中小企業の賃金動向は、日本経済全体に大きな影響を与える重要な指標です。近年、人手不足や物価上昇を背景に、中小企業の賃金にも変化の兆しが見られています。本記事では、日本銀行の「さくらレポート」をベースに、中小企業の賃金動向や賃上げの取り組みについて詳しく解説します。
中小企業の賃金が注目される理由
2021年6月時点中小企業庁の集計によると、中小企業は日本の企業の99.7%を占めています。その賃金水準は、労働市場全体の動向を左右し、個人消費や経済成長に直結するため重要です。近年、人手不足や物価上昇を背景に、中小企業の賃金にも変化の兆しが見られています。
出典:中小企業庁|中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)の集計結果を公表します
最新統計から見る中小企業の賃金推移
中小企業の賃金推移を正確に把握するためには、複数の統計データを総合的に分析する必要があります。ここでは、主要な統計調査の結果を基に、最新の賃金動向を見ていきましょう。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」による平均月額賃金
厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」は、日本の賃金動向を知る上で最も信頼性の高いデータの一つです。最新の2023年調査結果によると、中小企業(従業員10-99人)の平均月額賃金は以下のように推移しています。
小企業 | 中企業(参考) | 大企業(参考) | |
2021年 | 27万9,900円 | 29万9,800円 | 33万9,700円 |
2022年 | 28万4,500円 | 30万3,000円 | 34万8,300円 |
2023年 | 29万4,000円 | 31万1,400円 | 34万6,000円 |
※常用労働者1,000人以上を「大企業」、100~999人を「中企業」、10~99人を「小企業」に区分
出典:厚生労働省|賃金構造統計調査 企業規模別2021年 2022年 2023年
2022年から2023年にかけて、約3.3%という高い上昇が見られ、2021年から2024年にかけては約5%の上昇率です。近年の人手不足や物価上昇を背景とした賃上げ圧力が反映されていると考えられます。
日本労働組合総連合会(連合)の春季労使交渉結果
連合が発表している春季労使交渉(春闘)の結果も、中小企業の賃金動向を知る上で重要な指標です。2024年の交渉結果では、中小組合(組合員300人未満)の賃上げ率が注目を集めました。
- 2022年:1.96%
- 2023年:3.23%
- 2024年:4.45%
とくに2024年の賃上げ率4.45%は、前年を大きく上回る結果となっており、中小企業の賃上げが加速していることを示しています。
出典:連合|第7回(最終)回答集計(2024年7月1日集計・7月3日公表)、第7回(最終)回答集計(2023年7月3日集計・7月5日公表)、第7回(最終)回答集計(2022年7月1日集計・7月5日公表)
日本商工会議所の「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果による業種別賃上げ状況
日本商工会議所・東京商工会議所は、2024年4月〜5月にかけて、全国47都道府県の1,979企業に対して賃金額の変化を調査しています。2024年度の業種別の賃上げについては、以下のとおり差があることがわかりました。
- 賃上げ実施(予定を含む)と回答した割合は、卸売業(81.5%)、製造業(80.2%)が8割を超え比率が高い
- 最も低い医療・介護・看護業(52.5%)でも5割を超えるなど、全業種で半数以上の企業が賃上げ
出典:日本商工会議所・東京商工会議所|中小企業の賃金改定に関する調査(2024年6月5日)
また、同じく日本商工会議所・東京商工会議所の調査では、賃上げ額についても業種により差があることが次のように示されています。
- その他サービス業・小売業での賃上げ額が4%台と高い
- 運輸業、医療・介護・看護業は2%台に止まった
出典:日本商工会議所・東京商工会議所|中小企業の賃金改定に関する調査(2024年6月5日)
ここでも医療・介護・看護業では、2%代と厳しい賃上げ状況です。2024春闘で連合が掲げた目標の5%以上とは大きく乖離しており、業種により満足のいく賃上げが実現していないと言えるでしょう。
出典:日本商工会議所・東京商工会議所|中小企業の賃金改定に関する調査(2024年6月5日)
さくらレポートに見る2024年度中小企業の賃金動向
日本銀行の地域経済報告(さくらレポート)は、日銀の調査担当者が企業から直接聞き取った内容を元に、年4回作成されるレポートです。景況感、需要動向、先行きに対する見方など、企業のダイレクトな声が反映されています。ここからは、2024年7月12日の「さくらレポート(別冊シリーズ)、地域の中堅・中小企業における賃金動向」(以後、さくらレポート)をベースとして、中小企業の賃金の現状を確認しましょう。
1.中小企業全体の賃金は上昇傾向
さくらレポートでは、全国的に賃上げの傾向が強まっていることを指摘しており、以下のような特徴として報告されています。
- 賃上げの広がり:地域・業種・企業規模を問わず、賃上げの動きが広がっていること
- 昨年を上回る賃上げ:多くの企業が「昨年を上回る」または「昨年並み」の賃上げを実施していること
- 背景要因:物価上昇、人材獲得競争、業績回復、生産性向上などが賃上げの背景となっていること
事例としては以下があります。
【物価上昇を受けた従業員の生活への配慮】
・従業員の生活を守るという判断から賃上げを実施(建設/中小/松江)
・物価上昇率の以上の賃上げとして2年連続、しかも2024年3%よりも上回る形で実施(業務用機械/中小/静岡)
【競合先や大企業等との人材獲得競争への対応】
・人材確保のため、周辺企業の賃上げに追せざるを得ない(食料品/中小/青森)
・若手・中堅層にベアを実施、地域内の同業他社の給与水準を意識(小売/中小/広島)
【業績の回復・好調を受けた従業員還元の強化】
・好業績で得た利益を還元するため、今年度は5%以上の賃上げを実施(金属製品/中小/秋田)
・業績好調見通しにより6%のベアで還元(小売/中小/福島)
【効率化や生産性向上の取り組みの進捗】
・賃上げ原資は、積極的な投資を実施し、生産工程の自動化や歩留まり率の向上を進めたことによるコスト削減で確保(非鉄金属/中小/松本)
・これまでバック事務のデジタル化などを進めてきた結果、収益力が向上したためベア実施(小売/中小/福岡)
事例より、中小企業の賃金は全体的に上昇傾向であることがわかります。しかし、業種や地域によって差があることも事実です。次は、この点についてより詳しく見ていきましょう。
2.業界別・地域別の中小企業の賃金には格差あり
中小企業の平均賃金は、業種や地域によって大きく異なります。さくらレポートでは、具体的な平均賃金の数字は示されていませんが、以下のような傾向が報告されています。
- 地域差:都市部ほど賃上げ率が高い傾向
- 業種差:製造業と非製造業で賃上げの動向に違いが見られる
- 企業規模:中小企業と大企業の間で賃金格差が存在している
平均賃金を把握するためには、業界団体や政府統計などを参照することが有効です。前述したとおり、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2023年の中小企業(従業員10-99人)の平均月額賃金は約30万円です。
ただし、これは全産業の平均値であり、実際には業種や地域によって大きな差があると考えられます。日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃金改定に関する調査」でも、業種により賃上げの動向も違うと示されました。
製造業では、高度な技術や専門知識を要する業種ほど平均賃金が高い傾向にあります。一方、サービス業や小売業では、労働集約型の業種が多いため、相対的に平均賃金が低くなる傾向のようです。
地域別に見ると、東京や大阪などの大都市圏では平均賃金が高く、地方では低くなる傾向があります。これは、生活費の差や産業構造の違いが反映されていると言えるでしょう。
3.中小企業の賃金アップを支える補助金制度が賃上げを後押し
中小企業の賃上げを支援するため、政府はさまざまな補助金制度を設けています。さくらレポートでは、以下のような制度が中小企業の賃上げを後押ししていると指摘されています。
- 賃上げ促進税制:一定以上の賃上げを実施した企業に対する税制優遇措置
- 公共工事の入札時加点評価:賃上げ実施企業への加点
- 最低賃金の引き上げ:間接的に中小企業の賃上げを促進
賃上げ促進税制では、中小企業が従業員の給与を一定率以上引き上げた場合、法人税額の税額控除や所得拡大促進税制の適用を受けられます。公共工事の入札では、賃上げ実施企業に対して総合評価方式での加点が行われるため、受注機会の増加につながる可能性があり、後ほど紹介する事例でも活用されています。
最低賃金の引き上げは、直接的に低賃金労働者の賃金底上げにつながるだけではありません。賃金体系全体の見直しを促す効果もあります。これらの制度を上手く活用することで、中小企業は自社の競争力を高めながら、従業員の待遇改善を図れます。
【最低賃金引き上げ、賃上げ促進税制、入札時加点評価などの影響】
・昨秋に最低賃金が引き上げられ、今後も更なる引き上げ見込みから最低賃金の引き上げへ対応(飲食/中小/長崎)
・賃上げ促進税制を活用できる賃上げ率にて賃上げ5%程度を実施(不動産/中小/札幌)
・公共工事で賃上げ実施状況で加点されることを意識して相応の賃上げを実施(建設/中堅/横浜)
・政府系金融機関の賃上げ貸付利率特例制度の活用を意識した賃上げ幅での賃上げを実施(対事業所/サービス/甲府)
関連記事:中小企業向け賃上げ促進税制とは?要件や大企業向けとの違いを解説!
4.賃上げ手法の多様化が進展
中小企業の賃金アップは、単純な基本給の引き上げだけではありません。さくらレポートでは、以下のような多様な賃上げ手法や賃上げ以外の対応が増えていることが紹介されています。
- メリハリのある賃上げ:若年層や専門人材など特定層への重点的な配分
- 労働環境の整備:週休3日制の導入や残業時間の削減
- 福利厚生の充実:食事補助の充実や健康支援プログラムの導入
- スキルアップ支援:資格取得支援や社内研修の強化
- 一時金での還元:ベースアップではなく賞与などでの還元
【賃上げ率・幅にメリハリを付ける事例】
・定年退職した給与水準の高い従業員の収益余力を新卒採用強化のため若年層を厚めに賃上げ(情報通信/中小/高知)
・資格給制度を導入し、技術者(専門資格を持つ従業員)の給与を引き上げ(小売/中小/大分)
【賃上げ以外の取り組みもセットで行う事例】
・週休3日制の導入、残業時間の削減、リスキリング支援を昨年並のベアと同時に実施(はん用機会/中小/神戸)
・職場環境重視傾向のある理美容業界の求職者を意識し、営業時間の短縮、福利厚生の充実を実施中(対個人/サービス/福島)
・AI開発などに集中できる環境を整備し、専門的な技術獲得機会を充実させられることで必要人員を確保(情報通信/中小/本店)
上記のような賃上げ手法の多様化は、賃上げに対する企業努力の現れと言えるでしょう。
5.「防衛的賃上げ」や「総人件費管理の強化」の選択肢も
多くの企業が賃上げを実施する中、業績改善や十分な原資確保が難しい状況下でも、人材確保のために「防衛的」な賃上げを選択する企業が増えています。日本商工会議所・東京商工会議所「中小企業の賃金改定に関する調査」集計結果(2024年6月5日)によると、2024年度に賃上げ実施(予定を含む)企業74.3%のうち、59.1%が業績の「改善がみられないが賃上げを実施(予定)」と回答しています。つまり、中小企業の賃上げの約6割は「防衛的賃上げ」です。
防衛的賃上げに踏み切る傾向は、激化する人材獲得競争と従業員の定着率向上を目指す企業戦略の表れです。
単純な賃上げだけでなく、総人件費の管理を強化する動きも見られます。具体的には、以下のような施策による人事給与制度の見直しです。
- 給与カーブのフラット化
- 年齢給の見直し
- 手当の簡素化
これらの施策は、一人当たりの平均賃金を引き上げつつ、企業全体の人件費増加を抑制することを目的としています。つまり、従業員の満足度を維持しながら、経営の安定性も確保しようとする、バランスを意識したアプローチです。「防衛的賃上げ」と「総人件費管理の強化」は、現在の経済環境下で企業が採用可能な選択肢となっています。
【防衛的賃上げの事例】
・人材係留の観点から、防衛的賃上げを昨年並みの2%のベアで実施(鉄鋼/中小/青森)
・昨年5%のベアを実施した結果、価格転嫁が進まず苦しい状況であるが、同業他社の賃上げ状況に合わせる形で昨年と同水準のベアを実施(鉄鋼/中小/高松)
【賃上げに伴う総人件費の上昇を抑制する取り組みの事例】
・昨年度の賃上げが人件費を圧迫、今年は一時金の支給に止めるが、競合企業で初任給引き上げがみられ、若年層のみ賃上げを実施した。原資は人事体系を見直して捻出(不動産/中小/熊本)
・店舗運営の効率化で、若手従業員やパート・アルバイトの比率を高める工夫で総人件費の増加率をベア率と比べて抑制(小売/中堅/本店)
出典:日本商工会議所・東京商工会議所|中小企業の賃金改定に関する調査 集計結果(2024年6月5日)
参考記事:防衛的賃上げの実態と中小企業の課題|人材確保のための厳しい選択
6.賃上げ見送り、圧縮の動きもあり
多くの企業の方向性とは異なり、賃上げに対して異なる対応を取る企業も存在しています。収益不振や賃上げ原資の確保が困難な状況下で、やむを得ず賃上げを見送ったり、賃上げ幅を抑制したりするケースです。業績の悪化、原材料費の高騰、競争激化による利益率の低下などの理由で、賃上げを諦めざるを得ないと考えられます。
また、長期的な視点から固定費の増加を避けるため、ベースアップではなく一時金などによる還元を選択する企業も見られます。しかし、賃上げの見送り、圧縮は地域間や業種間で賃金格差を生むことになりかねません。継続的な賃上げを見送った企業においては、賃上げ力を回復するための対応策が必要になるでしょう。
【収益や資金繰りの厳しさから賃上げが困難な事例】
・業績が厳しく賃上げは難しい(繊維/中小/松江)
・コロナ禍での業績悪化・債務増加の影響大で賃上げは実施できない(対個人/サービス/岡山)
賃金が「上がる」「上がらない」の鍵を握るは価格転嫁
多くの企業で賃上げの動きが広がっていることの背景には、価格転嫁の成否が大きく関わっています。賃金と物価の相互連関が企業の収益や経済循環に与える影響は無視できません。さくらレポートでは「賃金と物価の相互連関が定着していくことが重要」と指摘されています。ここからは、企業の価格設定行動の変化と、それが賃上げに与える影響について、企業の実例を交えながら確認しましょう。
原材料コスト転嫁の進展が賃上げを後押し
さくらレポートでは、多くの企業が、原材料コストの上昇分を価格に転嫁できたことで業績が回復し、賃上げの原資を確保できたと報告しています。この動きは、賃上げの実現に大きく貢献しています。
【価格転嫁等により賃上げ原資を確保した事例】
・取引先企業に価格転嫁が認められ、原資を確保でき、今年は昨年の倍近いベアに加え、例年並みの賞与を支給(電気機械/中小/松江)
・需要堅調で価格転嫁を進められ、平均5%程度と前年以上の賃上げを実施(小売/中小/福岡)
サービス業における価格転嫁の広がり
サービス業では、従来「賃上げコストの価格転嫁は難しい」という声が多かったものの、最近では価格転嫁を実施・検討する動きが広がっているようです。とくに、企業間取引では、業界によるばらつきはあるが、安定的な取引維持を優先して値上げを受け入れる傾向が見られるようになりました。消費者向けサービスでも、単純な値上げだけでなく、サービスの高付加価値化や価格設定の工夫など、事業運営の見直しが進んでいます。
【サービス業種等における賃上げと価格転嫁の事例】
・料理人という専門人材獲得に向けた賃上げ原資は値上げで確保(飲食/中小/本店)
・運転手確保のために運賃を値上げ(運輸/中小/仙台)
【企業間サービス取引における値上げの事例】
・契約更改時の値上げにより人件費転嫁が徐々に進んでいる(対事業所サービス/中小/仙台)
製造業における人件費転嫁の課題
製造業では依然として、「人件費の増加は自社の生産性向上で吸収する」という考え方が根強く、人件費上昇分の価格転嫁は困難な状況が続いています。しかし、最近では政府の働きかけや、人材確保の重要性への理解が深まり、徐々に転嫁しやすい環境に向かいつつあるという声も聞かれるようになりました。
【人件費の価格転嫁は困難とする製造業の事例】
・取引慣行として人件費の価格転嫁は難しく、値上げ交渉の経験も乏しい(輸送用機械/中小/本店)
【人件費の価格転嫁の定着等を期待する製造業の事例】
・大手メーカーの価格交渉スタンスが軟化し、価格転嫁が実現(輸送用機械/中堅/名古屋)
賃金上昇と価格転嫁の関係は、企業の収益や経済全体の循環に大きな影響を与えます。さくらレポートでは、今後、各業界でどのように価格転嫁が進展していくか、そしてそれが賃金にどのような影響を与えるか、注目していく必要があると指摘されました。企業は生産性向上と価格転嫁のバランスを取りながら、持続可能な賃上げの実現に向けて取り組んでいくことが求められています。
継続的な賃上げの実現に向けた企業の取り組み事例
多くの中小企業が賃上げが必要であることへの理解が深まっています。2023年や2024年の高い水準の賃上げを一過性のものにしないことが重要と認識されつつあるようです。持続可能な賃金上昇を実現するためのさまざまな取り組みも開始されています。
賃金を見据えた価格設定を検討
多くの企業が、将来の賃上げを見据えた価格戦略の見直しを始めています。具体的には以下のような取り組みです。
- 人件費上昇分の価格転嫁を継続的に行う方針の策定
- 来年以降の賃上げを見越した値上げの検討
- 中長期的な経営計画への継続的な値上げの組み込み
これらの取り組みは、とくに人手不足が深刻な業界で顕著です。企業は、安定的な賃上げ原資の確保と、顧客理解の両立を目指しています。
【今後の人件費上昇分の価格転嫁に関する企業の声】
・人件費の上昇継続を前提に値上げを検討中(対個人/サービス中堅/本店)
・ドライバーの安定確保のため、先行き10年にわたる値上げを検討(運輸/中堅/本店)
設備投資やデジタル化による生産性向上
労働生産性の向上は、持続的な賃上げを実現する上で重要な要素です。多くの企業が以下のような取り組みを行っています。
- 製造・検査工程の自動化
- AIの活用による業務効率化
- デジタル技術を活用した業務プロセスの改善
一方で、生産性向上の取り組みには課題もあります。専門人材やノウハウの不足、財務面の制約、さらには人手不足を背景とした最近の建設工事や機器納入の遅延などが、生産性向上の障害となっているケースがあるためです。
【生産性の向上を意識した設備投資等の事例】
・工場内に自動化装置を導入し、人員を増やさずに収益増(食料品/中小/高松)
・生成AIで面談記録を自動作成し業務を効率化(対事業所サービス/中小/仙台)
【設備投資等の実施における制約の事例】
・コロナ禍前と比べて建設コストは約2倍、設備投資は難しい(小売/中堅/札幌)
・IT人材が乏しくECサイト開発が難航(小売/中堅/仙台)
抜本的な経営変革
継続的賃上げ実現のため、以下のような、より踏み込んだ経営変革に取り組む企業も増えています。
- 成長分野への進出や不採算事業からの撤退など、事業ポートフォリオの見直し
- 大手企業、スタートアップ、大学などとの連携強化
- M&Aによる人材や設備の確保
これらの取り組みは、自社単独では限界がある課題に対処するための戦略的な選択肢です。また、金融機関などによるサポートを求める声も聞かれるなど、企業の壁を超えた経営変革に取り組む企業が増えています。
【事業ポートフォリオの見直し事例】
・高単価ブランドの新設(飲食/中堅/本店)
・EVなど成長領域の研究開発に注力(金属製品/中堅/本店)
【連携強化の事例】
・大手企業と協業で医療機器の研究開発を進行(繊維/中小/金沢)
・全国各地の中小規模の食品スーパーなどにECプラットフォームを提供(情報通信/中堅/本店)
【M&Aによる経営資源の確保事例】
・事業内容が異なる零細企業をM&Aで譲り受け、設備投資に注力し、余剰した人材を人手不足感の強い自社の労働力として活用(金属製品/中小/本店)があります。
出典:日本銀行|地域経済報告(さくらレポート)地域の中堅・中小企業における賃金動向(2024年7月12日)
賃上げとセットで実施が好評「福利厚生の充実」
賃上げ方法の多様化が進む中、とくに注目したいのは、福利厚生の充実です。「賃上げ」に加えて、「福利厚生の充実」に取り組む企業が増えていることはさくらレポートでも報告されました。賃上げと福利厚生導入の相乗効果は、従業員満足度のさらなる向上につながるでしょう。
多様な福利厚生がある中、食事補助の導入は、従業員の生活支援と健康管理を両立させられる有効な取り組みとなります。エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の場合、単純に食事を補助するだけではなく、「実質手取りがアップし賃上げにもなる」というハイブリッドなサービスを提供できるのです。
「チケットレストラン」とは
「チケットレストラン」は、企業が従業員の食事代を補助するサービスであり、全国25万店舗以上の加盟店での食事で利用できます。コンビニやファミレス、3大牛丼チェーン、さらに Uber Eats での利用も可能です。使用方法は簡単で、専用のICカード(企業負担分と従業員負担分がチャージ済み)でのタッチ決済、または Uber Eats でのバウチャー購入で支払いをします。
従業員の実質収入アップを実現
従業員は実質的に食事代が半額になるため、日々の生活に直結する形での待遇改善を実感できるのがメリットです。企業が負担する食事補助代は、非課税となり、所得税がかからない点は「チケットレストラン」の大きな魅力です。日常で利用できる食の福利厚生は、「企業に大事にされている」という実感を得やすく、帰属意識の向上効果も期待できます。「チケットレストラン」が導入されたおかげで、プチ贅沢が味わえるようになったという声(導入事例:株式会社ハートコーポレーション様)も聞かれます。
従業員の健康を増進
バランスの取れた食事を提供することは、従業員の健康維持・増進につながります。十分な食事が摂れているからこそ、業務で高いパフォーマンスが発揮できます。ところが2023年にアサヒグループ食品株式会社が実施した「働く人のお昼休憩に関する実態調査」では、ビジネスパーソンの約1/4がランチを食べない日があることがわかりました。理由は、1位「仕事が忙しくて食べる時間がないから(39.9%)」、2位「節約のために食費を抑えたいから(17.5%)」となるなど、食費の抑制目的での欠食も目立ちます。
昼食代を節約する従業員が多いという課題解決にも、「チケットレストラン」導入が効果的です。(導入事例:株式会社コスモ環境設計様)用途を食事に特化している福利厚生サービスであるため、確実に従業員の食事代として、ひいては健康増進の用途で活用してもらえるからです。
出典:PR TIMES|アサヒグループ食品株式会社【働く人のお昼休憩に関する実態調査】
多様な従業員に公平に提供可能
正規従業員はもちろん、パートタイマーやアルバイトなど、全ての従業員に同様に提供できる点が「チケットレストラン」の強みです。中小企業では、パートタイマーやアルバイト従業員が活躍していることも多く、ぜひ給与として還元したいと考えるケースも多くみられます。
また、内勤・外勤を問わず利用可能なため、多様な勤務形態に対応できます。対象者を限定しない食の福利厚生は、従業員間の不公平感を解消し、職場の一体感醸成にも効果的です。従業員同士のコミュニケーションの機会を増やしたいことから、「チケットレストラン」を導入した事例(導入事例:功和警備保障株式会社様)もあります。
企業にとってもメリット大
「チケットレストラン」は、一定の要件を満たせば非課税となるため、企業側の税負担を抑えつつ、従業員の実質収入を増やせます。また、98%という高い利用率と93%の満足度は、人材確保・定着に悩む企業にとって魅力的な数字と言えるでしょう。実際に利用してもらえる福利厚生であることに注目し、パッケージ型の福利厚生サービスから切り替えをされた事例(導入事例:SKソリューション株式会社様)もあります。
中小企業は多様な取り組みで賃金アップを実現
中小企業の賃金動向は、日本経済全体の健全性を示す重要な指標です。さくらレポートが示すように、多くの中小企業が賃上げに積極的な姿勢を見せています。一方で、賃上げが困難な企業も存在し、多様な手法での対応が求められています。
賃上げと福利厚生の充実を組み合わせた総合的なアプローチは、ますます重要になっていくことでしょう。食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を賃上げへの取り組みとして活用してみませんか。