援制度・特別休暇制度・食事補助などを検討するとよいでしょう。
食事補助を導入するなら、エデンレッドジャパンが提供する食の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。全国にある25万店舗以上の加盟店で利用できる利便性の高さにより、従業員満足度は93%を記録しており、導入企業は3,000社を超えています。
導入する福利厚生を検討中なら「チケットレストラン」をチェックしてみませんか。