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デジタル給与のメリット・デメリット総まとめ│導入状況の実態も解説

デジタル給与のメリット・デメリット総まとめ│導入状況の実態も解説

2024.11.19

2023年4月に解禁されたデジタル給与は、2024年8月に初の指定事業者が決定し、大手企業での導入も始まっています。しかし帝国データバンクが2024年10月におこなった最新調査では、88.8%の企業が「導入予定なし」と回答しました。本記事では、デジタル給与のメリット・デメリットを詳しく解説するとともに、企業の導入判断に役立つ最新動向を紹介します。

デジタル給与制度の概要をおさらい

2023年4月の労働基準法施行規則改正により導入が可能となったデジタル給与制度は、従来の現金支払いや銀行振込に加わる新たな選択肢として注目を集めています。まずは、デジタル給与制度の概要についてわかりやすく解説します。

デジタル給与とは

給与振り込み

デジタル給与とは、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者のサービスを利用し、デジタルマネー(電子マネー)で給与を支払う制度です。

従来、給与の支払いは現金支給もしくは銀行振込が一般的でしたが、2023年4月の法改正によって資金移動業者の口座への支払いが認められました。これにより、従業員は「現金引き出しの手間がなく、直接支払いに利用できるデジタルマネーで給与を受け取る」という新たな選択肢が増えたことになります。

ただし、新制度では、現金化できないポイントや仮想通貨での支払いは認められていません。企業が新制度を導入するにあたっては、事前に従業員の同意が必要で、強要した場合には罰則があります。

なお、デジタル給与を利用する場合、従業員は従来の支払方法との併用も選択できます。

参考:厚生労働省|資金移動業者の口座への賃金支払の概要とこれまでの経緯
参考:厚生労働省|賃金のデジタル払いが可能になります!

導入済みの企業も

2024年8月、大手キャッシュレス決済サービス「PayPay」が資金移動業者として初めて厚生労働大臣の指定を受けました。これを受け、同年9月にはソフトバンクグループが国内初となるデジタル給与の支給を開始し、希望する従業員を対象にPayPayアカウントでの給与支払いを実施しています。

現時点で指定を受けている資金移動業者はPayPayのみですが、ほかにも複数の資金移動業者が申請・審査中である旨が公表されていることから、今後選択肢が広がることが期待されています。

参考:厚生労働省|資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について
参考:ソフトバンク|ソフトバンクグループ10社が給与デジタル払いに対応して「PayPay給与受取」を利用開始

資金移動業者の指定要件

資金移動業者が厚生労働大臣からデジタル給与の指定を受けるには、以下に挙げる7つの厳格な基準を満たす必要があります。

  1. 口座残高の上限を100万円以下に設定し、超過時は速やかに措置を講じる
  2. 破産等の際に労働者への債務を速やかに保証する仕組みがある
  3. 不正取引など労働者の責めによらない損失を補償する仕組みがある
  4. 最後に口座残高に変動があった日から最低10年は口座残高を有効にする
  5. ATMなどで1円単位の受取が可能で、月1回以上の手数料無料で受取ができる
  6. 賃金支払業務の実施状況と財務状況を厚生労働大臣に報告できる体制がある
  7. 業務遂行に必要な技術力と社会的信用がある

これらの要件は、労働者保護の観点から設定されているため、ひとつでも基準を満たさなくなれば指定は取り消されます。資金移動業者には定期的な監査も実施され、給与の安全な保護が徹底されています。

参考:厚生労働省|資金移動業者の口座への賃金支払の概要とこれまでの経緯

デジタル給与のメリット

デジタル給与の導入には、多くのメリットがある反面、デメリットも存在します。ここでは、主なメリット・デメリットについて、企業側・従業員側それぞれの視点から紹介します。

企業側のメリット

デジタル給与を導入することで、企業が得られるメリットはどのようなものなのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

振込手数料の削減

資金移動業者への送金手数料は、一般的に銀行振込手数料と比較して安価に設定されています。特に従業員数の多い企業では、毎月の給与支払いにかかる振込手数料の総額が大きいため、コスト削減効果が顕著になります。

事務手続きの効率化

デジタル給与の導入により、給与支払いに関する事務作業の効率化が期待できます。特に、日払いや前払いのニーズへの対応がスムーズになり、従来は煩雑だった処理の簡素化が可能です。

また、デジタルデータで管理をすることで、帳票作成や保管の手間が軽減されるほか、人為的ミスのリスクも減少します。

人材採用における訴求効果

デジタル給与の導入は、企業のデジタル化推進を対外的にアピールする効果があります。特にデジタルネイティブ世代の採用において、先進的な取り組みをおこなう企業としてのブランディングは効果的です。

また、従業員の利便性を重視する企業姿勢は、働きやすい職場環境の実現につながることから、人材の採用や定着にプラスの効果をもたらします。

従業員側のメリット

デジタル給与の導入が従業員にもたらすメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

キャッシュレス決済との親和性

給与をデジタルマネーで直接受け取ると、給与を銀行口座で受け取ったあとにキャッシュレス決済用の口座にチャージするという従来の手間がなくなります。

また、給与日にすぐ利用できる点も大きなメリットです。資金移動業者の口座では、そのままオンラインショッピングや店舗での支払いに利用可能で、必要に応じてATMでの現金引き出しもできます。

受取方法の柔軟な選択

給与の受取方法は、従業員自身のライフスタイルに合わせて選択できます。給与全額をデジタル給与で受け取ることも、一部のみをデジタル給与とし残りを従来の銀行振込にすることも可能です。

また、毎月の給与と賞与で受取方法を変えるなど、柔軟な運用ができます。この選択の自由度の高さは、個々の従業員の経済的なニーズに対応できる点で大きなメリットとなっています。

参考:厚生労働省|資金移動業者口座への賃金支払に関する同意書

利便性の向上

ATMでの引き出しは1円単位で可能で、少なくとも月1回は手数料無料で利用できます。また、24時間いつでも残高確認や利用履歴の確認が可能です。

スマートフォンで簡単に口座管理ができる即時性と管理のしやすさは、従来の銀行口座にはない特徴です。

デジタル給与のデメリット

デジタル給与の導入には、企業・従業員双方にとって検討すべき課題があります。ここでは、デジタル給与の導入にともなうデメリットを企業側・従業員側の両面から紹介します。

企業側のデメリット

以下、デジタル給与を導入することで企業側に生じる主なデメリットを三つ紹介します。

業務負担の増加

デジタル給与の導入により、従来の銀行振込と並行した給与支払い業務が発生します。従業員ごとに支払方法が異なる可能性があり、管理の手間が増えることが予想されます。

また、労使協定の締結や就業規則の改定、従業員への説明と同意取得など、導入時の事務負担も大きな課題です。特に人的リソースの限られた中小企業では、この業務負担の増加は大きなデメリットといえます。

システム対応コスト

既存の給与システムの改修や新システムの導入が必要となる場合があり、そのコストが企業にとって大きな負担となります。また、システム改修後の運用テストや従業員教育なども必要で、導入までに一定の時間とコストがかかることが想定されます。

制度理解・運用の負担

新しい制度への対応には、人事担当者の十分な理解と準備が必要です。制度の詳細や運用ルール・セキュリティ対策など、把握すべき事項が多岐にわたります。

また、従業員からの問い合わせ対応や、トラブル発生時の対処方法の整備なども必要なため、運用面での負担増加は避けられません。

従業員側のデメリット

デジタル給与の導入により、従業員が被るデメリットとはどのようなものなのでしょうか。主なポイントを三つ紹介します。

セキュリティリスク

スマートフォンの紛失や不正利用への不安は、従業員にとって大きな懸念材料です。資金移動業者には厳格なセキュリティ対策が義務付けられており、不正利用時の補償制度も整備されていますが、銀行口座と比べて歴史が浅く、安全性への不安を感じる従業員も少なくありません。

また、スマートフォンの故障時やアプリの不具合時の対応についても、事前の確認が必要です。

100万円の上限

資金移動業者の口座残高には、100万円という上限が設定されています。高額の給与や賞与を受け取る際は、超過分が事前に指定した銀行口座へ自動的に送金されるため、給与の一括管理ができません。

この仕組みに対応するため、デジタル給与を利用する場合でも別途銀行口座の保有が必須です。

指定事業者の制限

デジタル給与の受取には、厚生労働大臣から指定を受けた資金移動業者のサービスを利用しなければなりません。

2024年8月時点では指定を受けている事業者は1社のみで、従業員が普段利用しているキャッシュレス決済サービスとは異なる可能性があります。その場合、新たなアカウントの開設や利用方法の習得が必要となり、かえって不便に感じる可能性があります。

企業の導入実態は?

2023年4月にデジタル給与が解禁されてから、すでに1年半が経過しました(2024年11月現在)。その間、各企業は新制度へどのように対応しているのでしょうか。帝国データバンクの調査をもとに解説します。

参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|企業の「賃金のデジタル払い」対応状況アンケート|(2024年10月16日)

デジタル給与を導入予定の企業の割合

企業における賃金のデジタル払いの対応状況

出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|企業の「賃金のデジタル払い」対応状況アンケート|(2024年10月16日)

帝国データバンクが2024年10月に実施した調査では、88.8%の企業が賃金のデジタル払い(デジタル給与)を「導入予定なし」と回答し、「導入に前向き」は3.9%に留まっています。

また、「分からない」(5.6%)「言葉も知らない」(1.6%)という回答もあり、制度の導入はもとより、認知度自体がいまだ低いことがわかります。

導入に前向きな理由

デジタル払いの導入に前向きな理由

出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|企業の「賃金のデジタル払い」対応状況アンケート|(2024年10月16日)

デジタル給与の導入に前向きな企業が挙げる理由として、もっとも多いものは「振込手数料の削減」(53.8%)です。次いで「従業員の満足度向上」(42.3%)・「日払いや前払いのしやすさなど事務手続きの削減」(32.7%)が続きます。

一方で「小さな会社での導入は可能なのかどうかや、実際の事務作業の流れ、必要な手続き・手数料などを知りたい」など、具体的な導入方法について情報を求める声も聞かれています。

導入予定がない理由

デジタル払いの導入予定がない理由

出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|企業の「賃金のデジタル払い」対応状況アンケート|(2024年10月16日)

デジタル給与の導入を見送る理由として、もっとも多かったのは「業務負担の増加」(61.8%)でした。次いで「制度やサービスに対する理解が十分でない」(45.0%)・「セキュリティ上のリスクを懸念」(43.3%)が続きます。

「従業員のデジタル払いに関するリテラシーについて懸念している」「地方ではデジタル払い可能な店舗が限られる」など、実務面での課題を指摘する声が上がっています。

デジタル時代に求められる福利厚生のあり方

デジタル給与の解禁が象徴するように、近年、あらゆる分野において急速にデジタル化が進んでいます。

福利厚生も例に漏れず、従業員が利用しやすく満足度の高い福利厚生として、デジタル管理できるサービスの導入を検討する企業が少なくありません。

そんな中、注目を集めているサービスに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。

チケットレストラン」は、一定の条件を満たすことにより全国25万店以上もの加盟店での食事が半額になる食事補助の福利厚生で、専用のICカードを利用します。利用履歴や残高は、アプリで確認することができます。

運用に必要なのは、月に一回、オンライン上で一括チャージするのみで、人的リソースを割く必要もありません。企業の負担を最小限に抑えつつ、従業員の満足度向上を実現できる点が特徴です。

物理カードの存在により、セキュリティの確保や運用負担の軽減といったデジタル給与導入における課題を解決しながら、従業員の利便性向上を実現するハイブリッド型の福利厚生として高く評価されており、すでに3,000社を超える企業に導入されています。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

デジタル給与と福利厚生の新時代に向けて

2023年4月に解禁されたデジタル給与は、キャッシュレス社会に対応した新しい選択肢として注目を集めています。しかし、2024年10月時点で88.8%の企業が導入を見送っている現状を見るに、制度への理解促進や運用面での課題解決が十分だとはいえません。

導入を検討する企業は、メリット・デメリットを十分に考慮し、自社に適した方法を選択することが重要です。

デジタル給与はもちろんのこと「チケットレストラン」のようなこれからの時代にマッチする施策を積極的に検討することで、従業員から愛され、顧客から選ばれる魅力的な企業としてのブランディングを実現できるでしょう。

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