運送業界の人手不足が深刻化する中、福利厚生の充実は、人材確保・定着の決め手のひとつです。本記事では、運送業界が直面する課題を解説し、効果的な福利厚生サービスをランキング形式で解説します。併せて、中小企業を中心に3,000社以上に導入されている、注目の食の福利厚生サービス「チケットレストラン」 についても紹介します。運送業界でも導入することで、従業員満足度の向上や離職率の低下に貢献できる可能性がありますので、ぜひ自社の福利厚生を見直す際の参考にしてください。
運送業界が直面する人手不足の現状と原因
運送業界の人手不足は、他業種と比較しても深刻な状況にあります。厚生労働省の「労働経済動向調査(令和6年5月)の概況」によると、運輸業・郵便業の人手不足感は産業全体の平均を大きく上回っています。まずは、運送業界が慢性的な人手不足に陥っているその現状と原因から見ていきましょう。
ドライバーの高齢化と若手人材の確保難
運送業界では、ドライバーの高齢化が急速に進行しています。国土交通省の「トラック運送業の現況について」によると、大型トラックドライバーの平均年齢は47.5歳・中小型トラックドライバーは45.4歳となっており、全職業平均の42.2歳と比べて高齢化が進んでいるのが実情です。
運送業界で高齢化が進行している理由としては、運送業界のイメージや労働条件の課題から、若手人材を獲得しにくいことが挙げられます。
この状況に変化が見られない場合、ベテランドライバーの退職に伴い、さらなる人手不足に陥ることは避けられません。こうした背景から、若手人材を惹きつける魅力的な職場環境づくりが急務となっているのです。
EC市場拡大による需要増加
近年、オンラインショッピングやネットオークションを中心としたEC(電子商取引)市場の拡大に伴い、宅配便の需要が急増しています。
国土交通省の「令和5年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」によると、2023年度(令和5年度)のトラックによる宅配便取扱個数は、約49億1400万個に達しました。10年前の2013年度(平成25年度)が約35億9500万個だったことを踏まえると、運送業界への需要が急速に高まっていることが分かります。
一方、この需要の増加に対して、ドライバーの数が追いついていないのが現状です。人手不足の中で増加する需要に応えるため、既存のドライバーの負担が増大し、さらなる人手不足を招くという悪循環に陥っています。需要と供給のバランスを取るためにも、人材の確保と定着が急務となっているのです。
参考:国土交通省|令和5年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法
長時間労働と低賃金の実態
運送業界の人手不足の大きな要因のひとつが、長時間労働と低賃金の課題です。厚生労働省の「毎月勤労統計調査 令和6年6月分結果確報」によると、運輸業・郵便業の月間総実労働時間は169.2時間で、全産業平均の140.1時間を大きく上回っています。
一方で、「令和5年賃金構造基本統計調査の概況」によれば、運輸業・郵便業の平均月給は29万4,300円と、全産業平均の31万8,300円を下回っています。
このように、一般平均と比べて長時間労働にもかかわらず賃金が低い現状が、新たな人材の確保を難しくし、同時に既存従業員の離職を招いているのです。
長時間労働をはじめとする労働環境の改善と適正な賃金設定は、運送業界の人手不足解消に向けた重要な課題です。各企業は、これらの課題に対して具体的な対策を講じる必要があります。
参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 令和6年6月分結果確報
参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況
2024年問題が運送業界に与える影響
2024年4月、働き方改革関連法の施行に伴い、運送業界にも時間外労働の上限規制が適用されました。この上限規制の適用により、生じる諸問題のことを「2024年問題」といいます。ここでは、2024年問題が運送業界に与える主な影響について解説します。
参考:厚生労働省|働き方改革推進支援センター | 働き方改革特設サイト
時間外労働の上限規制とは
時間外労働の上限規制は、働き方改革の一環として導入された制度です。大企業が2019年4月・中小企業は2020年4月から適用されています。
この上限規制の適用にあたり、特別に猶予期間が設けられたのが、トラックドライバーをはじめとする自動車運転業務・建設事業・医師等の一部職種です。
これらの職種は、業務上の特性によって長時間の時間外労働が常態化していたため、一律に上限を適用することは困難とされました。そこで、これらの業種に限り、2019年4月から2024年4月まで、5年間の猶予期間が設けられることになったのです。
一般的な業種では、時間外労働の上限が、原則として年間360時間・最大で720時間と定められています。一方、自動車運転業務については、特例として最大960時間まで認められています。
この事実は、運送業がドライバーの時間外労働ありきで営まれてきた産業であること、また、時間外労働の削減がいかに困難であるかを示すものです。
2024年問題による人手不足の加速
2024年問題により、運送業界の人手不足は今後さらに加速していくことが予想されています。
まず、労働時間の制限により、これまで1人のドライバーが担当していた業務を複数人で分担しなければならなくなりました。必要なドライバー数が増えれば、人材不足はますます深刻化します。
また、時間外労働時間は、ドライバーの収入減に直結します。運送業の給与水準がもともと低いことを踏まえると、人材の確保はより困難になるでしょう。
これらの変化は、新たな人材の確保をより困難にするだけでなく、既存のドライバーの離職を招くリスクを高めるものです。
運送業界に携わる各企業は、2024年問題を見据えた長期的な人材戦略を立てる必要があります。労働環境の改善・待遇の改善・効率的な業務システムの導入など、多角的なアプローチが求められているのです。
関連記事:「2024年問題」とは?必要な対策と物流業界に及ぼす影響を解説
運送業界における人材確保・定着の重要性
運送業界の人手不足は、企業の経営に深刻な影響を及ぼす可能性があるものです。以下、運送業界において、人材の確保と定着が重視される理由について解説します。
人手不足による倒産リスクの増大
人手不足は、運送業界の企業に深刻な経営リスクをもたらしています。帝国データバンクの「全国企業倒産集計2024年上半期報」によると、2024年上半期の人手不足による倒産件数は、過去最多ペースの182件(前年同期110件)に達しました。
出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|全国企業倒産集計 2024 年上半期報 2024年6月報(2024年7月5日)
産業別件数を見ると、運輸・通信業は、建設業の53件に次ぐ44件です。前年同期が20件だったことから、人手不足が運送業界に及ぼしている影響が深刻化していることが分かります。
適切な対策を講じなければ、今後さらに倒産リスクが高まる可能性が否定できません。運送業界の企業は、この現状を深刻に受け止め、早急な対策を講じる必要があります。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|全国企業倒産集計 2024 年上半期報 2024年6月報(2024年7月5日)
人材確保・定着が経営安定化の鍵
人材の確保と定着は、運送業界の企業にとって、安定的な経営を維持するための重要な鍵です。
十分な人材を確保することにより、増加する需要に対応し、安定した売上の維持や、企業としての成長を実現できます。また、従業員が定着し、それぞれに経験を積むことで、業務の効率化や品質の向上にもつながります。
人材の定着率を高めれば、採用や教育にかかるコストを削減し、長期的な視点での人材育成も可能です。これは、企業の競争力強化にも直結する重要なポイントです。
つまり、運送業界の企業は、単に人員を増やすだけでなく、従業員が「長く働きたい」と思える魅力的な職場環境を整備することが求められます。そのためには、賃上げはもちろんのこと、福利厚生の充実など、総合的な待遇改善が不可欠です。
運送業界で効果的な人材確保・定着策
運送業界における人材確保と定着のためには、多角的なアプローチが必要です。ここでは、「賃上げ」「労働環境の改善」「福利厚生の充実」の3点をピックアップして、それぞれのメリットとデメリットを解説します。
賃上げによるアプローチ
給与の増額は、人材確保と定着に直接的な効果をもたらす方法です。特に運送業界は、全産業平均と比べて賃金水準が低いため、給与の増額は非常に魅力的な対策となります。
●メリット
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●デメリット
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新たな人材を獲得する上で、給与増は効果的な対策です。しかし、必要なコストが大きいのに加え、一度アップした賃金をもとの水準に戻すことは困難なため、企業の財務状況を考慮しながら慎重に決断する必要があります。
労働環境改善の取り組み
労働環境の改善は、従業員の満足度向上と長期的な定着に効果的です。特に、運送業界の大きな課題である長時間労働や不規則な勤務形態を改善することで、より働きやすい職場を実現できます。
以下、具体的な取り組みの例を紹介します。
- 労働時間の短縮(シフト制の導入、休憩時間の確保)
- 休暇制度の充実(有給休暇取得の促進、リフレッシュ休暇の導入)
- 職場環境の整備(休憩施設の充実、車両の快適性向上)
- 健康管理支援(定期的な健康診断、メンタルヘルスケア)
これらの取り組みは、従業員の身体的・精神的負担を軽減するため、長期的な人材の定着に効果的です。また、「働きやすい職場」という評判は、新たな人材の獲得にもつながります。
ただし、労働環境の改善には、一定の時間とコストが必要です。企業は、短期的な負担と長期的な利益を見極めながら、段階的に改善を進めていく必要があります。
福利厚生充実の効果
福利厚生の充実は、給与増や労働環境改善と並び、人材確保・定着に大きな効果をもたらす施策です。特に運送業界では、業務の特性に合わせた福利厚生が求められています。
以下、運送業界の企業が福利厚生を充実させることで得られる効果と、具体的な福利厚生の例を紹介します。
●福利厚生の充実により期待できる効果
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●運送業界に適した福利厚生の例
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充実した福利厚生を通じて従業員の生活をサポートすることにより、従業員の長期的な定着が期待できます。また、賃上げと比べて柔軟な設計が可能なため、企業の状況に応じて段階的に導入できるのもメリットです。
ただし、福利厚生の効果を最大化するためには、従業員のニーズを正確に把握し、適切なサービスを選択しなければなりません。また、導入後も定期的に効果を検証し、必要に応じて見直しを行うことが求められます。
運送業界における福利厚生の重要性
福利厚生は、単なるサービスではなく、人材確保と定着のための重要な戦略ツールです。特に、不規則な勤務形態や長距離移動が多い運送業界では、福利厚生の充実度が従業員の満足度向上と企業の競争力強化に直結します。
運送業界特有の労働環境と福利厚生
運送業界の労働環境は、一般的に他の業種とはやや異なります。長時間の運転・不規則な勤務時間など、身体的・精神的な負担が大きい仕事だからです。このような環境下で働く従業員をサポートするためには、運送業特有のニーズに対応した福利厚生が不可欠です。
福利厚生による従業員満足度向上
充実した福利厚生は、従業員に「会社から大切にされている」という実感を与えます。この実感は、従業員の企業に対する愛着や貢献意欲の向上・満足度の向上につながるものです。
また、従業員満足度の高い企業は、従業員のモチベーションが高く、パフォーマンスや生産性も向上しやすい傾向にあります。さらに、従業員一人ひとりが生き生きと働くことで職場の雰囲気も良くなり、チームワークの改善やサービス品質の向上も期待できるでしょう。
企業イメージ向上と採用活動への好影響
充実した福利厚生は、企業の社会的なイメージ向上にも大きく貢献します。特に運送業界のように人手不足が深刻な業界では、企業イメージは採用活動の成否を大きく左右する重要な要素です。
以下、企業イメージが向上することによって企業が得られるメリットを紹介します。
- 求職者への訴求力向上:充実した福利厚生は、求職者にとって大きな魅力です
- 口コミ効果:従業員の満足度が高まることで、社外へのポジティブな評判が広がります
- 業界内での差別化:同業他社との差別化により、企業としての競争力が高まります
- 長期的な人材確保:優秀な人材の獲得と定着につながります
「従業員を大切にする企業」というイメージは、顧客からの信頼獲得にもつながります。結果として、ビジネス全体へのポジティブな影響が期待できます。
運送業向け福利厚生サービスおすすめランキング
運送業界特有の環境や仕組みにフィットする効果的な福利厚生サービスには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、従業員の満足度向上と人材確保・定着に大きく貢献することが期待される福利厚生をランキング形式で紹介します。
1位:食事補助
食事補助は、不規則な勤務時間の影響で食生活が乱れがちな従業員を、健康面・金銭面で支える効果的な福利厚生です。健康的な食事の摂取は、長期的な健康維持にもつながるため、生産性の向上や欠勤率の低下も期待できます。
●食事補助の主な導入メリット
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2位:健康サポート
運送業界では、長時間の座位姿勢や不規則な生活リズムにより、健康リスクが高まる傾向にあります。「スポーツジムの利用補助」「オンライン健康相談」「ストレスチェック」などの健康サポートは、従業員の身体的・精神的健康を守るだけでなく、企業にとっても人材の長期的な活用と医療費削減というメリットをもたらします。
●健康サポートの主な導入メリット
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3位:宿泊・休憩施設利用サポート
長距離運転を行うドライバーにとって、安全で快適な休憩・仮眠施設の確保は非常に重要です。トラックステーションでの宿泊費用補助をはじめとする宿泊・休憩施設利用サポートは、この課題の解決に効果的な福利厚生です。ドライバーの安全と健康を守るのはもちろんのこと、質の高い休息を取ることで、サービス品質の向上にもつながります。
●宿泊・休憩施設利用サポートの主な導入メリット
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4位:教育・資格取得サポート
運送業界では、「大型免許」や「けん引免許」「フォークリフト」「運行管理」「危険物取扱者」など、さまざまな資格や技能が必要です。教育・資格取得サポートは、従業員のスキルアップを促進し、長期的なキャリア形成を支援します。また、企業にとっても高いスキルを持つ人材確保につながり、サービス品質の向上が期待できます。
●教育・資格取得サポートの主な導入メリット
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5位:ワークライフバランス促進サポート
運送業界特有の不規則な勤務形態や長時間労働に対応し、ドライバーとその家族の生活をサポートする福利厚生です。
「子どもの学校行事参加のための優先的な休暇取得制度」「長期休暇取得時の旅行補助や家族向けレジャー施設の割引」「配偶者や子どもの誕生日における特別休暇制度」等を通じ、運送業界特有の勤務形態によって生じがちな家族との時間の確保の難しさや、家族の不安を軽減することを目的としています。ドライバーの仕事と家庭生活の両立を図ることで、人材の定着と従業員満足度の向上が期待できます。
●ワークライフバランス促進サポートの主な導入メリット
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食事補助の福利厚生「チケットレストラン」の魅力
運送業界の福利厚生において注目される食事補助ですが、中でも近年特に人気を集めているサービスが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。以下、その特徴と魅力・運送業での活用方法や人手不足解消への貢献度について詳しく解説します。
全国25万店舗以上で利用可能な利便性
「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店で利用できる食の福利厚生サービスです。「チケットレストラン」を導入した企業の従業員は、ファミレスやコンビニ、三大牛丼チェーン店など、幅広いジャンルの店舗の食事を半額で利用できます。
勤務時間内であれば、「チケットレストラン」を利用する時間や場所に制限はありません。食事はもちろんのこと、休憩時のドリンクやおやつなど、そのときの気分によって臨機応変に利用できるのも魅力です。
ドライバーと内勤スタッフとで利便性に差がなく、平等に利用できるのは「チケットレストラン」の大きなメリットです。
従業員の食事代負担軽減効果
「チケットレストラン」は、従業員の食事代負担を大幅に軽減する効果があります。特に、物価の高騰が続く近年、この経済的支援は非常に重要です。
また、食事という、生活に欠かせない行為を金銭的にサポートすることにより、従業員を大切にする企業姿勢を従業員へ強くアピールできます。福利厚生の利用率の低さに悩む企業にとって、これは大きな魅力です。
食の福利厚生サービスは、従業員の生活の質を向上させるだけでなく、仕事へのモチベーション向上にも大きく寄与するものといえます。
非課税枠活用によるメリット
「チケットレストラン」は、一定の条件下で利用することで、法人税法上の非課税枠を活用できます。これにより、法人税の軽減が可能です。
また、同じく一定の条件下で利用することにより、従業員の所得税の対象から除外されます。つまり、同じ金額を賃金として支給する場合よりも、従業員の手取りを増やすことができます。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
この非課税枠の活用により、企業は従業員の待遇を改善しながら、同時に税務上のメリットも得られます。厳しい経営環境下でも、持続可能な形で福利厚生を提供が可能です。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
運送業の福利厚生充実で人材確保・定着を実現しよう
運送業界の人手不足は、ドライバーの高齢化・需要増加・労働環境の厳しさなど複合的な要因によって引き起こされています。2024年4月には、時間外労働の上限規制も適用されました。これにより、人手不足の一層の加速化が懸念されています。
福利厚生の充実は、そんな運送業界の現状を打開するための効果的な手段のひとつです。特に、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」をはじめとする食の福利厚生サービスは、従業員へのアピール度も高く、人材の獲得・定着に寄与するでしょう。
人材の確保・定着は一朝一夕に実現できるものではありませんが、福利厚生の導入をはじめとする労働環境の継続的な改善により、変化を起こすことは十分に可能です。
運送業界の発展と、そこで働く人々のより良い未来のため、福利厚生の充実を通じた人材確保・定着の取り組みに挑戦してみてはいかがでしょうか。