ウィズコロナからアフターコロナの時代へ向けて、福利厚生の見直しを進める企業が増えています。アフターコロナ時代に求められる福利厚生とはどのようなものなのか、具体例と検討する際に意識したいポイントを整理していきましょう。
福利厚生の種類と内容
福利厚生は、「法定福利厚生(法定福利)」と「法定外福利厚生(法定外福利)」の2つに分かれます。福利厚生を見直すにあたっての基本知識として、それぞれの意味と具体的な内容を紹介します。
法定福利厚生(法定福利)
「法定福利厚生(法定福利)」とは、法令や法律によって企業に義務づけられた福利厚生です。従業員へ法定福利を提供することは企業の義務であり、提供する、しないを選ぶことはできません。
以下、法定福利の具体的な内容を紹介します。
・健康保険
・厚生年金保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険
・子ども・子育て拠出金
法定福利の場合、提供しない企業は罰則の対象です。また、それによって従業員が何らかの損失を被った場合には、損害賠償請求の対象にもなります。
なお、一般社団法日本経済団体連合会が2020年11月17日に公開した「2019 年度福利厚生費調査結果の概要」によると、2019年度に企業が負担した福利厚生費は、従業員1人あたり平均10万8,517 円/月で、そのうち8万4,392円が法定福利費となっています。
法定外福利厚生(法定外福利)
法定福利厚生が企業の義務であるのに対し、企業が独自の判断で従業員へ提供する福利厚生を、「法定外福利厚生(法定福利)」といいます。
法定外福利は、提供するかしないかはもちろんのこと、どういった内容にするかも企業次第です。自由度が高いぶん、企業の個性が表れやすい福利厚生といえます。
以下、実際に提供されている法定外福利の一部を紹介します。
・住宅手当
・通勤手当
・家族手当
・慰安旅行
・懇親会費
・慶弔見舞金
・特別休暇
・財形貯蓄制度
・レジャー・宿泊施設利用費の補助
・人間ドック
・保育手当
・資格取得費用補助
法定外福利によって提供されたものは、所得扱いにはならないため税金や保険料の対象外です。そのため、法定外福利として認められるには、「全従業員が対象となり得る」「福利厚生として妥当な金額や内容である」「福利厚生の趣旨に沿ったものである」といった条件をすべてクリアしなければなりません。
なお、前述の「2019年度福利厚生費調査結果の概要」によると、2019年度の従業員1人あたりの法定外福利費は平均2万4,125円/月となっています。
コロナ禍が福利厚生に与えた影響
新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、企業の福利厚生にどのような影響を与えたのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
見直しが進む法定外福利
新型コロナウイルス感染症のまん延にともない、厚生労働省は「3密の回避」や「身体的距離の確保」などの具体例を含む「新しい生活様式の実践例」を公表しました。
新しい生活様式に準ずるため、多くの企業はテレワーク*を推進し、在宅勤務がごく一般的なものとなったのです。*テレワーク=ICT(Information and Communication Technology=情報通信技術)による時間や場所にとらわれない働き方
このワークスタイルの大幅な変化により、多くの企業が見直しを求められたのが法定外福利厚生です。
例えば、リモートワークを進める企業では「通勤手当」が不要なものとなりつつあります。また、人との密な接触が敬遠される中で、「懇親会」や「レジャー」にまつわる福利厚生も、その必要性を問われるようになりました。
一方、在宅で仕事をする上で必要な費用を、新たな福利厚生として提供する企業が増えています。
コロナ禍は、企業にとって「本当に求められている福利厚生とは何か」を整理する1つのきっかけといえるでしょう。
アフターコロナ時代の法定外福利とは
ウィズコロナ時代からアフターコロナ時代へと移行する中で、特に注目されている福利厚生に、「在宅勤務手当」「心身のケア」「食事補助」があります。
「在宅勤務手当」は、テレワークに伴う設備費や光熱費などを企業が補助するものです。
株式会社パーソル総合研究所が2020年9月に行った調査によると、在宅勤務手当の新設が確定している企業の割合は12.5%でした。「検討中」と合わせると、23.9%の企業が在宅勤務手当に前向きとの結果が出ています。
「心身のケア」にまつわる福利厚生は、テレワークによって人とのコミュニケーションが減少したり、運動不足になったりといった従業員の現状を踏まえて検討される福利厚生です。
具体的な内容としては、オンラインカウンセリングや、オンラインでのヨガレッスンなどがあります。
「食事補助」は、在宅時間が増えることにより、食事の選択肢が狭まってしまう従業員へのサポートとして用意される福利厚生です。一般的に、栄養バランスのよい食事を自宅へ配送したり、食事代金の一部を補助したりといった形で提供されています。
福利厚生を充実させることで企業が得られるメリット
法定外福利の提供は、企業の義務ではありません。にもかかわらず、多くの企業がさまざまな法定外福利を用意しているのはどうしてなのでしょうか。福利厚生を充実させることで企業が得られる主なメリットを紹介します。
従業員エンゲージメントの向上
従業員が企業に対し抱く信頼感や愛着心、貢献意欲を測る指標を「従業員エンゲージメント」といいます。
従業員エンゲージメントが高い企業は、従業員一人ひとりが自身の業務に対するモチベーションが高く、業績が上がりやすい傾向にあります。
それぞれが前向きな気持ちで業務に取り組めることから、職場全体の雰囲気も良く、離職率も低水準となるでしょう。また、こうした効果が企業の提供する商品やサービスの質の向上にもつながり、顧客満足度アップにも貢献します。
福利厚生を充実させ、従業員に多様な価値を提供することは、従業員エンゲージメントの向上に役立ちます。引いては上記のような多くのうれしいメリットを企業にもたらしてくれるでしょう。
優秀な人材の確保
充実した福利厚生は、企業の成長にとって欠かせない優秀な人材の確保にも役立ちます。
「リクルート 就職みらい研究所」が公開している『就職プロセス調査(2021年卒)「2021年3月度(卒業時点) 内定状況」』によると、「就職先を確定する際に決め手となった項目」として、34.8%の学生が「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」と答えています。
これは、「自らの成長が期待できる」の49.8%、「会社や業界の安定性がある」の34.9%に次ぐ3番目に高い数値です。
特にキャリアアップのための転職が一般化し、かつ少子化が進む現状において、優秀な人材の確保には他社との差別化が必要不可欠です。福利厚生の充実は、その大きな一助となるでしょう。
出典:就職プロセス調査(2021年卒)「2021年3月度(卒業時点) 内定状況」(リクルート 就職みらい研究所調べ)
企業価値の向上
インターネットが発達した現代社会では、誰もが情報の受信、発信を自由に行えます。あらゆるモノの価値を決めるのは、一部のメディアではなく一般市民一人ひとりといってよいでしょう。
これは企業価値についても同様で、企業の魅力を打ち出すためにはイメージ戦略が欠かせません。社会へプラスイメージを与えられる要素が多ければ多いほど、その企業の企業価値は向上します。
充実した福利厚生は、「従業員への貢献度が高い企業」として、プラスのブランドイメージに貢献するものです。目には見えないながら、企業のファンを増やし、同時に潜在的な顧客を増やす大きな効果が期待できるでしょう。
福利厚生を検討する際のポイント
企業が新たな福利厚生を検討するにあたっては、いくつかの重要なポイントがあります。従業員から求められ、利用される福利厚生を提供するためのヒントとして確認していきましょう。
本当に求められている福利厚生を検討する
新たな福利厚生を検討するにあたり、まず意識したいのが、「従業員が本当に求めているものを提供する」ことです。
福利厚生は、利用されて初めて意味を持つものです。どんなに豊富な福利厚生を用意したとしても、それが従業員にとって「ぜひ利用してみたい」「提供されて助かる」と感じられるものでなかった場合、残念ながら意味がありません。
一例として、新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、不要不急の外出がはばかられるようなタイミングで「旅行手当」を福利厚生として打ち出したケースを考えてみましょう。
この場合、従業員に喜ばれるどころか、不興を買ってしまう可能性が高いといえます。場合によっては「世の中の流れを読めない企業」として、ネガティブな企業イメージを生む原因ともなりかねません。
福利厚生を新設する際は、従業員のニーズや提供のタイミングを見誤らないことが大切です。
すべての従業員が平等に利用できるものにする
「すべての従業員に利用機会があり、不公平感を与えない」ことも、新たな福利厚生を検討する際に意識したい大切なポイントです。
特定の趣味や嗜好に特化しているなど、一部の従業員にしかニーズがない福利厚生は、利用できない従業員に不公平感を抱かせてしまいます。
また、法定外福利厚生の条件の1つである「全従業員が対象となり得る」に該当しないため、福利厚生とは認められず、課税対象となってしまうリスクもあるでしょう。
福利厚生を新設する際は、全従業員が対象となり、平等に利用機会があるかどうかをしっかりと確認することが大切です。
事前に周知徹底する
新たな福利厚生の導入にあたり、ついおざなりになってしまいがちなのが、事前の周知徹底です。
社内で福利厚生の追加をはじめとする何らかの規定変更があった場合、簡単な案内や、就業規則の追記をもって周知とする企業は少なくありません。しかし、多くの場合これでは不十分です。
社内でのメールや掲示物を通じた案内は、読んでも記憶に残らない人もいれば、そもそも目を通さない人もいます。ましてや、就業規則を日常的にチェックしている従業員はごくまれです。
多くの従業員に利用される福利厚生にするためにも、周知徹底は丁寧に行いましょう。事前に行っておくことで、提供時からのスムーズな運用が期待できます。
アフターコロナに向けて人気の福利厚生とは?
アフターコロナに向けて多くの企業が検討、導入している福利厚生には「在宅勤務手当」「心身のケア」「食事補助」などさまざまなものがありますが、中でも注目度を高めているのが「食事補助」です。
食事補助の福利厚生として、近年特に人気を高めているエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」について、サービスの詳細や特徴を紹介します。
食事補助サービスで人気の「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、専用の食事カードを通じて提供される福利厚生食事補助サービスです。
配布された食事カードは、企業が従業員負担額も含めた金額を毎月チャージします。このカードで食事の支払いをすることにより、食事にかかる費用の半額が補助される仕組みです。
食事補助という福利厚生は、従来でも一部企業において「社員食堂」という形で提供されてきました。
従来の社員食堂が、あくまでも社内で決められたメニューを提供するサービスであるのに対し、「チケットレストラン」は、全国7万店を超える提携店舗で利用できるサービスです。ファミレス、コンビニ、カフェなどが自由に選べるため、年代や性別を問わずすべての従業員が利用可能です。
また、従来の社員食堂とは違い、ウィズコロナ、アフターコロナの時代にあって利用できる点も、「チケットレストラン」の大きな特徴です。「今日はコンビニでランチを買おう」「息抜きがてらコンビニでおやつを買おう」など、仕事をする場所や環境を問いません。
「チケットレストラン」は、アフターコロナに向けて新設する福利厚生として、まさにぴったりのサービスといえそうです。
アフターコロナ時代に求められる福利厚生の検討を
新型コロナウイルス感染症をきっかけに、人々の働き方は大きく変わりました。テレワークが一般的なものとなり、業種の差こそあれ、オフィスへの出社が必ずしも必要ではないことが明らかになったのです。
在宅勤務をするビジネスパーソンが増える中で、新しい生活様式に対応した福利厚生を検討する企業が増えつつあります。こうした新たな時代の流れを汲み、必要な福利厚生を提供することは、「優秀な人材の確保」をはじめ、企業にとって大きなメリットをもたらすでしょう。
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」など、アフターコロナ時代に求められる福利厚生を検討し、企業価値のより一層の向上を目指してみてはいかがでしょうか。