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中小企業向け賃上げ促進税制とは?要件や対象になる手当・給与も解説

公開日: 2023.11.22

更新日: 2026.09.29

中小企業向け賃上げ促進税制とは?要件や大企業向けとの違いを解説!

中小企業向け賃上げ促進税制は、賃上げを行った中小企業が、増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から控除できる制度です。令和6年度税制改正により適用期間が令和9年3月31日まで延長され、令和8年度税制改正で上乗せ要件の一部が見直されました。本記事では最新の要件・控除率のほか、賃上げに含まれる手当についても解説します。

賃上げ促進税制とは

賃上げ促進税制は、賃上げや人材育成に取り組む企業の負担の一部を、法人税または所得税から控除する制度です。令和4年度税制改正で旧「所得拡大促進税制」から再整備され、その後も令和6年度・令和8年度の税制改正で要件が見直されています。中小企業向け制度の対象は、青色申告書を提出する中小企業者等に限られます。

参考: METI/経済産業省関東経済産業局|賃上げ税制について(賃上げ促進税制/所得拡大促進税制)

参考:中小企業庁|中小企業向け「賃上げ促進税制」※旧、中小企業向け「所得拡大促進税制」

中小企業向け賃上げ促進税制の概要

中小企業向け賃上げ促進税制は、旧所得拡大促進税制の後継として令和4年4月1日に施行され、令和6年度の税制改正による拡充、令和8年度の見直しを経て現在に至ります。

適用対象

中小企業向け賃上げ促進税制の適用対象となるのは、以下の条件を満たす事業者です。

対象区分 適用要件
法人 資本金または出資金の額が1億円以下
資本・出資を有しない法人 常時使用する従業員数が1,000人以下
個人事業主 常時使用する従業員数が1,000人以下
協同組合等 中小企業等協同組合、出資組合である商工組合等

ただし、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は制度の対象外となります。

適用期間

区分 対象期間
法人 令和6年4月1日〜令和9年3月31日までに開始する各事業年度
個人事業主 令和7年〜令和9年の各年分

適用要件・控除率

適用要件と控除率は以下のとおりです。

必須要件(賃上げ要件)・控除率

区分 条件 税額控除
賃上げ要件① 前年度比1.5%以上の賃上げ 控除対象雇用者給与等支給増加額の15%を控除
賃上げ要件② 前年度比2.5%以上の賃上げ 控除対象雇用者給与等支給増加額の30%を控除

上乗せ要件・税額控除率

区分 条件 税額控除
上乗せ要件 くるみん以上、またはえるぼし二段階目以上 税額控除率を5%上乗せ

※控除上限は法人税額(個人事業主は所得税額)の20%

計算例

【前提条件】

  • 前事業年度の雇用者給与等支給額:5,000万円
  • 適用事業年度の雇用者給与等支給額:5,200万円(増加額:200万円)

【計算の手順】

  1. 賃上げ率の算出:200万円 ÷ 5,000万円 = 4.0%
  2. 要件の判定と基本控除率:4.0%は「2.5%以上(賃上げ要件②)」を満たすため、基本の控除率は30%
  3. 税額控除額の算出:控除対象増加額 200万円 × 30% = 60万円

上乗せ要件の適用(該当する場合)
くるみん認定またはえるぼし認定を保有している場合、控除率が5%上乗せされて 35% となり、控除額は 70万円(200万円 × 35%)になります。

教育訓練費の上乗せ要件とその廃止

教育訓練費に関わる税額控除率を上乗せする措置は、令和8年度(2026年度)の税制改正により見直され、2026年3月31日をもって廃止されました。そのため、2026年4月1日以降に開始する各事業年度(個人事業主は2027年分以降)においては、本上乗せ要件を適用することはできません。

赤字時の繰越税額控除

繰越税額控除は令和6年度の税制改正で新設された制度で、中小企業者等や青色申告書を提出する常時使用従業員数1,000人以下の個人事業主が対象となります。当事業年度に控除しきれなかった税額控除額がある場合、翌事業年度以降5年間にわたって繰り越して控除することが可能です。ただし、繰越控除を適用する事業年度においても、雇用者全体の給与等支給額が前年度以上であることが要件とされています。

適用にあたっての手続き

本制度の利用にあたって、事前の申請手続きは不要です。法人は法人税、個人事業主は所得税の確定申告時に、税額控除の対象となる給与等支給増加額の明細書などを添付して申告を行います。

繰越税額控除を利用する場合は、未控除額が発生した事業年度から使い切るまで、毎年の確定申告のたびに所定の明細書を添付し続ける必要があります。一年でも添付を忘れると、その時点で繰り越しができなくなるため、顧問税理士等と相談しながら慎重に手続きを進めてください。

出典:中小企業庁|中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック(令和8年5月1日更新版)

給与「賃上げ」に含まれる給与所得

  • 社会保険適用促進手当
  • 企業が奨学金の代理返還に充てる経費
  • 給与所得となる手当や食事代

社会保険適用促進手当と奨学金の代理返還費用は賃上げ促進税制の対象になる給与であることを、経済産業省が公式ページで明示しています。

食事代の手当も、給与所得として課税される形であれば対象です。中小企業庁の「よくあるご質問Q&A」(2026年4月1日更新版)Q27では、給与所得となる食事代の手当を食事券などで支給した場合、その券面額は現金支給と同じく給与等の金額に含まれるとしています。

Q27.次のそれぞれの場合におけるそれぞれの金額は、給与等の金額に含まれるのか。

・給与所得となる手当を商品券で支給した場合の商品券の券面額
・給与所得となる食事代の手当をお食事券で支給した場合のお食事券の券面額

A27.いずれも、給与等の金額に含まれます。現金か商品券かなど、支給の形態は問いません。

出典:中小企業庁|中小企業向け 賃上げ促進税制 よくあるご質問 Q&A

一方、従業員が食事代の半分以上を自己負担し、企業の補助が月額7,500円以下におさまる非課税枠内の食事補助は、そもそも給与所得として扱われないため雇用者給与等支給額には含まれません。非課税の範囲内で食事補助を増額するケースは、賃上げ要件の根拠にはならない点を押さえておきましょう。

出典:経済産業省|賃上げ促進税制

全企業向け・中堅企業向けとの違い

全企業向け(大企業が使える)の賃上げ促進税制は、令和7年度末(令和8年3月31日までに開始する事業年度)を以て廃止されました。令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、企業規模を問わず全企業向け措置は使えません。

資本金や従業員数が中小企業の基準を超える企業向けには、要件を厳格化した中堅企業向け賃上げ促進税制が令和9年3月31日まで継続しています。中小企業は、中小企業向け制度に代えて中堅企業向け制度を選ぶこともできますが、両制度の併用はできません。

中小企業向け賃上げ促進税制を利用するメリット

企業が中小企業向け賃上げ促進税制を利用することで得られるメリットには、いったいどのようなものがあるのでしょうか。主なメリットを紹介します。

雇用の拡大・賃金アップ

中小企業向け賃上げ促進税制は、雇用者給与等支給額が判定の対象です。継続雇用者の給与に限らないことから、新規雇用者へ支給する賃金も算入できます。

つまり、制度を利用すると、税額控除を受けながらの新規雇用が可能となります。もちろん、継続雇用者の賃金をアップした場合にも、制度は利用可能です。

雇用の拡大や、既存従業員の賃金アップを検討している中小企業にとって、メリットのある制度といえそうです。

賃金アップの負担軽減

賃金アップを検討しながらも、物価高や人材不足を背景とした経営不安から実現できずにいる企業に向けて、政府が税額控除というかたちで後押しする制度です。上乗せ要件のひとつであるくるみん・えるぼし認定は、仕事と子育ての両立支援や女性活躍推進に取り組む証明にもなり、人材の定着や採用力の向上にもつながります。

中小企業の賃上げ取り組み事例

実際の賃金アップ等と、非課税の食事補助による手取りアップを組み合わせた中小企業の取り組みを紹介します。

※このケースの食事補助部分は非課税運用のため、ここまで説明した賃上げ促進税制の算入対象にはなりません。

不動産業を営む株式会社sumarch(従業員220名)では、「賃上げしてもらっても手取りがそれほど多く残らない」という従業員の声をきっかけに、手取りを増やしながら健康支援や人材確保にもつながる施策を探していました。そこで導入したのが、食事補助を非課税で運用できる「チケットレストラン」。評判は上々で、「毎日の食事に利用できる」と重宝されるようになりました。

その後、2026年4月の食事補助の非課税上限引き上げ(月額3,500円→7,500円)にあわせて支給額を上限まで増額しました。社内チャットでは「ありがとう!」のスタンプが100件以上つき、代表取締役に直接感謝を伝える姿もあったそうです。

賃金アップ等の取り組みと「チケットレストラン」の併用により、「エンゲージメントが高まった」と回答した従業員が89%以上、「長期的に就業したい」と回答した従業員が81%以上にのぼり、採用数も年間約30%増加しています。

導入事例:株式会社sumarch
導入事例:株式会社sumarch_支給額増額後

賃上げ促進税制に関するFAQ

Q. 中小企業向け賃上げ促進税制の適用期限はいつまで?

A.法人は令和9年3月31日までに開始する事業年度、個人事業主は令和9年分までが対象です。

Q. 中小企業向け賃上げ促進税制は赤字の年でも利用できますか?

A. 赤字で控除しきれない場合も、繰越税額控除により翌年度以降5年間繰り越して黒字化した年度に控除できます。

Q. 非課税扱いの食事補助は賃上げ促進税制の対象に計上する給与に含まれる?

A. 非課税要件を満たす範囲内の食事補助は、賃上げ促進税制の給与等には含まれません。課税対象として支給する食事手当(全額企業負担の金銭や食事券など)は算入されます。

関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説

Q. 大企業向けの賃上げ促進税制はなくなったのか?

A. 全企業向けの制度は令和7年度末で廃止されました。

中小企業向け賃上げ促進税制の利用検討を

中小企業向け賃上げ促進税制は、賃上げに取り組んだ企業に対して負担増加となる一部を税額控除する制度です。賃金アップを検討しながらも、資金面がネックとなっている企業にとって、賃上げの後押しとして活用できます。

また、近年、給与アップによる賃上げにプラスして、福利厚生を活用して手取りを増やす「実質的な賃上げ」を取り入れる企業も増えています。

日本一の実績を持つ食の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、食事補助の非課税枠を活用する仕組みが特徴です。サービスを通じて従業員の食事をサポートすることで、そのぶん非課税になり、手取りを多く残せます。食事を通じた実質的な手取りアップで、より魅力ある企業づくりを目指しましょう。

導入事例はこちら

関連ページ:食事補助を福利厚生で導入するならチケットレストラン

関連記事:食事補助とは?福利厚生に導入するメリットや種類・支給の流れを解説

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